, , ,

出産後に体型を戻す方法

出産後は殆どの女性が、喜び・悲しみ・感動・不安・幸福・緊張・驚き・恐怖など、様々な感情の起伏をジェットコースターの様に経験します。すべての感情が、喜びや幸せのようなプラスな感情であったとしても、感情の束は体に負担を掛けます。

母乳育児は、妊娠前の状態に戻るようにダイエットを促すものではありません。クローゼットに眠っているジーンズを最後に履いたのはいつでしょうか? 妊娠前の遠い記憶です。妊娠前はスタイルが良かったとしても、体重の増加や分娩の影響による腹部のたるみなど、身体的な変化は避けられません。しかし、体型は元に戻すことができます。大事なことは、自身の身体的変化を知り、何ができるのかを学ぶことです。


妊娠中及び出産後の体成分の変化


お腹の中で子どもを育み、出産に備えて身体を整える約10か月の妊娠期間は、体成分が変化する期間でもあります。妊娠期間に大きく変化する体成分は体脂肪量です。体脂肪量は出産日に近づくに連れ増加していきますが、この体脂肪量には自身の体脂肪量増加分に加え、赤ちゃんの体重・拡大した子宮と乳房・余分な血液・胎盤・羊水が含まれています。体内で電流の流れない部分は非伝導体として体脂肪量に測定されるため、電流が上手く通らない羊膜内も体脂肪量として換算されてしまいます。

では、羊膜内以外の本来の体脂肪量は何故増加してしまうのでしょうか? 母体は、赤ちゃんの発達と母乳育児の準備のために脂肪組織が必要となります。しかし、残念ながら出産に備えるためにどれだけの体脂肪量がどこの部分に必要なのかなどの、明確な研究結果は殆ど出されていないのが現状です。出産を経験した557人の健康な女性を対象に、妊娠前から出産後までの体脂肪量の変化をモニタリングした研究では、体脂肪が貯蓄される時期・部位・量は個人差があり、個々によって異なると結論付けています1)。妊婦の体脂肪量に関する研究を曖昧にしてしまう理由は、様々な要因によって母親の体成分(筋肉量・除脂肪量・体脂肪量など)の変化を明確に判断できないためです。いろんな要因の中の一つとして、母親とお腹の赤ちゃんの体成分を分離することができないことが挙げられます。

しかし、次の様な興味深い研究が発表されています。体脂肪量増加の程度に関する因子として、初産婦であるか経産婦であるかが関係するという研究です。この研究では初産婦は経産婦より妊娠中の体脂肪量増加が高いことを示し、出産半年後の時点でも初産婦の方が体脂肪の貯蓄が多かったことが報告されています2)

出産後は、体成分が大きく変化するタイミングです。出産直後は赤ちゃん・胎盤・羊水・余分な血液などの分で、体重が大きく減ることになります。そして約6週間で子宮の大きさが小さくなり、妊娠前の体重に近づいていきます。これらの重さは自然と減っていきますが、残念なことに妊娠中に蓄えられた体脂肪は自然と消えてはくれません。蓄えられた余分な体脂肪のうち、いくらかは母乳育児の中で減らすことができるかもしれませんが、それ以上に体脂肪量を減らすためにはどのような対策が必要でしょうか?


腹直筋離開


妊婦の体型に大きく影響する一つの要因が腹直筋離開です。腹直筋離開とは胸骨から恥骨まで走る腹直筋の中心部分の白線という腱が横に伸びて薄くなり、左右の腹筋が離れて開いた状態になることです。妊娠が進むにつれて、赤ちゃんのスペースのために子宮は成長し、腹部の筋肉は伸びていきます。腹直筋離開は妊娠女性の大半が経験しますが、分離の程度と位置は個々によって異なります。妊婦の腹直筋離開に関するある研究では、68%の妊婦がおへそより上部、32%がおへそより下部で分離が発生したと報告しています。

出産後、分離の程度は自然と和らぐこともありますが、それだけでは完全に元通りになることは殆どありません。出産後の目立ったお腹や出産後から数か月経っても妊娠している様に見える体型は、弱くなってたるんだ腹筋が原因となっています。


安全で効果的なダイエット計画

前項で妊娠後の体型変化の要因を、体成分の変化と腹直筋離開の2点から説明しました。ここでは出産後体型の回復・改善を促すために、妊娠中に気を付けるべき点や出産後の運動などについて詳しくお話しします。

母乳育児の影響と体成分
恐らく、自然と体重を減らすことに繋がる最後のチャンスが母乳育児です。母乳育児と体重減少は関連していることを示す研究が増えてきています。最も結果が顕著に現れていた疫学的研究はデンマークの研究で、母乳育児6か月の女性が合理的に除去できる体重は12kgと定義しています3)。これらの所見は、母乳育児と混合育児(母乳と人工ミルクの混合栄養)の母親の体脂肪量を比較しているアメリカの研究結果でも裏付けされています。この研究で、出産後12週間は混合育児よりも母乳育児の方が母親の体脂肪量減少を促進していたことが分かりました4)

では、授乳中の女性は母乳を作るためにいくらか体脂肪が必要であることを考慮して、どれだけの減量が「安全」と言えるのでしょうか? 出産後の体重が標準の場合は減量に励む必要はありませんが、過体重の女性に関しては授乳中でも1週間あたり約0.5kgの減量(出産後4~14週)は、新生児の成長と発達に悪影響を及ぼさないことが報告されているので、目安にしてください。

妊娠中の食事と体重管理

妊娠中は、赤ちゃんに与える栄養が必要と考えていつも以上に食べ過ぎていませんか? 食べつわりで、常に何か口にしないと落ち着かない方も少なくはないでしょう。高カロリーばかりの偏った食事や過度な体重増加は様々なリスクを高めます。太り過ぎは、妊娠高血圧・妊娠糖尿病・腰痛などの妊娠合併症の原因となります。これらが悪化すると、胎盤の機能低下・流産や早産の原因になる・胎児が巨大児になるなど、母子ともに危険な状態になってしまいます。また、産道にも体脂肪が付くことで難産の原因となったり、微弱陣痛でお産が長引いたりすることがあります。太り過ぎの妊婦は出産を終えるまでこれだけのリスクを抱えていますが、出産後も体重が戻りにくく妊娠線ができてしまうなどの問題があります。出産後体型の回復を早めるためにも、妊娠中に過度な体重増加を指摘された場合は次の点を心掛けましょう。
・規則正しい生活と食事を心掛ける
・早食いを避けて、ゆっくり食べる
・食生活を見直す(食べた物を書いてみると良い)
・間食や夜食を控える
・就寝前の2~3時間は飲食を控える
・油分を控え網焼きや蒸し物に代用するなど調理方法を工夫する

出産直前の体重増加は7~8kg程度が理想的です。理想的に体重増加した際の内訳は、赤ちゃんの体重約3kg、胎盤の重さ約0.5kg、羊水の重さ約0.5kg、乳房・子宮・血液・水分・体脂肪などお母さんの増加分が約3~4kgとなります。これ以上の体重増加はすべてお母さんの体脂肪です。体脂肪量は週に500g以上増えないよう気を付けましょう。

体型別の体重増加の目安

BMI ~18 18~24 24~28 28~
体型 痩せ気味の人 標準 肥満気味の人 肥満
体重増加の目安 12kg 8kg 5kg 0kg

妊娠中に必要な栄養素


妊娠中・授乳中に積極的に取り入れたい食品は「食物繊維・鉄分・カルシウム・葉酸を多く含む食品」です。加え、これらの吸収を助ける働きがあるビタミン類も一緒に取るようにしましょう。一方、妊娠中は高血圧や浮腫みが現れやすいので、塩分を控えめにした食事を心掛けましょう。

▶食物繊維
妊娠中はホルモンの影響などで腸の動きが鈍くなるため、便秘がちになります。便秘予防には食物繊維を積極的に取ることが効果的で、豆類・野菜・きのこ・海藻・果物などに多く含まれています。また、ヨーグルト・納豆・味噌・漬物などの発酵食品も、腸の働きを活発にするので取り入れて欲しい食品です。

▶鉄分
妊娠中はより多くの血液と鉄分が必要になるため、貧血になりやすくなっています。もともと貧血気味であった方だけでなく、食事が思うように取れていない方や痩せ気味の方も、妊娠前より多くの鉄分を摂取するよう、食品やサプリを選択しましょう。鉄分の摂取基準量は妊娠初期で8.5~9.0mg/日、妊娠中期と後期で21.0~21.5mg/日です。レバー・あさり・豆腐・小松菜・ほうれん草などの食品は鉄分を多く含んでいます。

▶カルシウム
カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素ですが、赤ちゃんの発育にとても必要な栄養素です。また、妊娠してからこむら返りに悩まされるようになった方も多いと思います。カルシウム不足と妊娠によるホルモンバランスの崩れが原因で、こむら返りが発生します。1日の摂取基準量650mgを目安に、乳製品・小魚・豆腐などカルシウムを多く含む食品を摂取しましょう。

