,

在宅勤務で健康維持する方法


2018年、日本企業のテレワーク導入率は19.0%
で年々増加傾向にありますが(2017年:13.8%、2016年:13.2%)、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってテレワークの導入が各企業で加速していくことが予想されます。まだテレワークの制度が整っていない企業でも、今後早急に導入を検討しなければならないような状況でもあります。テレワークと言ってもその勤務形態は様々で、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークもテレワークに含まれます。
※総務省「通信利用動向調査(企業編)平成30年報告書」より引用。常用雇用者が100人以上の全国の企業を対象にした調査で、2,119企業から集計。

在宅勤務には、定型業務の効率性向上・通勤時間の短縮・オフィスコストの削減・通勤困難者への対応・非常時(災害や新型コロナウイルスなど)の事業継続など、多くのメリットがあります。通勤時間の短縮で使えるようになった自由な時間は、セルフケアや新しいことに挑戦できる機会でもあります。しかし、在宅勤務に普段から慣れていない人たちにとっては、「自宅でどのように業務に取り組めば良いのか? どのようにストレス管理・健康的な食事・運動を取り入れれば良いのか?」 と、悩まされる人も多いです。新型コロナウイルスのパンデミックから身を守ることを考えると、今は健康的なワークライフバランスを確立させてセルフケアを最優先すべき時期ではないでしょうか。今回のトピックでは、テレワーク導入に伴ったワークライフバランスの変化に対応できるよう、生活の中で取り入れるべき・見直すべき点についてご紹介していきます。


メンタルヘルスについて


新型コロナウイルスはその特性や効果的な治療法など、まだ明らかとなっていない部分も多いです。これらの不明点は、自粛生活のストレスや感染の危険性への不安が増長される原因となっています。現在も多くの方が在宅勤務・自宅療養・外出自粛で自宅中心の生活を余儀なくされていますが、ウイルスもストレスも目には見えないものの健康を損なう要因であることに違いはありません。悪化する前から精神状態の管理方法について考えてみる必要があります。

 icon-caret-square-o-right 瞑想
瞑想は、どこでもできる簡単なストレスケア方法です。2020年の研究によると、毎日20分の瞑想を行うだけで、生産品質の改善や仕事のミス減少などの生産性が向上するだけでなく、POMS(気分プロフィール検査)の【抑うつ・落ち込み】や【怒り・敵意】などの項目が減少し、精神的にも大きな効果が見られました¹⁾。このように、研究でも定期的な瞑想の実施は生産性の向上のみならず、幸福感を高めることにも役立つことが示されています。初めて瞑想を行う方は、毎日3分から始めて徐々に時間を伸ばしていきましょう。瞑想の方法は様々ですが、今回は気軽に始められるよう、瞑想法の土台にもなっていた ”呼吸による瞑想” を簡単にご紹介します。


※「Googleも採用するマインドフルネス瞑想/その効果と難易度別3つの実践方法」林佐智子.ライフアンドマインドより引用・改変

呼吸による瞑想は、ただ呼吸に意識を向けるだけの方法なので新しいスキルや道具も不要です。しかし、呼吸は自律神経の中で唯一意識的に介入することができる神経系なので、意図的に呼吸を変化させることでその状況が脳に伝わり、脳内に働きかけることができると言われています。呼吸法は、横隔膜を動かして内臓にも刺激が伝わる腹式呼吸がお勧めですが胸式呼吸でも問題なく、やりやすい呼吸で②-③を繰り返し3分から15分ほど続けてみましょう。

icon-caret-square-o-right 仕事とプライベートのバランス
自宅で仕事を行う際の問題点は、仕事の時間とプライベートの時間に境界線が無くなることです。会社に通勤していた頃は、オフィスを離れることで自然と終業を認識できていましたが、自宅での仕事は就業時間の区別をつけにくくなってしまいます。朝早くから夜遅くまで一日中、メールの返信をするなどパソコンと向き合ってばかりではありませんか?

プライベートの時間まで仕事の時間に充てることは、心身の健康状態の悪化にも関連します。在宅勤務中でも、できるだけ通常通りの勤務時間を設定して区切りをつけてください。時間になったらパソコンは閉じて、仕事関連の通知はミュートにしましょう。このようなルールをチームや上司と共有して、仕事とプライベートのバランスを取るためには会社からの理解も必要です。

icon-caret-square-o-right 睡眠
毎朝決められた時間に出社する必要がなくなったので、目覚ましをかけることを止めてはいませんか? 今までの規則正しかった睡眠ルーティンを忘れてはいませんか? 不規則な睡眠スケジュールや睡眠不足は、脳細胞回復の妨げとなり、認知機能や判断力・記憶力低下の原因になります。また、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンは気持ちを落ち着かせるセロトニンとも密接な関係があるため、十分な睡眠をとることは心理的安定をもたらし、ストレス解消にも繋がります。


健康的な食事


在宅勤務中の昼食と間食はどのようにしていますか? バランスの取れた食事と栄養価の高い間食を選択することは、健康体を目指す上で必要不可欠です。外出の必要もなく手軽に食事を済ませられるからと言って、デリバリーのピザやファストフードを頻繁に頼んではいませんか? デリバリーに対応している食事は、高カロリーかつ塩分過多・糖質過多なものが多く、頻繁に食べると肥満のリスクが高まります。

在宅勤務は、外食を避けて自炊をするチャンスです。自炊であれば、食材の選択から調理方法までより細かく食事内容を制御することができます。これからの食事には、次のようなバランスの取れた食品を取り入れることをお勧めします。
icon-check-square-o 全粒穀物(玄米・全粒粉小麦・オートミールなど)
icon-check-square-o 様々な種類のタンパク源(赤身の肉・魚介類・卵・大豆製品・ナッツ類など)
icon-check-square-o 低脂肪または無脂肪乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)
icon-check-square-o 非デンプン質野菜(葉野菜・トマト・玉ねぎなど)とデンプン質野菜(ジャガイモ・カボチャ・グリーンピースなど)
icon-check-square-o 丸ごと果実

肉料理をするときは大量の添加物と塩が含まれている加工肉ではなく、新鮮な赤身肉を選んでください。調理で使用する油は、オリーブオイルやキャノーラオイルなどの健康的な食用油を使うのもいいでしょう。一人で様々な種類の野菜と果物を消費するのが難しい場合は、小分けできる冷凍野菜やドライフルーツを取り入れてみましょう。


自宅での食事は人目もないので、ついつい ”ながら食べ” をしていませんか? 仕事をしながら、スマートフォンやテレビを見ながら、本や雑誌を片手にしながら食事をしていませんか? “〇〇しながら” の行為と食事を同時に行うことは、意識を分散してしまうので過食になりがちです。Physiology and Behaviorジャーナルに掲載された2019年の研究でも、食事中にスマートフォンを使用することはカロリー摂取量の増加に関連することを報告しています²⁾。仕事部屋やパソコンの前で食事は避けて、できるだけ食事スペースと仕事スペースを分けてください。気が散った状態での食事は、過剰なカロリー摂取に陥る傾向があります。仕事中であろうがなかろうが、”ながら食べ” は止めましょう。

仕事中にお菓子を食べながらの、ながら仕事も同じように気を付けてください。仕事のストレスも過剰な間食の引き金になりますが、どうしても口にしたい時は健康的な間食を選択してください。高カロリーなジャンクフードや菓子パン類は手の届きにくい場所へ移しましょう。健康的な間食の例としては、フルーツ・ナッツ類・ポップコーン・全粒粉クラッカー・お餅などがあります。

また、食事も睡眠と同様に、規則正しいスケジュールを守ってください。不規則な食事も肥満のリスクに繋がります。毎日同じ時間に食事と間食を摂るように心掛けてみましょう。これは勿論、休日にも当てはまります。


定期的な運動


在宅勤務では、通勤で体を動かすことができないので、運動のガイドラインを満たすことが困難になってきます。このような状況で、どのようにモチベーションを維持しながら身体活動量を増やすことができるでしょうか。在宅勤務では、オフィスビルに出入りしたり、会議室や休憩室まで歩いたり、階段を上り下りするような身体活動はありません。残念なことに、自宅で一日中デスクワークに取り組むだけでは筋肉量は増えませんし、体脂肪量は減少するどころか増加してしまいます。在宅勤務やデスクワークで運動量が足りない方は、仕事の合間にちょっとした運動休憩を挟んで運動量を確保する必要があります。

2020年の最新の研究でも、ちょっとした運動休憩を取ることは、食後の血糖反応を良くしてトリアシルグリセロール(中性脂肪)の低下に役立つことが示されています³⁾。この研究では、長時間の座位活動の合間に下記の運動休憩を取り入れています。
icon-check-square-o 昼食前に30分の早歩き
icon-check-square-o 4時間の座位(デスクワーク) → 30分のサイクリング運動(運動強度: 70%VO₂max)
icon-check-square-o 40分の座位(デスクワーク) → 6分のサイクリング運動(運動強度: 70%VO₂max)
icon-check-square-o 3時間15分の座位(デスクワーク) → 15分の立位 & 15分のウォーキング & 15分のMVPA(中-高強度の身体活動)運動

仕事中に運動休憩を取ることをつい忘れてしまう人は、タイマーをセットしてください。座ったまま一定時間が過ぎたら、強制的に立ち上がって、少し室内を移動してみましょう。できれば、運動休憩は屋外で実施してください。日光を浴びると免疫機能に重要な役割を果たすビタミンDを皮下で生合成できます。屋外に出ることが難しい場合は、ヨガ・自荷重の運動・トレーニングビデオで紹介されている有酸素運動など、室内でもできる簡単な運動を行いましょう。

1日中自宅で過ごしていると、どんなに努力しても、十分な運動量を確保することはとても難しいです。厚生労働省が定める「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」では、1日に60分の身体活動と8,000歩を目安に歩くことを推奨しています。60分の身体活動のうち20分は筋トレやスポーツを行うことを目指します。なかなかこの目標まで達成することは難しい状況かもしれませんが、少しでも運動休憩などを取り入れてコツコツ身体活動量を増やしていきましょう。


進捗状況を確認する


一人で運動のモチベーションを維持することは、家族や友人と一緒に行う時よりも難しくなります。そんな時は、体組成計で進捗を記録したり、体成分データを周りの人と共有したりすることで、モチベーションアップに繋げましょう。

骨格筋量や体脂肪率などの体成分は、体重よりも遥かに優れた指標です。体重が減ったとしても、それだけでは体にとって良い変化なのかわかりません。一日中座りっぱなしの生活で筋肉量が減り、体重が減ったことは良い変化ですか? 水分補給を忘れてしまい脱水状態に陥った結果、体重が減ったことは良い変化と言えますか? 体重が標準範囲内だからと言って健康体とは限りません。筋肉量と体脂肪量がそれぞれ適量でなければ、本当に健康かは分かりません。

InBody Dialは家庭用のInBodyで、業務用InBodyと同様に部位別測定・2周波の多周波数測定・統計補正の排除を可能にした家庭用で最も精度の高い体組成計です。体重だけでなく、骨格筋量・体脂肪率・BMI・内臓脂肪レベルなどの項目が、スマートフォンアプリの履歴で確認することもできます。
※InBody Dialの詳細は製品情報の家庭用製品「InBody Dial」からご覧ください。


終わりに

緊急事態宣言をきっかけに新しく在宅勤務を始めた方にとって、健康的なワークライフバランスを確立させるのに今以上の好機はありません。仕事とプライベートの健康的な両立には、メンタルヘルスマネジメント・バランスの取れた食事・定期的な運動の3つの視点が欠かせません。ストレスや不安を感じている時は、瞑想を試してみたり睡眠を優先するようにしてください。食事メニューを見直して、バランスの取れた食品・調理法を選択しましょう。そして、1日に少なくとも60分の身体活動を実施するように心掛けてください。

 

参考文献
1. The effects of meditation on the performance and well-being of a company: A pilot study. Pagliaro G et al., Explore (NY). 2020 Jan – Feb;16(1):56-60
2. Smartphone use while eating increases caloric ingestion. Gonçalves RFDM et al., Physiol Behav. 2019 May 15;204:93-99
3. Effects of Interrupting Prolonged Sitting with Physical Activity Breaks on Blood Glucose, Insulin and Triacylglycerol Measures: A Systematic Review and Meta-analysis. Loh R et al., Sports Med. 2020 Feb;50(2):295-330

体型改善 Part2: 基礎代謝量の活用法

体成分を改善させたい場合は、筋肉量を増やして体脂肪量を減らす必要があります。しかし、思い通りに体成分を変化させることはとても難しく、やり方を間違えるとより悪化してしまうケースもあります。つまり、食生活の内容は、筋肉量の増加・体脂肪量の減少という目標を達成できるように構成する必要があります。筋肉量と体脂肪量の増減を意識せずに、ちぐはぐな食事プランと運動を設定してしまうと目標を達成することはできません。

