スポーツ支援事業の取り組み -パラアスリートにおけるInBody測定の重要性-

インボディ・ジャパンでは、パラ陸上選手の井谷 俊介選手(パリパラリンピック 男子200m 日本代表)とスポンサー契約を締結しており、パラスポーツ界発展のために様々な活動に取り組んでいます。今回は、2026年2月8日(日)に愛知学院大学で開催された、井谷選手の特別講演の様子をご紹介します。

「パラアスリートにおけるInBody測定の重要性」をテーマに、体成分を分析・理解し、トレーニングの方向性を明確化することで、どのようにコンディショニング改善と競技力向上に繋がったかをお話しいただきました。パラスポーツ学会は、座学で受ける講演・シンポジウム・一般演題のような通常の学会形式だけでなく、パラスポーツ競技体験の実技プログラムも企画されていることが特徴です。井谷選手は今回、特別講演に登壇されたほか、パラスポーツ競技体験(車いすレーサー・義足体験)の講師としても本学会に参加されました。


パラアスリートが抱える課題


特別講演の冒頭では、2016年の交通事故で右下腿を切断した時の状況から、リハビリの様子、パラ陸上との出会いまで、詳しくお話しいただきました。精神的な葛藤・競技を継続するために必要な金銭面の問題・成績不振やライバルの台頭など、アスリートやパラスポーツ業界が抱える課題を包み隠さずお話しいただきました。井谷選手の10年間の歩みが強く伝わり、会場は深く引き込まれていました。

井谷選手は大学時代、モータースポーツに打ち込むレーシングドライバーでした。下肢を切断してからも、義足でカーレースに再挑戦し、陸上競技ではパラリンピックに出場することを目標にトレーニング環境を整えていくことから始めました。カーレースの出費に加え、高価なスポーツ用義足を購入することは簡単ではありません。パラ陸上選手を指導できる指導者や受け入れ可能な練習場が不足していることも問題です。

講演中はとても貴重なスポーツ用義足の実物を手に持ちじっくり観察しながら、パラスポーツをどのように支えていけるかを考えることができました。バネの強度を床に押し当てて確認したり、ソケット(切断後の残存肢の断端を収めて義足に力を伝える部分)の内部を覗いてみたりと、関心を示す様子がうかがえます。

パラスポーツ学会は、パラスポーツに関わる研究者・各競技団体・医療従事者・リハビリの専門家・トレーナー・企業・教育関連からプロフェッショナルが集うため、それぞれの立場からパラスポーツの発展に向けて取り組めることを模索し、選手の声に耳を傾けながら協同していくことができます。


選手の目線から、InBodyを活用したコンディショニング方法をアドバイス


井谷選手は2018年より本格的に陸上競技を開始し、同年のアジアパラ大会で100m金メダル(アジア記録更新)、2019年の世界パラ陸上選手権で100m・200m入賞(100m競技で決勝進出は日本人初)と好成績を収めていましたが、2020年は記録に伸び悩み、2021年の東京パラリンピックでは代表から落選するなど苦しい時期を経験しています。

周囲の支えによって苦しい時期を乗り越え、2023年アジアパラ大会で100mアジア記録更新(11秒29)及び200m金メダル、2024年のパリパラリンピックでは200m入賞(7位)を果たしています。この競技力向上の背景には、トレーニングだけでなくInBody BWA(以下、BWA)の体成分測定によるコンディショニングがありました。

井谷選手:
「四肢欠損者は一般的な体成分測定機器では測定が困難で、アスリートにとって重要な指標となる筋肉量や体脂肪量が把握できないことに課題を抱えていました。そんな中、義足使用者や車いすユーザーでも体成分測定を実施できるBWAと出会い、毎月体成分を測定できるようになりました。私は主に、筋肉量・体脂肪量・細胞外水分比(筋肉の質)の三つに着目しており、定期的な体成分測定からトレーニングの方向性を定めたり、具体的な取り組みを決めたりする部分に役立てています。」


井谷選手:
「パラアスリートは体重のみでこれらの方向性を定めていることが一般的ですが、例えば体重1kg増加したとき、筋肉量で1kg増えた時と体脂肪量で1kg増えた時で、今後の方向性は変わってきます。『1kg』 の正体が分からないまま、トレーニング戦略を立てたりコンディション管理したりすることは、正解の方向に進みにくいと思います。」


▲ 実際に講演で使用されたスライドより抜粋

井谷選手:
「実際に私のInBodyの結果を見てみると、3ヶ月で体重が3.1kg増えていますが、体脂肪量は0.2kg減らしながら骨格筋量を2.2kg増やせているので、体成分の観点からはコンディショニングが上手く調整できていると判断することができるわけです。筋肉量(骨格筋量)の増減をみるときは、一緒に細胞外水分比の数値も見て、良い筋肉量が増えているのか、悪い筋肉量が増えていないかも一緒に確認します。」

講演後の質疑応答では、細胞外水分比・位相角などBWAの項目に関する質問や、左右差の見方に関する質問、井谷選手のBWA測定で気を付けていること(測定条件)など、予め設けていた20分では足りないほど多くの質問が飛び交いました。


義足体験コーナー


当日は大雪によるグラウンドコンディション不良のため、車いすレーサー体験・義足体験のプログラムは急遽室内で実施されました。小さいお子様から学生、競技団体のマネージャーなど多くの方が参加され、義足体験を通してパラ陸上を学ぶ貴重な機会となりました。


終わりに


井谷選手の講演後にはたくさんの方が弊社ブースにご来場いただき、BWAにご関心をお寄せいただきました。限られた時間の中で、十分にお話ができなかった先生もいらっしゃるかと思います。インボディ・ジャパンは、パラアスリートを含むスポーツ界発展のために努力し、スポーツを通じた共生社会の実現に向けて努めていきます。また次回のイベントもご期待ください。

当講演の成功は、第34回日本パラスポーツ学会大会長 伊藤倫之先生・事務局長 石田直章先生・委員長 吉田徹先生・愛知学院大学の皆様の多大なご尽力のおかげです。また、井谷選手には、大変貴重なご講演・ご指導をいただき、誠にありがとうございました。