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食物依存症と過食 Part2: 改善法

前回のトピックで確認した通り、食物依存症は過食の原因になり、過食は様々な健康問題を引き起こします。過食の原因が人によって異なるのと同じく、改善法も様々です。これから紹介する方法は数ある改善法の中の一部で、これらを参考に自分に合う改善法を探してみてください。


▶好きなもの(加工食品)を定期的に少量摂取する


チョコレートやケーキなどの甘いものを適量摂取することは、ストレスを減少させたり、幸せな気持ちになるなど、良い効果もあります。無理して食べないように我慢することはストレスの原因となるため、むしろ定期的に少量を摂取することでコントロールしやすくなります。


▶味覚を鍛える


加工食品の強い甘味に慣れてしまい果物や野菜の甘味に鈍くなっていても、味覚を鍛えることで自然の甘さを敏感に感じるように戻すことが出来ます。味覚を鍛えると言っても料理人を目指す人がやるように、細かく味を見分ける訓練をする訳ではありません。砂糖に接する頻度を少なくして、果物や野菜など自然の甘さと接するようにするだけです。味蕾細胞(みらいさいぼう)は約10日周期で新しくなるといわれています。つまり、新しい味蕾細胞を自然な甘さに慣れさせ続けることで味覚を鍛えることができるという訳です。


▶カロリーではなく胃腸を満たす食べ方をする

加工食品は砂糖や精製炭水化物が主原料であり、量が少なくてもカロリーが高いのが特徴です。そのため、加工食品を中心に満腹感を得るまで食べるとカロリー摂取量は急激に跳ね上がり、体脂肪量の増加に繋がります。しかし、満腹感を得ることも食事の楽しみの一つでしょう。満腹感を得ながら食事を楽しむ方法として、胃腸を満たしつつカロリー摂取量を抑えられるのが「十分な量の良い食べ物を食べる」という方法です。栄養分や食物繊維が豊富な野菜や果物を先に食べることで、高カロリー食品の過食を抑えられます。


▶きっかけになる食べ物を把握する

過食の原因には、過度なダイエットや食事制限があります。食べることを我慢している時に突然我慢できなくなり食べ続けてしまうのです。その「我慢できなくするもの」が何かを把握することも、過食を防止するためには重要です。食べ始めたらコントロールができなくなる食べ物が分かっていれば、その食べ物や似たような種類のものに注意を払うことができます。


▶食べたあとの感情を記録する


この方法は食べるときは実感できない報酬感を客観的に評価する方法です。例えば、チョコレートバーを一つ食べた後、少し時間が経ってからの感覚を簡単に記録します。「甘さが残ってない」のような短い一言で十分です。食事後やおやつを食べた後にしばらく記録し続けると、食べた瞬間の報酬感はあまり長続きしなかったり、思ったより小さく感じたりするなど、客観的に判断できるようになります。


▶自分で料理をする


外食をすると過食しやすくなる傾向が示されています。外食で過食しやすくなる理由として、「選択の幅が広くなる」ことと「食べ物の量を自分で調節できない」こと、そして「準備に自分の努力が必要ない」ことの3つが挙げられます。どれほど美味しいものでも、ずっと食べ続けると飽きて食べなくなります。しかし、外食する時は注文できる料理のバリエーションが広いため、いろんなものを飽きずに食べることができ、結果的には多く食べるようになります。そして、1人前の量を自分で調節できないため、全部食べると食べすぎることもあり、準備に手間がかからない分、たくさんの料理を食べようとする気持ちが強くなります。

自分で料理をすることは品数に限りがあるので選択の幅を狭め、決まった量を食べるようになり、過食を防ぎます。自分一人で一気に数十種類の料理を作って食べることはできないでしょう。そして、作りすぎて捨てることになるのが勿体ないと思うようになるので、作る段階であまり多く作らず、食べられる量だけ作ることで、過食をする機会が減っていきます。


▶食べる以外のストレス解消法を探す


ストレスは過食に繋がりやすいので、なるべくストレスを感じない生活を送れることが理想ですが、そういう生活を送ることはかなり難しいです。そのため、食べるという方法以外のストレス解消法を探し、常にコルチゾールの濃度が高いままにしておかないことが重要です。ストレス解消法は千差万別ですが、軽い運動や散歩、瞑想、好きなことをやるなど、自分に合うストレス解消法を見つけて適切に行うことで、ストレスによる過食を防止できます。


健康のために、時には我慢することも必要です


健康な体を作るためには筋肉と体脂肪の均衡を保つことが重要であるように、健康な食生活になるためには様々な栄養分をバランスよく摂ることが大事です。甘いものを食べることは悪くありませんが、摂りすぎてバランスが崩れてしまっては健康を損ないます。過食は、体重の増加・ホルモン分泌の変動・胃腸収容量の変化・代謝機能の悪化など、身体面へ影響しますが、「食べ過ぎた」という罪悪感と不快感から食事を楽しむことができなくなるなど、精神面にも影響を及ぼす恐れがあります。

急に何かを食べたくなった時、その理由が何かを考えてみましょう。空腹感には身体的な空腹感と感情的・精神的空腹感があり、食事が必要な空腹感は身体的空腹感です。ストレスや疲れが原因で感じる空腹感は加工食品の過食に繋がりやすく、エネルギーの過剰摂取に繋がります。何か食べたいあなた、何が食べたいですか? 甘いデザートやお菓子、味が濃いものなど、依存症を引き起こしやすい加工食品を思い浮かべたのであれば食べる前になぜ食べたいかを考えることで、過食衝動をコントロールできるかもしれません。
適量の甘いものを食べつつ、食べ物に常に気を付けて、時にはすぐ食べたい気持ちを我慢することで健康な食生活を楽しむことができるでしょう。

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食物依存症と過食 Part1: 体への影響

目の前にはチョコレートがひと箱あります。今日は仕事がいつもより忙しく、ストレスや疲れも溜まっているので、「心の癒しのためにちょっとだけ」と思って手を出したものの、いつの間にか全部食べてしまいました。そして甘いものを食べたせいか、塩辛いものが無性に食べたくなり、ついポテトチップスも一袋食べきってしまいました。食べきった後には、「しまった」と罪悪感に近い気持ちが押し寄せてきて憂鬱になります。ダイエットを頑張っている人で、こういう経験をした方は意外と多いかもしれません。こういうことになると殆どの人は自制心が足りないと思い、自分を責めることもありますが、ある理由による過食は自分の意志だけで克服するのはなかなか難しいものです。

食物依存症という言葉を耳にしたことがありますか? よく摂食障害である過食症と勘違いされやすい症状ですが、過食症が強い痩せ願望などの精神的な部分が原因であることに対し、食物依存症は食べ物を食べる行為自体に依存するという違いがあります。薬物依存症やアルコール依存症のように、食べ物に対して化学的に中毒症状を起こしている状態と考えた方がわかりやすいかもしれません。これから食物依存症と過食の関係を確認し、体成分にどのような影響を及ぼすかを説明します。


食物依存症とは?


食物依存症は大きく3つの特徴を持ちます。
▶ 食べる行為をコントロールできない
▶ 身体・精神的な悪影響にもかかわらず食べ続ける
▶ やめたいと思いながらも食べることをやめられない

食物依存症が問題になり始めたのはここ10年ほどで、まだ明確に定義されていない部分が多いですが、放置すると摂食障害に繋がる可能性が高い状態なのは確かです。全ての食べ物が食物依存症を引き起こすわけではありません。最近の研究では、果物や野菜など加工されていない食品は依存症になる危険性が低く、ピザやチョコレート、ポテトチップスの順で依存症の危険性が高かったと報告されています1)。 依存症になりやすい食品の共通点としては高脂質・高塩分・高糖質が挙げられます。甘く、塩辛く、脂っこい食べ物は依存症を引き起こしやすいですが、中でも特に強く働くのは甘味です。塩辛さや脂っぽさは甘味をうまく隠したり、甘味を引き立てたりして、さらに食が進むようにします。強い甘味が食物依存症を引き起こしやすい理由は、大きく3つ挙げられます。