よくある誤解として、「食事量を減らし運動量を増やせば、体脂肪率が改善して理想の体型になれる」 ということがあります。しかし、なりたい体型がどういうものかによって実践する内容は変わります。場合によっては食事量を増やすことが必要なときもあります。例えば、筋肉量を増やし強靭な体型になることを求めているなら、運動量を普段よりも増やして1日の総消費カロリー(TDEE)に見合った分の食事を心掛ける必要があります。
※体成分を改善したい方は、InBodyトピックの「体型改善 -ダイエットの始め方-」もご覧ください。

体型改善の目的において、食事プランに取り入れるべき要素は多く、全てを取り入れようとすると複雑になってしまいます。筋肉量を増やしてウエイトアップを目的とするのか、体脂肪量を減らして体重を落とすことを目的とするのかによっても、食事の内容や摂取カロリー量は変わってきます。今回のトピックでは、筋肉量増加と体脂肪量減少のそれぞれの視点から、基礎代謝量(BMR)を用いて適切な食事プランを立てる方法をご紹介します。


筋肉量を増やす食事プラン

筋肉量を増やしたい場合は、TDEE以上のカロリーを摂取する必要がありますが、不要なカロリー摂取は避ける必要があります。筋トレのメニューも重要ですが、何をどう食べるかについては更なる工夫が必要です。

前回のトピックで登場した男性(体重:77.6kg、除脂肪量:60.6kg、BMR:1,679kcal、身体活動レベル:普通)を例に説明します。こちらの男性のTDEEは2,938kcalなので、ウエイトアップにはこれ以上のカロリーを摂取する必要があります。具体的にはどれくらい摂取カロリーを増やせばいいのでしょうか? 2002年に発表されたアメリカの研究によると、ウエイトアップにはTDEEより約15%多くカロリーを摂取する必要があると報告されています¹⁾。この研究に基づいて、こちらの男性の摂取カロリーは3,379kcalに設定することができます。体脂肪量の増加は最小限に抑えつつ筋肉量を増やすためには、どのように摂取カロリーを増やせばよいのでしょうか?

筋肉量を効率よく増加させるためには3大栄養素の中でも、特にタンパク質の摂取が大切と言われています²⁾。しかし、タンパク質の摂取量のみを増やしたからといって、それがそのまま筋肉量の増加につながるわけではありません。2006年の大学運動選手を対象とした研究によると、2.0g/体重(kg)/日以上ものタンパク質を摂取していたにも関わらず、筋肉量や筋力が向上されなかったと報告されています³⁾。筋力が必要とされる大学運動選手の適切な摂取カロリーは、44.0~59.0kcal/体重(kg)/日以上が推奨されていますが⁴⁾、この研究の参加者の摂取カロリーは33.0±5.5kcal/体重(kg)/日と、推奨量を下回っていました。このような研究から、タンパク質だけを十分に摂取したとしても、運動レベルに適した摂取カロリーが足りない場合、筋肉量を増やすことは難しいと分かります。つまり、もし筋肉量を増加させたい場合は、タンパク質の摂取量を増やすことも大切ですが、摂取カロリーはTDEE以上である必要があります。タンパク質はもちろん、炭水化物もバランスよく食事内容に構成して、適切なカロリーを摂取しましょう¹⁾。

また、適切な摂取カロリーの設定には、InBodyが研究項目で提供している推奨エネルギー摂取量※1も参考になります。推奨エネルギー摂取量は、健康な人が1日に必要とするエネルギー摂取量(EER)を算出後、InBodyで測定した体成分を考慮して調節される値です。EERの算出方法は次の通りです⁵⁾。

icon-caret-square-o-right 20歳以上の成人男性
EER=662-9.53×年齢+身体活動係数(PA
※2×[15.91×体重(kg)+539.6×身長(m)]
icon-caret-square-o-right 20歳以上の成人女性
EER=354-6.91×年齢+身体活動係数(PA)
※2×[9.36×体重(kg)+726.0×身長(m)]
icon-caret-square-o-right 20歳未満の男性(9歳以上)
EER=88.5-61.9×年齢+身体活動係数(PA)
※3×[26.7×体重(kg)+903×身長(m)]+25
icon-caret-square-o-right 20歳未満の女性(9歳以上)
EER=135.3-30.8×年齢+身体活動係数(PA)
※3×[10.0×体重(kg)+934×身長(m)]+25

基本的には、EERがそのまま推奨エネルギー摂取量として提供されますが、次の条件に該当する人は体成分を考慮してEERが調節されます。
① 18~64歳の男女で、体重・骨格筋量がどちらも標準範囲より少ない痩せ型の場合は、EERに250 kcalを足す。
② 18~64歳の男女で、体重・体脂肪率がどちらも標準範囲よりも多い肥満型の場合は、EERから500 kcalを引く。
③ 65歳以上の男女で、体重・骨格筋量共に標準範囲未満である場合、または体重・体脂肪率共に標準範囲以上である場合、EER公式の
”体重” 箇所に ”調節体重” を適用して算出する。
調節体重=現在体重+(標準体重-現在体重)÷4

筋肉量を増やすために、ウエイトアップする必要がある痩せ型な男性(年齢:20歳、体重:50.9kg、身長:170cm、骨格筋量:標準範囲未満)の推奨エネルギー摂取量を計算してみましょう。こちらの男性のEERを計算すると、2,389kcalとなります。しかし、体重・骨格筋量が標準範囲未満であるということは、身体活動に必要なエネルギーが十分に供給されていない状態を意味するので、この場合はEERに250kcalをプラスします。結果、この男性の推奨エネルギー摂取量は2,639kcalになります。推奨エネルギー摂取量を参考にすることで、自分の体成分に応じてエネルギー摂取量を調節し、筋肉量を増やすためのウエイトアップをすることができます。

※1 現行販売している非医療機器(InBody270, 470, 570)のみ、提供している項目になります。
※2 身体活動の程度によって4段階(非活動・低活動・活動・高活動)に分けられますが、InBodyでは平均的な活動係数男性1.11、女性1.12を使用します。
※3 身体活動の程度によって4段階(非活動・低活動・活動・高活動)に分けられますが、InBodyでは平均的な活動係数男性1.13、女性1.16を使用します。


体脂肪量を減らす食事プラン

体脂肪量を減らしたい場合は、カロリーが不足した状態=「カロリー赤字」をつくる必要があります。つまり、TDEEより低いカロリーを持続的に摂取します。TDEEは現在体重を維持するために必要な摂取カロリーなので、これを基準に「カロリー赤字」を考えてみましょう。
※カロリー赤字に関してもう少し詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「体脂肪量減量に関する5つの迷信」もご覧ください。

2週間で1kgの体脂肪量を減らすには、毎日の食事から550kcalほど減らす必要があると言われています。これは1kgの体脂肪量をカロリーに換算すると約7,700kcalであることから、「2週間でマイナス7,700kcalを達成するためには1日当たり摂取カロリーを550kcal減らす必要がある」という計算に基づいています。確かに理論上、この方法は理に適っていますが、誰にでも推奨できる方法ではありません。TDEEが3,000kcalや4,000kcalとある程度高い方が、摂取カロリーを1日に550kcalほど減らしたとしてもそれほど問題ではありませんが、TDEEが1,500kcalもない方が1日の摂取カロリーを1,000kcal以下にして日常生活と運動をこなすのは難しいです。
※体脂肪量1g当たり=7.7kcalに該当します。

従って、TDEEから摂取カロリーを減らす最も安全な方法は、まずは1日当たりの摂取カロリーを200~300kcalほどの僅かな量だけ減らし、1~2週間維持することです。1週間の継続後に筋肉量が減っていないかを確認するため、InBody測定を行います。もし筋肉量が維持されたまま体脂肪量が少しでも減少していれば、カロリー赤字は成功です。今後は運動による消費カロリーなども調節し、その日に応じた必要な分のカロリーを摂取します。

では、摂取カロリーを食事から安全に減らすにはどうすれば良いでしょうか? 最も簡単な方法は、ファストフード・お菓子・チョコレート・ジュース・お酒などの摂取量を減らすことです。今までどれだけ摂っていたかによっても異なりますが、これだけで減量できるかもしれません。普段からこういったものをあまり摂取していない場合は、摂取量を多少減らしても問題ない栄養源を減らすようにします。食事プランの炭水化物や脂質の中でカットできる部分がないか見直してみましょう。一方、摂取量を減らし過ぎないよう注意すべき栄養素はタンパク質です。タンパク質は筋肉を構成する成分であり、摂取量を減らし過ぎてしまうと、筋肉量が減少して体重が落ちてしまいます²⁾。厚生労働省は、日本人が必要なタンパク質の量を男性60g/日、女性50g/日と定めているので、こちらの値を参考に調節してください⁶⁾。


摂取カロリーを食事から安全に減らす別の方法は、低カロリー高タンパク質の食材を選ぶことです。お勧めの食材は次のようなものが挙げられます。適切なカロリー制限と栄養摂取に運動を並行することで、筋肉量を維持しつつ体脂肪量を減らすことができます。

・さけの切り身(100g): 132kcal/タンパク質 22g
・ギリシャヨーグルト(170g): 100kcal/タンパク質 17g
・鶏の胸肉(骨・皮なし、100g): 108kcal/タンパク質 22g
・牛肉(もも、赤身肉、100g): 140kcal/タンパク質 23g
・豚肉(ヒレ、赤身肉、100g): 114kcal/タンパク質 23g
・絹ごし豆腐(1丁300g): 168kcal/タンパク質 15g


理想の体型になるために

理想の体型になるためには、食事プランと一緒に運動なども常に少しずつ変化させる必要があります。諦めずに継続すれば、必ず努力は結果として現れるでしょう。しかし、結果が目に見えるまで、どれほど時間を要するかは個人によって異なります。モチベーションを維持するためにも、定期的に体成分を確認するようにしましょう。測定頻度の目安としては、1~2週間毎の測定が推奨されますが、食事プランや運動内容が更新されたタイミングに合わせて測定するのも良いでしょう。より詳細な体成分の変化を確認したいのであれば、是非InBodyで測定してみてください。

最後に、BMRは筋肉量と密接に関連していることを忘れないでください。適切な栄養摂取と運動によって筋肉量が増えると、必要な摂取カロリーも増加します。摂取カロリーの調節ができなければ、せっかく増やした筋肉量を維持することはできません。更に筋肉量を増やしたい場合は、今の摂取カロリーも見直す必要があります。逆に、厳しいカロリー制限を行って筋肉量が減少した場合はBMRも減少しています。筋肉量の減少を考慮せずにむやみに運動量を増やしたり、余分に摂取カロリーを取ってしまったりすると、理想の体型から遠ざかってしまうかもしれません。

食事や運動の計画を立てる際、体に必要な摂取カロリーを把握することはとても有益です。これを把握するためには、BMRを知ることから始まります。BMRをうまく活用することで、健康を損なうことなく、より効果的に体成分を改善して、少しずつ理想の体型に近づけていきましょう。

 

参考文献
1. Macronutrient considerations for the sport of bodybuilding. Lambert CP et al. Sports Med. 2004;34(5):317-27.
2.「筋肉量を増やすために必要な栄養素「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」」 独立行政法人環境再生保全機構 すこやかライフ
3. Effect of Protein Intake on Strength, Body Composition and Endocrine Changes in Strength/Power Athletes. Jay R Hoffman et al. J Int Soc Sports Nutr, 2006; 3(2): 12–18.
4. American Dietetic Association. Dietitians of Canada and the American College of Sports Medicine Position stand: Nutrition and athletic performance. Med Sci Sports Exer. 2000; 32: 2130–2145.
5. Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids, institute of medicine of the national academies, 2002 and 2005, The National academies press 500 Fifth street, N.W. Washington, DC 20001
6.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省

体型改善 Part1: 基礎代謝量とは

理想の体型になりたいと思ったとき、第一にとる行動はジムに行くことです。初めのうちはとてもやる気がある状態で、毎日トレッドミルやウエイトトレーニングを頑張ろうと決意します。しかし、変化が何も見えない状態では、その熱意は徐々に失われてしまいます。気付けば、毎日が週3日になり、週3日が時間のあるときになり、運動の頻度が落ちてしまいます。このように、体型の変化を知る前に運動を諦めてしまった経験はありませんか? ジムに行くことを途中で止める理由はたくさんありますが、最も一般的な理由は結果がすぐには現れないことです。そして、理想の体型を目指してジムに通うことだけに夢中になっている人は、最も重要で基本的なことを忘れてしまっています。

