五大栄養素 -脂質Ⅰ-

五大栄養素シリーズも折り返しです。三大栄養素の一つ1つでもある脂質は私たちが生きていく上で欠かせない栄養素です。それにも関わらず、脂質=肥満という強烈なイメージによって、他の五大栄養素と比べると、悪者にされることもしばしば…。ダイエットされている方、健康診断でメタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満症候群)の危険ありと判定されてしまった方など、普段から脂質の摂取量を気にされている方は多いと思います。特に12月は忘年会やクリスマスパーティなど、脂質の多い食生活になりがちです。

厚生労働省は大人が一日に必要な脂質の目標量を、男女共に総エネルギー摂取量のうち20-30%未満と定めています¹⁾。2018年の国立健康・栄養研究所の栄養摂取状況調査によると、総エネルギー摂取量のうち脂質由来のエネルギーは、男性27.6%、女性28.9%となっています²⁾。脂質の摂取量は少なくすればするほど良いというイメージがありますが、脂質も一定量必要な栄養素であり、不足してしまうと体に悪影響が出ます。脂質と上手く付き合っていくために、是非今回のトピックで脂質への理解を深めてください。


脂質とは


脂質は三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の中で、1gあたり9kcalと得られるエネルギー量が最も大きい栄養素です(タンパク質・炭水化物は4kcal/g)。厚生労働省は各栄養素から摂取するエネルギー量の比率の目標値を定めており、総エネルギー摂取量のうち、13-20%をタンパク質から、20-30%を脂質から、50-60%を糖質(炭水化物)から摂取することを推奨しています。よくダイエット本などで「PFCバランス」という言葉を目にすると思いますが、これはタンパク質(Protein)・脂質(Fat)・糖質(Carbohydrate)からそれぞれ摂取するエネルギー量の比率を表しています。ダイエットや筋トレを行うときは目標に合わせて、3つの栄養素の摂取量を調整しながら食事計画を立てるとより効果的とされています。

農林水産省による調査が開始されて以来、日本人の摂取エネルギー量の比率におけるタンパク質の割合は変わりませんが、脂質の割合は増え、糖質の割合は減る傾向にあります³⁾。この変化はファストフードや菓子類の普及、食事の欧米化などが理由に挙げられます。
▲「平成30年度食料需給表」より引用

人体における脂質の役割は様々です。例えば、脂質は細胞膜の主な構成成分です。細胞膜はイオンや有機化合物などの物質の出入りを制御していますが、細胞膜が健康でないと上手く制御されません。脂質はステロイドホルモン(性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)やビタミンDの前駆体(ある物質が生成される前段階の物質)でもあります。また、ビタミンの中には水ではなく脂質に溶けやすい脂溶性ビタミン(A・D・E・K)があり、脂質はこれらをはじめとする脂溶性物質の吸収を助ける働きがあります。他にも、脳・神経系の機能保持(大脳の主な構成要素)や肌・毛髪の健康維持、体温維持、臓器の保護なども脂質の役割です。これらの役割から、脂質が体に必要不可欠な栄養素であることが分かります。
※脂溶性ビタミンについてもう少し詳しく知りたい方はInBodyトピック「五大栄養素 -ビタミンI-」もご覧ください。


脂質の種類

脂質は主に飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸の3つに分類されます。下の図を見ると、大人が最も多く摂取している脂肪酸は一価不飽和脂肪酸で、次いで飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸となっています。
▲「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より引用

体脂肪に変わりやすいと言われているのが飽和脂肪酸で、これは高LDLコレステロール血症をはじめとする生活習慣病や、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患の主な危険因子の一つです。脂質全体の目標量の上限値は30%ですが、脂質に含まれる飽和脂肪酸の目標量は成人男女ともに総摂取エネルギー量の7%以下と定められています。尚、小児(~17歳)は発育に脂質が必要なため、目標量が10%以下と成人男女よりも多めに設定されています。
▲「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より引用

多価不飽和脂肪酸は必須栄養素のため、最低限必要な量を摂取する必要があります。脂質全体の目標量の下限値は成人男女ともに総摂取エネルギー量の20%と定めています。これは脂質に含まれる多価不飽和脂肪酸の必須量を基に設定されています。多価不飽和脂肪酸は更にn-3脂肪酸とn-6脂肪酸に分類されます。n-3脂肪酸は魚油に多く含まれるEPAとDHAなどが該当し、n-6脂肪酸は紅花油やグレープシードオイル、ひまわり油などの植物油に多く含まれています。


脂質を多く含む食品と脂質が少ない食品

次の表は脂質が多い代表的な食品と脂質が少ない代表的な食品の各100gあたりの含有量です⁴⁾。同じ牛肉や鶏肉でも部位によって含まれる脂質は大きく異なるので、脂質の少ない部位を選べばダイエット中でもお肉を食べることができます。

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

脂質はファストフードや菓子類を控えたり、食事内容に気を遣ったりすることで意識的に摂取量を調整できます。次回のトピックでは適切ではない脂質摂取によって体に出る影響をご紹介します。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「栄養摂取状況調査」 国立健康・栄養研究所
3.「平成30年度食料需給表」 農林水産省
4.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省

 

五大栄養素 -ビタミンⅡ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ビタミンⅠ-

前回のトピックではビタミンDの働きや、過剰摂取または不足による悪影響についてご紹介しました。今回のトピックでは食事以外でビタミンDを補う方法についてご紹介していきます。


食事以外でビタミンDを補う方法

➤日光浴

肌が紫外線を吸収すると、体内の化学反応によってビタミンDを生成することができます。前回のトピック「五大栄養素 -ビタミンⅠ-」でも説明したように、ビタミンDを食事だけで摂取すると不足しやすいため、環境省では軽めの日光浴を推奨しています。但し、紫外線の浴び過ぎは免疫機能の低下や皮膚がんなどのリスクを高めるため、日光浴をする時間には注意が必要です。

季節や地域によって推奨時間は異なりますが、7月の東京では1分、札幌では1分半程度、12月の東京では7分、札幌では12分程度の日光浴で1日に必要なビタミンDを生成することができます¹⁾。但し、これは1つの目安であり、時間帯・雲の量・日焼け止め・肌のメラニン含有量などがビタミンD生成に影響を及ぼすため、日光に当たっているからと言って常にビタミンDが生成されるわけではありません。また、日光浴は日向でなく、日陰や身体の一部に日光を当てる程度でも十分ですが、その場合は推奨時間よりも少し長めに時間をとる必要があります。


▲ 紫外線を当てる部位別のビタミンD合成に必要な日光浴時間

日光浴によるビタミンDの生成は体内で必要な量しか合成しないように調節されているため、体内のビタミンDが過剰になることはありません。従って、食事による平均的な摂取と適度な日光浴によって十分なビタミンDを体内に供給することができます。

➤サプリメント*

適度な食事と日光浴ができているのであれば、サプリメントに頼る必要はありませんが、ビタミンDを豊富に含む食品が苦手で摂取できなかったり、日中に外出する機会が減ったりしている人は、サプリメントで不足分を補うことができます。特に高齢者は加齢によって血中ビタミンD濃度が減少しやすい上に、屋外での活動量減少によって長期にわたりビタミンD不足状態に陥ると、骨粗鬆症や転倒のリスクが高まってしまいます。

しかし、高齢者にビタミンD(及びカルシウム)サプリメントを毎日摂取させると、12か月後には大腿四頭筋の筋力・姿勢制御・立ち上がり・歩行などの日常的な身体機能が改善されたとの報告があります²⁾。また、ビタミンDサプリメント単体による摂取よりも、カルシウムサプメントを併用した摂取の方が転倒の再発を減少させるとも言われています³⁾。高齢者の転倒はビタミンDサプリメントの摂取のみで改善されるわけではありませんが、これらの報告は、十分なビタミンD摂取は筋力と身体機能を改善させ、転倒を減少させる可能性があることを示しています。