ドーパミンとオピオイドの作用

ドーパミンは脳に働く化学物質で、報酬系という部分を活性化させて行動を強化します。人は褒めてもらうと、その行為を繰り返すようになります。これはドーパミンが働き、褒めてもらうための行為を強化したためです。依存症も「甘いものを食べる」「アルコールや薬物を使用する」などの快感を得る行為がドーパミンによって強化された状態です。オピオイドも脳に働く化学物質で、エンドルフィンもオピオイドの一種です。鎮痛作用もあり快感を与えるもので、手術や末期がん患者に使用する鎮痛剤にも使用されますが、麻薬の成分としても使われます。糖と脂質が結合されたものを食べるとき、オピオイドを分泌する脳神経は素早く活性化されます。オピオイドの作用で脳が「快感」を感じると、ドーパミンが増加し、報酬系が活性化されることで快感を得られたもの(甘いもの)を食べる行為を強化させます。甘味はこの一連の脳内作用に強く働きます。つまり、甘いものを食べるとオピオイド回路が活性化されて幸福感を感じ、ドーパミンが報酬系を活性化させることで甘いものを食べる行為を強化させます。

インスリンとレプチンの作用

食事をすると血糖値が上昇します。血糖値が上がるとインスリンが分泌され、糖を細胞に届けてエネルギーとして使うことで血糖値を下げます。そのため、血糖値が急に上がると、一時的にインスリン分泌量も増加します。一方、レプチンは満腹感を感じるようにします。一般的に食事を開始して20分ほど経つと分泌されますが、レプチンの信号が脳に届くと「エネルギーが十分なのでもう食べなくていい」という状態となります。これが満腹感で、満腹感をよく感じない人はレプチンの信号を脳がうまくキャッチできていない状態とも言えます。インスリンが送る「血糖値が高いのでインスリンをもっと作って欲しい」という信号と、レプチンが送る「もう食べなくていい」という信号は脳の同じ部分(視床下部)に届きますが、問題はインスリンとレプチンが視床下部に送る信号が同じで、片方が届くともう片方の信号にはうまく反応できないという状態に陥りやすいということです。甘いものを食べると血糖値が急激に上昇するため、インスリンの分泌が先に起こり、そのあとレプチンが分泌されますが、すでにインスリンの信号を受けている脳はレプチンの信号をうまく受け取れなくなります。そのため、満腹感を感じるまで時間がかかり、レプチンの信号を脳が受け取れるまで食べるようになります。この状態が長期化すると脳がレプチンの信号にうまく反応できなくなるレプチン抵抗性が発生し、ますます過食が進んでしまいます。

「甘味=食べていい状態」という生体的認識

必要なエネルギーを効果的に得るため、人はある味を本能的に好きになるように進化してきました。例えば、高カロリーの脂っこい食べ物は飢餓状態になっても生き残れるためのエネルギーを蓄積できる物であるため、積極的に摂取するようになっています。脂がのっている魚や肉をおいしく感じるのもこのような本能が働くからといえるでしょう。甘味も同じです。昔、果物は決まった時期にしか食べられず、果物から得られる栄養分を摂取する時期も限られていました。そのため、熟した果実の甘さを「食べころ」の信号として体が覚え、積極的に手を出すようになっているといいます。また、腐った食べ物は甘い味がしないため、「甘味=安全な食べ物」として認識し、好むようになったともいわれます。

甘いものを食べること自体は、精神的に安定をもたらす効果もあり、悪いだけではありません。しかし、食物依存症になるのは問題です。依存症になりやすい甘さは砂糖など高度に精製された甘さですが、砂糖は果物などとは違ってカロリー以外の栄養分が殆どありません。つまり、同じ甘いものでも果物はビタミンや食物繊維なども一緒に摂取できますが、砂糖ではカロリーしか得られません。そのため、少量でもカロリーの過剰摂取に繋がりやすいです。そして、依存症になるとコントロールが効かず、過食に繋がりやすくなります。


過食の原因と問題


過食の原因は前項で述べた食物依存症もありますが、他の理由もあります。

慢性的または過度なストレス
ストレスを感じるとこれを和らげるためにコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは筋肉を分解して血糖値を上げるのと同時に、レプチンの分泌量を低下させるため食欲を高めます。また、ストレスが溜まるとセロトニンの分泌量が少なくなります。すると、体はセロトニン分泌量を高めるために必要なアミノ酸を脳に届かせようとし、アミノ酸を運搬するインスリンの分泌を促進させます。インスリンは血糖値が高くなると分泌されるため、結果的に甘いものを食べたくなります。

極端な食事制限
極端な食事制限は体にひどいストレスを与えるため、コルチゾールの働きによって食べ続けるようになります。また、食事制限によって慢性的な栄養不足状態に陥ってしまうため、食べ始めると足りなかった栄養分やエネルギーを補充しつつ、エネルギーが足りなくなったときの予備として食べ続けるようになることもあります。

 


食事は生きるために必要なことですが、過食は体に様々な問題を起こします。過食が招く問題としては次のようなことが挙げられます。

代謝症候群・肥満
過食の特徴は「早食い」と「コントロール障害」です。早く食べるとレプチンが働く前にすでに食べ過ぎてしまい、コントロールができないため満腹感を感じても食べ続けます。食べすぎることで膨満感(お腹の張り)を感じると体を動かすことも容易ではなくなり、運動を避けるようになるので、過剰なエネルギーを消費できず体脂肪として蓄積され肥満に繋がります。肥満によって心血管機能も低下しやすくなり、動脈硬化や血液循環の悪化など、心血管疾患の原因になります。

インスリン・レプチン・ドーパミンの変化
過食すると血糖も急に増加するとともに、血中インスリン濃度が高くなります。この状態が長期化するとインスリンがうまく働かなくなりますが、このような症状をインスリン抵抗性といいます。インスリン抵抗性は糖尿病の原因となり、細胞にエネルギーがうまく届かなくなるため代謝機能の障害を招きます。過食によって血中のレプチン濃度も高くなります。レプチンは脂肪細胞で分泌され、満腹感以外に体脂肪量を一定水準に維持させることにも関わります。つまり、体脂肪量が多すぎるとエネルギーが余り過ぎという信号を送り、エネルギー消費量を高めますが、体脂肪量が少なくなるとエネルギーを体脂肪として蓄積するようにします。血中インスリン濃度が高くなるとレプチン反応が鈍くなるため、脂肪細胞はレプチン分泌量を増加させて脳に信号が届くようにします。長期間レプチン濃度が高く維持されると、インスリンと同じくレプチン抵抗性が生じ、満腹感をよく感じられなくなります。過食でドーパミンが分泌されて報酬系が活性化されても、脳は徐々にその刺激に慣れてしまいます。そのため、最初に味わった満足感を得るためにはより多く食べないといけなくなります。また、ドーパミンの働きが収まった後は罪悪感などで落ち込んでしまうことも多いです。このように、定期的且つ長期間の過食習慣はホルモンの働きにも悪影響を及ぼします。

胃腸の収容量が増える
胃腸は伸縮性が良いため、過食が続くと飲食物収容量が増加します。これも満腹感を得ることが難しくなる原因になり、過剰なカロリー摂取に繋がります。

睡眠障害を起こしやすい
夜は過食しやすいですが、これは睡眠障害にも関連してきます。生活リズムの乱れや睡眠不足による疲れ・ストレスは、さらに高カロリーの物を食べるようになるなどの悪循環に繋がり、体脂肪量の増加と筋肉量の減少による疾患のリスクを高める恐れがあります。

ここまでは食物依存症と過食について確認しました。次のトピックではこれらをどのように改善できるのか、その方法について説明します。

 

参考文献
1. Which Foods May Be Addictive? The Roles of Processing, Fat Content, and Glycemic Load. Erica M. Schulte, Nicole M. Avena, Ashley N. Gearhardt. PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0117959 February 18, 2015

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カフェインが体に及ぼす影響

【質問】コーヒーや緑茶など、カフェイン含有飲料をどれほど飲んでいますか?
国際コーヒー機関(IOC)が2018年に発表した「世界の1人当たりコーヒー消費量」統計データによると、2017年に日本人1人当たりが1年間に消費したコーヒー消費量は3.64kgです1)。疲れてなかなか目が覚めない朝、コーヒー一杯でパッと目が覚めたり、夜遅くまで勉強や仕事をするときにコーヒーを飲んで眠気を飛ばしたりした経験はあるでしょう。カフェインの覚醒効果や食欲抑制効果についてはよく知られていますが、体成分についてはどうでしょうか? カフェイン摂取は体成分に対して一体、どのような影響を及ぼすのでしょうか?

実は、カフェインは体脂肪の燃焼を促進する効果を持つだけではなく、運動効果を高める効果もあるため、体重調節に役立ちます。もしダイエット中に水以外の飲み物で良いものがないか悩んでいるのであれば、コーヒーは良い選択肢になるかもしれません。これから、カフェインがどのように体脂肪量の減少に役立つか、そのメカニズムについて確認してみましょう。


カフェインはどうやって体脂肪を「燃焼」させるのか?