「腹筋はキッチンで作られる」という話がありますが、これは事実です。ジムでは運動を行い筋肉に刺激を与えることができますが、悪い食生活の下では十分な運動効果を得ることはできません。適切な食事無しでの運動は、逆に筋肉の破壊につながりかねません。では、適切な食事はどのように取れば良いのでしょうか? 摂取する栄養素の種類・食事の頻度・摂取するタイミング・断食の選択など、食事に関して考えるべき要素はたくさんありますが、食事メニューを考える上でも1日の総消費カロリー(TDEE)を知ることは最重要事項です。
※Total Daily Energy Expenditure (TDEE)とは、身体活動量分のカロリーも含んだ1日の総消費カロリーです。


基礎代謝量(BMR)の求め方


体が1日に消費する総消費カロリーはどれくらいでしょうか? TDEEは基礎代謝(70%)・生活活動代謝(20%)・食事誘発性熱代謝(10%)に分けることができます。基礎代謝は、毎日の生命維持のために体を動かさなくても使われるカロリーを指します。生命維持とは、呼吸・血液の循環・体温維持・脳の活動・内臓の活動などによる代謝活動です。生活活動代謝は、歩いたり走ったりするときに使われるカロリーを指し、食事誘発性熱代謝は、摂取した食物が消化・吸収される際に発生する熱によって消費されるカロリーを指します。

TDEEを求めるためには、まずBMRを求める必要があります。BMRと一言でいっても、ハリスベネディクト式やミフリンセントジョール式などBMR算出に用いられている公式は様々です。これらの式は体重を用いてBMRを計算しますが、身長・年齢・性別による補正が掛かっています。つまり、同じ身長・年齢・性別の平均から外れている人がこれらの式を使用すると(例えば、アスリートや疾患者の場合)、算出されたBMRは正確ではない可能性があります。平均から離れている人には、除脂肪量を用いて算出する、カニンガム式のBMRを使用することをお勧めします。BMRを除脂肪量だけ用いて算出することには、次のようなメリットがあります。

カニンガムの式 BMR=除脂肪量×21.6+370¹⁾
➀年齢・性別の統計から得られた情報による補正の影響を受けません。
➁カニンガムの式は運動によって鍛えられる筋肉量の変化を反映するので、筋肉量が増えるとBMRも増えます。
(除脂肪量には筋肉量が含まれており、筋肉量の増加は除脂肪量の増加につながります。)
※除脂肪量(kg)=体重(kg)-体脂肪量(kg)

現行販売している全てのInBody機種で、カニンガム式により算出されたBMRを提供しています。自分のBMRが把握できたら、次のステップに進みましょう。


BMRから1日の総消費カロリー(TDEE)を計算する方法

BMRは安静時に消費されるカロリーであり、歩行・会話・家事・仕事・運動など、生活活動に関わる消費カロリーは含まれていません。そのため、食事プランを立てるために必要なTDEEは、BMRに身体活動レベルを表す係数を掛けて求める必要があります。TDEEの算出方法は次の表をご参照ください²⁾。

身体活動レベル 説明 TDEE
低い(Ⅰ) 静的な活動(生活の大部分が座位) TDEE=1.5×BMR
普通(Ⅱ) 中強度な活動(通勤・買い物・家事・軽いスポーツなど) TDEE=1.75×BMR
高い(Ⅲ) 高強度な活動(スポーツなどの活発な運動習慣・肉体労働など) TDEE=2.0×BMR

身体活動レベルが普通(Ⅱ)である男性のTDEEを計算してみましょう。この方の体重は77.6kgで、除脂肪量は60.6kgです。カニンガムの式を用いると、この男性のBMRは1,679kcalとなります。これに適切な係数(1.75)を掛けると、体重を維持するためにこちらの男性が必要なTDEEは、2,938kcalになります。

ここまでは、主に基礎代謝量の種類と計算方法について説明しました。次のトピックではこれらをどのように活用できるのか、実践方法をご紹介します。

 

参考文献
1. A reanalysis of the factors influencing basal metabolic rate in normal adults. J.J. Cunningham. The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 33, Issue 11, November 1980, Pages 2372–2374.
2. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省

, , , ,

健康美に対する認識が間違っている理由


美しさの基準は人それぞれですが、多くの人が(特に女性)考えている “理想的な体” というものは、実はそれほど健康的ではないことがあります。「これから運動をはじめよう」と行動を起こす背景には、自身の生理学的経験や心理的感情が複雑に絡んでいます。生い立ち・国柄・文化などは健康美に対する認識へ関係していますが、テレビ・雑誌・広告・SNSなどメディアで目にするものも、健康や運動意欲に大きく影響を与えます。

スーパーモデルの例を見てみましょう。平均的な体型とかけ離れている、とても細い体のモデルが理想として宣伝されています。しかし多くのモデルは、コットンボール・ダイエット(綿を食べることで満腹感を得るダイエット)のような不健康で危険なダイエットによって、その薄っぺらい体を維持しています。そして、メディアを通してスーパーモデルを目にした人々や、モデルに憧れる若い女性達は、そのモデルの体型を理想的な体と捉えます。これは間違った健康美を印象付けてしまう一例に過ぎず、その他にも誤解を与えてしまう要素はたくさんあります。


健康で綺麗になるための選択


偶像化された体型は、必ずしも健康的なライフスタイルによって生みだされているという訳ではありません。摂食障害のひとつである「オルトレキシア(orthorexia)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 一般的な摂食障害との大きな違いは、カロリーや量ではなく質に異常なまでに執着してしまうことで、グルテン・オイル・糖質・添加物・動物性食材などを徹底的に制限し、極端な偏食になっていきます。「健康的」と考えられる食事以外を信じられなくなっている状態なので、不健康なものを摂取することに過剰な不安や恐怖心を抱き、制限を破ってしまうと嘔吐したりしてしまうこともあります。結果、ビタミン・ミネラル・タンパク質など健康を保つために必要不可欠な栄養素が不足し、重度な栄養失調や神経性やせ症など様々な病気を引き起こしてしまいます。体脂肪は多過ぎても健康には良くありませんが、少な過ぎても良くありません。体脂肪は体温調節やホルモンの材料としても使われており、生命維持のためにも必要な成分です。

美意識が高いと言われるモデルや女優、セレブらによって、オーガニックフード・ヴィーガン・スーパーフード・スムージーなどお洒落なライフスタイルが毎日のようにSNSで拡散されている今日では、「こういう食事を取らなければ健康になれない」と受け取ってしまうのも致し方ありません。しかし、痩せることを望んで(体重を減らしたくて)生じる拒食症とは異なり、オルトレキシアは純粋に健康的で自然体になりたいことを望んで発症しているため、自身が摂食障害であることを理解するのが難しく、不健康な状態もなかなか気づきにくいです。


本当に意識すべき健康マーカー

体重とBMIが標準に入っているからと、安心していませんか? 健康と考えていた体が、実際は健康とかけ離れているということはないでしょうか? 体重とBMIは、健康状態を評価する指標としては十分ではないと指摘されているにもかかわらず、最も長く使用され、最も一般的に使用されている項目です。体重やBMIは手軽に測定できるので、自身の体型評価をこれらに頼っているという方も多くいますが、体重やBMIは見かけの肥満度にしか過ぎません。BMIは単純に身長と体重の比率に過ぎず、その比率で低体重(BMI18.5未満)・普通体重(BMI18.5~25.0)・肥満(BMI30.0以上)を決定します。BMIだけで健康を評価すると、筋肉量が多い健康なスポーツ選手が肥満(不健康)に分類されたり、代謝異常によって過剰に体脂肪量が貯蓄されている患者が標準体重(健康)に分類されたりしてしまうことも問題です。性別・身長・体重が同じでも、見た目や体型はまったく異なるという場合もあります。このことから、体成分がとても重要であるということが理解できます。

体成分分析は体を構成している各成分を定量化して、その過不足を評価します。単純に体重を筋肉量と体脂肪量に分けるだけでなく、筋肉を構成している体水分量とタンパク質量をそれぞれ表示し、除脂肪量は筋肉量とミネラル量の合計として、体系的に表示します。全ての成分が定量化されることで、本当の意味で筋肉質であるのか、痩せているのかを評価できます。痩せているとは、身長に対して必要な体重が足りていないこと(標準体重より軽いこと)を指しますが、体重は標準体重であっても、筋肉量が足りていない痩せタイプ(隠れ肥満・痩せ肥満体型・サルコペニア肥満・スキニーファット)も確認することができます。


全てを手に入れることはできません

運動をする目的は、大きく分けると次の3つです。
icon-caret-square-o-rightスタイルを整えて外見を良くするため
icon-caret-square-o-right健康のため
icon-caret-square-o-rightスポーツ活動でパフォーマンスを向上させるため
残念なことに、この3つの目的を同時に達成することはできません。それぞれの目的を達成するには、異なるアプローチ、トレーニングが必要であるためです。そして、このような目的を持ち運動をしている方は、必ずしも健康体・健康美であるという訳ではありません。

スタイルに関して間違った理想を持ち、その理想に近づくことだけを目標にしていると、過剰なトレーニングや偏った食事など不健康なライフスタイルにたどり着くこともあります。健康のためと考えて選択した行動であっても、夢中になり過ぎると、疲労感・脱力感・無気力・罪悪感などに苛まれ、精神的な症状が発生することもあります。一見、不健康とは真逆にいるようなトップアスリートの中には、肝不全を経験したボディービルダーや心臓発作を起こしたレスリング選手もいます。

 


バランスの良い食事と一緒に好きなものを食べましょう。健康だからと言って、特定のものだけを食べ続けるようなことはしないでください。野菜・果物・穀物・赤身のタンパク質など、栄養豊富な食事を目指して努力することが大切です。糖質を少しでも抑えたい場合は、炭水化物を一切抜くのではなく、ごはんを大麦に置き換えるなど工夫してみましょう。大麦はg当たりの糖質がごはんの約1/2で、食物繊維は約20倍もあります。栄養が適切に補給できていること、過度に制限されていないことを確認してください。

 


好きなトレーニングを選択してください。ランニングが嫌いだからと言って、有酸素運動を避けてはいませんか? 有酸素運動はランニングが全てではありません。水泳・ハイキング・サイクリング・ヨガ・ローイングエルゴなども有酸素運動として選択肢になります。筋トレには、重いウエイト器具だけが効果的であると考えていませんか? トレーニングチューブや体重を使ったトレーニングも効率よく筋肉を鍛えることができます。様々なトレーニングを試して、自分に合ったものを探してみましょう。

十分な休養と睡眠を取ってください。睡眠は筋肉の成長や喪失に関わる体内のホルモン分泌に直接影響するので、体成分にとって重要な要素です。水分補給も忘れないでください。人体の大部分は “水” です。脱水は、筋肉疲労・めまい・頭痛などの諸症状を引き起こします。

健康美に対する認識が間違った状態で、食事・運動・ダイエット方法などを決定しないでください。健康の焦点を体成分に当ててみると、今後の選択が変わってくるかもしれません。

 

参考文献
1. InBodyトピック「体成分測定が必要な3つの理由」
2. InBodyトピック「カーボローディングとは」
3. InBodyトピック「疲労と回復のメカニズム」
4. InBodyトピック「脱水時に必要な飲み物は」

, ,

脱水時に必要な飲み物は?

