在宅勤務で健康維持する方法


2018年、日本企業のテレワーク導入率は19.0%
で年々増加傾向にありますが(2017年:13.8%、2016年:13.2%)、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってテレワークの導入が各企業で加速していくことが予想されます。まだテレワークの制度が整っていない企業でも、今後早急に導入を検討しなければならないような状況でもあります。テレワークと言ってもその勤務形態は様々で、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークもテレワークに含まれます。
※総務省「通信利用動向調査(企業編)平成30年報告書」より引用。常用雇用者が100人以上の全国の企業を対象にした調査で、2,119企業から集計。

在宅勤務には、定型業務の効率性向上・通勤時間の短縮・オフィスコストの削減・通勤困難者への対応・非常時(災害や新型コロナウイルスなど)の事業継続など、多くのメリットがあります。通勤時間の短縮で使えるようになった自由な時間は、セルフケアや新しいことに挑戦できる機会でもあります。しかし、在宅勤務に普段から慣れていない人たちにとっては、「自宅でどのように業務に取り組めば良いのか? どのようにストレス管理・健康的な食事・運動を取り入れれば良いのか?」 と、悩まされる人も多いです。新型コロナウイルスのパンデミックから身を守ることを考えると、今は健康的なワークライフバランスを確立させてセルフケアを最優先すべき時期ではないでしょうか。今回のトピックでは、テレワーク導入に伴ったワークライフバランスの変化に対応できるよう、生活の中で取り入れるべき・見直すべき点についてご紹介していきます。


メンタルヘルスについて


新型コロナウイルスはその特性や効果的な治療法など、まだ明らかとなっていない部分も多いです。これらの不明点は、自粛生活のストレスや感染の危険性への不安が増長される原因となっています。現在も多くの方が在宅勤務・自宅療養・外出自粛で自宅中心の生活を余儀なくされていますが、ウイルスもストレスも目には見えないものの健康を損なう要因であることに違いはありません。悪化する前から精神状態の管理方法について考えてみる必要があります。

➤ 瞑想
瞑想は、どこでもできる簡単なストレスケア方法です。2020年の研究によると、毎日20分の瞑想を行うだけで、生産品質の改善や仕事のミス減少などの生産性が向上するだけでなく、POMS(気分プロフィール検査)の【抑うつ・落ち込み】や【怒り・敵意】などの項目が減少し、精神的にも大きな効果が見られました¹⁾。このように、研究でも定期的な瞑想の実施は生産性の向上のみならず、幸福感を高めることにも役立つことが示されています。初めて瞑想を行う方は、毎日3分から始めて徐々に時間を伸ばしていきましょう。瞑想の方法は様々ですが、今回は気軽に始められるよう、瞑想法の土台にもなっていた ”呼吸による瞑想” を簡単にご紹介します。


※「Googleも採用するマインドフルネス瞑想/その効果と難易度別3つの実践方法」林佐智子.ライフアンドマインドより引用・改変

呼吸による瞑想は、ただ呼吸に意識を向けるだけの方法なので新しいスキルや道具も不要です。しかし、呼吸は自律神経の中で唯一意識的に介入することができる神経系なので、意図的に呼吸を変化させることでその状況が脳に伝わり、脳内に働きかけることができると言われています。呼吸法は、横隔膜を動かして内臓にも刺激が伝わる腹式呼吸がお勧めですが胸式呼吸でも問題なく、やりやすい呼吸で②-③を繰り返し3分から15分ほど続けてみましょう。

➤ 仕事とプライベートのバランス
自宅で仕事を行う際の問題点は、仕事の時間とプライベートの時間に境界線が無くなることです。会社に通勤していた頃は、オフィスを離れることで自然と終業を認識できていましたが、自宅での仕事は就業時間の区別をつけにくくなってしまいます。朝早くから夜遅くまで一日中、メールの返信をするなどパソコンと向き合ってばかりではありませんか?