よく「体脂肪を燃焼させる」といいますが、もちろん脂肪細胞を火で直接燃やすという意味ではありません。「体脂肪を燃焼させる」ということは、体脂肪をエネルギー源として使うということを指しています。体脂肪という単語を聞くと、脂肪の塊のような脂肪組織をイメージしやすいですが、この形の体脂肪はエネルギー源として使用できません。脂肪細胞の中には遊離脂肪酸というものが含まれており、この遊離脂肪酸の形で血液中に存在するときのみエネルギー源として使用されます。そして、エネルギー源として使用されないときはブドウ糖と合成して中性脂肪となり、脂肪組織に蓄積されます。つまり、体脂肪量を減少させるためには脂肪組織の中に含まれている遊離脂肪酸を血液中に放出し、消費する必要があります。そして、カフェイン摂取は遊離脂肪酸の放出量を増加させる効果的な方法の一つです。

カフェインの摂取により、脂肪分解というプロセスが促進されます。具体的に言うと、カフェインを摂取するとリパーゼという消化酵素が活発になり、このリパーゼが体脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解し、エネルギー源として使用できる形に変えます。また、カフェインを摂取すると血中のアドレナリンとノルアドレナリンというエネルギー性ホルモンの濃度が高くなります。これらのホルモンは腎臓から分泌されるものですが、心拍数を増やしたり、血管の収縮・拡張を誘導したり、脂肪組織での脂肪分解作用を促進させたりする働きもあります。つまり、カフェインは体脂肪の分解作用を手伝う酵素やホルモン分泌を促進させ、体脂肪の「燃焼」を起こりやすくします。


カフェインと代謝機能の関係

遊離脂肪酸の形になった体脂肪をエネルギー源として使用することを代謝といいます。この代謝能力は食習慣や生活習慣、遺伝などの様々な要因によって高くなったり低くなったりします。そして、カフェインはこの代謝機能の改善にも役立ちます。

どうして運動後には体が温まるのでしょうか? 代謝活動によりエネルギーを消費したときのプロセスとして熱生産があります。代謝が発生する際には必ず熱エネルギーが発生するため、代謝と熱生産は1セットとして考えられますが、カフェインを摂取すると熱生産量が増加するという研究があります。この研究によると、カフェイン400mg摂取またはコーヒーを2~3杯飲むことで、熱生産が増加したと報告されています2)。最近では、カフェインが代謝に関わる特定遺伝子を活性化させることで体細胞の代謝率を高めることができるということが分かってきました3)。この通り、カフェイン摂取は代謝を高める効果があり、より多くエネルギーを消費できるようにします。


カフェインと代謝機能の関係


今までは細胞単位で行われるエネルギー消費において、カフェインがどのように働くかを確認しました。しかし、このようなプロセスが本当に体重減量という結果に繋がるのでしょうか? カフェインと体重減量に関する研究について、いくつか調べてみましょう。

カフェインの消費量が多い人と少ない人が混ざっている過体重の76名を対象にした研究では、低カロリーの食事を4週間続けた結果、女性において4週後の体重減少量とカフェイン消費量が相関するということが明らかになりました。つまり、カフェイン消費量が多い人がより減量したという結果になります4)。その他にも2016年に行われた観察調査では、カフェイン摂取量が多い人は減量後にも体重を維持できていたと報告しています5)。せっかく体重減量に成功しても、維持できずリバウンドしてしまっては再び減量することは難しくなります。減量した体重を維持することに苦労しているのであれば、適量のカフェインを摂取することが役に立つかもしれません。このように多くの研究で体重減量とカフェイン摂取量が関係していると示されていますが、これはカフェイン摂取だけで体重を減量できるというわけではなく、体重減量・維持においてカフェインが効果的という意味であることを忘れないでください。


カフェインと運動効果の関係


最も確実に体脂肪量を減らす方法が何かを聞かれると、誰でも運動と答えるでしょう。運動は体脂肪量を減少させるだけではなく、筋肉量を増加させるなど、体成分を改善させることで基礎代謝量を高め、太りにくい体質にすると科学的に証明された方法です。では、この運動にカフェイン摂取を加えると更なる効果が期待できるのでしょうか?

激しい有酸素運動にカフェイン摂取をプラスすると、エネルギー源として使用される遊離脂肪酸の量が増加し、血流を促進するアドレナリンの濃度が2倍以上に増えます。つまり、運動に必要なエネルギー源が活発に供給できる状態になるため、運動の効果を高めるだけではなく、エネルギーが良く消費されることで更に脂肪分解が強化されます。また、個人によってはカフェインの働きにより筋肉内のグリコーゲン消費が抑えられる効果も期待できます。運動によって筋肉に貯蓄されたグリコーゲンは消費されますが、この消費量を抑えることでより長く運動を続けることができるようになります。

カフェインと運動の組み合わせには他のメリットもあります。カフェインは少ない量(コーヒー1~2杯ほど)でも、気分を高揚させ、認知能力を高め、運動中及び運動後の集中力を高めます。前項でカフェインの摂取によりアドレナリンとノルアドレナリンの濃度が高まると述べましたが、アドレナリンは運動時にも分泌されます。アドレナリンによって血管が拡張され、心拍数が上がると、血流が速くなって酸素が筋肉や細胞により多く供給されるようになり、運動能力が高まります。そして、アドレナリンが脳に働くとエンドルフィンやドーパミンというホルモンの分泌も促進されます。これらのホルモンはモチベーションを高めたり、運動による疲れを軽減させたり、鎮痛効果もあるため、より長く運動を続けられるようになります。このようなホルモンの影響から、カフェイン摂取で次のような運動の強化が期待できます。

▶ 持久力強化: サイクリング選手を対象とした研究ではノンカフェインコーヒーを飲んだ選手群よりカフェイン含有コーヒーを飲んだ選手群の速度パフォーマンスが有意に高く示されました6)。摂取量とは関係なく、カフェインを摂取することで持久力の向上が期待できます7)
▶ 筋力強化: 筋トレをしている男性をカフェイン摂取群と非摂取群(プラセボ投与)に分け、筋力を測定した結果、カフェイン摂取群の筋肉収縮時最大筋力が有意に高くなりました8)。女性においても上半身筋力の有意な増加を確認した研究があります9)
▶ 高強度運動の持続時間延長: カフェイン摂取群と非摂取群(プラセボ投与)に分けて、それぞれ激しい有酸素運動を行い、筋肉内グリコーゲン量を比較した結果、カフェイン摂取群で筋肉内エネルギー(グリコーゲン)の状態が良好であったことから、筋肉内グリコーゲンの節約効果も期待できます10)


カフェインとテストステロンの関係


男性ホルモンと呼ばれるテストステロンは筋肉量を維持しつつ、体脂肪量を減らしたいときに注目すべきホルモンです。肥満男性を対象にした研究で、テストステロン補助剤を摂取した群は対照群に比べて筋肉量がより増加し、体脂肪量はより減少することが確認されています11)。このように、テストステロンの血中濃度が高まれば、運動効果を強化することができます。カフェインはテストステロン濃度を高める効果を持っているため、運動効果の強化に繋がります。。最近の研究によると、ハーフタイムでカフェイン含有のガムを噛んだラグビー選手とプラセボ群のテストステロン濃度を比較した結果、15分後のテストステロン濃度はカフェイン摂取群が70%も高い数値を示す結果となりました12)。テストステロンは筋肥大反応に影響を及ぼすホルモンでもあるため、カフェイン摂取後の筋トレでより効果を高めることもできるでしょう。


適切なカフェイン摂取量について


このように様々な効果を持っているカフェインですが、「薬も過ぎれば毒となる」といわれる通り、摂りすぎはかえって健康を損なうことになります。カフェインの過剰摂取はめまいや吐き気、頭痛、不眠症、神経障害、幻覚・幻聴などの身体的な副作用はもちろん、カフェインによってドーパミンの分泌量が増加し続けると、逆に脳がドーパミンに鈍くなるため、深刻な憂鬱状態を引き起こすなどの精神的な副作用もあります。従って、カフェインの摂取量は目的に合わせてコントロールすることが大事です。運動効果を高めたい場合は、少量のカフェインでも十分効果があるため、コーヒー一杯ほどの量でも十分でしょう。体脂肪の分解に関してはカフェイン摂取量が多くなると効果も比例して現れますが、過剰摂取による急性カフェイン中毒は死亡に至ることもあるほど危険な状態であることを忘れてはいけません2)