▶葉酸
妊娠中は血液量が増えるので、普段より多くの葉酸が必要になります。葉酸が不足することで貧血・流産・早産・妊娠高血圧症候群などが起こりやすくなります。また、赤ちゃんの口蓋裂や低出生体重の原因となることもあります。葉酸は授乳中も必要な栄養素となりますので、1日の摂取基準量0.4mgを目安に積極的に取り入れましょう。レバー・納豆・ほうれん草・いちごなどの食品は葉酸を多く含んでいます。

▶ビタミン類
鉄分とカルシウムは吸収されにくいので、吸収を助ける働きがあるビタミンを多く含む食品を一緒に取ると良いでしょう。鉄分の吸収を助ける食品は、ビタミンBとビタミンCを多く含む食品で、卵白・干しシイタケ・魚・柑橘類・野菜などが挙げられます。カルシウムの吸収を助ける食品はビタミンDを多く含む食品で、卵黄・いわし・バター・きくらげなどが挙げられます。

妊娠中と出産後・授乳中の運動


妊娠中は様々な制限があり、運動をためらう方もいらっしゃるでしょう。しかし、妊娠中の適度な運動は過度な体重増加・腰痛・肩こり・こむら返り・便秘を予防するだけでなく、出産や育児に備えた体力づくりや気分転換にもなります。妊娠初期の運動は流産を招く恐れがあるという話もありますが、流産の殆どは染色体異常によるものなので適度な運動はまったく問題ありません。但し、子宮収縮抑制薬を服用している時・医師から安静するように言われた時・出血がある時・お腹が張っている時は運動を控えて安静にしてください。おすすめの運動は、腕をしっかり振りながらのウォーキング・マタニティヨガ・マタニティスイミング・マタニティビクスなどの負担をかけすぎない有酸素運動です。反対に、激しい運動・勝敗を決めるような競技・落下や外傷のリスクがあるスポーツ・お腹の赤ちゃんに十分な酸素が行き届かなくなるような登山や無酸素運動など、妊娠中に控えるべき運動もあります。

出産後すぐにも行える運動は、体への負担が少ない産褥体操や骨盤底筋群体操です。産褥体操は、妊娠・出産で伸び縮みしたお腹・子宮・腟壁・骨盤の筋肉の回復を促進します。また、新陳代謝を高め血行を良くすることで肩こり・浮腫み・腰痛が軽減し、母乳の分泌が良くなる効果もあります。出産後は骨盤周りの筋肉が緩み、尿漏れや痔が起こりやすくなっています。これらの予防には骨盤底筋群体操が効果的です。産褥体操や骨盤底筋群体操はベッドに横になったまま行える体操もあるので、出産後なるべく早い段階から始めてみましょう。

▶産褥体操 からだならし -出産後2日目から-
頭を起こす運動(5回×2)
① 仰向けに寝て、両足を伸ばす
② 片手をお腹に、もう一方の手を体側に置く
③ 息を止めずにお腹の上を見るように頭だけ起こす
④ ひと呼吸したら頭を下ろし、左右の手を替えて繰り返す


▶骨盤底筋群体操 -出産後3週間目から-
腰の上げ下げ運動(5~10回×3)
① 仰向けに寝て両膝を立て、お腹に力を入れ、腰をできるだけ高く持ち上げる
② 肩、背中、お尻の順に下ろし、力を抜く


授乳中の適度な有酸素運動は、母乳量・母乳の成分・乳児の成長に影響を与えることもなく、母親の循環器系機能を改善すると言われています。赤ちゃんが外出できるようになったら、一緒にお散歩がてらウォーキングを行うことも良いかもしれません。運動前は十分な水分補給も忘れないでください。


自分に優しく

出産に向けて約10か月かけ体重を増加、体成分を変化させましたが、元に戻すにはさらにもう10か月かかる場合もあります。母乳育児や赤ちゃんの世話にかかりっきりの人は、10か月よりさらに長い期間が必要かもしれません。出産後僅か週数間で体型を元に戻しているモデルや芸能人のことは忘れてください。お抱えのシェフやパーソナルトレーナーなど特別なチームを持っている女性の例は、あまり参考にすることができません。

先ず、出産後の自身の体型が現時点でどの位置であるのか把握する必要があります。体成分を測定して、具体的にどれだけ筋肉量と体脂肪量を調節すべきか調べてみましょう。これらの情報は、体型を戻すための目標設定に役立ちます。焦らず、時間をかけてください。「いつまでに、どれくらいの減量をする」と徐々に前向きな変化を楽しんでください。赤ちゃんと家族の健康も勿論大事ですが、自分の体も気にかけて労わってください。毎日の僅かな変化でも、きっと出産前の体型に戻るでしょう。

参考文献
1. Pregnancy-related changes in body fat. Sidebottom AC et al., Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol, 2001 Feb; 94(2): 216–23.
2. Body fat composition and weight changes during pregnancy and 6-8 months post-partum in primiparous and multiparous women. To WW, Wong MW, Aust N Z J Obstet Gynaecol, 2009 Feb;49(1):34-8. doi: 10.1111/j.1479-828X.2008.00933.x.
3. Breastfeeding reduces postpartum weight retention. Baker JL et al., Am J Clin Nutr, 2008 Dec;88(6):1543-51. doi: 10.3945/ajcn.2008.26379.
4. Effect of infant feeding on maternal body composition. Irene E Hatsu, Dawn M McDougald and Alex K Anderson, Int Breastfeed J, 2008; 3: 18.
5. 安心すこやか妊娠・出産ガイド -産婦人科診療ガイドライン:産科編2014 準拠ー, 関沢明彦 岡井崇 監修, 昭和大学病院総合周産期母子医療センター

, ,

体重調節における女性の特徴

運動の目標を立てるとき、多くの女性が体重減量を第一として考え、筋肉量の増加は二の次になっています。おそらく、「筋肉質=男らしい」という固定概念が原因かもしれません。また、女性の体成分改善の方法も、摂取カロリーの制限や有酸素中心の運動が主流になっていますが、これも体脂肪減量が主な目標であることが理由として考えられます。しかし、このような運動・食事方法では、痩せることはできても健康的に痩せることには繋がりません。

一方、女性は男性に比べて運動効果が小さいと思っている方も多いでしょう。男性の方がより重いものを持ち上げることができて、筋トレの効果も目に見えるように現れるため、女性より男性の運動効果が優れていると感じやすいです。 実際のところはどうでしょうか?

今回は男女の解剖的・生理的違いについて確認し、この差が運動及び食事にどう影響を及ぼすかを見てみましょう。


男女の体成分の違い


男性と女性の体成分はどう違うのか、そして体重調節を行う際に男女の差がどのように関わっているのか、確認してみましょう。

その1. 同じ運動をしたとき、増加する筋肉量の男女差はない。
女性が男性と同じ運動をしたとき、得られる運動効果は同じです。 その理由を述べる前に、先ず男女の体成分的な違いを見てみましょう。

▶平均的に、男性は女性より元の筋肉量が36%ほど多い。
▶筋肉分布をみると、女性は男性より上半身の筋肉量が少ない傾向がある。

2つの違いを見ると、運動効果において男性が遺伝的に少し有利かもしれません。しかし、遺伝的利点があるということが、同じ量の運動をしたときに増加する筋肉量に男女差があるという根拠にはなりません。運動量が同じであれば、男女の筋肉増加量も同じであると報告した研究もあります1)。この研究では、運動によって増加する筋肉量の男女差はなく、筋力のみ、男性に比べ女性の方がより増加したと述べられています。筋力の差に関しては、男性より女性の方が元々の体格が小さいことが理由として挙げられています。

つまり、男性の方が初期の筋肉量が多いため、筋トレをした際もより効果があるように見えるだけで、量の変化には男女の差はないと言えます。また、筋肉量の増加には、筋トレによる刺激に筋肉がどれほど敏感に反応するかが影響するため、性別差より個人差が及ぼす影響がより大きくなります。

結論として、筋肉の増加量は男女差がないため、同じ運動をすれば性別関係なく同じ筋肉量を得ることができます。ただし、女性は男性より元々の筋肉量が3割ほど少ないため、同じ量に達するまではより時間が必要かもしれません。

その2. 男性より女性の方が炭水化物代謝と体脂肪の再利用効率が良い。


筋肉量が多いほど、消費カロリーが多くなることはよく知られています。そのため、元々の筋肉量が3割ほど多い男性が女性より有利だと考えるかもしれませんが、そうではありません。女性の体脂肪及び筋肉組織は男性より特定栄養素をよく分解する特徴を持っているためです。食後の炭水化物酸化に関する男女の差を調べた研究によると、女性は食後により多くの炭水化物を酸化させ、身体活動で必要なカロリーが増加した際には体脂肪を酸化させて不足分を補うことが示されました2)。つまり、女性は炭水化物を休息や回復に合わせて、エネルギー源として使用する傾向があり、脂質は軽い運動でもエネルギー源としてよく変換するなど、代謝柔軟性が高いです。女性の代謝柔軟性が高い理由として推測されるのは次の3つです。

▶エストロゲン濃度の違い
女性は男性よりエストロゲン濃度が高いことが原因の一つと推測されています。エストロゲンは糖代謝に関わるホルモンであり、代謝を促進することでエネルギーを体脂肪として蓄えにくくします。このようなエストロゲンの働きが、女性の代謝柔軟性を高める可能性を示唆しています。