*薬物療法中の方 や複数のサプリメントを服用中の方は効果を最大に発揮できないこともありますので、服用前は専門家とご相談ください。


ビタミンDの摂取・生成によるメリット

このように食事以外の方法でも体に必要なビタミンDを補うことができ、骨の健康を維持することができますが、ビタミンDは次のような働きもします。

➤筋肉量の減少を抑える

ビタミンDは筋肉のタンパク質を構成する必須アミノ酸の分解と筋肉を委縮させる因子 (転写因子FOXO1)の発現を抑え、筋委縮を改善させることができます⁴⁾。高齢者がサプリメントでビタミンDを1日100μg摂取すると、4ヶ月後に筋繊維が太くなったという報告があり⁵⁾、ビタミンD摂取は筋肉量の減少を抑制することができます。また、血中ビタミンD濃度は加齢に伴い減少するので、高齢者は 若い人よりもビタミンDの補充が重要になってきます。ロコモティブシンドローム*の予防を啓発する日本整形外科学会でも、筋肉や骨のために毎日摂取したい栄養素としてビタミンDを挙げています⁶⁾。

*ロコモティブシンドロームとは「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態を表します。

➤免疫機能を調節する
ビタミンDは体内にウイルスや細菌が侵入してきた際に、過剰な免疫機能を抑えて、必要な免疫機能のみが働くように調節する役割があります。 血中ビタミンD濃度が低い人は呼吸器感染症のリスクが高いと言われており⁷⁾、免疫力の向上にはビタミンDが重要であることが分かります。特に今年は呼吸器感染症の1つに分類されるコロナウイルス(COVID-19)が流行していますが、その感染予防にビタミンD摂取が効果的であると報告している研究があります。しかし、それを否定する研究もあり、感染予防の効果有無は現在も議論されていますが、ビタミンDの摂取によって免疫力が高まることは明らかです。

➤血糖値を抑制する

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンの一種で、血液中のブドウ糖をエネルギーに変換して、血糖値を一定に保つ役割があり、筋肉量が多い人ほど適切な量が分泌される傾向にあります⁸⁾。ビタミンDはこのインスリンの作用を改善させる働きがあります⁹⁾。更に、ビタミンDとカルシウムを一緒に摂取することで糖尿病の発症リスクを減少させるとの報告もあります¹⁰⁾。つまり、血中ビタミンD濃度を充足状態にすることは、糖尿病の予防にも繋がります。


終わりに

ビタミンDは健康な日々を過ごしていくために必要不可欠な栄養素の一つです。普段の食事で必要な量を摂取できているか振り返ってみて、もし不足しているようならビタミンDが豊富な食品を食事に取り入れたり、日光に当たる時間を増やしたりすることを心掛けてみてください。また、普段の生活でビタミンDの摂取や生成が十分でない人や、加齢に伴って血中ビタミンD濃度が低下してしまう高齢者は、サプリメントで不足分を補うのを検討してみるのはいかがでしょうか。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -ビタミンⅠ-

 

参考文献
1.「紫外線環境保健マニュアル2020」 環境省
2. Effects of a long-term vitamin D and calcium supplementation on falls and parameters of muscle function in community-dwelling older individuals. M Pfeifer et al., Osteoporos Int. 2009 Feb;20(2):315-22
3. Effects of vitamin D and calcium supplementation on falls: a randomized controlled trial. Heike A Bischoff et al., J Bone Miner Res. 2003 Feb;18(2):343-51
4. ビタミンDによるサルコペニアの予防・改善の分岐基盤の分析. 亀井 康富, 乳の学術連合. 2018
5. A randomized study on the effect of vitamin D₃ supplementation on skeletal muscle morphology and vitamin D receptor concentration in older women. Lisa Ceglia et al., J Clin Endocrinol Metab. 2013 Dec;98(12):E1927-35
6.「食生活でロコモ対策」 日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
7. An association of serum vitamin D concentrations < 40 nmol/L with acute respiratory tract infection in young Finnish men. Ilkka Laaksi et al., m J Clin Nutr. 2007 Sep;86(3):714-7
8. Muscle mass and insulin sensitivity in postmenopausal women after 6-month exercise training. B K J Glouzon et al., Climacteric. 2015;18(6):846-51
9. The Effect of Improved Serum 25-Hydroxyvitamin D Status on Glycemic Control in Diabetic Patients: A Meta-Analysis. Naghmeh Mirhosseini et al., J Clin Endocrinol Metab. 2017 Sep 1;102(9):3097-3110
10. Calcium, vitamin D and dairy intake in relation to type 2 diabetes risk in a Japanese cohort. K Kirii et al., Diabetologia. 2009 Dec;52(12):2542-50

五大栄養素 -ビタミンⅠ-


五大栄養素の1つであるビタミンはエネルギー源や体をつくる成分ではありませんが、他の栄養素が体内で円滑に働くための潤滑油のような役割があり、健康を維持するためには必要不可欠な栄養素です。ビタミンは全部で13種類存在し、水に溶けやすい水溶性ビタミンと油脂に溶けやすい脂溶性ビタミンに分類され、それぞれの性質から体内に取り込まれるメカニズムが異なります。

水溶性ビタミンは血液などの体液に溶け込み、余分なものは尿として体外に排出されやすいため、大量に摂取しても体内に貯蔵されにくく過剰摂取の心配はありません。従って、体内で不足しないように、毎日数回に分けて摂取する必要があります。一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、主に脂肪組織や肝臓などに蓄積されやすい特徴があるため、過剰摂取すると蓄積過多となって体に害を及ぼしてしまう恐れがあります。今回のトピックでは、多くのビタミンの中でも骨の健康維持や免疫機能の向上に欠かせないビタミンDに焦点を当てていきます。


ビタミンDとは

ビタミンDは身体機能を正常に保つ働きをする脂溶性ビタミンに該当し、骨・ミネラル代謝の維持に必須な栄養素としてよく知られています。ビタミンDにはD2からD7まで6種類存在しますが、一般的に体内の生理的調節機能に高く作用するビタミンDはD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)です。この2種類は食品から摂取でき、体にとって重要な栄養素です。残りの4種類は殆ど食品に含まれておらず、体に及ぼす作用も低いです。

厚生労働省による1日の食事摂取基準は18歳以上の男女ともに8.5~100μg(ビタミンD2とD3の合計値)が推奨されています¹⁾。しかし、国民健康・栄養調査の報告では1日あたり男性6.9μg・女性6.3μgしか摂取できておらず、どちらも摂取量が基準を下回っている状況です²⁾。

ビタミンDはInBody結果用紙で表示される骨ミネラル量の改善に効果的な栄養成分です。 InBodyが測定する骨ミネラル量は除脂肪量に比例するという関係性に基づいて求めており、ビタミンDの摂取量がそのままInBody結果用紙の骨ミネラル量に反映されることはありませんが、除脂肪量の増加に伴って徐々に増加します。骨ミネラル量が標準範囲を下回っている場合は、ビタミンDの摂取量を増やしながら、除脂肪量の増加を心掛けてみてください。


ビタミンDの過剰摂取・不足による悪影響

既に説明した通り、脂溶性ビタミンであるビタミンDは 体内に蓄積されやすいため、過剰摂取は健康に問題を引き起こす恐れがあります。毎日大量のビタミンD(推奨量の約60~100倍)を数ヶ月間摂取し続けると、毒性が現れ、血中カルシウム濃度が過剰になり、血管・腎臓・肺・心臓に多量のカリウムが沈着します³⁾。初期症状として食欲不振・嘔吐・筋力低下・神経過敏・高血圧が起こりますが、重症化すると腎臓が損傷を受けて腎不全になる恐れもあります。