カフェイン中毒症状が現れるのは、成人の場合1,000mgを短時間で摂取した場合といわれています13)。ただ、カフェイン感受性が高い人であればこれより少ない量を摂取してもカフェイン中毒症状が現れることもあるので、異常を感じたら摂取量を減らすことが必要です。参考までに、代表的な飲料のカフェイン含有量は次の通りです。

飲料100mL当たりのカフェイン含有量の目安

食品名 100mL当たりのカフェイン濃度 備考
カフェインが多く添加された清涼飲料水 32~300mg 製品によってカフェイン濃度、内容量が異なる
インスタント珈琲(顆粒製品) 60mg インスタントコーヒー粉末2g、熱湯140mL
コーヒー(浸出液) 60mg 浸出法:コーヒー粉末10g、熱湯150mL
紅茶(浸出液) 30mg 浸出法:茶5g、熱湯360mL、1.5~4分
せん茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶10g、90℃ 430mL、1分
ほうじ茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分
ウーロン茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分
玄米茶(浸出液) 10mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分

「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」厚生労働省より算出14)

コーヒーや緑茶、紅茶に含まれているカフェインは、元々含まれている他の成分によって効果がある程度抑えられることもあるといわれていますが、エナジードリンクやカフェイン補助剤によるカフェイン摂取は一気に多量のカフェイン摂取に繋がりやすいため、注意が必要です。


適切なカフェインと上手く付き合いましょう

今まで説明しました通り、適量のカフェインは体脂肪減量に頑張るあなたの頼もしい味方になってくれるでしょう。また、コーヒーやお茶を飲みながらリラックスすることは、疲れやストレスを和らげ、厳しい減量にも頑張れるようモチベーションの維持にも役立つでしょう。カフェインの効果や副作用について理解し、良い効果だけを得られるようにうまく付き合うことが大切です。毎日頑張っているあなたに、心と体の健康をもたらすコーヒー一杯をご馳走してはいかがでしょうか?

 

参考文献
1) 「世界の国別一人当たり消費量」社団法人全日本コーヒー協会ホームページ統計資料
2) Caffeine: a double-blind, placebo-controlled study of its thermogenic, metabolic, and cardiovascular effects in healthy volunteers, Astrup A. et al., Am J Clin Nutr. 1990 May;51(5):759-67
3) Metabolic effects of physiological levels of caffeine in myotubes. Jamie K. Schnuck et al., Journal of Physiology and Biochemistry, February 2018, Volume 74, Issue 1, pp 35–45
4) Body weight loss and weight maintenance in relation to habitual caffeine intake and green tea supplementation, Westerterp-Plantenga MS et al., Obes Res. 2005 Jul;13(7):1195-204
5) Caffeine intake is related to successful weight loss maintenance, Icken D. et al., Eur J Clin Nutr. 2016 Apr;70(4):532-4
6) The Metabolic and Performance Effects of Caffeine Compared to Coffee during Endurance Exercise, Adrian B. Hodgson et al., PLoS One. 2013; 8(4): e59561
7) The effect of different dosages of caffeine on endurance performance time, Pasman WJ et al., Int J Sports Med. 1995 May;16(4):225-30
8) Effect of caffeine ingestion on maximal voluntary contraction strength in upper- and lower-body muscle groups, Timmins TD et al., J Strength Cond Res. 2014 Nov;28(11):3239-44
9) Caffeine enhances upper body strength in resistance-trained women, Erica Goldstein et al., J Int Soc Sports Nutr. 2010; 7: 18
10) Regulation of muscle glycogenolytic flux during intense aerobic exercise after caffeine ingestion, Chesley A. et al., Am J Physiol. 1998 Aug;275(2 Pt 2):R596-603
11) Effects of testosterone treatment on body fat and lean mass in obese men on a hypocaloric diet: a randomised controlled trial, Mark Ng Tang Fui et al., BMC Med. 2016; 14: 153
12) The Physiological and Performance Effects of Caffeine Gum Consumed During A Simulated Half-Time By Professional Academy Rugby Union Players, Russell M. et al., J Strength Cond Res. 2017 Nov 27
13) 「保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報、カフェイン含有飲料(コーヒー、紅茶、緑茶、ココア)」日本中毒情報センターホームページ
14) 「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」厚生労働省

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出産後に体型を戻す方法

出産後は殆どの女性が、喜び・悲しみ・感動・不安・幸福・緊張・驚き・恐怖など、様々な感情の起伏をジェットコースターの様に経験します。すべての感情が、喜びや幸せのようなプラスな感情であったとしても、感情の束は体に負担を掛けます。

母乳育児は、妊娠前の状態に戻るようにダイエットを促すものではありません。クローゼットに眠っているジーンズを最後に履いたのはいつでしょうか? 妊娠前の遠い記憶です。妊娠前はスタイルが良かったとしても、体重の増加や分娩の影響による腹部のたるみなど、身体的な変化は避けられません。しかし、体型は元に戻すことができます。大事なことは、自身の身体的変化を知り、何ができるのかを学ぶことです。


妊娠中及び出産後の体成分の変化


お腹の中で子どもを育み、出産に備えて身体を整える約10か月の妊娠期間は、体成分が変化する期間でもあります。妊娠期間に大きく変化する体成分は体脂肪量です。体脂肪量は出産日に近づくに連れ増加していきますが、この体脂肪量には自身の体脂肪量増加分に加え、赤ちゃんの体重・拡大した子宮と乳房・余分な血液・胎盤・羊水が含まれています。体内で電流の流れない部分は非伝導体として体脂肪量に測定されるため、電流が上手く通らない羊膜内も体脂肪量として換算されてしまいます。

では、羊膜内以外の本来の体脂肪量は何故増加してしまうのでしょうか? 母体は、赤ちゃんの発達と母乳育児の準備のために脂肪組織が必要となります。しかし、残念ながら出産に備えるためにどれだけの体脂肪量がどこの部分に必要なのかなどの、明確な研究結果は殆ど出されていないのが現状です。出産を経験した557人の健康な女性を対象に、妊娠前から出産後までの体脂肪量の変化をモニタリングした研究では、体脂肪が貯蓄される時期・部位・量は個人差があり、個々によって異なると結論付けています1)。妊婦の体脂肪量に関する研究を曖昧にしてしまう理由は、様々な要因によって母親の体成分(筋肉量・除脂肪量・体脂肪量など)の変化を明確に判断できないためです。いろんな要因の中の一つとして、母親とお腹の赤ちゃんの体成分を分離することができないことが挙げられます。

しかし、次の様な興味深い研究が発表されています。体脂肪量増加の程度に関する因子として、初産婦であるか経産婦であるかが関係するという研究です。この研究では初産婦は経産婦より妊娠中の体脂肪量増加が高いことを示し、出産半年後の時点でも初産婦の方が体脂肪の貯蓄が多かったことが報告されています2)

出産後は、体成分が大きく変化するタイミングです。出産直後は赤ちゃん・胎盤・羊水・余分な血液などの分で、体重が大きく減ることになります。そして約6週間で子宮の大きさが小さくなり、妊娠前の体重に近づいていきます。これらの重さは自然と減っていきますが、残念なことに妊娠中に蓄えられた体脂肪は自然と消えてはくれません。蓄えられた余分な体脂肪のうち、いくらかは母乳育児の中で減らすことができるかもしれませんが、それ以上に体脂肪量を減らすためにはどのような対策が必要でしょうか?


腹直筋離開


妊婦の体型に大きく影響する一つの要因が腹直筋離開です。腹直筋離開とは胸骨から恥骨まで走る腹直筋の中心部分の白線という腱が横に伸びて薄くなり、左右の腹筋が離れて開いた状態になることです。妊娠が進むにつれて、赤ちゃんのスペースのために子宮は成長し、腹部の筋肉は伸びていきます。腹直筋離開は妊娠女性の大半が経験しますが、分離の程度と位置は個々によって異なります。妊婦の腹直筋離開に関するある研究では、68%の妊婦がおへそより上部、32%がおへそより下部で分離が発生したと報告しています。

出産後、分離の程度は自然と和らぐこともありますが、それだけでは完全に元通りになることは殆どありません。出産後の目立ったお腹や出産後から数か月経っても妊娠している様に見える体型は、弱くなってたるんだ腹筋が原因となっています。


安全で効果的なダイエット計画

前項で妊娠後の体型変化の要因を、体成分の変化と腹直筋離開の2点から説明しました。ここでは出産後体型の回復・改善を促すために、妊娠中に気を付けるべき点や出産後の運動などについて詳しくお話しします。