水は体重の約50~70%を占めており、体で最も重要な基本成分です。深部体温を調節したり、栄養素を体の細胞に届け老廃物を体外に排出する運搬の役割を担ったり、神経組織や関節を保護することも、水が関係しています。すべての細胞・組織・臓器が機能を正常に保つには、適切な水分補給が必須です。

体が正常に機能するために必要な水分が十分にない場合、“脱水症” に陥ります。必要な水分補給量は、汗・排尿・呼吸など体から排出される水分量によっても左右されます。レスリング選手の運動による脱水を調査した研究では、体重の3.5%まで水分を失っていたと報告しています¹⁾。体重が60kgの場合、2.1kgもの水分が失われたことになります。つまり、運動中や運動前後のこまめな水分補給が非常に重要であることが分かります。水分補給は体の健康を維持するだけでなく、パフォーマンスの向上にも役立ちます。

しかし、脱水時や運動時に摂取すべき飲み物は何でしょうか? 渇いた体を潤すには、水で十分でしょうか? それともポカリスエットのようなスポーツドリンクがより有益なのでしょうか? 今回のトピックでは水分補給の仕組みについて学び、どのような状況で何を飲むべきなのか確認していきましょう。


運動時の水分補給


筋肉細胞が正しく機能するためには水が必須です。十分な水がない状態で運動すると、ベストな結果は得られません。ベストパフォーマンスには適切な水分補給が必要だと理解しているアスリートは多いですが、実際にどれくらいの水分を補給すればいいかを把握できている人はどれほどいらっしゃるでしょうか? 次に、必要な水分補給量やタイミングの目安となる評価方法を紹介します。

尿の色を確認する²⁾
尿の色は、健康状態だけでなく水分補給レベルについても多くの情報を伝えてくれます。尿の色が薄いほど、体内の水分が多く十分であることになります。尿が濃い黄色やうぐいす色に変色し始めたら、水分が不足しているサインです。速やかに水分を補給してください。


簡単な計算式から必要な水分補給量を知る
運動前後に体重測定をして、簡単な計算式から1時間あたりに必要な水分補給量を求めることができます。運動後の体重測定は、汗を吸っている重い服を着替えてから行ってください。必要水分補給量をあらかじめ把握することで、水分補給のプランを立てたり、運動強度や気温の変化などで発汗量が増える場合でも水分補給量を調節できたりするようになります³⁾。

1時間あたりに必要な水分補給量(ml/h)=(運動前後の体重変化量(g)+運動中に摂取した水分量(ml)-尿量(ml))/運動時間(h)

直ちに水分補給が必要な時 -脱水症状-
毎日摂取すべき水分量は、個人の身体特性や活動量によっても変わってきます。しかし、渇き・早発性の疲労・運動能力の低下・体温上昇・めまい・速い呼吸と心拍数のような兆候が現れたら、直ちにコップ1・2杯の水を飲んでください。


水分補給 水vsスポーツドリンク

水を選択するとき
例えば、運動の目的がダイエットや体成分の改善等であれば、糖やカロリーが添加された飲料水を避けて、水を選択するのが良いでしょう。強度の低い運動や、45分以内の短時間の運動、単に日常の喉の渇きを潤す場合なども水を選択するようにしましょう。

スポーツドリンクを選択するとき

運動時の水分補給には、電解質と美味しい味が添加されているスポーツドリンクを選択する人が多いです。水にはない、添加成分の詳細を見てみましょう。スポーツドリンクに含まれる成分には、水だけでは得られない効果があります。
電解質
カリウム・ナトリウム・マグネシウムなどのミネラルは電荷を帯びており、体のイオンバランスを維持するのに役立ちます。汗をかくと電解質を失いますが、スポーツドリンクは運動中に失われた電解質を補うといわれています。
炭水化物
スポーツドリンクの炭水化物はほとんどが糖です。炭水化物は体の主要エネルギー源であり、スポーツドリンクは激しい運動後消費したエネルギー燃料を補給するように設計されています。
アミノ酸
アミノ酸はタンパク質の構成要素です。激しい運動後にアミノ酸入り飲料を飲むことで体の回復がより速く、より良くなるといわれています。

45分以上激しい運動を行う場合や、マラソンやサイクリングなどの持久力を必要とするアスリート、汗に含まれるナトリウムの量が多い人(肌や衣服に汗の跡が残る人)は、スポーツドリンクで水分補給するとこのような効果を得られるかもしれません。スポーツドリンクを飲む際には電解質と炭水化物が含まれていることを確認してください。


水分補給ができるのは水とスポーツドリンクだけではありません。お茶・ジュース・牛乳のような飲み物や果物・野菜のような食べ物にもたくさんの水が含まれています。牛乳は良い水和剤であり、水よりも再水和の効果が高いです。激しい運動後に1杯のチョコレートミルクを楽しむことも、理にかなっています。果物や野菜は水分量が多いだけでなく、ビタミン・ミネラル・炭水化物も含まれているため、理想的なおやつになります。


終わりに

水分補給をすることは運動時などあらゆる場面で重要です。体内に十分な水が保たれないと、ベストパフォーマンスを発揮することも、健康な体を維持することもできません。水分補給の方法はたくさんありますが、添加物が含まれない普通の水は最良の選択肢です。激しい・長時間の運動をする時や水に飽きている時は、スポーツドリンク・牛乳・果物・野菜が選択肢になるでしょう。

 

参考文献
1. The validity of multifrequency bioelectrical impedance measures to detect changes in the hydration status of wrestlers during acute dehydration and rehydration, Alan C. Utter et al., Jarnal of Strength and Conditioning Resarch (2012)26(1):9-15
2. Urinary Indices of Hydration Status, Lawrence E. Armstrong et al., International Journal of Sport Nutrition (1994)4:265-279
3. Reprinted with permission from Murray R, Determining sweat rate, Sports Sci Exch.(1996)63

, ,

食物依存症と過食 Part2: 改善法

前回のトピックで確認した通り、食物依存症は過食の原因になり、過食は様々な健康問題を引き起こします。過食の原因が人によって異なるのと同じく、改善法も様々です。これから紹介する方法は数ある改善法の中の一部で、これらを参考に自分に合う改善法を探してみてください。


▶好きなもの(加工食品)を定期的に少量摂取する


チョコレートやケーキなどの甘いものを適量摂取することは、ストレスを減少させたり、幸せな気持ちになるなど、良い効果もあります。無理して食べないように我慢することはストレスの原因となるため、むしろ定期的に少量を摂取することでコントロールしやすくなります。


▶味覚を鍛える


加工食品の強い甘味に慣れてしまい果物や野菜の甘味に鈍くなっていても、味覚を鍛えることで自然の甘さを敏感に感じるように戻すことが出来ます。味覚を鍛えると言っても料理人を目指す人がやるように、細かく味を見分ける訓練をする訳ではありません。砂糖に接する頻度を少なくして、果物や野菜など自然の甘さと接するようにするだけです。味蕾細胞(みらいさいぼう)は約10日周期で新しくなるといわれています。つまり、新しい味蕾細胞を自然な甘さに慣れさせ続けることで味覚を鍛えることができるという訳です。


▶カロリーではなく胃腸を満たす食べ方をする

加工食品は砂糖や精製炭水化物が主原料であり、量が少なくてもカロリーが高いのが特徴です。そのため、加工食品を中心に満腹感を得るまで食べるとカロリー摂取量は急激に跳ね上がり、体脂肪量の増加に繋がります。しかし、満腹感を得ることも食事の楽しみの一つでしょう。満腹感を得ながら食事を楽しむ方法として、胃腸を満たしつつカロリー摂取量を抑えられるのが「十分な量の良い食べ物を食べる」という方法です。栄養分や食物繊維が豊富な野菜や果物を先に食べることで、高カロリー食品の過食を抑えられます。


▶きっかけになる食べ物を把握する

過食の原因には、過度なダイエットや食事制限があります。食べることを我慢している時に突然我慢できなくなり食べ続けてしまうのです。その「我慢できなくするもの」が何かを把握することも、過食を防止するためには重要です。食べ始めたらコントロールができなくなる食べ物が分かっていれば、その食べ物や似たような種類のものに注意を払うことができます。


▶食べたあとの感情を記録する


この方法は食べるときは実感できない報酬感を客観的に評価する方法です。例えば、チョコレートバーを一つ食べた後、少し時間が経ってからの感覚を簡単に記録します。「甘さが残ってない」のような短い一言で十分です。食事後やおやつを食べた後にしばらく記録し続けると、食べた瞬間の報酬感はあまり長続きしなかったり、思ったより小さく感じたりするなど、客観的に判断できるようになります。


▶自分で料理をする


外食をすると過食しやすくなる傾向が示されています。外食で過食しやすくなる理由として、「選択の幅が広くなる」ことと「食べ物の量を自分で調節できない」こと、そして「準備に自分の努力が必要ない」ことの3つが挙げられます。どれほど美味しいものでも、ずっと食べ続けると飽きて食べなくなります。しかし、外食する時は注文できる料理のバリエーションが広いため、いろんなものを飽きずに食べることができ、結果的には多く食べるようになります。そして、1人前の量を自分で調節できないため、全部食べると食べすぎることもあり、準備に手間がかからない分、たくさんの料理を食べようとする気持ちが強くなります。

自分で料理をすることは品数に限りがあるので選択の幅を狭め、決まった量を食べるようになり、過食を防ぎます。自分一人で一気に数十種類の料理を作って食べることはできないでしょう。そして、作りすぎて捨てることになるのが勿体ないと思うようになるので、作る段階であまり多く作らず、食べられる量だけ作ることで、過食をする機会が減っていきます。


▶食べる以外のストレス解消法を探す


ストレスは過食に繋がりやすいので、なるべくストレスを感じない生活を送れることが理想ですが、そういう生活を送ることはかなり難しいです。そのため、食べるという方法以外のストレス解消法を探し、常にコルチゾールの濃度が高いままにしておかないことが重要です。ストレス解消法は千差万別ですが、軽い運動や散歩、瞑想、好きなことをやるなど、自分に合うストレス解消法を見つけて適切に行うことで、ストレスによる過食を防止できます。


健康のために、時には我慢することも必要です


健康な体を作るためには筋肉と体脂肪の均衡を保つことが重要であるように、健康な食生活になるためには様々な栄養分をバランスよく摂ることが大事です。甘いものを食べることは悪くありませんが、摂りすぎてバランスが崩れてしまっては健康を損ないます。過食は、体重の増加・ホルモン分泌の変動・胃腸収容量の変化・代謝機能の悪化など、身体面へ影響しますが、「食べ過ぎた」という罪悪感と不快感から食事を楽しむことができなくなるなど、精神面にも影響を及ぼす恐れがあります。

急に何かを食べたくなった時、その理由が何かを考えてみましょう。空腹感には身体的な空腹感と感情的・精神的空腹感があり、食事が必要な空腹感は身体的空腹感です。ストレスや疲れが原因で感じる空腹感は加工食品の過食に繋がりやすく、エネルギーの過剰摂取に繋がります。何か食べたいあなた、何が食べたいですか? 甘いデザートやお菓子、味が濃いものなど、依存症を引き起こしやすい加工食品を思い浮かべたのであれば食べる前になぜ食べたいかを考えることで、過食衝動をコントロールできるかもしれません。
適量の甘いものを食べつつ、食べ物に常に気を付けて、時にはすぐ食べたい気持ちを我慢することで健康な食生活を楽しむことができるでしょう。

, ,

食物依存症と過食 Part1: 体への影響

目の前にはチョコレートがひと箱あります。今日は仕事がいつもより忙しく、ストレスや疲れも溜まっているので、「心の癒しのためにちょっとだけ」と思って手を出したものの、いつの間にか全部食べてしまいました。そして甘いものを食べたせいか、塩辛いものが無性に食べたくなり、ついポテトチップスも一袋食べきってしまいました。食べきった後には、「しまった」と罪悪感に近い気持ちが押し寄せてきて憂鬱になります。ダイエットを頑張っている人で、こういう経験をした方は意外と多いかもしれません。こういうことになると殆どの人は自制心が足りないと思い、自分を責めることもありますが、ある理由による過食は自分の意志だけで克服するのはなかなか難しいものです。

食物依存症という言葉を耳にしたことがありますか? よく摂食障害である過食症と勘違いされやすい症状ですが、過食症が強い痩せ願望などの精神的な部分が原因であることに対し、食物依存症は食べ物を食べる行為自体に依存するという違いがあります。薬物依存症やアルコール依存症のように、食べ物に対して化学的に中毒症状を起こしている状態と考えた方がわかりやすいかもしれません。これから食物依存症と過食の関係を確認し、体成分にどのような影響を及ぼすかを説明します。


食物依存症とは?