また、ビタミンDは健康な骨を維持するために必要なカルシウムとリンを小腸や腎臓で体内に吸収するのを助ける働きがあり、不足すると様々な骨へのリスクを高めます。小腸や腎臓で吸収されるはずのカルシウム量が減少し、低カルシウム血症になると、小児ではくる病(小児の骨軟化症)、成人(特に妊婦や授乳婦)では骨軟化症、骨量が低下している高齢者では骨粗鬆症を発症しやすくなります。日本内分泌学会では、血中ビタミンD濃度(血清25(OH)D濃度)からビタミンD欠乏症を判定する基準を次のように定めています⁴⁾。

充足状態: 30ng/ml以上
不足状態: 20ng/ml以上30ng/ml未満
欠乏症: 20ng/ml未満


ビタミンDを多く含む食品

ビタミンD2はきのこ類など植物性食品に多く含まれ、ビタミンD3は魚肉・魚類の肝臓・バター・卵黄など動物性食品に多く含まれます。ビタミンDは脂溶性のため、脂質を含む動物性食品の方が体内に吸収されやすいですが、植物性食品でも炒めたり、揚げたりして油と一緒に摂取すると吸収されやすくなります。次の表はビタミンDを多く含んでいる代表的な食品と100gあたりの含有量です。


「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

このように、ビタミンDは食品から摂取することができますが、多くの人が体に必要なビタミンD摂取量を満たしてないのが現状です。では、ビタミンD不足を補うためには食事摂取量を増やす方法しかないのでしょうか。実は、食事以外の方法でもビタミンDを補うことができます。次のトピックでは食事以外でビタミンDを補う方法についてご紹介していきます。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「平成30年国民健康・栄養調査報告」 厚生労働省
3.「ビタミンD」 MSDマニュアル家庭版
4. ビタミンD不足・欠乏の判定指針. 岡崎亮ら, 日本内分泌学会雑誌, 2017 Mar; 93

 

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五大栄養素 -タンパク質Ⅱ-

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

前回のトピックではタンパク質の役割や、過剰摂取と不足による悪影響についてご紹介しました。今回のトピックでは効率良くタンパク質を摂取する方法をご紹介していきます。


プロテインの種類と効果


プロテインは、加工の過程で脂肪分や炭水化物が取り除かれるため、タンパク質の含有量が高く、タンパク質をたくさん摂取するにはお勧めです。プロテインは牛乳が原料であるホエイプロテイン・カゼインプロテインや、大豆が原料であるソイプロテインなど、様々な種類があります。また、ビタミン・ミネラルを加えることで、タンパク質の吸収効率も高まるので、一緒に摂取するように心掛けましょう。使用目的に合わせて、最適なプロテインを選べるよう、まずはそれぞれの特徴についてご紹介します¹⁾²⁾。

➤ホエイプロテイン
ホエイプロテインは、牛乳に含まれるタンパク質の一種です。ヨーグルトの上澄みにできる液体のことをホエイ(乳清)といいますが、このホエイに含まれるタンパク質がホエイプロテインです。ホエイには他に、ミネラルや水溶性ビタミンが含まれています。

ホエイプロテインには筋肉成分の多くを占めるアミノ酸が含まれており、筋肉修復効果も高いので、トレーニングで強い肉体を手に入れたい方にお勧めです。トレーニング後、効率的に筋肉の回復を促すためにはできるだけ素早くタンパク質を補給することが必要です。ホエイプロテインは吸収がスムーズであることからトレーニング直後の補給にも最適です。筋トレだけではなく、マラソンなどの持久系スポーツ、格闘技・コンタクトスポーツ(ラグビー・アメフトなど)と、広い分野で強靭な体を作りたい方に適しています。ホエイプロテインの味は淡白で飲みやすく、体内への吸収速度はスムーズで胃腸がもたれにくいというメリットがありますが、他のプロテインと比べると価格が比較的高いところが難点です。しかし、種類によってはソイプロテインと混合したものや、プロテイン含有量を控えめにしたものなど、機能や価格面で工夫しているものが多く出回っています。また、ホエイプロテインはその製法によって、タンパク質含有量が異なってくる点も特徴です。

➀ WPC製法…Whey Protein Concentrate(濃縮乳清タンパク質)、濃縮膜処理法
原料になる乳清をフィルターで膜処理し、ろ過して得られた液体を濃縮する製法のため乳糖(ラクトース)が残りやすいです。乳糖不耐症(乳製品に含まれる乳糖を小腸で分解できず、腹痛や下痢を起こす)を持つ人にとっては、腹部膨満感(お腹が張ってごろごろする症状)の原因となる場合もありますが、乳清に含まれるビタミンやミネラルをできるだけ多く残すことができるというメリットがあります。タンパク質含有率が約80%の製品はこの製法で作られていることが多いようです。

➁ WPI製法…Whey Protein Isolate(分離乳清タンパク質)、イオン交換法
WPC製法で分離されたタンパク質をさらにイオン交換処理を施して不純物を取り除くため、高濃度のホエイタンパクが作られます。タンパク質含有率も約90%と高く、お腹の不調になりやすい乳糖の含有率も非常に低いため、日本人に多い乳糖不耐症の方にも適した製法といえます。精製度の高いホエイプロテインを実現するために比較的多くの工数が必要となり、価格は若干高めです。

➂ WPH製法…Whey Protein Hydrolysate(加水分解乳清タンパク質)
加水分解ペプチドとも呼ばれ、微生物に含まれる酵素などを使いWPCをペプチド状態(アミノ酸が十数個から数十個つながった状態)に分離したものです。ホエイ含有率が約95%と高くなり、価格も高めのものが多いですが、比較的少ない摂取量で筋タンパク質合成を促進させることができます。

ホエイプロテインは製法ごとに様々な特徴を持っています。自分にあった製法のプロテインを選んで、タンパク質を効率良く摂取しましょう。

➤カゼインプロテイン
ホエイプロテインと同じく牛乳から作られるのがカゼインプロテインです。主成分であるカゼインは生乳を構成するタンパク質の約80%を占めています。ホエイプロテインが水溶性で吸収が早いことに対し、カゼインプロテインは不溶性で固まりやすく、体への吸収速度がゆっくりであることが特徴です。ダイエット時の間食や運動をしない日のタンパク質補給、就寝前にお勧めです。カゼインプロテインは体への吸収速度がゆっくりであることから満腹感の持続が期待できます。

➤ソイプロテイン
ソイプロテインの原料は、その名の通り大豆のタンパク質部分だけを粉末にしたものです。タンパク質の比率を高め水分や糖質、脂肪を減らし植物性タンパク質を効率的に摂取できます。価格が比較的安いことも特徴の一つです。ソイプロテインはカゼインプロテインと同じく消化吸収速度がゆっくりのため、満腹感が持続しやすく、ダイエットや健康維持をしたい方にお勧めです。加えて、大豆に含まれるイソフラボンの効果で皮膚や骨の強化、血流改善が期待できます。また、イソフラボンは女性ホルモンと似た働きをするので、肌の張りを保つ効果や、女性らしい体のラインをキープすることにも役立ちます。一方で、溶かしたときに粉っぽくなってしまい飲みにくいこともあるため、少量のぬるま湯で溶いてダマにならないようにしてから水を加えるなど、飲みやすくする工夫が必要です。最近では、溶けやすく改良された商品も多く発売されています。


筋肉増強以外でのプロテイン活用法

「プロテイン=運動している人が摂取するもの」というイメージを抱く方が多いですが、あくまでプロテインは「高タンパク食品」です。食事でタンパク質摂取量が足りない方や、タンパク質を多く摂取する必要がある方は普段の食事にプロテインを組み合わせることで効率よくタンパク質を摂取することができます。プロテインを摂取した方が良い人は、アスリート以外にはどのような人が当てはまるのでしょうか?