▶炭水化物代謝の違い
男性と女性の炭水化物代謝の違いを調べた研究では、高炭水化物食(通常量より55~75%増)の後に体内グリコーゲン濃度を確認した結果、男性の体内グリコーゲン濃度は増加したにもかかわらず女性では変化がありませんでした。この結果は、過剰なエネルギーを取り入れた場合、男性は今後の備えのため体脂肪として蓄積することに対し、女性はあまり残さず効率的にエネルギーとして使用することを示唆しています。

▶体脂肪分布の違い
肥満のタイプについて、「男性はリンゴ型、女性は洋ナシ形から加齢に伴いリンゴ型になる」等の話を聞いたことがあるかもしれません。このタイプの違いは体脂肪がどの部位に多く蓄積されているのかが大きく関わってきます。余分なエネルギーを体脂肪に変換して蓄積するとき、男性は内臓脂肪として蓄積する傾向があります。一方、女性は余分なエネルギーをお尻や太ももなど下半身を中心に、皮下脂肪として蓄積する傾向があります。糖尿病などの生活習慣病の原因としてよく知られている内臓脂肪は、蓄積されると糖代謝で重要な役割をもつインスリンの反応を鈍くします。インスリンは血糖を細胞に届け、エネルギー源として使用できるようにするホルモンであるため、インスリンの反応が落ちると(インスリン抵抗性)、エネルギー代謝が下がり、より体脂肪として変換されやすくなる悪循環に陥ります。そのため、男性に比べ、内臓脂肪が少ない女性の方が、エネルギー代謝がより高くなっています。

これらの理由を踏まえて考えると、女性は特に炭水化物や脂質の摂取量を減らすことよりも、タンパク質と一緒に適量を摂取しながら定期的に運動することでエネルギーを適切に消費することが重要です。適切な栄養摂取は運動効果を高め、筋肉量を増やすことに役立ちます。ただ、「良い」炭水化物や脂質を取ることが大切です。同じ炭水化物食品でも、精白パスタやお菓子など、精製加工された炭水化物は加工過程で糖が多く含まれることになるため、「悪い」炭水化物に該当します。加工されていない野菜や果物、豆類、全粒穀物などは「良い」炭水化物に含まれます。適切な栄養摂取、食事を欠かせないことが重要な理由はもう一つあります。エネルギー源になる栄養素が供給されず、一時的な「飢餓」状態に陥ると、体は持っている体内のエネルギーだけで身体機能を維持するために、足りない分のエネルギー分は筋肉(タンパク質)・体脂肪を分解して補います。つまり、食べずに運動すると運動による消費エネルギーを補うために筋肉が分解される逆効果を招き、代謝量も減少することになります。

その3. 女性は遅筋繊維の割合が速筋繊維の割合より高い。


筋線維は大きく2種類に分けられます。遅筋線維と速筋繊維です(最近の研究によると速筋繊維も2つのタイプがありますが、速筋であることに変わりはないため、ここでは区分せずに説明します)。

遅筋線維は赤筋とも言われ、持久力が高く力は弱いという特徴があります。収縮速度が遅いため爆発的な力を出すことはできませんが、疲労に強いです。また、酸素をエネルギーとして使うミトコンドリアが多く含まれているため、有酸素運動を含むすべての運動で活性化されます。エネルギー源としては体脂肪を使用します。筋力は筋線維の太さと比例しますが、遅筋線維は力が弱い分、太くないことも特徴です。

速筋繊維は白筋とも言われ、力が強く持久力はないという特徴があります。収縮速度が速いため、瞬間的に大きな力を出すことができますが、すぐに疲れてしまうため長くは持ちません。グリコーゲンをエネルギー源として使用し、短距離走りやウエイトリフティングなど瞬間的に力を発揮する運動をするときに活性化されます。力が強いため、筋線維も太いです。

女性の場合、遅筋線維の割合が速筋繊維より高い傾向があります。そのため、男性のように瞬間的に強い力を出すことは難しいです。しかし、高齢者男女を対象に6ヶ月間筋力運動の効果を検証した研究によると、女性が男性より全身の筋力トレーニングで筋肉量をより多く増加させることができると報告されています3)。そして、女性が男性と同じく運動をしても、男性のようにマッチョにはならないことも、筋線維がより細い遅筋線維が多い点が理由となります。

その4. 男女はホルモンの濃度が違う。


エストロゲンとテストステロンというホルモンについて聞いたことがありますか? エストロゲンは女性のイメージがあり、テストステロンは男性のイメージがあるという方が多いでしょう。この2つのホルモンは男女が違う身体特徴を持つように働くため、性ホルモンと呼ばれます。思春期前までは、男女の除脂肪量は約80%で、性別による除脂肪量の差はありませんが、思春期からホルモン濃度に差が生じ始めます。そして、成人になると、女性はエストロゲンの増加によって除脂肪量が70-75%に減少しますが、男性の除脂肪量はテストステロンの影響で90%まで増加します。その結果、男性は筋肉量が多くなり、女性は脂肪組織量及び必須脂肪量が増加することになります。

男性ホルモンと呼ばれるテストステロンですが、男性にだけあるホルモンではありません。男性より量は少ないものの、テストステロンは女性にも分泌されており、筋トレを行うことでテストステロンの分泌量を高めることも可能です。また、テストステロンは筋肉を発達させるホルモンであるため、男性の筋肥大反応の効果がすぐに現れますが、ホルモンの影響による最終的な筋肉増加量の男女差は少ないという研究結果もあります4)。つまり、女性はテストステロンの分泌量が少ないですが、このホルモンが筋肉増加量に及ぼす影響は小さいため、女性が男性より筋肉量を増やすことが難しいわけではありません。前で説明した通り、男性と女性の運動量が同じであれば、筋肉量も同様に増加します。

他に、女性に影響を及ぼすホルモンの変化を招くものとして、ピル(経口避妊薬)の服用と閉経も挙げられます。ピルにはエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンが入っており、飲むと血中のホルモン濃度を増加させます。特に、プロゲステロンの濃度が高くなりやすいですが、プロゲステロンは排卵後に高くなります。ピルによって血中のプロゲステロン濃度が高い状態になると、体は「すでに排卵している」と錯覚してしまい、実際の排卵が起こらなくなります。一方、女性のテストステロンは排卵前にピークに達しますが、ホルモン濃度が排卵後の状態を維持していると、テストステロンの分泌が抑えられます。そのため、テストステロンの濃度も影響を受けて減少し、筋肉量が増加しづらくなります。特定の経口避妊薬を服用している女性が、服用していない女性より筋肉量が増加しづらいという研究発表もあります5)。閉経もホルモンに影響を及ぼします。閉経が近づくにつれ、卵巣のエストロゲン生産量は減少します。動物実験の結果によると、エストロゲン濃度の減少が食欲増加による過食の原因となり、体脂肪の分布を変化させる可能性があると言われています。更年期・閉経期女性が男性と同じ内臓脂肪型肥満になりやすい理由もエストロゲン濃度の変化が原因と言われています。

このように女性は、体成分の変化に影響する要因としてホルモン分泌の変化など様々な要因があり、ピル服用中の女性や閉経・更年期の女性はより多くの努力が必要となります。


運動効果における男女の共通点と違い

体成分の変化において、男性と女性は同じところもあれば、違うところもあります。ホルモン濃度や筋線維の分布による差はありますが、これは女性が男性より筋肉が付きにくいことを意味している訳ではありません。女性も男性と同じだけ運動をすると、同じ分の筋肉量を増やすことができます。女性の筋肉量が男性と同じだけ増えてもマッチョのような筋肉質に見えない理由は、筋線維分布やホルモン濃度の差によるもので、女性が筋肉質を強調したい場合はボディビルダーのような特別な管理がプラスで必要になります。

適切な筋トレは体成分変化に良い影響を及ぼします。従って、筋トレと有酸素運動の両方を適切に実施することで、より効果的且つ楽しく目標の体成分に到達することができるでしょう。
※具体的な方法などはInBodyトピックの「体型改善-ダイエットの始め方-」も参考にしてください。

参考文献
1. Response to resistance training in young women and men, F. T. O’Hagan et al., Int J Sports Med. 1995 Jul;16(5):314-21.
2. Gender differences in skeletal muscle substrate metabolism – molecular mechanisms and insulin sensitivity, Anne-Marie Lundsgaard and Bente Kiens, Front. Endocrinol., 13 November 2014.
3. Changes in electromyographic activity, muscle fibre and force production characteristics during heavy resistance/power strength training in middle-aged and older men and women, Keijo Häkkinen et al., Acta Physiologica Scandinavica 171(1):51-62 · January 2001.
4. Do Sex or Race Differences Influence Strength Training Effects on Muscle or Fat? Cory walts et al., Medicine & Science in Sports & Exercise. 40(4):669-676, APR 2008.
5. Oral Contraceptive Use Impairs Muscle Gains in Young Women. Chang Woock Lee et al., The FASEB Journal Vol.23, No. 1 supplement, April 2009.