食物依存症は大きく3つの特徴を持ちます。
▶ 食べる行為をコントロールできない
▶ 身体・精神的な悪影響にもかかわらず食べ続ける
▶ やめたいと思いながらも食べることをやめられない

食物依存症が問題になり始めたのはここ10年ほどで、まだ明確に定義されていない部分が多いですが、放置すると摂食障害に繋がる可能性が高い状態なのは確かです。全ての食べ物が食物依存症を引き起こすわけではありません。最近の研究では、果物や野菜など加工されていない食品は依存症になる危険性が低く、ピザやチョコレート、ポテトチップスの順で依存症の危険性が高かったと報告されています¹⁾。 依存症になりやすい食品の共通点としては高脂質・高塩分・高糖質が挙げられます。甘く、塩辛く、脂っこい食べ物は依存症を引き起こしやすいですが、中でも特に強く働くのは甘味です。塩辛さや脂っぽさは甘味をうまく隠したり、甘味を引き立てたりして、さらに食が進むようにします。強い甘味が食物依存症を引き起こしやすい理由は、大きく3つ挙げられます。

ドーパミンとオピオイドの作用

ドーパミンは脳に働く化学物質で、報酬系という部分を活性化させて行動を強化します。人は褒めてもらうと、その行為を繰り返すようになります。これはドーパミンが働き、褒めてもらうための行為を強化したためです。依存症も「甘いものを食べる」「アルコールや薬物を使用する」などの快感を得る行為がドーパミンによって強化された状態です。オピオイドも脳に働く化学物質で、エンドルフィンもオピオイドの一種です。鎮痛作用もあり快感を与えるもので、手術や末期がん患者に使用する鎮痛剤にも使用されますが、麻薬の成分としても使われます。糖と脂質が結合されたものを食べるとき、オピオイドを分泌する脳神経は素早く活性化されます。オピオイドの作用で脳が「快感」を感じると、ドーパミンが増加し、報酬系が活性化されることで快感を得られたもの(甘いもの)を食べる行為を強化させます。甘味はこの一連の脳内作用に強く働きます。つまり、甘いものを食べるとオピオイド回路が活性化されて幸福感を感じ、ドーパミンが報酬系を活性化させることで甘いものを食べる行為を強化させます。

インスリンとレプチンの作用

食事をすると血糖値が上昇します。血糖値が上がるとインスリンが分泌され、糖を細胞に届けてエネルギーとして使うことで血糖値を下げます。そのため、血糖値が急に上がると、一時的にインスリン分泌量も増加します。一方、レプチンは満腹感を感じるようにします。一般的に食事を開始して20分ほど経つと分泌されますが、レプチンの信号が脳に届くと「エネルギーが十分なのでもう食べなくていい」という状態となります。これが満腹感で、満腹感をよく感じない人はレプチンの信号を脳がうまくキャッチできていない状態とも言えます。インスリンが送る「血糖値が高いのでインスリンをもっと作って欲しい」という信号と、レプチンが送る「もう食べなくていい」という信号は脳の同じ部分(視床下部)に届きますが、問題はインスリンとレプチンが視床下部に送る信号が同じで、片方が届くともう片方の信号にはうまく反応できないという状態に陥りやすいということです。甘いものを食べると血糖値が急激に上昇するため、インスリンの分泌が先に起こり、そのあとレプチンが分泌されますが、すでにインスリンの信号を受けている脳はレプチンの信号をうまく受け取れなくなります。そのため、満腹感を感じるまで時間がかかり、レプチンの信号を脳が受け取れるまで食べるようになります。この状態が長期化すると脳がレプチンの信号にうまく反応できなくなるレプチン抵抗性が発生し、ますます過食が進んでしまいます。

「甘味=食べていい状態」という生体的認識

必要なエネルギーを効果的に得るため、人はある味を本能的に好きになるように進化してきました。例えば、高カロリーの脂っこい食べ物は飢餓状態になっても生き残れるためのエネルギーを蓄積できる物であるため、積極的に摂取するようになっています。脂がのっている魚や肉をおいしく感じるのもこのような本能が働くからといえるでしょう。甘味も同じです。昔、果物は決まった時期にしか食べられず、果物から得られる栄養分を摂取する時期も限られていました。そのため、熟した果実の甘さを「食べころ」の信号として体が覚え、積極的に手を出すようになっているといいます。また、腐った食べ物は甘い味がしないため、「甘味=安全な食べ物」として認識し、好むようになったともいわれます。

甘いものを食べること自体は、精神的に安定をもたらす効果もあり、悪いだけではありません。しかし、食物依存症になるのは問題です。依存症になりやすい甘さは砂糖など高度に精製された甘さですが、砂糖は果物などとは違ってカロリー以外の栄養分が殆どありません。つまり、同じ甘いものでも果物はビタミンや食物繊維なども一緒に摂取できますが、砂糖ではカロリーしか得られません。そのため、少量でもカロリーの過剰摂取に繋がりやすいです。そして、依存症になるとコントロールが効かず、過食に繋がりやすくなります。


過食の原因と問題


過食の原因は前項で述べた食物依存症もありますが、他の理由もあります。

慢性的または過度なストレス
ストレスを感じるとこれを和らげるためにコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは筋肉を分解して血糖値を上げるのと同時に、レプチンの分泌量を低下させるため食欲を高めます。また、ストレスが溜まるとセロトニンの分泌量が少なくなります。すると、体はセロトニン分泌量を高めるために必要なアミノ酸を脳に届かせようとし、アミノ酸を運搬するインスリンの分泌を促進させます。インスリンは血糖値が高くなると分泌されるため、結果的に甘いものを食べたくなります。

極端な食事制限
極端な食事制限は体にひどいストレスを与えるため、コルチゾールの働きによって食べ続けるようになります。また、食事制限によって慢性的な栄養不足状態に陥ってしまうため、食べ始めると足りなかった栄養分やエネルギーを補充しつつ、エネルギーが足りなくなったときの予備として食べ続けるようになることもあります。

 


食事は生きるために必要なことですが、過食は体に様々な問題を起こします。過食が招く問題としては次のようなことが挙げられます。

代謝症候群・肥満
過食の特徴は「早食い」と「コントロール障害」です。早く食べるとレプチンが働く前にすでに食べ過ぎてしまい、コントロールができないため満腹感を感じても食べ続けます。食べすぎることで膨満感(お腹の張り)を感じると体を動かすことも容易ではなくなり、運動を避けるようになるので、過剰なエネルギーを消費できず体脂肪として蓄積され肥満に繋がります。肥満によって心血管機能も低下しやすくなり、動脈硬化や血液循環の悪化など、心血管疾患の原因になります。

インスリン・レプチン・ドーパミンの変化
過食すると血糖も急に増加するとともに、血中インスリン濃度が高くなります。この状態が長期化するとインスリンがうまく働かなくなりますが、このような症状をインスリン抵抗性といいます。インスリン抵抗性は糖尿病の原因となり、細胞にエネルギーがうまく届かなくなるため代謝機能の障害を招きます。過食によって血中のレプチン濃度も高くなります。レプチンは脂肪細胞で分泌され、満腹感以外に体脂肪量を一定水準に維持させることにも関わります。つまり、体脂肪量が多すぎるとエネルギーが余り過ぎという信号を送り、エネルギー消費量を高めますが、体脂肪量が少なくなるとエネルギーを体脂肪として蓄積するようにします。血中インスリン濃度が高くなるとレプチン反応が鈍くなるため、脂肪細胞はレプチン分泌量を増加させて脳に信号が届くようにします。長期間レプチン濃度が高く維持されると、インスリンと同じくレプチン抵抗性が生じ、満腹感をよく感じられなくなります。過食でドーパミンが分泌されて報酬系が活性化されても、脳は徐々にその刺激に慣れてしまいます。そのため、最初に味わった満足感を得るためにはより多く食べないといけなくなります。また、ドーパミンの働きが収まった後は罪悪感などで落ち込んでしまうことも多いです。このように、定期的且つ長期間の過食習慣はホルモンの働きにも悪影響を及ぼします。

胃腸の収容量が増える
胃腸は伸縮性が良いため、過食が続くと飲食物収容量が増加します。これも満腹感を得ることが難しくなる原因になり、過剰なカロリー摂取に繋がります。

睡眠障害を起こしやすい
夜は過食しやすいですが、これは睡眠障害にも関連してきます。生活リズムの乱れや睡眠不足による疲れ・ストレスは、さらに高カロリーの物を食べるようになるなどの悪循環に繋がり、体脂肪量の増加と筋肉量の減少による疾患のリスクを高める恐れがあります。

ここまでは食物依存症と過食について確認しました。次のトピックではこれらをどのように改善できるのか、その方法について説明します。

 

参考文献
1. Which Foods May Be Addictive? The Roles of Processing, Fat Content, and Glycemic Load. Erica M. Schulte, Nicole M. Avena, Ashley N. Gearhardt. PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0117959 February 18, 2015

,

カフェインが体に及ぼす影響

【質問】コーヒーや緑茶など、カフェイン含有飲料をどれほど飲んでいますか?
国際コーヒー機関(IOC)が2018年に発表した「世界の1人当たりコーヒー消費量」統計データによると、2017年に日本人1人当たりが1年間に消費したコーヒー消費量は3.64kgです¹⁾。疲れてなかなか目が覚めない朝、コーヒー一杯でパッと目が覚めたり、夜遅くまで勉強や仕事をするときにコーヒーを飲んで眠気を飛ばしたりした経験はあるでしょう。カフェインの覚醒効果や食欲抑制効果についてはよく知られていますが、体成分についてはどうでしょうか? カフェイン摂取は体成分に対して一体、どのような影響を及ぼすのでしょうか?

実は、カフェインは体脂肪の燃焼を促進する効果を持つだけではなく、運動効果を高める効果もあるため、体重調節に役立ちます。もしダイエット中に水以外の飲み物で良いものがないか悩んでいるのであれば、コーヒーは良い選択肢になるかもしれません。これから、カフェインがどのように体脂肪量の減少に役立つか、そのメカニズムについて確認してみましょう。


カフェインはどうやって体脂肪を「燃焼」させるのか?


よく「体脂肪を燃焼させる」といいますが、もちろん脂肪細胞を火で直接燃やすという意味ではありません。「体脂肪を燃焼させる」ということは、体脂肪をエネルギー源として使うということを指しています。体脂肪という単語を聞くと、脂肪の塊のような脂肪組織をイメージしやすいですが、この形の体脂肪はエネルギー源として使用できません。脂肪細胞の中には遊離脂肪酸というものが含まれており、この遊離脂肪酸の形で血液中に存在するときのみエネルギー源として使用されます。そして、エネルギー源として使用されないときはブドウ糖と合成して中性脂肪となり、脂肪組織に蓄積されます。つまり、体脂肪量を減少させるためには脂肪組織の中に含まれている遊離脂肪酸を血液中に放出し、消費する必要があります。そして、カフェイン摂取は遊離脂肪酸の放出量を増加させる効果的な方法の一つです。

カフェインの摂取により、脂肪分解というプロセスが促進されます。具体的に言うと、カフェインを摂取するとリパーゼという消化酵素が活発になり、このリパーゼが体脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解し、エネルギー源として使用できる形に変えます。また、カフェインを摂取すると血中のアドレナリンとノルアドレナリンというエネルギー性ホルモンの濃度が高くなります。これらのホルモンは腎臓から分泌されるものですが、心拍数を増やしたり、血管の収縮・拡張を誘導したり、脂肪組織での脂肪分解作用を促進させたりする働きもあります。つまり、カフェインは体脂肪の分解作用を手伝う酵素やホルモン分泌を促進させ、体脂肪の「燃焼」を起こりやすくします。


カフェインと代謝機能の関係

遊離脂肪酸の形になった体脂肪をエネルギー源として使用することを代謝といいます。この代謝能力は食習慣や生活習慣、遺伝などの様々な要因によって高くなったり低くなったりします。そして、カフェインはこの代謝機能の改善にも役立ちます。

どうして運動後には体が温まるのでしょうか? 代謝活動によりエネルギーを消費したときのプロセスとして熱生産があります。代謝が発生する際には必ず熱エネルギーが発生するため、代謝と熱生産は1セットとして考えられますが、カフェインを摂取すると熱生産量が増加するという研究があります。この研究によると、カフェイン400mg摂取またはコーヒーを2~3杯飲むことで、熱生産が増加したと報告されています²⁾。最近では、カフェインが代謝に関わる特定遺伝子を活性化させることで体細胞の代謝率を高めることができるということが分かってきました³⁾。この通り、カフェイン摂取は代謝を高める効果があり、より多くエネルギーを消費できるようにします。


カフェインと代謝機能の関係


今までは細胞単位で行われるエネルギー消費において、カフェインがどのように働くかを確認しました。しかし、このようなプロセスが本当に体重減量という結果に繋がるのでしょうか? カフェインと体重減量に関する研究について、いくつか調べてみましょう。

カフェインの消費量が多い人と少ない人が混ざっている過体重の76名を対象にした研究では、低カロリーの食事を4週間続けた結果、女性において4週後の体重減少量とカフェイン消費量が相関するということが明らかになりました。つまり、カフェイン消費量が多い人がより減量したという結果になります⁴⁾。その他にも2016年に行われた観察調査では、カフェイン摂取量が多い人は減量後にも体重を維持できていたと報告しています⁵⁾。せっかく体重減量に成功しても、維持できずリバウンドしてしまっては再び減量することは難しくなります。減量した体重を維持することに苦労しているのであれば、適量のカフェインを摂取することが役に立つかもしれません。このように多くの研究で体重減量とカフェイン摂取量が関係していると示されていますが、これはカフェイン摂取だけで体重を減量できるというわけではなく、体重減量・維持においてカフェインが効果的という意味であることを忘れないでください。


カフェインと運動効果の関係


最も確実に体脂肪量を減らす方法が何かを聞かれると、誰でも運動と答えるでしょう。運動は体脂肪量を減少させるだけではなく、筋肉量を増加させるなど、体成分を改善させることで基礎代謝量を高め、太りにくい体質にすると科学的に証明された方法です。では、この運動にカフェイン摂取を加えると更なる効果が期待できるのでしょうか?