➤成長期の子ども(ジュニアプロテイン)

子どもは基礎代謝量や活動エネルギー分だけでなく、発育に必要なエネルギーも摂取しなければならないため、栄養摂取が特に重要な時期です。どんなに栄養豊富なご飯を朝・昼・夕に食べたとしても、子どもなので1食で食べられる量には限界があります。食の細い子も中にはいるでしょう。栄養をたくさん摂りたいけれど摂れないという時には、普段の食事に合わせてジュニアプロテインを一緒に摂取することで不足しがちな栄養を補うことができます。また、ジュニアプロテインは一般的なプロテインとは異なり、タンパク質だけでなく鉄分やカルシウムなど子どもの成長に必要な成分が多く含まれています。例えば、朝ごはんに飲んでいる牛乳にプロテインを溶かして一緒に摂取するのはいかがでしょうか?

➤高齢者の筋力・カルシウムサポート

最近では、高齢者のフレイルが問題視されています。フレイルとは、高齢期に筋肉量・筋力の減少など生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転機に陥りやすい状態とされ、生理的な加齢変化と機能障害、要介護状態の間にある状態を指します³⁾。筋肉量の減少は、フレイルを構成する原因の一つであり、筋肉量・筋力の減少を指すサルコペニアは多くの疾患と関連します。そこでフレイル予防の観点から2020年版の日本人の食事摂取基準⁴⁾では、65歳以上の総摂取エネルギー量に占めるべきタンパク質由来エネルギー量の下限値を前回(2015年版)の13%から15%に引き上げています。筋肉量の減少を防ぐために、運動の推奨は勿論ですが、栄養面からの予防策も必要になります。

例えば、70歳男性・身体活動レベルⅠ(自宅にいて、ほとんど外出しない)の方の推定エネルギー必要量は2,050kcal/日です(下表参照)。この方の推定エネルギー必要量のうち、タンパク質由来のエネルギー量は約308kcal/日になります。タンパク質1gあたりのエネルギー量は約4kcalなので、この方の推定エネルギー必要量を満たした食事メニューでは、タンパク質が約77g含まれるように構成を考える必要があります。食事量が多く取れない高齢者が十分なタンパク質を摂取するためには、食事面での栄養バランスを考えるだけでなく、プロテインなどの補助食品でタンパク質を補っていく必要があります。


「日本人の食事摂取基準2020」エネルギーより抜粋

➤妊婦や授乳期のお母さん

妊婦の方は、胎児及び胎盤などの発育に必要なタンパク質を摂取する必要があり、授乳期のお母さんは、自身に必要なタンパク質に加えて母乳分のタンパク質も摂取する必要があります。妊婦の場合、自身で必要なタンパク質に加えて、妊娠中期で+5g/日、妊娠後期で+25g/日のタンパク質摂取を推奨しています。また、授乳期では+20g/日の摂取を推奨しており、十分なタンパク質摂取が母親だけでなく、胎児・乳児の健康にも欠かせないことが分かります。


「日本人の食事摂取基準2020」タンパク質より抜粋


終わりに

普段、何気なく摂取しているタンパク質ですが、私たちの体に必要な量を摂取できているでしょうか? 同じ年齢・性別の方でも、体格や運動習慣の違いによって必要なタンパク質摂取量は変わってきます。そのため、自分に必要なタンパク質量を把握し、足りない分はプロテインなどの補助食品を上手く組み合わせながら食事メニューを考えてみましょう。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

 

参考文献
1.「ホエイ、カゼイン、ソイってなに?プロテインの種類について」 グリコ
2.「かんたん、わかる!プロテインの教科書」 森永製菓
3. 日本サルコペニア・フレイル学会
4.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 文部科学省

 

五大栄養素 -タンパク質Ⅰ-

五大栄養素とはどれを指しているでしょうか? 様々な栄養素の中で、私たちが生きていく上で欠かせない成分は糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルの5つがあり、中でも糖質・脂質・タンパク質の3つを三大栄養素と称します。三大栄養素はエネルギー源として生命維持や身体活動に用いられるため、摂取できない状況が続けば、呼吸など最も基本的な生命維持活動すら難しくなってしまいます。また、それぞれ体内での役割が異なるため、どれか1つの栄養素を大量に取れば良いものでもなく、満遍なく摂取する必要があります。


厚生労働省は、大人が一日に必要なタンパク質量を男性65g、女性50gと定めています¹⁾。定期的に運動を行っている方やスポーツ選手は、より多くのタンパク質が必要だと言われています。現代の日本人は食事で十分なタンパク質量を摂取できていると報告されていますが²⁾、体型や生活様式によって、必要なタンパク質量は十人十色です。タンパク質と聞くとまず思い浮かべるのは筋肉だと思いますが、それ以外にも血液・内臓・皮膚など体のあらゆる器官を構成する主要な成分でもあります。今回のトピックでは、私たちの体づくりに大きく関与しているタンパク質について勉強していきましょう。


タンパク質とは


タンパク質¹⁾は、人間だけでなく生物において重要な構成成分の一つです。私たちの体の約60%は水で構成されていますが、その次に多いのがタンパク質であり、15~20%を占めています。その働きは多岐に渡り、酵素やホルモンとして代謝を調節、生命活動に必要な物質輸送に関与し、あるときは抗体として生体防御にあたります。タンパク質を構成しているアミノ酸は、タンパク質合成の素材であるだけでなく、神経伝達物質やビタミン、その他の重要な生理活性物質の前駆体でもあります。

タンパク質は多くのアミノ酸が結合している集合体です。この集合体はそのまま体内に吸収することはできないため、摂取したタンパク質をアミノ酸に分解してから吸収します。タンパク質を構成しているアミノ酸は全部で20種類あり、体内で合成できる非必須アミノ酸と、体内では合成できず食べ物から摂取しなければいけない必須アミノ酸に分かれます。アミノ酸の状態で体内に吸収された後、20種類のアミノ酸の組み合わせ方を変えて再合成することで、筋肉・血液・内臓・骨・皮膚・髪・爪などの体の部位の主要成分となる他、ホルモン・抗体・脂肪などの材料にもなります。

体内のタンパク質は常に合成と分解を同時に繰り返し、動的平衡状態を保ちながら、毎日少しずつ作り替えられています。その速度は各器官によって異なり、小腸の上皮細胞だと約1日で作り替えられますが、骨や毛髪だと何年もかかります。作り替えられた各器官のタンパク質はアミノ酸に分解され、その一部は尿として体外に排出されてしまいます。つまり、人間はタンパク質を常に食事から補給し続けなければなりません。

InBody結果用紙で表示されるタンパク質量は、体細胞が主に水分とタンパク質で構成されていることから、水分量との相関を考慮して算出しています。そのため、タンパク質を100g摂取するとInBody結果用紙のタンパク質量がそのまま100g増えることはなく、筋肉量の増加や体細胞の増加に伴ってタンパク質量も少しずつ増加していきます。