プライベートの時間まで仕事の時間に充てることは、心身の健康状態の悪化にも関連します。在宅勤務中でも、できるだけ通常通りの勤務時間を設定して区切りをつけてください。時間になったらパソコンは閉じて、仕事関連の通知はミュートにしましょう。このようなルールをチームや上司と共有して、仕事とプライベートのバランスを取るためには会社からの理解も必要です。

➤ 睡眠
毎朝決められた時間に出社する必要がなくなったので、目覚ましをかけることを止めてはいませんか? 今までの規則正しかった睡眠ルーティンを忘れてはいませんか? 不規則な睡眠スケジュールや睡眠不足は、脳細胞回復の妨げとなり、認知機能や判断力・記憶力低下の原因になります。また、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンは気持ちを落ち着かせるセロトニンとも密接な関係があるため、十分な睡眠をとることは心理的安定をもたらし、ストレス解消にも繋がります。


健康的な食事


在宅勤務中の昼食と間食はどのようにしていますか? バランスの取れた食事と栄養価の高い間食を選択することは、健康体を目指す上で必要不可欠です。外出の必要もなく手軽に食事を済ませられるからと言って、デリバリーのピザやファストフードを頻繁に頼んではいませんか? デリバリーに対応している食事は、高カロリーかつ塩分過多・糖質過多なものが多く、頻繁に食べると肥満のリスクが高まります。

在宅勤務は、外食を避けて自炊をするチャンスです。自炊であれば、食材の選択から調理方法までより細かく食事内容を制御することができます。これからの食事には、次のようなバランスの取れた食品を取り入れることをお勧めします。
 全粒穀物(玄米・全粒粉小麦・オートミールなど)
様々な種類のタンパク源(赤身の肉・魚介類・卵・大豆製品・ナッツ類など)
低脂肪または無脂肪乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)
非デンプン質野菜(葉野菜・トマト・玉ねぎなど)とデンプン質野菜(ジャガイモ・カボチャ・グリーンピースなど)
丸ごと果実

肉料理をするときは大量の添加物と塩が含まれている加工肉ではなく、新鮮な赤身肉を選んでください。調理で使用する油は、オリーブオイルやキャノーラオイルなどの健康的な食用油を使うのもいいでしょう。一人で様々な種類の野菜と果物を消費するのが難しい場合は、小分けできる冷凍野菜やドライフルーツを取り入れてみましょう。


自宅での食事は人目もないので、ついつい ”ながら食べ” をしていませんか? 仕事をしながら、スマートフォンやテレビを見ながら、本や雑誌を片手にしながら食事をしていませんか? “〇〇しながら” の行為と食事を同時に行うことは、意識を分散してしまうので過食になりがちです。Physiology and Behaviorジャーナルに掲載された2019年の研究でも、食事中にスマートフォンを使用することはカロリー摂取量の増加に関連することを報告しています²⁾。仕事部屋やパソコンの前で食事は避けて、できるだけ食事スペースと仕事スペースを分けてください。気が散った状態での食事は、過剰なカロリー摂取に陥る傾向があります。仕事中であろうがなかろうが、”ながら食べ” は止めましょう。

仕事中にお菓子を食べながらの、ながら仕事も同じように気を付けてください。仕事のストレスも過剰な間食の引き金になりますが、どうしても口にしたい時は健康的な間食を選択してください。高カロリーなジャンクフードや菓子パン類は手の届きにくい場所へ移しましょう。健康的な間食の例としては、フルーツ・ナッツ類・ポップコーン・全粒粉クラッカー・お餅などがあります。

また、食事も睡眠と同様に、規則正しいスケジュールを守ってください。不規則な食事も肥満のリスクに繋がります。毎日同じ時間に食事と間食を摂るように心掛けてみましょう。これは勿論、休日にも当てはまります。


定期的な運動


在宅勤務では、通勤で体を動かすことができないので、運動のガイドラインを満たすことが困難になってきます。このような状況で、どのようにモチベーションを維持しながら身体活動量を増やすことができるでしょうか。在宅勤務では、オフィスビルに出入りしたり、会議室や休憩室まで歩いたり、階段を上り下りするような身体活動はありません。残念なことに、自宅で一日中デスクワークに取り組むだけでは筋肉量は増えませんし、体脂肪量は減少するどころか増加してしまいます。在宅勤務やデスクワークで運動量が足りない方は、仕事の合間にちょっとした運動休憩を挟んで運動量を確保する必要があります。