激しい有酸素運動にカフェイン摂取をプラスすると、エネルギー源として使用される遊離脂肪酸の量が増加し、血流を促進するアドレナリンの濃度が2倍以上に増えます。つまり、運動に必要なエネルギー源が活発に供給できる状態になるため、運動の効果を高めるだけではなく、エネルギーが良く消費されることで更に脂肪分解が強化されます。また、個人によってはカフェインの働きにより筋肉内のグリコーゲン消費が抑えられる効果も期待できます。運動によって筋肉に貯蓄されたグリコーゲンは消費されますが、この消費量を抑えることでより長く運動を続けることができるようになります。

カフェインと運動の組み合わせには他のメリットもあります。カフェインは少ない量(コーヒー1~2杯ほど)でも、気分を高揚させ、認知能力を高め、運動中及び運動後の集中力を高めます。前項でカフェインの摂取によりアドレナリンとノルアドレナリンの濃度が高まると述べましたが、アドレナリンは運動時にも分泌されます。アドレナリンによって血管が拡張され、心拍数が上がると、血流が速くなって酸素が筋肉や細胞により多く供給されるようになり、運動能力が高まります。そして、アドレナリンが脳に働くとエンドルフィンやドーパミンというホルモンの分泌も促進されます。これらのホルモンはモチベーションを高めたり、運動による疲れを軽減させたり、鎮痛効果もあるため、より長く運動を続けられるようになります。このようなホルモンの影響から、カフェイン摂取で次のような運動の強化が期待できます。

▶ 持久力強化: サイクリング選手を対象とした研究ではノンカフェインコーヒーを飲んだ選手群よりカフェイン含有コーヒーを飲んだ選手群の速度パフォーマンスが有意に高く示されました⁶⁾。摂取量とは関係なく、カフェインを摂取することで持久力の向上が期待できます⁷⁾。
▶ 筋力強化: 筋トレをしている男性をカフェイン摂取群と非摂取群(プラセボ投与)に分け、筋力を測定した結果、カフェイン摂取群の筋肉収縮時最大筋力が有意に高くなりました⁸⁾。女性においても上半身筋力の有意な増加を確認した研究があります⁹⁾。
▶ 高強度運動の持続時間延長: カフェイン摂取群と非摂取群(プラセボ投与)に分けて、それぞれ激しい有酸素運動を行い、筋肉内グリコーゲン量を比較した結果、カフェイン摂取群で筋肉内エネルギー(グリコーゲン)の状態が良好であったことから、筋肉内グリコーゲンの節約効果も期待できます¹⁰⁾。


カフェインとテストステロンの関係


男性ホルモンと呼ばれるテストステロンは筋肉量を維持しつつ、体脂肪量を減らしたいときに注目すべきホルモンです。肥満男性を対象にした研究で、テストステロン補助剤を摂取した群は対照群に比べて筋肉量がより増加し、体脂肪量はより減少することが確認されています¹¹⁾。このように、テストステロンの血中濃度が高まれば、運動効果を強化することができます。カフェインはテストステロン濃度を高める効果を持っているため、運動効果の強化に繋がります。。最近の研究によると、ハーフタイムでカフェイン含有のガムを噛んだラグビー選手とプラセボ群のテストステロン濃度を比較した結果、15分後のテストステロン濃度はカフェイン摂取群が70%も高い数値を示す結果となりました¹²⁾。テストステロンは筋肥大反応に影響を及ぼすホルモンでもあるため、カフェイン摂取後の筋トレでより効果を高めることもできるでしょう。


適切なカフェイン摂取量について


このように様々な効果を持っているカフェインですが、「薬も過ぎれば毒となる」といわれる通り、摂りすぎはかえって健康を損なうことになります。カフェインの過剰摂取はめまいや吐き気、頭痛、不眠症、神経障害、幻覚・幻聴などの身体的な副作用はもちろん、カフェインによってドーパミンの分泌量が増加し続けると、逆に脳がドーパミンに鈍くなるため、深刻な憂鬱状態を引き起こすなどの精神的な副作用もあります。従って、カフェインの摂取量は目的に合わせてコントロールすることが大事です。運動効果を高めたい場合は、少量のカフェインでも十分効果があるため、コーヒー一杯ほどの量でも十分でしょう。体脂肪の分解に関してはカフェイン摂取量が多くなると効果も比例して現れますが、過剰摂取による急性カフェイン中毒は死亡に至ることもあるほど危険な状態であることを忘れてはいけません²⁾。

カフェイン中毒症状が現れるのは、成人の場合1,000mgを短時間で摂取した場合といわれています¹³⁾。ただ、カフェイン感受性が高い人であればこれより少ない量を摂取してもカフェイン中毒症状が現れることもあるので、異常を感じたら摂取量を減らすことが必要です。参考までに、代表的な飲料のカフェイン含有量は次の通りです。

飲料100mL当たりのカフェイン含有量の目安

食品名 100mL当たりのカフェイン濃度 備考
カフェインが多く添加された清涼飲料水 32~300mg 製品によってカフェイン濃度、内容量が異なる
インスタント珈琲(顆粒製品) 60mg インスタントコーヒー粉末2g、熱湯140mL
コーヒー(浸出液) 60mg 浸出法:コーヒー粉末10g、熱湯150mL
紅茶(浸出液) 30mg 浸出法:茶5g、熱湯360mL、1.5~4分
せん茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶10g、90℃ 430mL、1分
ほうじ茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分
ウーロン茶(浸出液) 20mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分
玄米茶(浸出液) 10mg 浸出法:茶15g、90℃ 650mL、0.5分

「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」厚生労働省より算出¹⁴⁾

コーヒーや緑茶、紅茶に含まれているカフェインは、元々含まれている他の成分によって効果がある程度抑えられることもあるといわれていますが、エナジードリンクやカフェイン補助剤によるカフェイン摂取は一気に多量のカフェイン摂取に繋がりやすいため、注意が必要です。


適切なカフェインと上手く付き合いましょう

今まで説明しました通り、適量のカフェインは体脂肪減量に頑張るあなたの頼もしい味方になってくれるでしょう。また、コーヒーやお茶を飲みながらリラックスすることは、疲れやストレスを和らげ、厳しい減量にも頑張れるようモチベーションの維持にも役立つでしょう。カフェインの効果や副作用について理解し、良い効果だけを得られるようにうまく付き合うことが大切です。毎日頑張っているあなたに、心と体の健康をもたらすコーヒー一杯をご馳走してはいかがでしょうか?

 

参考文献
1) 「世界の国別一人当たり消費量」社団法人全日本コーヒー協会ホームページ統計資料
2) Caffeine: a double-blind, placebo-controlled study of its thermogenic, metabolic, and cardiovascular effects in healthy volunteers, Astrup A. et al., Am J Clin Nutr. 1990 May;51(5):759-67
3) Metabolic effects of physiological levels of caffeine in myotubes. Jamie K. Schnuck et al., Journal of Physiology and Biochemistry, February 2018, Volume 74, Issue 1, pp 35–45
4) Body weight loss and weight maintenance in relation to habitual caffeine intake and green tea supplementation, Westerterp-Plantenga MS et al., Obes Res. 2005 Jul;13(7):1195-204
5) Caffeine intake is related to successful weight loss maintenance, Icken D. et al., Eur J Clin Nutr. 2016 Apr;70(4):532-4
6) The Metabolic and Performance Effects of Caffeine Compared to Coffee during Endurance Exercise, Adrian B. Hodgson et al., PLoS One. 2013; 8(4): e59561
7) The effect of different dosages of caffeine on endurance performance time, Pasman WJ et al., Int J Sports Med. 1995 May;16(4):225-30
8) Effect of caffeine ingestion on maximal voluntary contraction strength in upper- and lower-body muscle groups, Timmins TD et al., J Strength Cond Res. 2014 Nov;28(11):3239-44
9) Caffeine enhances upper body strength in resistance-trained women, Erica Goldstein et al., J Int Soc Sports Nutr. 2010; 7: 18
10) Regulation of muscle glycogenolytic flux during intense aerobic exercise after caffeine ingestion, Chesley A. et al., Am J Physiol. 1998 Aug;275(2 Pt 2):R596-603
11) Effects of testosterone treatment on body fat and lean mass in obese men on a hypocaloric diet: a randomised controlled trial, Mark Ng Tang Fui et al., BMC Med. 2016; 14: 153
12) The Physiological and Performance Effects of Caffeine Gum Consumed During A Simulated Half-Time By Professional Academy Rugby Union Players, Russell M. et al., J Strength Cond Res. 2017 Nov 27
13) 「保健師・薬剤師・看護師向け中毒情報、カフェイン含有飲料(コーヒー、紅茶、緑茶、ココア)」日本中毒情報センターホームページ
14) 「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」厚生労働省

, , ,

出産後に体型を戻す方法

出産後は殆どの女性が、喜び・悲しみ・感動・不安・幸福・緊張・驚き・恐怖など、様々な感情の起伏をジェットコースターの様に経験します。すべての感情が、喜びや幸せのようなプラスな感情であったとしても、感情の束は体に負担を掛けます。

母乳育児は、妊娠前の状態に戻るようにダイエットを促すものではありません。クローゼットに眠っているジーンズを最後に履いたのはいつでしょうか? 妊娠前の遠い記憶です。妊娠前はスタイルが良かったとしても、体重の増加や分娩の影響による腹部のたるみなど、身体的な変化は避けられません。しかし、体型は元に戻すことができます。大事なことは、自身の身体的変化を知り、何ができるのかを学ぶことです。


妊娠中及び出産後の体成分の変化


お腹の中で子どもを育み、出産に備えて身体を整える約10か月の妊娠期間は、体成分が変化する期間でもあります。妊娠期間に大きく変化する体成分は体脂肪量です。体脂肪量は出産日に近づくに連れ増加していきますが、この体脂肪量には自身の体脂肪量増加分に加え、赤ちゃんの体重・拡大した子宮と乳房・余分な血液・胎盤・羊水が含まれています。体内で電流の流れない部分は非伝導体として体脂肪量に測定されるため、電流が上手く通らない羊膜内も体脂肪量として換算されてしまいます。

では、羊膜内以外の本来の体脂肪量は何故増加してしまうのでしょうか? 母体は、赤ちゃんの発達と母乳育児の準備のために脂肪組織が必要となります。しかし、残念ながら出産に備えるためにどれだけの体脂肪量がどこの部分に必要なのかなどの、明確な研究結果は殆ど出されていないのが現状です。出産を経験した557人の健康な女性を対象に、妊娠前から出産後までの体脂肪量の変化をモニタリングした研究では、体脂肪が貯蓄される時期・部位・量は個人差があり、個々によって異なると結論付けています¹⁾。妊婦の体脂肪量に関する研究を曖昧にしてしまう理由は、様々な要因によって母親の体成分(筋肉量・除脂肪量・体脂肪量など)の変化を明確に判断できないためです。いろんな要因の中の一つとして、母親とお腹の赤ちゃんの体成分を分離することができないことが挙げられます。

しかし、次の様な興味深い研究が発表されています。体脂肪量増加の程度に関する因子として、初産婦であるか経産婦であるかが関係するという研究です。この研究では初産婦は経産婦より妊娠中の体脂肪量増加が高いことを示し、出産半年後の時点でも初産婦の方が体脂肪の貯蓄が多かったことが報告されています²⁾。

出産後は、体成分が大きく変化するタイミングです。出産直後は赤ちゃん・胎盤・羊水・余分な血液などの分で、体重が大きく減ることになります。そして約6週間で子宮の大きさが小さくなり、妊娠前の体重に近づいていきます。これらの重さは自然と減っていきますが、残念なことに妊娠中に蓄えられた体脂肪は自然と消えてはくれません。蓄えられた余分な体脂肪のうち、いくらかは母乳育児の中で減らすことができるかもしれませんが、それ以上に体脂肪量を減らすためにはどのような対策が必要でしょうか?