タンパク質の過剰摂取・不足による悪影響

タンパク質の過剰摂取は消化・吸収・分解の過程で各臓器に対して、過度な負担を掛けてしまいます。タンパク質を吸収するためには、一旦アミノ酸に分解する必要があるため、多く摂取しすぎてしまうと消化や吸収に時間が掛かり、消化器に負担が掛かります。お肉をたくさん食べた次の日にまだお肉がお腹に残っているように感じるのはそのためです。アミノ酸を分解するとアンモニアが生成されますが、アンモニアは毒性が強く、体内の血中アンモニア濃度が高まると最悪の場合、死に直結します。肝臓では有害なアンモニアを無害な尿素に分解しますが、多量のアンモニアを尿素に分解することが続くと、肝臓に過度な負担が掛かり、機能低下を招く恐れがあります。更に、腎臓では血中の尿素濃度が高くなりすぎないように排泄が行われるため、尿素の量が増えると肝臓のみならず腎臓にも負担が掛かってしまいます。

また、タンパク質の過剰摂取は肥満に繋がります。吸収されたアミノ酸は肝臓に運ばれますが、ここで過剰に摂取されたタンパク質はアミノ酸に分解された後、糖質に再合成されて、最終的に中性脂肪になるためです。

一方、タンパク質の不足も、体全般の機能を低下させ、体調不良を引き起こしてしまいます。特に、食事量の減少や咀嚼力の低下により、十分なタンパク質を摂取することが難しくなる高齢者のタンパク質不足には注意が必要です。タンパク質の摂取がうまくできない高齢者は筋肉量が減少し、身体機能も低下することで転倒や骨折のリスクが高まり、老化が進む原因となります。


タンパク質を多く含む食品

タンパク質は動物性タンパク質と植物性タンパク質に大別されます。次の表はタンパク質を多く含んでいる代表的な食品と100gあたりの含有量です³⁾。


「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

タンパク質は卵や肉、魚のような動物由来の食品や、穀物・豆などの植物由来の食品から摂取することができます。しかし、これらの食品だけでタンパク質をたくさん摂取しようとすると、前者からは脂肪分を、後者からは炭水化物を必要以上に摂取してしまいます。脂肪や炭水化物の過剰摂取はカロリー過多状態につながり、余ったカロリーは体脂肪として蓄積される結果となります。

では、余分な体脂肪を増やすことなく、タンパク質をたくさん摂取するためにはどうすれば良いのでしょうか。次回のトピックでは効率良くタンパク質を摂取する方法をご紹介していきます。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「栄養摂取状況調査」 国立健康・栄養研究所
3.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省

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体成分と食事回数の関係 Part2: 実践編

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体成分と食事回数の関係 Part1:生理学

目標とした体成分に到達するために有用な方法は食事回数を減らすだけではありません。今回のトピックでは、体成分改善に効果的な食事コントロールの例として、朝食や断食の効果をご紹介します。


朝食の重要性


朝はゆっくりとできる時間もなく、朝食を摂らないという人も少なくはないでしょう。しかし、健康的な朝食を摂ることが体重の減量と間食を減らすことに役立つという研究結果¹⁾もあり、朝食を摂ることは減量または体重維持に有効な習慣です。また、高タンパクの朝食を摂ることで間食や甘いものに対する食欲が減少したという研究結果もあります²⁾。この研究では朝食を摂った人が摂っていない人よりドーパミン濃度が高く示されています。

好きなことをしていて幸せな時や、重大なことを無事に完了して達成感を味わっているとき、空腹を忘れているような経験をしたことはありませんか? この時に脳で分泌されるホルモンがドーパミンです。空腹状態で甘い物を食べた時に分泌されるドーパミンは食物依存症に繋がるのに対し、満腹中枢が刺激されている中で分泌されるドーパミンは食欲を抑える効果があります。そのため、満腹感を感じつつドーパミン濃度が更に高くなる高タンパクな朝食を摂ることは、余計なカロリー摂取を抑え体脂肪量の減少にも繋がります。
※食物依存症の詳細はInBodyトピックの「食物依存症と過食 part1: 体への影響」もご覧ください。

また、Gonzalezらの研究では朝食が代謝機能を改善させるという結果も示されています³⁾。これらの研究結果から分かることは、朝からしっかりエネルギーを補充しておくことが体脂肪量減少に役立つという点です。


断食の効果


摂取エネルギーの制限方法として食事回数を減らすことや低カロリー食事をすることが挙げられますが、断食も良く知られている方法です。減量目的でよく耳にする断食方法は断続的断食(Intermittent Fasting)と1日おき断食(Alternate Day Fasting)の2つがあります。

断続的断食には様々な方法がありますが、一番やりやすいのは16:8断食と言われるものです。これは1日のうち、8時間だけ食事をする時間を設けて残り16時間は食事をしない方法です。理論上、8時間の間で2食(朝食と昼食/昼食と夕食)を摂ることができるので、毎日行うこともできます。1日おき断食も断続的断食と似たような方法ですが、断食の時間がより長いです。1日おき断食は36時間断食して次の12時間で食事をする方法です。

どの方法も減量には効果的という研究は多々ありますが、断食の難しいところは全く食事をしない時間帯があるため、長期間持続するのが難しいという点です。また、断食の減量効果は摂取カロリー制限とあまり差がなかったとの研究結果もあるため⁴⁾、個人の生活パターンや目標とする期間などを考慮して、自分に合う方法を選択する必要があります。


減量のポイントは「カロリー赤字」


体重や体脂肪量の減少を目的とする場合、断食や食事回数の調節は有効な方法ですが、これらの方法がどういう状態になるための手段なのかを忘れてはなりません。減量において最も重要なのは「カロリー赤字」の状態になることで、断食も食事回数の調節もカロリー制限もこの状態になるための様々な手段にすぎません。ある研究では、食事回数とは関係なく、同じカロリー赤字の量であれば同じ程度の体重と体脂肪量の減少を示しています⁵⁾。

ただ、この結果は食事回数の変化が無意味というわけではありません。同じ低カロリーの食事を行った人でも、1日2食の人の方が1日6食の人よりも、体重が減少しています⁶⁾。 重要なのは、食事回数を減らしたとしてもカロリー赤字になっていなければ体重は減らないということです⁷⁾。つまり、食事回数の減少と摂取カロリー制限を同時に行うことでカロリー赤字になりやすく、減量しやすいと考えるべきです。
※カロリー赤字の詳細はInBodyトピックの「体脂肪量減量に関する5つの迷信」もご覧ください。


体重を減らす時に注意すべき点


食事回数を変えて体成分の変化を試みた時、本来意図していなかった結果となる場合もあります。通常であれば、タンパク質はエネルギー源としてあまり使われません。しかし、食事をしない時間が長くなって蓄えていたブドウ糖を使いきった後は多量のタンパク質がエネルギーを作るために分解され始めます。これは断続的断食または1日おき断食が、筋肉の分解という思いもしなかった結果に繋がることもあり得るということです。

一方、筋トレと断食を一緒に行った人は、筋肉量が減少しなかったという研究もあり⁸⁾、断食や食事回数の減少が筋肉量に及ぼす影響に関しては、不明な点もまだ多く残っています。断食中であっても、筋トレと並行しながら、食事のタイミングで十分な量のタンパク質を摂取できれば、筋肉量の減少を防止できるという研究結果から、断食で食事を摂る際は栄養バランスがとても重要であることが分かります。

繰り返しますが、食事回数・食事量・食事内容・摂取のタイミングなど、食事に関する何かしらの変化は、筋肉量の減少を引き起こす可能性があるということを常に考える必要があります。これを防ぐためには、タンパク質の摂取量を十分に確保することや、食事の変化に伴い筋トレメニューを組むなど、運動習慣も含めて計画を立てる必要があります。筋トレによって筋肉量が維持または増加すると基礎代謝量も増加するため、カロリー赤字になりやすいのも適切な筋トレのメリットです。