2020年の最新の研究でも、ちょっとした運動休憩を取ることは、食後の血糖反応を良くしてトリアシルグリセロール(中性脂肪)の低下に役立つことが示されています³⁾。この研究では、長時間の座位活動の合間に下記の運動休憩を取り入れています。
昼食前に30分の早歩き
4時間の座位(デスクワーク) → 30分のサイクリング運動(運動強度: 70%VO₂max)
40分の座位(デスクワーク) → 6分のサイクリング運動(運動強度: 70%VO₂max)
3時間15分の座位(デスクワーク) → 15分の立位 & 15分のウォーキング & 15分のMVPA(中-高強度の身体活動)運動

仕事中に運動休憩を取ることをつい忘れてしまう人は、タイマーをセットしてください。座ったまま一定時間が過ぎたら、強制的に立ち上がって、少し室内を移動してみましょう。できれば、運動休憩は屋外で実施してください。日光を浴びると免疫機能に重要な役割を果たすビタミンDを皮下で生合成できます。屋外に出ることが難しい場合は、ヨガ・自荷重の運動・トレーニングビデオで紹介されている有酸素運動など、室内でもできる簡単な運動を行いましょう。

1日中自宅で過ごしていると、どんなに努力しても、十分な運動量を確保することはとても難しいです。厚生労働省が定める「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」では、1日に60分の身体活動と8,000歩を目安に歩くことを推奨しています。60分の身体活動のうち20分は筋トレやスポーツを行うことを目指します。なかなかこの目標まで達成することは難しい状況かもしれませんが、少しでも運動休憩などを取り入れてコツコツ身体活動量を増やしていきましょう。


進捗状況を確認する


一人で運動のモチベーションを維持することは、家族や友人と一緒に行う時よりも難しくなります。そんな時は、体組成計で進捗を記録したり、体成分データを周りの人と共有したりすることで、モチベーションアップに繋げましょう。

骨格筋量や体脂肪率などの体成分は、体重よりも遥かに優れた指標です。体重が減ったとしても、それだけでは体にとって良い変化なのかわかりません。一日中座りっぱなしの生活で筋肉量が減り、体重が減ったことは良い変化ですか? 水分補給を忘れてしまい脱水状態に陥った結果、体重が減ったことは良い変化と言えますか? 体重が標準範囲内だからと言って健康体とは限りません。筋肉量と体脂肪量がそれぞれ適量でなければ、本当に健康かは分かりません。

InBody Dialは家庭用のInBodyで、業務用InBodyと同様に部位別測定・2周波の多周波数測定・統計補正の排除を可能にした家庭用で最も精度の高い体組成計です。体重だけでなく、骨格筋量・体脂肪率・BMI・内臓脂肪レベルなどの項目が、スマートフォンアプリの履歴で確認することもできます。
※InBody Dialの詳細は製品情報の家庭用製品「InBody Dial」からご覧ください。


終わりに

緊急事態宣言をきっかけに新しく在宅勤務を始めた方にとって、健康的なワークライフバランスを確立させるのに今以上の好機はありません。仕事とプライベートの健康的な両立には、メンタルヘルスマネジメント・バランスの取れた食事・定期的な運動の3つの視点が欠かせません。ストレスや不安を感じている時は、瞑想を試してみたり睡眠を優先するようにしてください。食事メニューを見直して、バランスの取れた食品・調理法を選択しましょう。そして、1日に少なくとも60分の身体活動を実施するように心掛けてください。

参考文献
1. Pagliaro G et al., The effects of meditation on the performance and well-being of a company: A pilot study. Explore (NY). 2020 Jan-Feb;16(1):56-60.
2. Gonçalves RFDM et al., Smartphone use while eating increases caloric ingestion. Physiol Behav. 2019 May 15;204:93-99.
3. Loh R et al., Effects of Interrupting Prolonged Sitting with Physical Activity Breaks on Blood Glucose, Insulin and Triacylglycerol Measures: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Med. 2020 Feb;50(2):295-330.