母乳育児の影響と体成分
恐らく、自然と体重を減らすことに繋がる最後のチャンスが母乳育児です。母乳育児と体重減少は関連していることを示す研究が増えてきています。最も結果が顕著に現れていた疫学的研究はデンマークの研究で、母乳育児6か月の女性が合理的に除去できる体重は12kgと定義しています3)。これらの所見は、母乳育児と混合育児(母乳と人工ミルクの混合栄養)の母親の体脂肪量を比較しているアメリカの研究結果でも裏付けされています。この研究で、出産後12週間は混合育児よりも母乳育児の方が母親の体脂肪量減少を促進していたことが分かりました4)

では、授乳中の女性は母乳を作るためにいくらか体脂肪が必要であることを考慮して、どれだけの減量が「安全」と言えるのでしょうか? 出産後の体重が標準の場合は減量に励む必要はありませんが、過体重の女性に関しては授乳中でも1週間あたり約0.5kgの減量(出産後4~14週)は、新生児の成長と発達に悪影響を及ぼさないことが報告されているので、目安にしてください。

妊娠中の食事と体重管理

妊娠中は、赤ちゃんに与える栄養が必要と考えていつも以上に食べ過ぎていませんか? 食べつわりで、常に何か口にしないと落ち着かない方も少なくはないでしょう。高カロリーばかりの偏った食事や過度な体重増加は様々なリスクを高めます。太り過ぎは、妊娠高血圧・妊娠糖尿病・腰痛などの妊娠合併症の原因となります。これらが悪化すると、胎盤の機能低下・流産や早産の原因になる・胎児が巨大児になるなど、母子ともに危険な状態になってしまいます。また、産道にも体脂肪が付くことで難産の原因となったり、微弱陣痛でお産が長引いたりすることがあります。太り過ぎの妊婦は出産を終えるまでこれだけのリスクを抱えていますが、出産後も体重が戻りにくく妊娠線ができてしまうなどの問題があります。出産後体型の回復を早めるためにも、妊娠中に過度な体重増加を指摘された場合は次の点を心掛けましょう。
・規則正しい生活と食事を心掛ける
・早食いを避けて、ゆっくり食べる
・食生活を見直す(食べた物を書いてみると良い)
・間食や夜食を控える
・就寝前の2~3時間は飲食を控える
・油分を控え網焼きや蒸し物に代用するなど調理方法を工夫する

出産直前の体重増加は7~8kg程度が理想的です。理想的に体重増加した際の内訳は、赤ちゃんの体重約3kg、胎盤の重さ約0.5kg、羊水の重さ約0.5kg、乳房・子宮・血液・水分・体脂肪などお母さんの増加分が約3~4kgとなります。これ以上の体重増加はすべてお母さんの体脂肪です。体脂肪量は週に500g以上増えないよう気を付けましょう。

体型別の体重増加の目安

BMI ~18 18~24 24~28 28~
体型 痩せ気味の人 標準 肥満気味の人 肥満
体重増加の目安 12kg 8kg 5kg 0kg

妊娠中に必要な栄養素


妊娠中・授乳中に積極的に取り入れたい食品は「食物繊維・鉄分・カルシウム・葉酸を多く含む食品」です。加え、これらの吸収を助ける働きがあるビタミン類も一緒に取るようにしましょう。一方、妊娠中は高血圧や浮腫みが現れやすいので、塩分を控えめにした食事を心掛けましょう。

▶食物繊維
妊娠中はホルモンの影響などで腸の動きが鈍くなるため、便秘がちになります。便秘予防には食物繊維を積極的に取ることが効果的で、豆類・野菜・きのこ・海藻・果物などに多く含まれています。また、ヨーグルト・納豆・味噌・漬物などの発酵食品も、腸の働きを活発にするので取り入れて欲しい食品です。

▶鉄分
妊娠中はより多くの血液と鉄分が必要になるため、貧血になりやすくなっています。もともと貧血気味であった方だけでなく、食事が思うように取れていない方や痩せ気味の方も、妊娠前より多くの鉄分を摂取するよう、食品やサプリを選択しましょう。鉄分の摂取基準量は妊娠初期で8.5~9.0mg/日、妊娠中期と後期で21.0~21.5mg/日です。レバー・あさり・豆腐・小松菜・ほうれん草などの食品は鉄分を多く含んでいます。

▶カルシウム
カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素ですが、赤ちゃんの発育にとても必要な栄養素です。また、妊娠してからこむら返りに悩まされるようになった方も多いと思います。カルシウム不足と妊娠によるホルモンバランスの崩れが原因で、こむら返りが発生します。1日の摂取基準量650mgを目安に、乳製品・小魚・豆腐などカルシウムを多く含む食品を摂取しましょう。

▶葉酸
妊娠中は血液量が増えるので、普段より多くの葉酸が必要になります。葉酸が不足することで貧血・流産・早産・妊娠高血圧症候群などが起こりやすくなります。また、赤ちゃんの口蓋裂や低出生体重の原因となることもあります。葉酸は授乳中も必要な栄養素となりますので、1日の摂取基準量0.4mgを目安に積極的に取り入れましょう。レバー・納豆・ほうれん草・いちごなどの食品は葉酸を多く含んでいます。

▶ビタミン類
鉄分とカルシウムは吸収されにくいので、吸収を助ける働きがあるビタミンを多く含む食品を一緒に取ると良いでしょう。鉄分の吸収を助ける食品は、ビタミンBとビタミンCを多く含む食品で、卵白・干しシイタケ・魚・柑橘類・野菜などが挙げられます。カルシウムの吸収を助ける食品はビタミンDを多く含む食品で、卵黄・いわし・バター・きくらげなどが挙げられます。

妊娠中と出産後・授乳中の運動


妊娠中は様々な制限があり、運動をためらう方もいらっしゃるでしょう。しかし、妊娠中の適度な運動は過度な体重増加・腰痛・肩こり・こむら返り・便秘を予防するだけでなく、出産や育児に備えた体力づくりや気分転換にもなります。妊娠初期の運動は流産を招く恐れがあるという話もありますが、流産の殆どは染色体異常によるものなので適度な運動はまったく問題ありません。但し、子宮収縮抑制薬を服用している時・医師から安静するように言われた時・出血がある時・お腹が張っている時は運動を控えて安静にしてください。おすすめの運動は、腕をしっかり振りながらのウォーキング・マタニティヨガ・マタニティスイミング・マタニティビクスなどの負担をかけすぎない有酸素運動です。反対に、激しい運動・勝敗を決めるような競技・落下や外傷のリスクがあるスポーツ・お腹の赤ちゃんに十分な酸素が行き届かなくなるような登山や無酸素運動など、妊娠中に控えるべき運動もあります。

出産後すぐにも行える運動は、体への負担が少ない産褥体操や骨盤底筋群体操です。産褥体操は、妊娠・出産で伸び縮みしたお腹・子宮・腟壁・骨盤の筋肉の回復を促進します。また、新陳代謝を高め血行を良くすることで肩こり・浮腫み・腰痛が軽減し、母乳の分泌が良くなる効果もあります。出産後は骨盤周りの筋肉が緩み、尿漏れや痔が起こりやすくなっています。これらの予防には骨盤底筋群体操が効果的です。産褥体操や骨盤底筋群体操はベッドに横になったまま行える体操もあるので、出産後なるべく早い段階から始めてみましょう。

▶産褥体操 からだならし -出産後2日目から-
頭を起こす運動(5回×2)
① 仰向けに寝て、両足を伸ばす
② 片手をお腹に、もう一方の手を体側に置く
③ 息を止めずにお腹の上を見るように頭だけ起こす
④ ひと呼吸したら頭を下ろし、左右の手を替えて繰り返す


▶骨盤底筋群体操 -出産後3週間目から-
腰の上げ下げ運動(5~10回×3)
① 仰向けに寝て両膝を立て、お腹に力を入れ、腰をできるだけ高く持ち上げる
② 肩、背中、お尻の順に下ろし、力を抜く


授乳中の適度な有酸素運動は、母乳量・母乳の成分・乳児の成長に影響を与えることもなく、母親の循環器系機能を改善すると言われています。赤ちゃんが外出できるようになったら、一緒にお散歩がてらウォーキングを行うことも良いかもしれません。運動前は十分な水分補給も忘れないでください。


自分に優しく

出産に向けて約10か月かけ体重を増加、体成分を変化させましたが、元に戻すにはさらにもう10か月かかる場合もあります。母乳育児や赤ちゃんの世話にかかりっきりの人は、10か月よりさらに長い期間が必要かもしれません。出産後僅か週数間で体型を元に戻しているモデルや芸能人のことは忘れてください。お抱えのシェフやパーソナルトレーナーなど特別なチームを持っている女性の例は、あまり参考にすることができません。