食事回数の調節に取り組む前に


食事は体に生理学的影響を及ぼし、食習慣は体成分に大きく影響します。食事回数を調整することは、代謝量・消化管ホルモン・満腹感に影響して、目標とする体成分に近づくことにも繋がります。ただ、食事回数を減らすことについて明確な結論は出ておらず、食事回数を減らすことが体重・体脂肪量の減少に有用であるという研究が多く報告されているだけです。食事回数の調節を検討する時は、次の内容を意識して自身の体で合った方法なのかも考えながら、試行錯誤しましょう。

少ない食事回数と体重・体脂肪量の減少は関連している。
体重・体脂肪量を減らすためにはカロリー赤字になることが重要である。
朝食を摂ることは体重の維持・減少に有効であり、高タンパクの朝食は間食や甘いものへの食欲を減らせる。
定期的に運動をすることは筋肉量を維持・増加させ、代謝量にも影響を及ぼす。

食事回数を減らすとき、1食を抜くことで1日2食にすることが一般的であるとはいえ、誰にでも効果があるものではありません。食事回数をどのように調整するかは自分の生活パターンや目標に合わせて決めることが大事です。短期間で魔法のように体成分を変える方法はありません。地道な努力だけが健康と体成分の改善を同時に達成できる唯一の方法です。食事回数を含む食生活の変化は、正しい方法を頑張って継続させた分だけ、成果として現れるでしょう。このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体成分と食事回数の関係 Part1:生理学

 

参考文献
1. The role of breakfast in the treatment of obesity: a randomized clinical trial. Schlundt DG, Hill JO, Sbrocco T, et al., Am J Clin Nutr. 1992 Mar;55(3):645-51.
2. A randomized crossover, pilot study examining the effects of a normal protein vs. high protein breakfast on food cravings and reward signals in overweight/obese “breakfast skipping”, late-adolescent girls. Heather A Hoertel, Matthew J Will and Heather J Leidy, Nutrition Journal 2014, 13:80
3. Molecular adaptations of adipose tissue to 6 weeks of morning fasting vs. daily breakfast consumption in lean and obese adults. Javier T. Gonzalez Judith D. Richardson, et al., J Physiol. 2018 Feb 15;596(4):609-622
4. A randomized pilot study comparing zero-calorie alternate-day fasting to daily caloric restriction in adults with obesity. Catenacci VA, Pan Z, et al., Obesity (Silver Spring). 2016 Sep;24(9):1874-83
5. Increased meal frequency does not promote greater weight loss in subjects who were prescribed an 8-week equi-energetic energy-restricted diet. Cameron JD, Cyr MJ, Doucet E, Br J Nutr. 2010 Apr;103(8):1098-101
6. Meal frequency and timing: impact on metabolic disease risk. Varady KA, Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2016 Oct;23(5):379-83
7. Effect of meal frequency on glucose and insulin levels in women with polycystic ovary syndrome: a randomised trial. Papakonstantinou E, Kechribari I, et al., Eur J Clin Nutr. 2016 May;70(5):588-94
8. Effects of eight weeks of time-restricted feeding (16/8) on basal metabolism, maximal strength, body composition, inflammation, and cardiovascular risk factors in resistance-trained males. Moro T, Tinsley G, Bianco A, et al., J Transl Med. 2016 Oct 13;14(1):290

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体成分と食事回数の関係 Part1: 生理学

体重と体脂肪量を減らす計画を立てる時、多くの人は食生活を変えることから試みるでしょう。食生活の改善で「何を食べるか」はとても重要で、普段の食事内容が確認できていないと、どのように改善すればいいのか分かりません。しかし、「1日の食事回数」については深く考えない人が多いのではないでしょうか。アスリートにおいてはパフォーマンスを最も高める食事タイミング及び量に関する研究発表もあります¹⁾。しかし、減量を目標とする一般健常人の場合、食事計画を立てるときに何を考慮すればいいのか分からない方が多いでしょう。

約50年も前に、少量の食事を1日数回に分けて摂る方が、体重・代謝量・代謝機能を良くするという研究発表がありました²⁾。今でも食事を小分けにして1日6食にする方が太りにくいという話はよく耳にする話です。しかし、最近ではこの研究内容が再検討されています³⁾。

少量を数回に分けて1日中食べる方法と、定期的に普通の量を食べる方法、どちらが減量と代謝に効果的でしょうか? どちらが効果的かを考える前に、体がどのように食べたものを消化するのかと、食事回数と量の関係について確認してみましょう。


食事の生理学

食事をすると、次のような生理学的現象が起こります。

➤食事による熱生産(Thermic Effect of Food; TEF)

食事をすると食べたものを消化・吸収するためのエネルギーと血流が必要となり、代謝量が増加します。代謝量が増加するということはエネルギーを消耗して熱を作り出すことを意味し、この現象を「食事による熱生産(TEF)」と言います。一般的にタンパク質のTEFは摂取エネルギーの15~30%、糖質は6~8%、脂質は2~3%程度とされています⁴⁾。ホルモン濃度や体重等によって個人差はあるものの、代謝量は食事後に約25%増加すると言われています⁵⁾。そして、他の要因と比べて代謝量に影響が大きいのは食事量です。多くの食べ物を消化するためにはエネルギーも多く必要であるため、食事量が少なかった時より多かった時の方が代謝量の増加も大きくなります。

➤消化管ホルモンの分泌

食べたものが胃や腸管に入って内壁を刺激すると、脳に信号が伝わりホルモン分泌が促進されます。信号を送るのが胃・腸などの消化器であることから、この作用で分泌されるホルモンを消化管ホルモンと称します。代表的な消化管ホルモンはグレリン・PYY・GLP-1・GIP等があり、それぞれ異なる作用と効果があります。消化管ホルモンは食べたものが胃に長く留まるようにしたり、代謝に重要なホルモンであるインスリンの分泌を促進したり、栄養摂取ができていると脳に信号を送ることで食事の速度を落としたり、満腹感を感じさせることで食事を終えるようにしたりします。消化管ホルモンのうち、GLP-1というホルモンは食事量に比例して分泌されますが、ブドウ糖の体内生産を抑えることや食べたものが胃から排出される時間を遅延させることで満腹感を感じやすくします。

同じものを食べるのであれば食事量がホルモンの分泌量に影響を及ぼすので、食事量が少ないと勿論満腹感も得られにくくなります。満腹感がないことから、食後あまり時間が経っていないうちにまた何か口にしてしまえば、「結局は食事を小分けにしない方がトータルの摂取量は少なかった」なんてことにもなりかねません。

食事から得た栄養素を消化・吸収している間、体はエネルギーや栄養分を貯める「貯蔵モード」に入ります。食後、代謝量が一時的に増加してもしばらく栄養素の吸収は続き、体に予備として貯蔵されます。そして、一般的に食後約4時間で体は「空腹状態」に戻り、次の食事までの間は貯蔵していた栄養素をエネルギー源として使用します。食事を小分けにして1日中食べると代謝量は多少増加しますが、1日の殆どを「貯蔵モード」で過ごすことになります。また、食後の状態が続くことで満腹を感じさせる消化管ホルモンが活発に分泌されなくなり、ずっと空腹を感じてしまうようになる可能性もあります。これらの内容を踏まえ、食事回数と量についてもう少し確認してみましょう。


食事回数と体重・体成分の変化


最初に紹介した研究の結論にある「少量に分けて数回食事を摂ることは、太りにくくすることと関係がある」という部分は、減量を考えている人の間で常識のように思われてきました。最初に決めた摂取カロリーを1日5-6食に分けて摂ると継続的に食欲を抑えることができるので、カロリー制限も続けられて減量しやすくなると考えられていたのかもしれません。しかし、これとは逆の結果を示す研究発表も実は多く報告されています。