, , ,

体脂肪減量に関する5つの迷信

体成分の改善は筋肉量の増加と体脂肪量の減少という、2つの違う成分に焦点を合わせて行われます。そして、この2つの中でも体脂肪量を減らすことは、特に大変で難しいというイメージを持っている方が多いでしょう。理論上、体脂肪量を減らすためにやるべきことは簡単です。摂取エネルギー量を消費エネルギー量より少なめにするか、消費エネルギー量を増やす、またはこの2つを並行するだけです。体にエネルギーが余ることなく、不足した状態にするだけで良いのです。エネルギーが足りなくなると、体は体脂肪として蓄えてきたエネルギーを使い始めるので、自然に体脂肪量は減少していきます。

こう聞くと簡単ですが、一度でもダイエットに挑戦した方なら、これがどれだけ大変なことか分かるでしょう。ダイエットを検討している方は少しでも楽に体脂肪量を減らせる方法を探しますが、これが間違った知識が広まってしまう最も大きい理由であり、この間違った知識を基にした様々な製品や記事が出ることで更に広まってしまう悪循環を招いています。

今から一度は聞いたことがある「体脂肪減量に関する迷信」を5つご紹介します。この知識がどう間違っているかの科学的根拠を理解することで、時間・費用・努力を無駄にせず、健康的に体脂肪量を減らせる道が見えてくるでしょう。


迷信その1. 体脂肪量を減らすためには運動だけを頑張れば良い


ダイエットをしようと思ったとき、その第一歩としてジムに登録する人が多いです。もちろん、食事だけ極端に減らして運動を全くしないダイエットは健康的な方法とは言えないので、運動をして体脂肪量を減らそうとすることは、健康的に痩せられる良い方法であることは間違いありません。しかし、運動「だけ」を頑張ればいい訳ではありません。運動と一緒に食事も管理しないと、せっかく運動をしても体脂肪量を効果的に減らすことができません。

より理解を深めるためには、体脂肪が使われるタイミングについて学ぶことが必要です。私たちは食事から様々な栄養素を体に取り入れますが、摂取した栄養素の中でエネルギー源として使われているのがグリコーゲン(ブドウ糖)です。グリコーゲンは肝臓や筋肉にも貯蓄されますが、グリコーゲンを貯蓄できる量は肝臓で6%ほど、筋肉(骨格筋)では0.4~0.6%にすぎません。体はエネルギーの摂取量が必要量を下回る時の備えとして、余った分のグリコーゲンを貯蓄しておこうとしますが、グリコーゲンのままで貯蓄可能な量は非常に少ないため、形を変えて蓄えておきます。この「形を変えた貯蓄分」が体脂肪で、いわばエネルギーの預金みたいなものです。そして、すぐ使えるお金(筋肉や肝臓に溜めておいたグリコーゲン)より必要なお金(エネルギー量)が多くなると、体は不足分を貯蓄分である体脂肪という名の預金から補い始めます。銀行口座からお金をおろすと残高が減少する様に、体脂肪として貯蓄していた分からエネルギーを引っ張ってきて使うと、体脂肪量が減ることになるのです。これがよく言う「体脂肪が燃焼する」ということであり、こうなるためにはエネルギーが不足した状態を作ること、「カロリー赤字」が必要となります。

例えば、Aさんの1日消費エネルギー量が2,100kcalとしましょう。Aさんが1日2,100kcalを摂取したとすると、「消費エネルギー量=摂取エネルギー量」の状態なので、体脂肪は燃焼も貯蓄もされず、体重は変わりません。そして、Aさんが運動して300kcalを消費し、摂取エネルギー量は変わらず2,100kcalだったとすると、消費エネルギー量は本来の2,100kcalに運動で消費した300kcalを上乗せした2,400kcalとなるため「消費エネルギー量>摂取エネルギー量」になって、300kcal分は体脂肪を分解して使うことになります。しかし、Aさんが運動を始めたことと一緒に食事量も増やすと、エネルギーが不足した状態にはならないため、体脂肪の分解も起こらなくなります。従って、体脂肪量を減らすためには運動量だけ増やすのではなく、摂取エネルギー量を増やさないように調整することも必要です。先ずは、今の自分に必要なエネルギー量がどのくらいなのかを正確に把握する必要があるでしょう。InBodyは基礎代謝量を基にした一日摂取エネルギー量の目安を提供します。また、ウォーキングやジョギングなどの運動による消費エネルギー量も表示することができるので、一日の総消費エネルギー量を計算することにも役立ちます。因みに、体脂肪量1kgを減らすために必要なエネルギー量については様々な意見がありますが、最大でも7,700kcalが必要とされます。一気にこれだけのエネルギーを消費するのは至難の業だと感じるかもしれませんが、1日に約260kcalのカロリー赤字を作ると、1ヶ月で1kgの体脂肪量を減らすことができます。せっかく運動を始めたのであれば、運動の効果が無駄にならないように、食事の管理も行いましょう。


迷信その2. 夜に食べるとそのまま体脂肪になる


一見、「夜に食べるとそのまま体脂肪になる」という説は間違っていないように思われるかもしれません。夜に食べ物を食べてすぐ寝ると、動いてエネルギーを消費するということがないので、そのまま体脂肪として蓄積されそうな気もします。この説については様々な見解や意見がありますが、どれも共通として指摘しているのは、寝る直前の食事は食道や胃腸などに負担をかけ、逆流性食道炎や睡眠障害などのリスクを高めるという点です。そして、睡眠中に体を休めていたとしても全くエネルギーを消費しないという意味ではないことも覚えておいてください。

基礎代謝量(REE)という言葉を耳にしたことはありませんか? 基礎代謝量は安静時代謝量と同じ概念で、安静時代謝量という言葉からも連想されるように、何もせずに休んでいる状態でも呼吸や心臓の鼓動など生命維持に必要な最小限のエネルギーを指します。このエネルギーを消費する代謝活動は寝ているからといって止まる訳ではありません。つまり、寝る前にものを食べても、その摂取エネルギー量を含む1日の総摂取エネルギー量が基礎代謝量内に収まるのであれば、体脂肪として変わることはありません。重要なのは摂取のタイミングではなく、摂取したエネルギー量ということです。基礎代謝量を調べる方法として、体重や性別・年齢などの個人の身体条件を用いて計算式で算出する方法がありますが、InBodyでは除脂肪量(筋肉量と骨ミネラル量の合計)を基に基礎代謝量を算出しています。基礎代謝量のうち内臓筋・心臓筋・骨格筋が約60%を占めており1)、除脂肪量はこれらの筋肉すべてが含まれているため、より正確な指標としてご活用いただけます。ただ、夜に食べ物を食べるときは次のようなことに十分気を付けましょう。

▶テレビを見ながらお菓子を食べるなど、「ながら食べ」は控える
食べることに集中せず、他のことをやりながら食べると、摂取量をうまく調整できず、摂取エネルギーが急激に増える原因になります。

▶胃腸に負担がかかるものは控える
寝る前に胃腸に負担がかかるものを食べると、睡眠中にも体がちゃんと休めず、ホルモンの分泌が乱れたり、睡眠の質を落としたりする原因となります。睡眠によって分泌量が変わるホルモンの中には食欲や満腹感に関わるホルモンもあり、睡眠をしっかり取らなければ満腹感を感じにくくなり、エネルギー摂取量を増やす原因にもなります。


迷信その3. 「デトックス」や「ジュースクレンズ」で体脂肪量を早く減らせる


「デトックスダイエット」や「ジュースクレンズ」という言葉を聞いたことがありませんか? 特に若い女性の間で流行っているこの方法は、2日や3日の短期間、固形物を摂取せずジュースだけを飲むことで体にたまっている毒素を排出するという方法です。毒素は疲労や無気力、体脂肪量の増加にも影響するため、これを取り除くことで代謝量を上げ、短時間で体脂肪を減らせると言われています。しかし、このデトックスやジュースクレンズに関して科学的にその効果を明らかにしたものや、研究者によって正式に審査を受けた文献は全く存在せず、逆に医療・科学的観点からみると健康を害する恐れがあるという報告の方が、実は多いのです。ただ、いろんな体験談を見てみると、この方法は短期間で体重が大きく減り、効果があるように見えますが何故でしょうか。デトックスやジュースクレンズを行っている間、体内ではどのような変化が起きているのでしょうか。

デトックス中、体には必要な栄養分がほとんど供給されなくなります。特に、エネルギー源であるグリコーゲンを作る炭水化物は全く入らないため、体は一時的にグリコーゲン枯渇状態に陥ります。また、グリコーゲンはエネルギー源であると同時に水分を貯める機能もあり、1g当たり約3.5gの水分を貯めこみます。つまり、デトックスやジュースクレンズによって毒素が排出されるのではなく、グリコーゲンが枯渇して、グリコーゲンが貯めていた水分が減少しているに過ぎません。更に、体はエネルギー源があまりにも足りない状態(飢餓状態)になると、すぐに活用できるタンパク質(筋肉)を分解し、エネルギー源として使います。そのため、筋肉量も減少することになります。つまり、体重の減少は体脂肪によるものではなく、グリコーゲンが貯めていた水分が抜けていることに過ぎず、グリコーゲンが入るとまた元に戻ってしまいます。更に、筋肉量が減少してしまうので、基礎代謝量が減少することで消費エネルギー量も減少し、逆に今までより体脂肪量が増えやすくなってしまいます。