先ず、出産後の自身の体型が現時点でどの位置であるのか把握する必要があります。体成分を測定して、具体的にどれだけ筋肉量と体脂肪量を調節すべきか調べてみましょう。これらの情報は、体型を戻すための目標設定に役立ちます。焦らず、時間をかけてください。「いつまでに、どれくらいの減量をする」と徐々に前向きな変化を楽しんでください。赤ちゃんと家族の健康も勿論大事ですが、自分の体も気にかけて労わってください。毎日の僅かな変化でも、きっと出産前の体型に戻るでしょう。

参考文献
1. Pregnancy-related changes in body fat. Sidebottom AC et al., Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol, 2001 Feb; 94(2): 216–23.
2. Body fat composition and weight changes during pregnancy and 6-8 months post-partum in primiparous and multiparous women. To WW, Wong MW, Aust N Z J Obstet Gynaecol, 2009 Feb;49(1):34-8. doi: 10.1111/j.1479-828X.2008.00933.x.
3. Breastfeeding reduces postpartum weight retention. Baker JL et al., Am J Clin Nutr, 2008 Dec;88(6):1543-51. doi: 10.3945/ajcn.2008.26379.
4. Effect of infant feeding on maternal body composition. Irene E Hatsu, Dawn M McDougald and Alex K Anderson, Int Breastfeed J, 2008; 3: 18.
5. 安心すこやか妊娠・出産ガイド -産婦人科診療ガイドライン:産科編2014 準拠ー, 関沢明彦 岡井崇 監修, 昭和大学病院総合周産期母子医療センター

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体脂肪減量に関する5つの迷信

体成分の改善は筋肉量の増加と体脂肪量の減少という、2つの違う成分に焦点を合わせて行われます。そして、この2つの中でも体脂肪量を減らすことは、特に大変で難しいというイメージを持っている方が多いでしょう。理論上、体脂肪量を減らすためにやるべきことは簡単です。摂取エネルギー量を消費エネルギー量より少なめにするか、消費エネルギー量を増やす、またはこの2つを並行するだけです。体にエネルギーが余ることなく、不足した状態にするだけで良いのです。エネルギーが足りなくなると、体は体脂肪として蓄えてきたエネルギーを使い始めるので、自然に体脂肪量は減少していきます。

こう聞くと簡単ですが、一度でもダイエットに挑戦した方なら、これがどれだけ大変なことか分かるでしょう。ダイエットを検討している方は少しでも楽に体脂肪量を減らせる方法を探しますが、これが間違った知識が広まってしまう最も大きい理由であり、この間違った知識を基にした様々な製品や記事が出ることで更に広まってしまう悪循環を招いています。

今から一度は聞いたことがある「体脂肪減量に関する迷信」を5つご紹介します。この知識がどう間違っているかの科学的根拠を理解することで、時間・費用・努力を無駄にせず、健康的に体脂肪量を減らせる道が見えてくるでしょう。


迷信その1. 体脂肪量を減らすためには運動だけを頑張れば良い


ダイエットをしようと思ったとき、その第一歩としてジムに登録する人が多いです。もちろん、食事だけ極端に減らして運動を全くしないダイエットは健康的な方法とは言えないので、運動をして体脂肪量を減らそうとすることは、健康的に痩せられる良い方法であることは間違いありません。しかし、運動「だけ」を頑張ればいい訳ではありません。運動と一緒に食事も管理しないと、せっかく運動をしても体脂肪量を効果的に減らすことができません。

より理解を深めるためには、体脂肪が使われるタイミングについて学ぶことが必要です。私たちは食事から様々な栄養素を体に取り入れますが、摂取した栄養素の中でエネルギー源として使われているのがグリコーゲン(ブドウ糖)です。グリコーゲンは肝臓や筋肉にも貯蓄されますが、グリコーゲンを貯蓄できる量は肝臓で6%ほど、筋肉(骨格筋)では0.4~0.6%にすぎません。体はエネルギーの摂取量が必要量を下回る時の備えとして、余った分のグリコーゲンを貯蓄しておこうとしますが、グリコーゲンのままで貯蓄可能な量は非常に少ないため、形を変えて蓄えておきます。この「形を変えた貯蓄分」が体脂肪で、いわばエネルギーの預金みたいなものです。そして、すぐ使えるお金(筋肉や肝臓に溜めておいたグリコーゲン)より必要なお金(エネルギー量)が多くなると、体は不足分を貯蓄分である体脂肪という名の預金から補い始めます。銀行口座からお金をおろすと残高が減少する様に、体脂肪として貯蓄していた分からエネルギーを引っ張ってきて使うと、体脂肪量が減ることになるのです。これがよく言う「体脂肪が燃焼する」ということであり、こうなるためにはエネルギーが不足した状態を作ること、「カロリー赤字」が必要となります。

例えば、Aさんの1日消費エネルギー量が2,100kcalとしましょう。Aさんが1日2,100kcalを摂取したとすると、「消費エネルギー量=摂取エネルギー量」の状態なので、体脂肪は燃焼も貯蓄もされず、体重は変わりません。そして、Aさんが運動して300kcalを消費し、摂取エネルギー量は変わらず2,100kcalだったとすると、消費エネルギー量は本来の2,100kcalに運動で消費した300kcalを上乗せした2,400kcalとなるため「消費エネルギー量>摂取エネルギー量」になって、300kcal分は体脂肪を分解して使うことになります。しかし、Aさんが運動を始めたことと一緒に食事量も増やすと、エネルギーが不足した状態にはならないため、体脂肪の分解も起こらなくなります。従って、体脂肪量を減らすためには運動量だけ増やすのではなく、摂取エネルギー量を増やさないように調整することも必要です。先ずは、今の自分に必要なエネルギー量がどのくらいなのかを正確に把握する必要があるでしょう。InBodyは基礎代謝量を基にした一日摂取エネルギー量の目安を提供します。また、ウォーキングやジョギングなどの運動による消費エネルギー量も表示することができるので、一日の総消費エネルギー量を計算することにも役立ちます。因みに、体脂肪量1kgを減らすために必要なエネルギー量については様々な意見がありますが、最大でも7,700kcalが必要とされます。一気にこれだけのエネルギーを消費するのは至難の業だと感じるかもしれませんが、1日に約260kcalのカロリー赤字を作ると、1ヶ月で1kgの体脂肪量を減らすことができます。せっかく運動を始めたのであれば、運動の効果が無駄にならないように、食事の管理も行いましょう。


迷信その2. 夜に食べるとそのまま体脂肪になる


一見、「夜に食べるとそのまま体脂肪になる」という説は間違っていないように思われるかもしれません。夜に食べ物を食べてすぐ寝ると、動いてエネルギーを消費するということがないので、そのまま体脂肪として蓄積されそうな気もします。この説については様々な見解や意見がありますが、どれも共通として指摘しているのは、寝る直前の食事は食道や胃腸などに負担をかけ、逆流性食道炎や睡眠障害などのリスクを高めるという点です。そして、睡眠中に体を休めていたとしても全くエネルギーを消費しないという意味ではないことも覚えておいてください。

基礎代謝量(REE)という言葉を耳にしたことはありませんか? 基礎代謝量は安静時代謝量と同じ概念で、安静時代謝量という言葉からも連想されるように、何もせずに休んでいる状態でも呼吸や心臓の鼓動など生命維持に必要な最小限のエネルギーを指します。このエネルギーを消費する代謝活動は寝ているからといって止まる訳ではありません。つまり、寝る前にものを食べても、その摂取エネルギー量を含む1日の総摂取エネルギー量が基礎代謝量内に収まるのであれば、体脂肪として変わることはありません。重要なのは摂取のタイミングではなく、摂取したエネルギー量ということです。基礎代謝量を調べる方法として、体重や性別・年齢などの個人の身体条件を用いて計算式で算出する方法がありますが、InBodyでは除脂肪量(筋肉量と骨ミネラル量の合計)を基に基礎代謝量を算出しています。基礎代謝量のうち内臓筋・心臓筋・骨格筋が約60%を占めており1)、除脂肪量はこれらの筋肉すべてが含まれているため、より正確な指標としてご活用いただけます。ただ、夜に食べ物を食べるときは次のようなことに十分気を付けましょう。

▶テレビを見ながらお菓子を食べるなど、「ながら食べ」は控える
食べることに集中せず、他のことをやりながら食べると、摂取量をうまく調整できず、摂取エネルギーが急激に増える原因になります。