ある研究では、食事回数が多い群(8食/日)と少ない群(3食/日)を比較した結果、回数が多い群が空腹を感じやすく、食欲が増加し、満腹感を少なく感じたと報告しています⁶⁾。その理由までは明らかになっていませんが、恐らく食事量と消化管ホルモン分泌量の関係や満腹感に及ぼす影響が原因ではないかと推測できます。

さらに2007年にアメリカで行われた研究では、2ヶ月間食事回数を1日3食と1日1食にした2群を比較した時、1日1食の群で体脂肪量がより減少したと示されました⁷⁾。この研究の食事回数は他の研究とは異なりますが、結果としては食事回数が少ない方が短期間の体成分改善に効果的であることを示唆しています。

食事回数に関した他の疫学研究では、頻繁な食事が過体重と関連していることを示しました。2015年、約2万名を対象としたアメリカの研究では、1日5食以上の場合、過体重または肥満になる可能性が約1.5倍も大きくなることが報告されました⁸⁾。食事回数と体重増加の関係を明確には説明されていませんが、食事回数が多い人たちの殆どが早食いだったとことが共通点で挙げられています。また、約1,000名の男性を10年間フォローアップした別の研究でも、1日3食以上食事をした人の15%以上で、体重が約5kgも増加していることが分かりました⁹⁾。


これらの研究結果から、少ない食事回数は減量または体重増加を抑える直接的な効果があると断言するのは難しいかもしれませんが、食事を小分けにして食事回数を多くすると、体重増加の引き金にもなり得ることを覚えておいてください。むしろ、体重を増やしたい場合は小まめに食事を摂ることが効果的と言えるでしょう。もちろん、体重はその数値だけが重要なわけではありません。重要なのは中身で、筋肉量が多くて体重が重い場合もあれば、隠れ肥満のように体重は普通でも体脂肪量が多い場合もあるので、体重より重要なのは体成分です。

では、なぜ食事回数が少なく一回当たりの食事量が多くなる摂取方法が、食事回数が頻繁で少しずつ分けて食べる方法より効果的なのでしょうか? ここで消化管ホルモンのことを思い出してみてください。満腹感を感じるのは消化管ホルモンの作用によるものなので、1回の食事量が少なくホルモンの分泌量が少ないと、満腹感をあまり感じることができません。食事回数が少なくても食事量が多ければ、PYYという消化管ホルモンの分泌量が多くなるので¹⁰⁾、1日の食事量を小分けにして食べるよりも、食事回数を減らして一回当たりの摂取量を増やす方が、満腹感を感じやすくなると言えます。PYYの分泌量はタンパク質の摂取量に影響されるので¹¹⁾、3食の中でタンパク質を適切に取り入れることを意識してください。また、GLP-1の分泌量は摂取量と関係するので、1回の食事量を極端に減らし過ぎないようにしましょう。GLP-1の分泌量が減ると、インスリン分泌がうまく促進されなかったり、満腹感を得ることが難しくなったりします。

つまり、1日2-3回、適量を食べることが体重と体脂肪を減らす食事戦略と言えるでしょう。続いて次のトピックでは、食事回数を減らすときに気を付けることをご紹介します。☞「体成分と食事回数の関係 Part2: 実践編

 

参考文献
1. International society of sports nutrition position stand: nutrient timing. Kerksick CM, Arent S., et al., J Int Soc Sports Nutr. 2017 Aug 29; 14:33
2. The frequency of meals its relation to overweight, hypercholesterolæmia, and decreased glucose-tolerance. Fabry P, Hejl Z, Fodor J, Braun T, Zvolankova K. Lancet. 1964 Sep 19;2(7360):614-5
3. Effects of meal frequency on weight loss and body composition: a meta-analysis. Schoenfeld BJ, Aragon AA, Krieger JW, Nutr Rev. 2015 Feb;73(2):69-82
4. 糖質摂取と食事後体熱産生―適正エネルギー比率の糖質摂取と若年者の健康―, 永井成美、応用糖質科学第5巻第4 号(2015): 216-221
5. Effect of circadian variation in energy expenditure, within-subject variation and weight reduction on thermic effect of food. Miles CW, Wong NP, Rumpler WV, Conway J, Eur J Clin Nutr. 1993 Apr;47(4):274-84
6. Higher Eating Frequency Does Not Decrease Appetite in Healthy Adults. Perrigue MM, Drewnowski A, Wang CY, Neuhouser ML, J Nutr. 2016 Jan;146(1):59-64.
7. A controlled trial of reduced meal frequency without caloric restriction in healthy, normal-weight, middle-aged adults. Stote KS, Baer DJ, Spears K, et al., Am J Clin Nutr. 2007 Apr;85(4):981-8.
8. Eating Frequency Is Positively Associated with Overweight and Central Obesity in U.S. Adults. Murakami K, Livingstone MB, J Nutr. 2015 Dec;145(12):2715-24.
9. A prospective study of breakfast consumption and weight gain among U.S. men. van der Heijden AA1, Hu FB, Rimm EB, van Dam RM, Obesity (Silver Spring). 2007 Oct;15(10):2463-9.
10. The influence of higher protein intake and greater eating frequency on appetite control in overweight and obese men. Leidy HJ, Armstrong CL, Tang M, et al., Obesity (Silver Spring). 2010 Sep;18(9):1725-32
11. Critical role for peptide YY in protein-mediated satiation and body-weight regulation. Batterham RL, Heffron H, Kapoor S, et al., Cell Metab. 2006 Sep;4(3):223-33

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在宅勤務で健康維持する方法


2018年、日本企業のテレワーク導入率は19.0%
で年々増加傾向にありますが(2017年:13.8%、2016年:13.2%)、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってテレワークの導入が各企業で加速していくことが予想されます。まだテレワークの制度が整っていない企業でも、今後早急に導入を検討しなければならないような状況でもあります。テレワークと言ってもその勤務形態は様々で、在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイルワークもテレワークに含まれます。
※総務省「通信利用動向調査(企業編)平成30年報告書」より引用。常用雇用者が100人以上の全国の企業を対象にした調査で、2,119企業から集計。

在宅勤務には、定型業務の効率性向上・通勤時間の短縮・オフィスコストの削減・通勤困難者への対応・非常時(災害や新型コロナウイルスなど)の事業継続など、多くのメリットがあります。通勤時間の短縮で使えるようになった自由な時間は、セルフケアや新しいことに挑戦できる機会でもあります。しかし、在宅勤務に普段から慣れていない人たちにとっては、「自宅でどのように業務に取り組めば良いのか? どのようにストレス管理・健康的な食事・運動を取り入れれば良いのか?」 と、悩まされる人も多いです。新型コロナウイルスのパンデミックから身を守ることを考えると、今は健康的なワークライフバランスを確立させてセルフケアを最優先すべき時期ではないでしょうか。今回のトピックでは、テレワーク導入に伴ったワークライフバランスの変化に対応できるよう、生活の中で取り入れるべき・見直すべき点についてご紹介していきます。


メンタルヘルスについて


新型コロナウイルスはその特性や効果的な治療法など、まだ明らかとなっていない部分も多いです。これらの不明点は、自粛生活のストレスや感染の危険性への不安が増長される原因となっています。現在も多くの方が在宅勤務・自宅療養・外出自粛で自宅中心の生活を余儀なくされていますが、ウイルスもストレスも目には見えないものの健康を損なう要因であることに違いはありません。悪化する前から精神状態の管理方法について考えてみる必要があります。