迷信その4. 低脂質食事をすることで体脂肪量を減らせる


脂質を摂取すると太るという話を聞いたことがある方は多いでしょう。ダイエットをしている方であれば、牛乳を買いに行っても普通の牛乳ではなく低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を手に取ったり、油を極力取らないためにサラダをそのまま食べたり、オイルをなるべく使わないようにするなど、脂質の摂取を減らすことで体脂肪量を減らそうとするかもしれません。しかし、脂質(脂肪)摂取量を少なくすることが体脂肪量を減らして肥満のリスクを下げることにも繋がるのでしょうか。実は、エネルギー量不足の状態を引き起こせるのであれば、脂質ではなく他の食品群を減らしても体脂肪量は減ります。脂質は炭水化物やタンパク質より体脂肪量が増えやすい栄養素という訳ではありません。

では、なぜ低脂肪食品が体脂肪量の減少や健康にいいという認識が広まったのでしょうか? その理由は三大栄養素とされる炭水化物やタンパク質と比べて、脂質の方が1g当たりのエネルギー量が高いからです。炭水化物やタンパク質は1g当たり4kcalですが、脂質は1g当たり9kcalとエネルギー密度が高い栄養素です。そのため、取りすぎると摂取エネルギー量が高くなりやすいですが、摂取量を極端に減らしたからといって、体脂肪量が減少するという訳でもありません。また、脂質はエネルギー源としても使用されますが、ホルモンや細胞膜・核膜を構成するなどの役割も持っています。更に、ビタミンの一部は脂溶性であるため、脂質と一緒に取らないとうまく吸収されず、ビタミン欠乏のリスクが高まります(ビタミンA・D・E・Kなどが該当します)。このように、脂質はエネルギー源として使われるだけでなく様々な役割も担っているため、摂取量を極端に減らしてしまうと健康を損ねることや、摂取すべき栄養素を摂取できなくなる恐れがあります。だからといってフライドポテトのような揚げ物をたくさん食べても健康に問題がないというものではありません。

重要なのはむやみに脂質摂取量を減らすより、「良い脂質」を適量取ることです。トランス脂肪酸や飽和脂肪酸といわれる脂質は「悪い脂質」で、体脂肪量を増やす原因となりますが、不飽和脂肪酸はコレステロールのコントロールに役立つHDLコレステロールの量を増やす働きをし、健康を維持・改善させます。厚生労働省は1日のエネルギー摂取量のうち、20~30%に該当する量の脂質を摂取するよう目標量を定めています2)。良い脂質を含んだ食品としてはアボカド、クルミやピスタチオなどのナッツ類、サーモン、豆腐、卵、牛肉や豚肉の赤身部分などがあります。そして、意外だと思うかもしれませんが、ダークチョコレートには食物繊維はもちろん、ビタミンA・B・E・カルシウム・カリウム・マグネシウムも含まれているので、適量のダークチョコレートは良い脂質を摂取しつつ、甘いものを取らないことで溜まってしまうストレスやイライラの解消にも役立ちます。


迷信その5. 特定部位を鍛えることで、その部位だけ体脂肪量を減らせる


ダイエットのために運動方法を探した方であれば、お腹の脂肪を落としたい場合にする運動や腕の脂肪を燃やす運動など、その部位の体脂肪だけを減らせるという運動方法を見たことがあるでしょう。これに対して、殆どの文献は「運動で特定部位の体脂肪量を減らすことは不可能」と結論付けています。筋トレはその部位の筋肉量を増やすことはできますが、体脂肪量を減らすことはできません。腹筋のトレーニングを頑張ると、腹筋を鍛えることはできますが、体脂肪率がそのままでは腹筋が割れることはないでしょう。しかし、これは筋トレが体脂肪量を減らすことと全く関係がないということではありません。ただ、「ある部位だけ」の体脂肪量を減らすことはできないということです。筋肉量が増えると基礎代謝量が増加し、消費エネルギーにも影響を及ぼします。つまり、筋肉量が増えると消費エネルギー量が増加するため、エネルギー不足になりやすくなり、体脂肪を減らしやすくします。

このように、筋肉量の増加により消費エネルギー量が増加し、且つ摂取エネルギー量に変化がなければ、徐々に体脂肪量は減少することになります。しかし、これは長期にわたって間接的に起こる現象であり、特定部位だけで起こることではありません。ある部位が先に痩せるということはあるかもしれませんが、これは遺伝などの個人差によるもので、全身の体脂肪量が減少する過程の一部に過ぎません。

体脂肪減量に王道はありません。


時間を無駄にしないために

過度な体脂肪量は見た目だけではなく、健康にも良い影響は及ぼしません。多くの人は体脂肪量を減らしたいと計画しますが、焦りのあまり楽に早く痩せられるという間違った知識を信じ込んでしまいやすいです。しかし、どれだけ努力しても、その方法が正しくなければ時間と努力が水の泡になるだけでしょう。

体脂肪量を減らす方法は、摂取エネルギー量の管理と適切な運動という基本に忠実な方法で、数多くのトレーナーや栄養士、研究者によって勧められている方法です。もちろん、楽な方法ではありませんが、これ以上に効果的な方法もありません。体成分の変化はあなたの正しい努力をそのまま数値として見せるはずです。基本に忠実に沿った日々を積み重ねることで、きっと体は変わります。

参考文献
1. 生活習慣病予防のための健康情報サイト 加齢とエネルギー代謝|e-ヘルスネット 厚生労働省
2. 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 厚生労働省

,

疲労と回復のメカニズム

仕事が忙しいとき、朝起きるのが大変と感じたり、家に帰っても何もできないほど疲れたりしたことがありますか? 忙しかったから疲れるのは仕方ないと、この「疲れている状態」を当然のように受け入れている方が多いでしょう。しかし、「疲労」は健康管理に悪影響を及ぼす危険因子の一つであり、頑張って運動を続けても疲労への知識や理解がなければ、せっかくの努力を台無しにする恐れもあります。これから、「疲労」とはどういうものであり、どうすれば疲労とうまく付き合えるのかを、詳しくお話しします。


疲労がもたらす症状と原因

疲労とは日常生活や運動などの身体活動後に倦怠感やエネルギーが不足している状態を示します。疲労は大きく精神的疲労・神経的疲労・肉体的疲労の3つに分けることができます。

▶精神的疲労: 人間関係などによる精神的ストレスが原因の、心の疲れを示します。無気力・無関心・神経過敏・不安感などの症状が特徴です。
▶神経的疲労: デスクワークなどの長時間集中によって視神経や脳が緊張した状態が続くことで現れる疲労です。脳に疲労が蓄積されるため中枢性疲労とも呼ばれ、この状態が続くと認知機能や脳機能の低下を招くことになります。
▶肉体的疲労: 運動などの身体活動によるもので、激しい運動などの身体活動を続けたあとの筋肉痛・倦怠感・だるさなどの症状が代表的です。筋肉疲労以外に眼精疲労も含まれるため、末梢疲労とも呼ばれます。

このように疲労の種類は様々であり、その原因も多々あります。睡眠不足は代表的な原因ですが、他にも過度な飲酒・激しい身体活動の継続・運動不足・薬の副作用・悪い食生活・ストレスが多い環境なども疲労の原因となります。ただし、重要なことはこの疲労が一時的なものなのか、慢性的なものなのかです。一時的な疲労はある意味自然な現象ですが、これが解消できず蓄積し続けることが問題で、疲労感が6ヶ月以上続くと慢性疲労と言われる状態になります。慢性疲労は記憶力や反応速度の低下を引き起こすため、運動機能だけではなく日常生活にも悪影響を及ぼします。そして日常生活が忙しければ忙しいほど、これらの原因が蓄積されやすくなり、結果的には慢性疲労の悪循環を及ぼしてしまいます。特に運動をすると疲労感を感じるのは当たり前ですが、だからと言って疲労を管理せず放置すると運動をしても筋肉量や筋力が増えず、逆に悪くなる恐れがあります。これから、疲労がどのように運動効果に影響するのかを説明します。


疲労と休息と超回復

運動をすると体は糖質を分解し、エネルギーとして使用します。この過程で分解の副産物として生成されるのが乳酸です。運動時間が長くなったり、高負荷の運動を行ったりすると、筋肉は破壊され疲労状態になる上で乳酸の濃度も高くなり、パフォーマンスも低下します。しかし、運動後に十分な休息と回復の時間を持つことで破壊された筋肉は修復されます。そして、リバウンド現象が起こり、低下したパフォーマンスが回復するだけでなく更に筋肉量や筋力の増加に繋がります。この運動後の休息の間に起こる修復によるリバウンドを「超回復」と言います。次のグラフは運動をした時、超回復がどのように起こるのか(Figure 1)、そして適切な休息を取らず運動を続けるとどうなるのかを示したものです(Figure 2)。

 

超回復は運動後24時間から48時間ほど(運動の負荷が大きい場合は48時間~72時間)の休息を取る必要があり、逆に運動後に十分な休息を取らないと超回復は起こらず、疲労はそのまま残るため、運動の効率や運動機能を低下させる結果となります。次のグラフは超回復を待たず、運動を続けた時の筋肉量変化を示したものです。

運動によって破壊された筋肉が回復する時間を十分に取らず、次の運動を行ってしまうと、筋肉が更に破壊されてしまいます。これが続くことによって、筋肉量を増やすために行う運動が逆に筋肉量を減らす結果をもたらしてしまいます。頑張ってトレーニングを行っているのに、疲労ばかりが蓄積されてInBodyの測定結果は改善されていないなんてことはありませんか? 運動の効果をより高めるためには定期的な運動習慣も重要ですが、しっかり休んで疲労と筋肉を回復させることも重要です。また、運動によって消費したエネルギーの補充と、筋肉を作るために必要なタンパク質の摂取など、バランスのとれた栄養摂取も欠かせない要素です。では運動による疲労だけでなく、日常生活の疲労をうまく管理するためにはどのような方法があるのでしょうか?