▶胃腸に負担がかかるものは控える
寝る前に胃腸に負担がかかるものを食べると、睡眠中にも体がちゃんと休めず、ホルモンの分泌が乱れたり、睡眠の質を落としたりする原因となります。睡眠によって分泌量が変わるホルモンの中には食欲や満腹感に関わるホルモンもあり、睡眠をしっかり取らなければ満腹感を感じにくくなり、エネルギー摂取量を増やす原因にもなります。


迷信その3. 「デトックス」や「ジュースクレンズ」で体脂肪量を早く減らせる


「デトックスダイエット」や「ジュースクレンズ」という言葉を聞いたことがありませんか? 特に若い女性の間で流行っているこの方法は、2日や3日の短期間、固形物を摂取せずジュースだけを飲むことで体にたまっている毒素を排出するという方法です。毒素は疲労や無気力、体脂肪量の増加にも影響するため、これを取り除くことで代謝量を上げ、短時間で体脂肪を減らせると言われています。しかし、このデトックスやジュースクレンズに関して科学的にその効果を明らかにしたものや、研究者によって正式に審査を受けた文献は全く存在せず、逆に医療・科学的観点からみると健康を害する恐れがあるという報告の方が、実は多いのです。ただ、いろんな体験談を見てみると、この方法は短期間で体重が大きく減り、効果があるように見えますが何故でしょうか。デトックスやジュースクレンズを行っている間、体内ではどのような変化が起きているのでしょうか。

デトックス中、体には必要な栄養分がほとんど供給されなくなります。特に、エネルギー源であるグリコーゲンを作る炭水化物は全く入らないため、体は一時的にグリコーゲン枯渇状態に陥ります。また、グリコーゲンはエネルギー源であると同時に水分を貯める機能もあり、1g当たり約3.5gの水分を貯めこみます。つまり、デトックスやジュースクレンズによって毒素が排出されるのではなく、グリコーゲンが枯渇して、グリコーゲンが貯めていた水分が減少しているに過ぎません。更に、体はエネルギー源があまりにも足りない状態(飢餓状態)になると、すぐに活用できるタンパク質(筋肉)を分解し、エネルギー源として使います。そのため、筋肉量も減少することになります。つまり、体重の減少は体脂肪によるものではなく、グリコーゲンが貯めていた水分が抜けていることに過ぎず、グリコーゲンが入るとまた元に戻ってしまいます。更に、筋肉量が減少してしまうので、基礎代謝量が減少することで消費エネルギー量も減少し、逆に今までより体脂肪量が増えやすくなってしまいます。


迷信その4. 低脂質食事をすることで体脂肪量を減らせる


脂質を摂取すると太るという話を聞いたことがある方は多いでしょう。ダイエットをしている方であれば、牛乳を買いに行っても普通の牛乳ではなく低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を手に取ったり、油を極力取らないためにサラダをそのまま食べたり、オイルをなるべく使わないようにするなど、脂質の摂取を減らすことで体脂肪量を減らそうとするかもしれません。しかし、脂質(脂肪)摂取量を少なくすることが体脂肪量を減らして肥満のリスクを下げることにも繋がるのでしょうか。実は、エネルギー量不足の状態を引き起こせるのであれば、脂質ではなく他の食品群を減らしても体脂肪量は減ります。脂質は炭水化物やタンパク質より体脂肪量が増えやすい栄養素という訳ではありません。

では、なぜ低脂肪食品が体脂肪量の減少や健康にいいという認識が広まったのでしょうか? その理由は三大栄養素とされる炭水化物やタンパク質と比べて、脂質の方が1g当たりのエネルギー量が高いからです。炭水化物やタンパク質は1g当たり4kcalですが、脂質は1g当たり9kcalとエネルギー密度が高い栄養素です。そのため、取りすぎると摂取エネルギー量が高くなりやすいですが、摂取量を極端に減らしたからといって、体脂肪量が減少するという訳でもありません。また、脂質はエネルギー源としても使用されますが、ホルモンや細胞膜・核膜を構成するなどの役割も持っています。更に、ビタミンの一部は脂溶性であるため、脂質と一緒に取らないとうまく吸収されず、ビタミン欠乏のリスクが高まります(ビタミンA・D・E・Kなどが該当します)。このように、脂質はエネルギー源として使われるだけでなく様々な役割も担っているため、摂取量を極端に減らしてしまうと健康を損ねることや、摂取すべき栄養素を摂取できなくなる恐れがあります。だからといってフライドポテトのような揚げ物をたくさん食べても健康に問題がないというものではありません。

重要なのはむやみに脂質摂取量を減らすより、「良い脂質」を適量取ることです。トランス脂肪酸や飽和脂肪酸といわれる脂質は「悪い脂質」で、体脂肪量を増やす原因となりますが、不飽和脂肪酸はコレステロールのコントロールに役立つHDLコレステロールの量を増やす働きをし、健康を維持・改善させます。厚生労働省は1日のエネルギー摂取量のうち、20~30%に該当する量の脂質を摂取するよう目標量を定めています2)。良い脂質を含んだ食品としてはアボカド、クルミやピスタチオなどのナッツ類、サーモン、豆腐、卵、牛肉や豚肉の赤身部分などがあります。そして、意外だと思うかもしれませんが、ダークチョコレートには食物繊維はもちろん、ビタミンA・B・E・カルシウム・カリウム・マグネシウムも含まれているので、適量のダークチョコレートは良い脂質を摂取しつつ、甘いものを取らないことで溜まってしまうストレスやイライラの解消にも役立ちます。


迷信その5. 特定部位を鍛えることで、その部位だけ体脂肪量を減らせる


ダイエットのために運動方法を探した方であれば、お腹の脂肪を落としたい場合にする運動や腕の脂肪を燃やす運動など、その部位の体脂肪だけを減らせるという運動方法を見たことがあるでしょう。これに対して、殆どの文献は「運動で特定部位の体脂肪量を減らすことは不可能」と結論付けています。筋トレはその部位の筋肉量を増やすことはできますが、体脂肪量を減らすことはできません。腹筋のトレーニングを頑張ると、腹筋を鍛えることはできますが、体脂肪率がそのままでは腹筋が割れることはないでしょう。しかし、これは筋トレが体脂肪量を減らすことと全く関係がないということではありません。ただ、「ある部位だけ」の体脂肪量を減らすことはできないということです。筋肉量が増えると基礎代謝量が増加し、消費エネルギーにも影響を及ぼします。つまり、筋肉量が増えると消費エネルギー量が増加するため、エネルギー不足になりやすくなり、体脂肪を減らしやすくします。

このように、筋肉量の増加により消費エネルギー量が増加し、且つ摂取エネルギー量に変化がなければ、徐々に体脂肪量は減少することになります。しかし、これは長期にわたって間接的に起こる現象であり、特定部位だけで起こることではありません。ある部位が先に痩せるということはあるかもしれませんが、これは遺伝などの個人差によるもので、全身の体脂肪量が減少する過程の一部に過ぎません。

体脂肪減量に王道はありません。


時間を無駄にしないために

過度な体脂肪量は見た目だけではなく、健康にも良い影響は及ぼしません。多くの人は体脂肪量を減らしたいと計画しますが、焦りのあまり楽に早く痩せられるという間違った知識を信じ込んでしまいやすいです。しかし、どれだけ努力しても、その方法が正しくなければ時間と努力が水の泡になるだけでしょう。

体脂肪量を減らす方法は、摂取エネルギー量の管理と適切な運動という基本に忠実な方法で、数多くのトレーナーや栄養士、研究者によって勧められている方法です。もちろん、楽な方法ではありませんが、これ以上に効果的な方法もありません。体成分の変化はあなたの正しい努力をそのまま数値として見せるはずです。基本に忠実に沿った日々を積み重ねることで、きっと体は変わります。

参考文献
1. 生活習慣病予防のための健康情報サイト 加齢とエネルギー代謝|e-ヘルスネット 厚生労働省
2. 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 厚生労働省

カーボローディングとは

カーボローディングという言葉を聞いたことがありませんか? カーボローディングとは、スポーツ選手が大きな大会の直前に、白米・パン・パスタなど高糖質食を詰め込む食事法です。特にボディービルダーや持久系スポーツ選手が、大会の準備で数日間に渡って、炭水化物による負荷(カーボローディング)を利用しています。

ボディービルダーや持久系スポーツ選手にとって、カーボローディングの概念は同じです。大会1週間前から、本番1時間前まで、食事全体の糖質量をコントロールします。しかし、両者がカーボローディングを行う理由はまったく異なります。ボディービルダーは大会前のルーティンの一環として、カーボローディングを行います。カーボローディングによって、自身の体をより大きく、より強く、より堅く引き締まって魅せることができると信じられています。一方、マラソンやサイクリングなどの持久系スポーツ選手は、筋肉が利用できるエネルギーを増やすためにカーボローディングを行います。余分に貯蔵されたエネルギーが、長時間走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりする時に必要な持久力を向上させることに役立ちます。