腹直筋離開


妊婦の体型に大きく影響する一つの要因が腹直筋離開です。腹直筋離開とは胸骨から恥骨まで走る腹直筋の中心部分の白線という腱が横に伸びて薄くなり、左右の腹筋が離れて開いた状態になることです。妊娠が進むにつれて、赤ちゃんのスペースのために子宮は成長し、腹部の筋肉は伸びていきます。腹直筋離開は妊娠女性の大半が経験しますが、分離の程度と位置は個々によって異なります。妊婦の腹直筋離開に関するある研究では、68%の妊婦がおへそより上部、32%がおへそより下部で分離が発生したと報告しています。

出産後、分離の程度は自然と和らぐこともありますが、それだけでは完全に元通りになることは殆どありません。出産後の目立ったお腹や出産後から数か月経っても妊娠している様に見える体型は、弱くなってたるんだ腹筋が原因となっています。


安全で効果的なダイエット計画

前項で妊娠後の体型変化の要因を、体成分の変化と腹直筋離開の2点から説明しました。ここでは出産後体型の回復・改善を促すために、妊娠中に気を付けるべき点や出産後の運動などについて詳しくお話しします。

母乳育児の影響と体成分
恐らく、自然と体重を減らすことに繋がる最後のチャンスが母乳育児です。母乳育児と体重減少は関連していることを示す研究が増えてきています。最も結果が顕著に現れていた疫学的研究はデンマークの研究で、母乳育児6か月の女性が合理的に除去できる体重は12kgと定義しています³⁾。これらの所見は、母乳育児と混合育児(母乳と人工ミルクの混合栄養)の母親の体脂肪量を比較しているアメリカの研究結果でも裏付けされています。この研究で、出産後12週間は混合育児よりも母乳育児の方が母親の体脂肪量減少を促進していたことが分かりました⁴⁾。

では、授乳中の女性は母乳を作るためにいくらか体脂肪が必要であることを考慮して、どれだけの減量が「安全」と言えるのでしょうか? 出産後の体重が標準の場合は減量に励む必要はありませんが、過体重の女性に関しては授乳中でも1週間あたり約0.5kgの減量(出産後4~14週)は、新生児の成長と発達に悪影響を及ぼさないことが報告されているので、目安にしてください。

妊娠中の食事と体重管理

妊娠中は、赤ちゃんに与える栄養が必要と考えていつも以上に食べ過ぎていませんか? 食べつわりで、常に何か口にしないと落ち着かない方も少なくはないでしょう。高カロリーばかりの偏った食事や過度な体重増加は様々なリスクを高めます。太り過ぎは、妊娠高血圧・妊娠糖尿病・腰痛などの妊娠合併症の原因となります。これらが悪化すると、胎盤の機能低下・流産や早産の原因になる・胎児が巨大児になるなど、母子ともに危険な状態になってしまいます。また、産道にも体脂肪が付くことで難産の原因となったり、微弱陣痛でお産が長引いたりすることがあります。太り過ぎの妊婦は出産を終えるまでこれだけのリスクを抱えていますが、出産後も体重が戻りにくく妊娠線ができてしまうなどの問題があります。出産後体型の回復を早めるためにも、妊娠中に過度な体重増加を指摘された場合は次の点を心掛けましょう。
・規則正しい生活と食事を心掛ける
・早食いを避けて、ゆっくり食べる
・食生活を見直す(食べた物を書いてみると良い)
・間食や夜食を控える
・就寝前の2~3時間は飲食を控える
・油分を控え網焼きや蒸し物に代用するなど調理方法を工夫する

出産直前の体重増加は7~8kg程度が理想的です。理想的に体重増加した際の内訳は、赤ちゃんの体重約3kg、胎盤の重さ約0.5kg、羊水の重さ約0.5kg、乳房・子宮・血液・水分・体脂肪などお母さんの増加分が約3~4kgとなります。これ以上の体重増加はすべてお母さんの体脂肪です。体重は週に500g以上増えないよう気を付けましょう。

体型別の体重増加の目安

BMI ~18 18~24 24~28 28~
体型 痩せ気味の人 標準 肥満気味の人 肥満
体重増加の目安 12kg 8kg 5kg 0kg

妊娠中に必要な栄養素


妊娠中・授乳中に積極的に取り入れたい食品は「食物繊維・鉄分・カルシウム・葉酸を多く含む食品」です。加え、これらの吸収を助ける働きがあるビタミン類も一緒に取るようにしましょう。一方、妊娠中は高血圧や浮腫みが現れやすいので、塩分を控えめにした食事を心掛けましょう。

食物繊維
妊娠中はホルモンの影響などで腸の動きが鈍くなるため、便秘がちになります。便秘予防には食物繊維を積極的に取ることが効果的で、豆類・野菜・きのこ・海藻・果物などに多く含まれています。また、ヨーグルト・納豆・味噌・漬物などの発酵食品も、腸の働きを活発にするので取り入れて欲しい食品です。

鉄分
妊娠中はより多くの血液と鉄分が必要になるため、貧血になりやすくなっています。もともと貧血気味であった方だけでなく、食事が思うように取れていない方や痩せ気味の方も、妊娠前より多くの鉄分を摂取するよう、食品やサプリを選択しましょう。鉄分の摂取基準量は妊娠初期で8.5~9.0mg/日、妊娠中期と後期で21.0~21.5mg/日です。レバー・あさり・豆腐・小松菜・ほうれん草などの食品は鉄分を多く含んでいます。

カルシウム
カルシウムは日本人に不足しがちな栄養素ですが、赤ちゃんの発育にとても必要な栄養素です。また、妊娠してからこむら返りに悩まされるようになった方も多いと思います。カルシウム不足と妊娠によるホルモンバランスの崩れが原因で、こむら返りが発生します。1日の摂取基準量650mgを目安に、乳製品・小魚・豆腐などカルシウムを多く含む食品を摂取しましょう。

葉酸
妊娠中は血液量が増えるので、普段より多くの葉酸が必要になります。葉酸が不足することで貧血・流産・早産・妊娠高血圧症候群などが起こりやすくなります。また、赤ちゃんの口蓋裂や低出生体重の原因となることもあります。葉酸は授乳中も必要な栄養素となりますので、1日の摂取基準量0.4mgを目安に積極的に取り入れましょう。レバー・納豆・ほうれん草・いちごなどの食品は葉酸を多く含んでいます。

ビタミン類
鉄分とカルシウムは吸収されにくいので、吸収を助ける働きがあるビタミンを多く含む食品を一緒に取ると良いでしょう。鉄分の吸収を助ける食品は、ビタミンBとビタミンCを多く含む食品で、卵白・干しシイタケ・魚・柑橘類・野菜などが挙げられます。カルシウムの吸収を助ける食品はビタミンDを多く含む食品で、卵黄・いわし・バター・きくらげなどが挙げられます。

妊娠中と出産後・授乳中の運動


妊娠中は様々な制限があり、運動をためらう方もいらっしゃるでしょう。しかし、妊娠中の適度な運動は過度な体重増加・腰痛・肩こり・こむら返り・便秘を予防するだけでなく、出産や育児に備えた体力づくりや気分転換にもなります。妊娠初期の運動は流産を招く恐れがあるという話もありますが、流産の殆どは染色体異常によるものなので適度な運動はまったく問題ありません。但し、子宮収縮抑制薬を服用している時・医師から安静するように言われた時・出血がある時・お腹が張っている時は運動を控えて安静にしてください。おすすめの運動は、腕をしっかり振りながらのウォーキング・マタニティヨガ・マタニティスイミング・マタニティビクスなどの負担をかけすぎない有酸素運動です。反対に、激しい運動・勝敗を決めるような競技・落下や外傷のリスクがあるスポーツ・お腹の赤ちゃんに十分な酸素が行き届かなくなるような登山や無酸素運動など、妊娠中に控えるべき運動もあります。

出産後すぐにも行える運動は、体への負担が少ない産褥体操や骨盤底筋群体操です。産褥体操は、妊娠・出産で伸び縮みしたお腹・子宮・腟壁・骨盤の筋肉の回復を促進します。また、新陳代謝を高め血行を良くすることで肩こり・浮腫み・腰痛が軽減し、母乳の分泌が良くなる効果もあります。出産後は骨盤周りの筋肉が緩み、尿漏れや痔が起こりやすくなっています。これらの予防には骨盤底筋群体操が効果的です。産褥体操や骨盤底筋群体操はベッドに横になったまま行える体操もあるので、出産後なるべく早い段階から始めてみましょう。

産褥体操 からだならし -出産後2日目から-
頭を起こす運動(5回×2)
① 仰向けに寝て、両足を伸ばす
② 片手をお腹に、もう一方の手を体側に置く
③ 息を止めずにお腹の上を見るように頭だけ起こす
④ ひと呼吸したら頭を下ろし、左右の手を替えて繰り返す


骨盤底筋群体操 -出産後3週間目から-
腰の上げ下げ運動(5~10回×3)
① 仰向けに寝て両膝を立て、お腹に力を入れ、腰をできるだけ高く持ち上げる
② 肩、背中、お尻の順に下ろし、力を抜く


授乳中の適度な有酸素運動は、母乳量・母乳の成分・乳児の成長に影響を与えることもなく、母親の循環器系機能を改善すると言われています。赤ちゃんが外出できるようになったら、一緒にお散歩がてらウォーキングを行うことも良いかもしれません。運動前は十分な水分補給も忘れないでください。


自分に優しく

出産に向けて約10か月かけ体重を増加、体成分を変化させましたが、元に戻すにはさらにもう10か月かかる場合もあります。母乳育児や赤ちゃんの世話にかかりっきりの人は、10か月よりさらに長い期間が必要かもしれません。出産後僅か週数間で体型を元に戻しているモデルや芸能人のことは忘れてください。お抱えのシェフやパーソナルトレーナーなど特別なチームを持っている女性の例は、あまり参考にすることができません。

先ず、出産後の自身の体型が現時点でどの位置であるのか把握する必要があります。体成分を測定して、具体的にどれだけ筋肉量と体脂肪量を調節すべきか調べてみましょう。これらの情報は、体型を戻すための目標設定に役立ちます。焦らず、時間をかけてください。「いつまでに、どれくらいの減量をする」と徐々に前向きな変化を楽しんでください。赤ちゃんと家族の健康も勿論大事ですが、自分の体も気にかけて労わってください。毎日の僅かな変化でも、きっと出産前の体型に戻るでしょう。

参考文献
1. Pregnancy-related changes in body fat. Sidebottom AC et al., Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol, 2001 Feb; 94(2): 216–23.
2. Body fat composition and weight changes during pregnancy and 6-8 months post-partum in primiparous and multiparous women. To WW, Wong MW, Aust N Z J Obstet Gynaecol, 2009 Feb;49(1):34-8. doi: 10.1111/j.1479-828X.2008.00933.x.
3. Breastfeeding reduces postpartum weight retention. Baker JL et al., Am J Clin Nutr, 2008 Dec;88(6):1543-51. doi: 10.3945/ajcn.2008.26379.
4. Effect of infant feeding on maternal body composition. Irene E Hatsu, Dawn M McDougald and Alex K Anderson, Int Breastfeed J, 2008; 3: 18.
5. 安心すこやか妊娠・出産ガイド -産婦人科診療ガイドライン:産科編2014 準拠ー, 関沢明彦 岡井崇 監修, 昭和大学病院総合周産期母子医療センター

, , ,

体脂肪減量に関する5つの迷信

体成分の改善は筋肉量の増加と体脂肪量の減少という、2つの違う成分に焦点を合わせて行われます。そして、この2つの中でも体脂肪量を減らすことは、特に大変で難しいというイメージを持っている方が多いでしょう。理論上、体脂肪量を減らすためにやるべきことは簡単です。摂取エネルギー量を消費エネルギー量より少なめにするか、消費エネルギー量を増やす、またはこの2つを並行するだけです。体にエネルギーが余ることなく、不足した状態にするだけで良いのです。エネルギーが足りなくなると、体は体脂肪として蓄えてきたエネルギーを使い始めるので、自然に体脂肪量は減少していきます。

こう聞くと簡単ですが、一度でもダイエットに挑戦した方なら、これがどれだけ大変なことか分かるでしょう。ダイエットを検討している方は少しでも楽に体脂肪量を減らせる方法を探しますが、これが間違った知識が広まってしまう最も大きい理由であり、この間違った知識を基にした様々な製品や記事が出ることで更に広まってしまう悪循環を招いています。

今から一度は聞いたことがある「体脂肪減量に関する迷信」を5つご紹介します。この知識がどう間違っているかの科学的根拠を理解することで、時間・費用・努力を無駄にせず、健康的に体脂肪量を減らせる道が見えてくるでしょう。


迷信その1. 体脂肪量を減らすためには運動だけを頑張れば良い


ダイエットをしようと思ったとき、その第一歩としてジムに登録する人が多いです。もちろん、食事だけ極端に減らして運動を全くしないダイエットは健康的な方法とは言えないので、運動をして体脂肪量を減らそうとすることは、健康的に痩せられる良い方法であることは間違いありません。しかし、運動「だけ」を頑張ればいい訳ではありません。運動と一緒に食事も管理しないと、せっかく運動をしても体脂肪量を効果的に減らすことができません。