疲労を減らす方法

運動だけではなく、日常生活でも疲労の原因は多くあり、疲労を全く感じないようにすることはできません。しかし、疲労をうまく減らす方法はあります。その代表的な方法をいくつかご紹介します。

1. 適度な運動


定期的で適度な運動は健康増進だけではなく、疲労の改善にも役立ちます。軽めの有酸素運動やストレッチは血行を良くし、細胞に必要な酸素や栄養供給を促進することで疲労回復を促す効果があります。運動による筋肉痛が残っている状態でも軽めのストレッチやマッサージを行ったり、お風呂上りで体が暖かくなっているうちにゆっくり筋肉を伸ばしたりすることも回復に効果的です。また、無理のない強度の有酸素運動を続けることで脳内の血流が増加し、酸素が多く脳に運ばれることで脳機能が向上して、安定感を感じさせるホルモンであるセロトニンが増えるため、ストレスも軽減します。脳機能及び脳健康に関する研究結果では、規則的な運動習慣は疲労による記憶力・思考力の低下を防止すると報告されています。

2. 十分な睡眠


十分な睡眠をとることは疲労回復に最も効果的な方法です。寝ている間、体は休息をとり、日中で溜まった疲労を回復し、損傷部分を修復します。そのため、睡眠不足になると脳細胞が回復できなくなり、認知機能や判断力・記憶力の低下の原因になります。また、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンは気持ちを落ち着かせるセロトニンとも密接な関係があるため、十分な睡眠をとることは心理的安定をもたらし、ストレス解消にもつながります。睡眠中には成長ホルモンも分泌されますが、成長ホルモンは成長期に子どもの発育に働くだけではなく、大人に対しては細胞の再生を促進し、自己治癒力を促します。その他にも睡眠中に様々なホルモンの働きにより日中、体に溜まった老廃物が排除されるなど、十分睡眠をとることは疲労回復だけではなく心身の健康に非常に重要なものです。

必要な睡眠時間に関しては7時間~8時間と言われますが、これには個人差もあります。また、時間も重要ですが睡眠の質も重要で、睡眠時間が足りていても深く眠ることができないとホルモンが良く分泌されず、回復効果も薄くなってしまいます。就寝3時間前までは食事を済ませることで胃腸への負担を減らしましょう。また、運動は就寝2時間前までに終わらせ、ぬるめのお湯(38度~40度)で入浴することも睡眠に効果的です。就寝2~3時間前にはスマホやタブレットを控えたり、ブルーライトを軽減させる処置を行ったりすることで、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌活動を良くすることもできます。他にも自分に合う枕を使ったり、就寝前はアルコールの摂取を控えたりするなど、睡眠の質を良くする様々な方法があります。

睡眠は大きくレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、レム睡眠は「浅い睡眠」とも言われます。ノンレム睡眠は「深い睡眠」と言われ、脳はノンレム睡眠の時に休息をとります。この2つは一定周期で繰り返しますが、ノンレム睡眠の時間が短かったり、レム睡眠状態でないときに目が覚めたりすると脳が十分休めなかったり、目が覚めてもすっきりせず満足感が得づらくなりやすいです。InBody BANDの睡眠測定機能は寝ている間の身動きをとらえて分析することで、深い睡眠と浅い睡眠時間を確認することができるため、今の睡眠状態が質の良い睡眠状態なのかを確認するための指標にもなります。

3. バランスのとれた食事


ファーストフード・アルコール・栄養が偏った食事などの不適切な食習慣は疲労回復を妨げる要因となります。特に、体に必要な栄養素をしっかり取ることで運動効果の増進はもちろん糖尿病や心血管疾患などの生活習慣病予防にも繋がります。運動3~4時間前にエネルギーを摂取すると、筋肉内のエネルギー貯蔵量を維持できるため、筋肉の分解を抑え運動の効率が上がります。また、運動が終わって30~45分後の間で食事をすると運動中に消耗された栄養分を補充でき、筋肉の修復に役立ちます。運動後にはタンパク質・炭水化物(糖質)・アミノ酸・ミネラルをなるべく早く摂取できることが望ましいです。タンパク質は筋肉の修復や合成に必要な栄養素です。糖質は運動中に消耗したグリコーゲンを補充し、タンパク質との同時摂取で筋肉合成を促進します。アミノ酸は筋肉のエネルギー代謝を促し、疲労を回復する役割と筋肉合成を促進し、筋肉分解を抑えます。運動中に汗を流すことでナトリウムやカリウム等の電解質も失われるため、ミネラルを補充することも重要です。

また、日常生活では朝食・昼食をしっかり食べること、不足しがちの野菜や果物を摂取すること、ビタミンなどの栄養素をサプリメントで補充すること、間食のお菓子の代わりにアーモンドやくるみなどのナッツ類を摂取することなど心がけましょう。栄養分が偏らないように食材を選ぶことで疲労防止・回復促進はもちろん、抗加齢の効果も期待できます。


疲労とうまく付き合うために

ここまで疲労の原因と疲労が運動に及ぼす影響、そして疲労をうまく減らす方法についてお話ししました。忙しい現代を生きる人々において、疲労の原因となるものは身の回りのいたるところに存在します。疲労はマイナス面ばかりではなく、適度な疲労が体をより強くしたり、睡眠を促したりなどの役割もあります。適度な運動、十分な睡眠と適切な休息、栄養バランスの整った食事から疲労回復を促し、疲労とうまく付き合っていくことでより健康的ないきいきとした生活を送ってください。疲れを感じている方は、簡単な解消方法から始めてみてはいかがでしょうか?

,

サルコペニアの理解に必要なこと

現代人はこれまで以上に長生きできるようになりました。日本は世界的にも長寿国として知られていますが、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間の ”健康寿命” はどうでしょうか? 日本の平均寿命は2016年には男性80.98歳、女性87.14歳で、1947年の男性50.06歳、女性53.96歳から増加し続けていますが、健康寿命の男性72.14歳、女性74.79歳と大きな差があります1)50歳以降で筋肉量は1~2%減少します。60~70歳では平均5~13%、80歳を超えると11~50%も筋肉量が減少してしまいます2)。筋肉量の減少は機能的能力の低下や、健康リスクに繋がります。日常生活が困難になれば、生活の質が低下し健康寿命にも影響します。

加齢に伴って、体成分は変化していきます。加齢が原因で筋肉量と筋力が低下することをサルコペニアといいます。身体活動量の低下や食事の変化が筋肉量減少をもたらし、筋肉量減少が手術への耐性低下や腰痛・関節痛、寝たきりなどの原因にもなっています。心血管疾患や生活習慣病などの慢性疾患を予防する方法として、栄養管理や運動療法が注目されますが、体成分に着目したアプローチは実施されていないということがよくあります。サルコペニアに関しても同様で、体成分の観点から健康管理できるということを忘れないでください。

次にサルコペニアのリスクと対策について、詳しく説明していきます。


サルコペニアとは?


サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx」と喪失を意味する「penia」を組み合わせた言葉です。サルコペニアは加齢に起因する筋肉量の低下と筋力・有酸素能力の低下を指すので、病気の結果としてではなく、自然な老化過程であるといえます。悪液質はがんなどの疾患が原因で栄養失調になるので、筋肉量や体脂肪量の喪失を制御することはできませんが、サルコペニアは栄養療法と運動療法から改善が可能です。

加齢に伴って筋肉量が減少するだけでなく、体脂肪量が燃焼されずに体内に残ってしまうケースが増えています。このような状態をサルコペニア肥満といいます。InBodyのデーターベースによれば70代高齢者の筋肉量は20代と比べると、男性は平均11.2kg、女性は4.6kg少なくなっています。又、70代高齢者の体脂肪量を男性と女性で比べると、女性が平均4.5kg重いことが示されています。女性の方が筋肉量が少なく体脂肪量が多いため、サルコペニア肥満へのリスクが高くなります。サルコペニア肥満については、後ほど詳しく説明していきます。


サルコペニアの原因は?