しかし、カーボローディングについて科学的根拠はあるのでしょうか? 効果は本当にあるのでしょうか? 安全面は問題ないのでしょうか? 今回のトピックでは、これらの疑問について詳しく説明していきます。


カーボローディングを行う理由


炭水化物は、体内で非常に重要な機能を果たす主要栄要素で、体の主なエネルギー源です。糖質と食物繊維で構成される炭水化物は、摂取すると血糖に分解され、グリコーゲンとなり筋肉や肝臓にエネルギー源として貯蔵されます。通常、筋肉が蓄えるグリコーゲンは少量しかありません。その中で運動を行うと、貯蔵したエネルギーは使い果たされてしまいます。

男性はカーボローディングによって、グリコーゲンの貯蔵レベルを通常の25~100%高めることができます。女性が男性と同じ効果を得るには、男性よりも多くのカロリーを摂取する必要があります。

理論上、カーボローディングを行う理由は次の通りです。
1) 筋肉をグリコーゲンで満たすことで、筋肉内に水を引っ張り、質量を増やして強健にする
2) グリコーゲン貯蔵量を増やして、通常より余分に蓄えられたエネルギーを利用し、持久力を高める


カーボローディングの対象は?

カーボローディングは、主に次の2つの運動選手群で行われます。
▶ボディービルダー
大会前に体を大きく、重くするためにカーボローディングを利用します。しかし、中には注意を喚起している研究者もおり、国際スポーツ栄養学会誌に掲載された論文では「カーボローディングを行う場合、選手は大会前に一度は脂肪が無い仕上がった筋肉に達すること、もしくは近づけることを検証し、個々の戦略を企てなければならない。」と報告されています1)。炭水化物を摂取するタイミングや効果は人によって異なります。必ず大会前に、ご自身で実験をしてください。

▶持久系スポーツ選手
長時間走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりする時に使える、エネルギー貯蔵量を増やす目的でカーボローディングを利用します。持久系スポーツ選手が効果的なタイミングで炭水化物を摂取すると、筋肉のグリコーゲン貯蓄量を増加させ、パフォーマンスを向上させることができます。


カーボローディングの手順

カーボローディングのやり方は達成目標や目的によって異なります。
▶ボディービルダー

大会や撮影会を控えているボディービルダーの場合は、本番2~3日前にカーボローディングを試みてください。現在の体成分と代謝に合った正しいタイミングを見つけるためには、試行錯誤が必要かもしれませんが、InBodyの体成分や水分均衡(細胞外水分比;ECW/TBW)を判断材料として使用してみてください。ジム・ストッパーニ博士によると、体重1kg当たり約8gの炭水化物を補給する必要があります。水分を溜め込んでしまうパスタやオートミールよりも、低脂質で高カロリーなじゃがいもやさつまいもなどを取り入れることが効果的です。また、筋肉を魅せることを目的にしているので、カーボローディングと並行して水抜きが必要となります。グリコーゲンは糖質なので、体内の貯蔵量が増えると浸透圧の関係で水分も溜め込む結果となります。水が溜まってしまうと、浮腫んだり、筋肉のメリハリが消えてしまったりするため、大会で結果を出すことが難しくなります。グリコーゲンを筋肉内に貯めた状態で水を抜くことで、筋肉が膨らんだまま、凹凸を際立たせることができます。水分が溜まっていない状態でカーボローディングがちゃんと行われているかを確認する項目として、InBodyのECW/TBWが活用できます。ECW/TBWの数値は水分貯留の影響を受けて高くなる項目であるため、これらの状態を確認することができます。

 

▶持久系スポーツ選手

持久力が必要な大会に出場する選手は、少なくとも大会の二日前には体重1kg当たり約9~15gまで炭水化物摂取量を増やしてください。持久系スポーツ選手はボディービルダーとは異なり、パスタや小麦等の穀物でカーボローディングを行うことができます。持久性スポーツ選手に推奨される、低脂質で糖質を多く含んだ食品は、果物・スポーツドリンク・白米・オーツ麦・とうもろこし・じゃがいもなどが挙げられます。運動の3時間前に高糖質食を摂取することで、筋肉のグリコーゲンレベルを15%増加させたとの研究報告もあります2)。レース中に血糖値を維持するために、エネルギーを補充することは重要なポイントです。簡単に摂取できるスポーツドリンク・ゼリー飲料・果物・キャンディー・低脂質で糖質が多く含まれているパワーバーなどは、定期的にエネルギーを補充するには最適です。目安は1時間に30~60g程度で、これ以上多く摂取する必要はありません。

また、レース後に炭水化物が豊富な食事を摂ることも忘れないでください。レースで使い果たしたグリコーゲンを即座に補充して、回復を促すことが重要です。レース後なるべく早く栄養補給できることが望ましいですが、レース直後に固形物は受け付けないという選手も少なくありません。そのような場合は、手軽に摂取できるゼリー飲料やスポーツドリンクがお勧めです。グリコーゲンの回復に関しては、炭水化物だけではなくビタミン・ミネラル・タンパク質も一緒に摂取することを心がけましょう。長時間の運動では、グリコーゲンだけではなく他の栄養素も消費されているので、速やかな補充が必要です。また、炭水化物とタンパク質の同時摂取は、炭水化物のみを摂取した時よりも効果が高いことが報告されています。勿論、しっかりと回復や休養を取ることもとても重要です。


炭水化物(糖質)が多い食品

食品 分量 炭水化物含有量(g)
白米 茶碗一杯(150g) 55.8
うどん めん1玉(240g) 51.9
食パン 1枚(60g、1斤6枚切り) 28.0
ショートケーキ 1個(100g) 47.2
オートミール 100g 69.0
じゃがいも 中1個(110g) 19.4
さつまいも 120g 37.8
とうもろこし 中1本(180g) 30.2
牛乳 200ml 9.7
ヨーグルト(脱脂加糖) 120g 14.3
りんご 約1/2個(150g) 21.9
バナナ 約1本(200g) 45.0
約1個(260g) 41.4
約1個(280g) 28.6
グレープフルーツ 約1/2個(200g) 19.2
ぶどう 約1房(150g) 23.6
キウイ 約1個(90g) 12.2
みかん 約1個(100g) 12.0
パイナップル 5切れ(50g) 6.7
いちご 5粒(85g) 7.3
すいか 1切れ(200g、実の部分) 19.0

糖尿病食事療法のための食品交換表第7版、日本糖尿病学会を基準に算出3)


カーボローディングの副作用とリスク

確かに、カーボローディングはグリコーゲンレベルを高めることで筋肉のボリュームと持久力を増加させ、パフォーマンスの向上に役立ちます。しかし、誰もがカーボローディングの恩恵を受けられる訳ではありません。カーボローディングの効果やパフォーマンスには持久系スポーツ選手かボディービルダーであるかに関わらず、現在の体力レベル・水分摂取量・運動の実施時間などの様々な要因が影響を及ぼします。カーボローディングは筋肉疲労に対抗できる特効薬ではありません。2時間以上も走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりすれば、疲れてしまうのは当然のことです。

炭水化物を含む食品を大量に摂取することで、発症する可能性があるリスクもあります。胃腸の不快感、痙攣、腸内でのガス発生等副作用を経験した方もいらっしゃるでしょう。一時的な体重増加も副作用の一つで、体重が重くなったことによって走りに影響が出る可能性についても注意する必要があります。カーボローディングは血糖値にも影響を与えるため、糖尿病や高脂血症などの疾患を持つ人の場合は、健康上の理由から実施しない方が良いとされています。急激に筋肉のグリコーゲンを増加させると、グリコーゲンが消化しきれずに内臓に負担がかかることも考えられます。カーボローディングを徐々に適応させずに、試合の時だけ急に行うことは絶対にしないでください。

誰でも、カーボローディングの効果を等しく得られる訳ではありません。

 

参考文献
1. Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation, Eric R Helms et al., J Int Soc Sports Nutr(2014)11(20)
2. Ingestion of a high-glycemic index meal increases muscle glycogen storage at rest but augments its utilization during subsequent exercise, Wee SL et al., J Appl Physiol (1985). 2005 Aug;99(2): 707-14. Epub 2005 Apr 14.
3. 糖尿病食事療法のための食品交換表第7版, 日本糖尿病学会 編・著(2013)