より理解を深めるためには、体脂肪が使われるタイミングについて学ぶことが必要です。私たちは食事から様々な栄養素を体に取り入れますが、摂取した栄養素の中でエネルギー源として使われているのがグリコーゲン(ブドウ糖)です。グリコーゲンは肝臓や筋肉にも貯蓄されますが、グリコーゲンを貯蓄できる量は肝臓で6%ほど、筋肉(骨格筋)では0.4~0.6%にすぎません。体はエネルギーの摂取量が必要量を下回る時の備えとして、余った分のグリコーゲンを貯蓄しておこうとしますが、グリコーゲンのままで貯蓄可能な量は非常に少ないため、形を変えて蓄えておきます。この「形を変えた貯蓄分」が体脂肪で、いわばエネルギーの預金みたいなものです。そして、すぐ使えるお金(筋肉や肝臓に溜めておいたグリコーゲン)より必要なお金(エネルギー量)が多くなると、体は不足分を貯蓄分である体脂肪という名の預金から補い始めます。銀行口座からお金をおろすと残高が減少する様に、体脂肪として貯蓄していた分からエネルギーを引っ張ってきて使うと、体脂肪量が減ることになるのです。これがよく言う「体脂肪が燃焼する」ということであり、こうなるためにはエネルギーが不足した状態を作ること、「カロリー赤字」が必要となります。

例えば、Aさんの1日消費エネルギー量が2,100kcalとしましょう。Aさんが1日2,100kcalを摂取したとすると、「消費エネルギー量=摂取エネルギー量」の状態なので、体脂肪は燃焼も貯蓄もされず、体重は変わりません。そして、Aさんが運動して300kcalを消費し、摂取エネルギー量は変わらず2,100kcalだったとすると、消費エネルギー量は本来の2,100kcalに運動で消費した300kcalを上乗せした2,400kcalとなるため「消費エネルギー量>摂取エネルギー量」になって、300kcal分は体脂肪を分解して使うことになります。しかし、Aさんが運動を始めたことと一緒に食事量も増やすと、エネルギーが不足した状態にはならないため、体脂肪の分解も起こらなくなります。従って、体脂肪量を減らすためには運動量だけ増やすのではなく、摂取エネルギー量を増やさないように調整することも必要です。先ずは、今の自分に必要なエネルギー量がどのくらいなのかを正確に把握する必要があるでしょう。InBodyは基礎代謝量を基にした一日摂取エネルギー量の目安を提供します。また、ウォーキングやジョギングなどの運動による消費エネルギー量も表示することができるので、一日の総消費エネルギー量を計算することにも役立ちます。因みに、体脂肪量1kgを減らすために必要なエネルギー量については様々な意見がありますが、最大でも7,700kcalが必要とされます。一気にこれだけのエネルギーを消費するのは至難の業だと感じるかもしれませんが、1日に約260kcalのカロリー赤字を作ると、1ヶ月で1kgの体脂肪量を減らすことができます。せっかく運動を始めたのであれば、運動の効果が無駄にならないように、食事の管理も行いましょう。


迷信その2. 夜に食べるとそのまま体脂肪になる


一見、「夜に食べるとそのまま体脂肪になる」という説は間違っていないように思われるかもしれません。夜に食べ物を食べてすぐ寝ると、動いてエネルギーを消費するということがないので、そのまま体脂肪として蓄積されそうな気もします。この説については様々な見解や意見がありますが、どれも共通として指摘しているのは、寝る直前の食事は食道や胃腸などに負担をかけ、逆流性食道炎や睡眠障害などのリスクを高めるという点です。そして、睡眠中に体を休めていたとしても全くエネルギーを消費しないという意味ではないことも覚えておいてください。

基礎代謝量(REE)という言葉を耳にしたことはありませんか? 基礎代謝量は安静時代謝量と同じ概念で、安静時代謝量という言葉からも連想されるように、何もせずに休んでいる状態でも呼吸や心臓の鼓動など生命維持に必要な最小限のエネルギーを指します。このエネルギーを消費する代謝活動は寝ているからといって止まる訳ではありません。つまり、寝る前にものを食べても、その摂取エネルギー量を含む1日の総摂取エネルギー量が基礎代謝量内に収まるのであれば、体脂肪として変わることはありません。重要なのは摂取のタイミングではなく、摂取したエネルギー量ということです。基礎代謝量を調べる方法として、体重や性別・年齢などの個人の身体条件を用いて計算式で算出する方法がありますが、InBodyでは除脂肪量(筋肉量と骨ミネラル量の合計)を基に基礎代謝量を算出しています。基礎代謝量のうち内臓筋・心臓筋・骨格筋が約60%を占めており¹⁾、除脂肪量はこれらの筋肉すべてが含まれているため、より正確な指標としてご活用いただけます。ただ、夜に食べ物を食べるときは次のようなことに十分気を付けましょう。

▶テレビを見ながらお菓子を食べるなど、「ながら食べ」は控える
食べることに集中せず、他のことをやりながら食べると、摂取量をうまく調整できず、摂取エネルギーが急激に増える原因になります。

▶胃腸に負担がかかるものは控える
寝る前に胃腸に負担がかかるものを食べると、睡眠中にも体がちゃんと休めず、ホルモンの分泌が乱れたり、睡眠の質を落としたりする原因となります。睡眠によって分泌量が変わるホルモンの中には食欲や満腹感に関わるホルモンもあり、睡眠をしっかり取らなければ満腹感を感じにくくなり、エネルギー摂取量を増やす原因にもなります。


迷信その3. 「デトックス」や「ジュースクレンズ」で体脂肪量を早く減らせる


「デトックスダイエット」や「ジュースクレンズ」という言葉を聞いたことがありませんか? 特に若い女性の間で流行っているこの方法は、2日や3日の短期間、固形物を摂取せずジュースだけを飲むことで体にたまっている毒素を排出するという方法です。毒素は疲労や無気力、体脂肪量の増加にも影響するため、これを取り除くことで代謝量を上げ、短時間で体脂肪を減らせると言われています。しかし、このデトックスやジュースクレンズに関して科学的にその効果を明らかにしたものや、研究者によって正式に審査を受けた文献は全く存在せず、逆に医療・科学的観点からみると健康を害する恐れがあるという報告の方が、実は多いのです。ただ、いろんな体験談を見てみると、この方法は短期間で体重が大きく減り、効果があるように見えますが何故でしょうか。デトックスやジュースクレンズを行っている間、体内ではどのような変化が起きているのでしょうか。

デトックス中、体には必要な栄養分がほとんど供給されなくなります。特に、エネルギー源であるグリコーゲンを作る炭水化物は全く入らないため、体は一時的にグリコーゲン枯渇状態に陥ります。また、グリコーゲンはエネルギー源であると同時に水分を貯める機能もあり、1g当たり約3.5gの水分を貯めこみます。つまり、デトックスやジュースクレンズによって毒素が排出されるのではなく、グリコーゲンが枯渇して、グリコーゲンが貯めていた水分が減少しているに過ぎません。更に、体はエネルギー源があまりにも足りない状態(飢餓状態)になると、すぐに活用できるタンパク質(筋肉)を分解し、エネルギー源として使います。そのため、筋肉量も減少することになります。つまり、体重の減少は体脂肪によるものではなく、グリコーゲンが貯めていた水分が抜けていることに過ぎず、グリコーゲンが入るとまた元に戻ってしまいます。更に、筋肉量が減少してしまうので、基礎代謝量が減少することで消費エネルギー量も減少し、逆に今までより体脂肪量が増えやすくなってしまいます。


迷信その4. 低脂質食事をすることで体脂肪量を減らせる


脂質を摂取すると太るという話を聞いたことがある方は多いでしょう。ダイエットをしている方であれば、牛乳を買いに行っても普通の牛乳ではなく低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を手に取ったり、油を極力取らないためにサラダをそのまま食べたり、オイルをなるべく使わないようにするなど、脂質の摂取を減らすことで体脂肪量を減らそうとするかもしれません。しかし、脂質(脂肪)摂取量を少なくすることが体脂肪量を減らして肥満のリスクを下げることにも繋がるのでしょうか。実は、エネルギー量不足の状態を引き起こせるのであれば、脂質ではなく他の食品群を減らしても体脂肪量は減ります。脂質は炭水化物やタンパク質より体脂肪量が増えやすい栄養素という訳ではありません。

では、なぜ低脂肪食品が体脂肪量の減少や健康にいいという認識が広まったのでしょうか? その理由は三大栄養素とされる炭水化物やタンパク質と比べて、脂質の方が1g当たりのエネルギー量が高いからです。炭水化物やタンパク質は1g当たり4kcalですが、脂質は1g当たり9kcalとエネルギー密度が高い栄養素です。そのため、取りすぎると摂取エネルギー量が高くなりやすいですが、摂取量を極端に減らしたからといって、体脂肪量が減少するという訳でもありません。また、脂質はエネルギー源としても使用されますが、ホルモンや細胞膜・核膜を構成するなどの役割も持っています。更に、ビタミンの一部は脂溶性であるため、脂質と一緒に取らないとうまく吸収されず、ビタミン欠乏のリスクが高まります(ビタミンA・D・E・Kなどが該当します)。このように、脂質はエネルギー源として使われるだけでなく様々な役割も担っているため、摂取量を極端に減らしてしまうと健康を損ねることや、摂取すべき栄養素を摂取できなくなる恐れがあります。だからといってフライドポテトのような揚げ物をたくさん食べても健康に問題がないというものではありません。

重要なのはむやみに脂質摂取量を減らすより、「良い脂質」を適量取ることです。トランス脂肪酸や飽和脂肪酸といわれる脂質は「悪い脂質」で、体脂肪量を増やす原因となりますが、不飽和脂肪酸はコレステロールのコントロールに役立つHDLコレステロールの量を増やす働きをし、健康を維持・改善させます。厚生労働省は1日のエネルギー摂取量のうち、20~30%に該当する量の脂質を摂取するよう目標量を定めています²⁾。良い脂質を含んだ食品としてはアボカド、クルミやピスタチオなどのナッツ類、サーモン、豆腐、卵、牛肉や豚肉の赤身部分などがあります。そして、意外だと思うかもしれませんが、ダークチョコレートには食物繊維はもちろん、ビタミンA・B・E・カルシウム・カリウム・マグネシウムも含まれているので、適量のダークチョコレートは良い脂質を摂取しつつ、甘いものを取らないことで溜まってしまうストレスやイライラの解消にも役立ちます。


迷信その5. 特定部位を鍛えることで、その部位だけ体脂肪量を減らせる


ダイエットのために運動方法を探した方であれば、お腹の脂肪を落としたい場合にする運動や腕の脂肪を燃やす運動など、その部位の体脂肪だけを減らせるという運動方法を見たことがあるでしょう。これに対して、殆どの文献は「運動で特定部位の体脂肪量を減らすことは不可能」と結論付けています。筋トレはその部位の筋肉量を増やすことはできますが、体脂肪量を減らすことはできません。腹筋のトレーニングを頑張ると、腹筋を鍛えることはできますが、体脂肪率がそのままでは腹筋が割れることはないでしょう。しかし、これは筋トレが体脂肪量を減らすことと全く関係がないということではありません。ただ、「ある部位だけ」の体脂肪量を減らすことはできないということです。筋肉量が増えると基礎代謝量が増加し、消費エネルギーにも影響を及ぼします。つまり、筋肉量が増えると消費エネルギー量が増加するため、エネルギー不足になりやすくなり、体脂肪を減らしやすくします。

このように、筋肉量の増加により消費エネルギー量が増加し、且つ摂取エネルギー量に変化がなければ、徐々に体脂肪量は減少することになります。しかし、これは長期にわたって間接的に起こる現象であり、特定部位だけで起こることではありません。ある部位が先に痩せるということはあるかもしれませんが、これは遺伝などの個人差によるもので、全身の体脂肪量が減少する過程の一部に過ぎません。

体脂肪減量に王道はありません。


時間を無駄にしないために

過度な体脂肪量は見た目だけではなく、健康にも良い影響は及ぼしません。多くの人は体脂肪量を減らしたいと計画しますが、焦りのあまり楽に早く痩せられるという間違った知識を信じ込んでしまいやすいです。しかし、どれだけ努力しても、その方法が正しくなければ時間と努力が水の泡になるだけでしょう。

体脂肪量を減らす方法は、摂取エネルギー量の管理と適切な運動という基本に忠実な方法で、数多くのトレーナーや栄養士、研究者によって勧められている方法です。もちろん、楽な方法ではありませんが、これ以上に効果的な方法もありません。体成分の変化はあなたの正しい努力をそのまま数値として見せるはずです。基本に忠実に沿った日々を積み重ねることで、きっと体は変わります。

参考文献
1. 生活習慣病予防のための健康情報サイト 加齢とエネルギー代謝|e-ヘルスネット 厚生労働省
2. 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 厚生労働省