サルコペニアの原因は、加齢・タンパク質摂取不足・ホルモンの機能低下・身体活動の低下などが挙げられます。また無理なダイエットや食事制限が筋肉喪失を招いたり、サルコぺニアの進行を速めたりする可能性もあります。

加齢
京都大学の研究で、サルコペニア有病率が男性65~69歳の2.6%から85~89歳の75.0%まで増加すること、女性65~69歳の11.5%から85~89歳の54.3%まで増加することが報告されました3)。加齢による筋肉量減少は活動の変化に関連しています。多くの研究者達が、老化による筋肉喪失を食い止める方法を模索しています。

ホルモンの機能低下
テストステロンはサルコペニアと深い関連があります。テストステロンは性ホルモンの一種で、筋肉量を増加させるのに役立ちます。テストステロンが加齢と共に低下し始めると、筋タンパク質の合成を減少させるだけでなく、筋肉修復に不可欠な細胞再生を減少させてしまいます。筋タンパク質の分解が合成を上回ることで、サルコペニアのリスクが高まります。

タンパク質摂取量の減少
老化がサルコペニアに関連する大きな要因は、高齢者が通常の食生活を維持することが難しく、エネルギーやタンパク質の摂取不足、吸収不良などで栄養状態が悪くなるためです。運動と適切なタンパク質摂取を組み合わせることが、サルコペニア予防に効果的です。特に必須アミノ酸は体内で合成できないので、食品から摂取する必要があります。“必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品=良質なタンパク質を含む食品” です。

身体活動の低下
高齢者は若者よりも座りがちな傾向があります。高齢になると運動の機会が減ることや閉じこもりによって身体活動量が低下します。定期的なレジスタンス運動は、筋肉量維持と筋肉強度の向上に役立ちます。

炎症性サイトカインの増加
偏った食事と運動不足によって内臓脂肪が貯蔵されますが、この脂肪組織がTNF-α・IL-6などの炎症性サイトカインを生成し、筋委縮やサルコペニアを促進させると言われています4)。内臓脂肪量の増加(腹部肥満)は筋肉量の減少で悪化するため、サルコペニアを進行させる要因となります。

疾患に関連した栄養失調
疾患に罹患している人、長期間病院で治療を受けている人は、栄養失調のリスクが高まります。うっ血性心不全(CHF)、末梢動脈疾患(PAD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの心血管疾患および呼吸器系疾患は、中年期に発症する傾向があります。高齢な有病者は若年者よりも筋肉成分の消耗が著しく、機能低下を起こすスピードが速くなります。又、インスリン分泌の低下・インスリン抵抗性の発症も筋肉喪失を加速させるので、糖尿病もサルコペニアに関連しています。

体成分の悪化を加齢だけのせいにしてはいけません。適度な身体活動とバランスの取れた食事を心掛け、日々健康的に過ごしていますか? 体調管理を怠れば、筋肉量の減少を食い止めることはできません。健康的な食事で、余分な脂肪蓄積を防ぐことができます。


サルコペニア肥満


“サルコペニア肥満” という言葉を聞いたことがない方は、”隠れ肥満” ならどうでしょうか? 隠れ肥満は運動不足の現代人に多く見られる体型で、体は細くて見た目は普通ですが、体脂肪が多く筋肉が少ない状態です。体重が適正でも体成分は肥満の人と似たような構成なので、過体重の肥満体型と同様に心血管疾患や糖尿病などの疾患を発症するリスクがあります。サルコペニアは不健康な食生活と運動不足に関連するため、特に栄養管理と運動を怠るとサルコペニア肥満になる可能性が高くなります。これは高齢者に限ったことではありません。体重だけでなく、体成分に焦点を当てることが重要です。

サルコペニアやサルコペニア肥満であるかを、どのようにして調べることができるでしょうか? 体成分分析を使用して経時変化を観察してみましょう。体脂肪量が増加している中、筋肉量が減少しているとすれば、サルコペニア若しくはサルコペニア肥満の可能性があります。体成分を知ることで健康へのリスクを理解し、サルコペニアを予防してください。


サルコペニアの対策


現在、サルコペニアの明確な治療法はありませんが、筋肉喪失を和らげ、予防する方法はいくつかあります。日焼けをする前に日焼け止めクリームを塗ることと同じように、サルコペニアを発症する前に予防措置を講じることが重要です。

1) エクササイズ
レジスタンス運動は高齢の人でも効果が報告されています。レジスタンス運動は神経筋機能の向上と筋肥大を誘発します。これらの変化は加齢による日常生活動作(ADL)能力の低下を改善させる期待もあります。筋肉量を十分に保持し、早期筋肉分解を回避するためにも若いうちからレジスタンス運動を実施することが重要です。

2) タンパク質摂取量を増やす
タンパク質は筋肉組織の構成や修復に不可欠です。厚生労働省が報告した日本人の食事摂取基準の概要によると、18歳以上の男性は1日に60g、女性は50gのタンパク質摂取を推奨量と定めています5)。すでにサルコペニアの兆候がある人は、タンパク質摂取が更に必要です。加齢によって、タンパク質を体内に取り込む能力が低下するため、高齢者もより多くのタンパク質を摂取する必要があります。

3) アミノ酸摂取量を増やす
タンパク質を形成しているアミノ酸のうち、体内で合成することができないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。必須アミノ酸は食事やサプリメントから摂取する必要があり、中でもBCAA(分岐鎖アミノ酸)であるロイシンは筋肉の合成に非常に重要な役割を果たしています。運動やタンパク質摂取をして筋肉を合成しようとしても、筋肉の部品となる必須アミノ酸がなければ効率が悪くなります。

4) ホルモン補充療法
テストステロンや成長ホルモンの投与によって筋肉量が増加する6)と報告されていますが、現在のところホルモン補充療法はサルコペニアの治療として推奨されていません。将来的には治療法の1つとして選択肢になる可能性があります。

5) ビタミンDが足りていることを確認
ビタミンDの不足は体成分・食事・ホルモン状態に関わらず、筋肉減少と関連します。ビタミンDは骨の健康だけでなく、加齢による筋肉喪失を回避するためにも重要です。


終わりに

加齢には、嬉しい成長やそれほど好ましくない老化など、多くの変化があります。体成分を活用することで年齢と共に変動する筋肉量を管理することができます。定期的に体成分測定をすることで、実際に起こっている体内変化をより正確に把握できます。健康寿命を延ばして、楽しく年を重ねていきましょう。

 

参考文献
1. 平成28年「簡易生命表の概要」「国民生活基礎調査」 厚生労働省
2. An overview of sarcopenia:facts and numbers on prevalence and clinical impact, Stephan von Haehling et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle(2010)1(2):129-133
3. Prevalence of Sarcopenia in Community-Dwelling Japanese Older Adults, M Yamada et al., JAMDA xxx(2013)1-5
4. A study on relationship between elderly sarcopenia and inflammatory factors IL-6 and TNF-α, Ai-Lin Bian et al., Eur J Med Res(2017)22-25
5. 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 厚生労働省
6. Hormone Replacement Therapy and Physical Function in Healthy Older Men. Time to Talk Hormones?, Manthos G. Giannoulis et al., Endocr Rev(2012)33(3):314-377

体型改善 ー ダイエットの始め方 ー

 

アウトドア・ライフを楽しみたい! 新しいことに挑戦したい! 緩んだ体を引き締めたい! 心のどこかで人生をより豊かにしたいと悩んではいませんか? しかし、どうやって人生を改善することができるのでしょうか。健康で効果的な方法を探さなければなりません。“自分を変えよう” と決心したことは、スタートラインに立っているだけに過ぎません。

大半の人は、「体重を10kg減らしたい」という単純な減量目標から始めます。それは一つの目標ではありますが、残念ながら少し曖昧です。-10kgの部分は体重の何を指すのでしょうか。余分に溜まった体脂肪だとしましょう。では、どのようにしてその目標を達成したと言えるでしょうか? 体重が10kg減少しても10kgがすべて体脂肪であると、どのように確認できるでしょうか。体重計では証明することはできません。

体成分に着目してみましょう。体成分分析は筋肉量や体脂肪量など各成分の重さをそれぞれ明確に提示します。体型改善を計画する上で、”減量する” ”筋肉量を増やす” など目標を一つにするのではなく、筋肉量と体脂肪量の2つの視点から目標を立てましょう。筋肉量と体脂肪量の理想的な重さを意識することで、過度なダイエットによる痩せすぎや栄養失調を防ぎ、健康的に体重を管理できるようになります。体重を気にすることを止めて、筋肉と体脂肪のバランスを大事にしてください。

具体的な目標に向かって無理なく長期的に取り組むことで、確かな成功を収めることができるでしょう。では、以下の5つの手順に従って体成分を改善していきましょう。体成分を理解することが、体型により合う服装選びの手助けになるなんてことになるかもしれません。
※筋肉量や体脂肪量のような言葉が少しはっきりしない方は、InBodyトピックの「体成分とは何でしょうか? 」を参考にしてください。


1. 体脂肪率を測定してください


これが最も重要な最初のステップです。体重ではなく、体脂肪率から健康状態やトレーニングの進捗状況を判断するように心がけましょう。トレーニングによって体重が増加したとしても、筋肉量が増えて体脂肪量が減っていれば体型改善は成功と言えます。筋肉量の増加をダイエットの失敗と誤診しないためにも、体脂肪率や筋肉量のような体成分の視点から変化を判断することが重要です。InBodyのように生体電気インピーダンス分析法(BIA)を用いた体成分測定は、迅速・簡単に体脂肪率や体型改善に必要な情報を提供します。


2. 目標を立てましょう


先ほど筋肉量と体脂肪量の2つの視点から目標を立てることをアドバイスしましたが、同時に遂行するよう心掛けることが重要です。筋肉量を増やすことと体脂肪量を減らすことは密接に関連していますが、筋肉量が増える・体脂肪量が減るという体の反応はそれぞれ異なるので、筋肉量を増やすためのプログラムと体脂肪量を減らすためのプログラムをそれぞれ組み合わせることが必要です。次にそれぞれの目標の決め方を説明します。

▶筋肉量を増やす
体重が過体重でなくても、筋肉量が少なく、体脂肪量が多い場合は隠れ肥満に当てはまるかもしれません。この様な体型は標準体重・肥満型と分類され、体脂肪量を減らす前に筋肉量を増やすことから始めることをお勧めします。

筋肉量を増やすには、レジスタンス運動が効果的です。筋肉が付くことによって、体脂肪量への相乗効果も期待できます。筋肉量が増えることで、体を維持するために必要なカロリー(基礎代謝量)も増えていきます。余分な脂肪を燃やすことでエネルギーを補うことができるので、運動を行うことで消費するカロリーに加え、生命維持に必要なカロリーも増加していけば、体脂肪量がますます消費されることになります。筋肉量を十分に保つことは、免疫システムを強化できるという点からもとても重要です。

▶体脂肪量を減らす
体脂肪量の改善が必要な人は、筋肉量は増やして体脂肪量を減らさなければならない人と、筋肉量は維持したまま体脂肪量だけを減らす必要がある人の2パターンに分かれます。後者は過体重・虚弱型と分類され、先ず体脂肪量を減らすことから取り組む必要があります。

体脂肪量を減らすには、有酸素運動が効果的です。ウォーキング・ランニング・サイクリング・水泳等を20分以上継続して行います。運動を毎日していなかった人からすれば、軽度な運動といえども継続させることは簡単なことではありません。慣れるまでは1日15分からはじめて、徐々に時間を延ばしていくようにしましょう。


3. 健康的な計画を選択しましょう


▶筋肉量を増やす
筋肉量とは骨格筋・内臓・器官・血液等の筋肉成分の総量です。内臓筋や心臓筋等の不随意筋はトレーニングによって増やすことはできませんが、随意的な運動が可能な骨格筋は開発することができます。筋肉量を増やすには、レジスタンス運動をプログラムに積極的に取り入れることが必要です。

レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかけたトレーニングのことで、ダンベル・専用マシン・自重など多くの種類があります。有酸素運動に比べ、筋肉・関節・骨に大きな負荷がかかるため、運動前後には必ずウォーミングアップとストレッチを行いましょう。

▶体脂肪に焦点を当てる
体脂肪を減らすには、より多くのカロリーを燃焼させることです。つまり「カロリーの赤字」を維持すればいいわけです。そのためには食事制限と運動を組み合わせることが重要です。今日、ダイエットをサポートする低カロリーや無脂肪を謳った健康食品も多く販売されています。しかし脂肪も細胞の健康や代謝、エネルギーを保存する重要な体成分の1つなので、過度に減らすことも良くありません。健康的に目標を達成するには、食事制限だけに頼るのではなく、摂取と消費をコントロールして全体的にカロリーを減少させることが効果的です。

レジスタンス運動と有酸素運動を行ってカロリーを消費しましょう。体脂肪を減らす運動プログラムに、筋肉トレーニングやウエイトトレーニング等のレジスタンス運動は必要ないと考えている人もいるかもしれません。確かに、有酸素運動はエネルギー源として体脂肪を燃焼させるのでカロリー赤字に効果的であることは間違いありません。しかし、レジスタンス運動で体全体をバランスよく鍛えて筋肉量を増やすことで、より有酸素運動の効果が高まり痩せやすくなるのです。

1日の摂取カロリーは、運動の種類・時間・強度によって調整されるべきです。ダイエットを行う時は、食事制限と運動を切り離して考えるのではなく、組み合わせて実施しましょう。


4. 目標に近づいているか進捗状況を確認しましょう


2~4週間毎にInBody測定を行って変化を確認してください。ダイエットを始めて、最初の測定は少なくとも2週間は我慢してください。トレーニングの効果が体成分に反映されるまで時間がかかるので、トレーニング開始数日後に測定しても変化が見られない可能性があるためです。トレーニングによって筋力がついたからと言って、筋肉量が必ず増えるわけではなく、摂取量を増やし体重も増加させることが必要です。


BMIが増えることは、単純に悪いことではありません。BMIは身長に対する体重の比率に過ぎず、重要なのは筋肉量の増加と体脂肪量の減少です。

1ヶ月後に測定して体成分の改善が見られない場合は、ダイエット計画を見直して調整する必要があります。体脂肪量の減量が足りない人はカロリー摂取量を減らしたり、筋肉量が足りない人はタンパク質摂取量を増やしてレジスタント運動の負荷を変更したりする必要があります。ダイエット計画を再設定した後、更に2~4週間後にInBody測定をします。


5. 目標達成する


目標達成まで努力し続けることは容易ではなかったでしょう。
筋肉量を増やそうとトレーニングを行えば、結果に伴って体重が増加します。これは筋肉が脂肪よりも密度が高く重いためです。トレーニング効果を体成分から評価しているので、体重を気にする必要はありません。体重増加が筋肉量増加に起因するのであれば、見た目は引き締まってスリムに見えています。

体成分の変化を追う過程で、目標が変わることもあります。体脂肪の減量に成功して、筋肉量を更に付けたいと感じたり、逆に筋肉の増量には満足して体脂肪を減らすことに集中したりするようになるかもしれません。InBody測定をして自分自身を客観的に評価することで、目標を更新し変化を楽しむことができます。体成分の改善は健康へと繋がっています。より健康的な体を手に入れて、より充実した日々を過ごしてください。

,

体成分測定が必要な3つの理由

日本では男性の約3割、女性の約2割が肥満と言われています。(平成27年「国民健康・栄養調査報告」 厚生労働省調べ) しかし、自身の肥満について認識している人はどれだけいるのでしょうか? 肥満は脳卒中・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・がんなどの病気を発症するリスクがあります。では、どのようにして自分が肥満であるかどうかを調べることができるでしょうか? 体成分に着目してみましょう。今回は体成分を測定すべき3つの理由をお話しします。


1. 隠れ肥満ではないか確認してください

「痩せている=健康」と考えている人は多いですが、必ずしもそうとは限りません。隠れ肥満は運動不足の現代人に多く見られる体型で、体は細くて見た目は普通ですが、体脂肪が多く筋肉が少ない状態です。サルコペニア肥満・痩せ肥満体型・スキニーファットも似たような言葉で、これらに該当する方は筋肉量と体脂肪量の改善が必要です。隠れ肥満は、過体重の肥満体型と同様に、心血管疾患や糖尿病などの病気になるリスクが高まります。しかし、体成分を知って自分の健康状態が理解できれば、病気を予防するための行動を取ることができます。

ここでもし、ご自身の筋肉量が足りているのか? 体脂肪率が高くないか? 気になる方は、InBodyで確かめてみてください。百聞は一見に如かずです。InBodyの結果用紙では、体重における筋肉・体脂肪の均衡度に加え、BMI(体格指数)と体脂肪率を組み合わせた実際に近い体型評価も表示します。


2. モチベーションを維持し、目標を達成するために体成分を使ってください

体成分を測定し、次の2点を確認してください。
・筋肉量が維持、または増加していること
・体脂肪率が減少していること

体成分を分析することによって、体重を調節するための具体的な目標を成分毎に設定することができます。また、体成分で体型を定量化することで、普段は感じることができない僅かな変化も捉えることができます。変化を追っていくことで、運動や治療の進捗を確認したり、効果を測定したりすることができます。自分の体が健康的に変化していると実感できれば、モチベーションアップにもなります。体成分の変化を追うには2~4週間毎に測定を行うことを推奨します。


3. BMIだけで体型を正しく評価することはできません

自分のBMIを知っている人はたくさんいます。しかし、BMIの本当の意味は何でしょうか? BMIは身長と体重の比率に過ぎず、その比率で低体重・普通体重・肥満であるかを決定します。即ち、筋肉と体脂肪を考慮しないため、体の健康状態や体型を正確に評価すことができません。例えば、ボディービルダーは身長に対して体重が重いので、BMIに基づくと肥満に分類されてしまいます。一方、体成分の測定結果では過体重・強靭型と分類され、体重が重いのは筋肉量がとても多いためであり、肥満が原因でないことが分かります。つまり、今の体重が適正体重で、過体重を意識して減量する必要はありません。

近くのスポーツ施設やインボディが参加している展示会などのイベントに参加し、体成分を測定してみましょう。InBody470の場合、約15秒で筋肉量と体脂肪量を部位別に測定し、標準的な数値に対する過不足を提示します。測定結果の体重だけを見て、標準体重だからと安心していませんか? 体型は隠れ肥満ではありませんか? 見た目だけが痩せていても健康とは限りません。筋肉はバランス良く発達していますか? 体幹の体脂肪量は高くないですか? 下半身の筋肉量が弱まって左右差が大きいと、体の重心が傾いて転倒しやすくなる上に、腰痛や関節痛などにも繋がります。内臓周りの体脂肪は生活習慣病に関連することが知られています。

是非InBody測定で体内の均衡と潜在する健康へのリスクを確認しましょう。それから、健康への意識と生活の質を高め、充実した日々を送ってください。