➤ 瞑想
瞑想は、どこでもできる簡単なストレスケア方法です。2020年の研究によると、毎日20分の瞑想を行うだけで、生産品質の改善や仕事のミス減少などの生産性が向上するだけでなく、POMS(気分プロフィール検査)の【抑うつ・落ち込み】や【怒り・敵意】などの項目が減少し、精神的にも大きな効果が見られました¹⁾。このように、研究でも定期的な瞑想の実施は生産性の向上のみならず、幸福感を高めることにも役立つことが示されています。初めて瞑想を行う方は、毎日3分から始めて徐々に時間を伸ばしていきましょう。瞑想の方法は様々ですが、今回は気軽に始められるよう、瞑想法の土台にもなっていた ”呼吸による瞑想” を簡単にご紹介します。


※「Googleも採用するマインドフルネス瞑想/その効果と難易度別3つの実践方法」林佐智子.ライフアンドマインドより引用・改変

呼吸による瞑想は、ただ呼吸に意識を向けるだけの方法なので新しいスキルや道具も不要です。しかし、呼吸は自律神経の中で唯一意識的に介入することができる神経系なので、意図的に呼吸を変化させることでその状況が脳に伝わり、脳内に働きかけることができると言われています。呼吸法は、横隔膜を動かして内臓にも刺激が伝わる腹式呼吸がお勧めですが胸式呼吸でも問題なく、やりやすい呼吸で②-③を繰り返し3分から15分ほど続けてみましょう。

➤ 仕事とプライベートのバランス
自宅で仕事を行う際の問題点は、仕事の時間とプライベートの時間に境界線が無くなることです。会社に通勤していた頃は、オフィスを離れることで自然と終業を認識できていましたが、自宅での仕事は就業時間の区別をつけにくくなってしまいます。朝早くから夜遅くまで一日中、メールの返信をするなどパソコンと向き合ってばかりではありませんか?

プライベートの時間まで仕事の時間に充てることは、心身の健康状態の悪化にも関連します。在宅勤務中でも、できるだけ通常通りの勤務時間を設定して区切りをつけてください。時間になったらパソコンは閉じて、仕事関連の通知はミュートにしましょう。このようなルールをチームや上司と共有して、仕事とプライベートのバランスを取るためには会社からの理解も必要です。

➤ 睡眠
毎朝決められた時間に出社する必要がなくなったので、目覚ましをかけることを止めてはいませんか? 今までの規則正しかった睡眠ルーティンを忘れてはいませんか? 不規則な睡眠スケジュールや睡眠不足は、脳細胞回復の妨げとなり、認知機能や判断力・記憶力低下の原因になります。また、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンは気持ちを落ち着かせるセロトニンとも密接な関係があるため、十分な睡眠をとることは心理的安定をもたらし、ストレス解消にも繋がります。


健康的な食事


在宅勤務中の昼食と間食はどのようにしていますか? バランスの取れた食事と栄養価の高い間食を選択することは、健康体を目指す上で必要不可欠です。外出の必要もなく手軽に食事を済ませられるからと言って、デリバリーのピザやファストフードを頻繁に頼んではいませんか? デリバリーに対応している食事は、高カロリーかつ塩分過多・糖質過多なものが多く、頻繁に食べると肥満のリスクが高まります。

在宅勤務は、外食を避けて自炊をするチャンスです。自炊であれば、食材の選択から調理方法までより細かく食事内容を制御することができます。これからの食事には、次のようなバランスの取れた食品を取り入れることをお勧めします。
 全粒穀物(玄米・全粒粉小麦・オートミールなど)
様々な種類のタンパク源(赤身の肉・魚介類・卵・大豆製品・ナッツ類など)
低脂肪または無脂肪乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)
非デンプン質野菜(葉野菜・トマト・玉ねぎなど)とデンプン質野菜(ジャガイモ・カボチャ・グリーンピースなど)
丸ごと果実

肉料理をするときは大量の添加物と塩が含まれている加工肉ではなく、新鮮な赤身肉を選んでください。調理で使用する油は、オリーブオイルやキャノーラオイルなどの健康的な食用油を使うのもいいでしょう。一人で様々な種類の野菜と果物を消費するのが難しい場合は、小分けできる冷凍野菜やドライフルーツを取り入れてみましょう。


自宅での食事は人目もないので、ついつい ”ながら食べ” をしていませんか? 仕事をしながら、スマートフォンやテレビを見ながら、本や雑誌を片手にしながら食事をしていませんか? “〇〇しながら” の行為と食事を同時に行うことは、意識を分散してしまうので過食になりがちです。Physiology and Behaviorジャーナルに掲載された2019年の研究でも、食事中にスマートフォンを使用することはカロリー摂取量の増加に関連することを報告しています²⁾。仕事部屋やパソコンの前で食事は避けて、できるだけ食事スペースと仕事スペースを分けてください。気が散った状態での食事は、過剰なカロリー摂取に陥る傾向があります。仕事中であろうがなかろうが、”ながら食べ” は止めましょう。

仕事中にお菓子を食べながらの、ながら仕事も同じように気を付けてください。仕事のストレスも過剰な間食の引き金になりますが、どうしても口にしたい時は健康的な間食を選択してください。高カロリーなジャンクフードや菓子パン類は手の届きにくい場所へ移しましょう。健康的な間食の例としては、フルーツ・ナッツ類・ポップコーン・全粒粉クラッカー・お餅などがあります。

また、食事も睡眠と同様に、規則正しいスケジュールを守ってください。不規則な食事も肥満のリスクに繋がります。毎日同じ時間に食事と間食を摂るように心掛けてみましょう。これは勿論、休日にも当てはまります。


定期的な運動


在宅勤務では、通勤で体を動かすことができないので、運動のガイドラインを満たすことが困難になってきます。このような状況で、どのようにモチベーションを維持しながら身体活動量を増やすことができるでしょうか。在宅勤務では、オフィスビルに出入りしたり、会議室や休憩室まで歩いたり、階段を上り下りするような身体活動はありません。残念なことに、自宅で一日中デスクワークに取り組むだけでは筋肉量は増えませんし、体脂肪量は減少するどころか増加してしまいます。在宅勤務やデスクワークで運動量が足りない方は、仕事の合間にちょっとした運動休憩を挟んで運動量を確保する必要があります。

2020年の最新の研究でも、ちょっとした運動休憩を取ることは、食後の血糖反応を良くしてトリアシルグリセロール(中性脂肪)の低下に役立つことが示されています³⁾。この研究では、長時間の座位活動の合間に下記の運動休憩を取り入れています。
昼食前に30分の早歩き
4時間の座位(デスクワーク) → 30分のサイクリング運動(運動強度: 70%VO₂max)
40分の座位(デスクワーク) → 6分のサイクリング運動(運動強度: 70%VO₂max)
3時間15分の座位(デスクワーク) → 15分の立位 & 15分のウォーキング & 15分のMVPA(中-高強度の身体活動)運動

仕事中に運動休憩を取ることをつい忘れてしまう人は、タイマーをセットしてください。座ったまま一定時間が過ぎたら、強制的に立ち上がって、少し室内を移動してみましょう。できれば、運動休憩は屋外で実施してください。日光を浴びると免疫機能に重要な役割を果たすビタミンDを皮下で生合成できます。屋外に出ることが難しい場合は、ヨガ・自荷重の運動・トレーニングビデオで紹介されている有酸素運動など、室内でもできる簡単な運動を行いましょう。

1日中自宅で過ごしていると、どんなに努力しても、十分な運動量を確保することはとても難しいです。厚生労働省が定める「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動指針-」では、1日に60分の身体活動と8,000歩を目安に歩くことを推奨しています。60分の身体活動のうち20分は筋トレやスポーツを行うことを目指します。なかなかこの目標まで達成することは難しい状況かもしれませんが、少しでも運動休憩などを取り入れてコツコツ身体活動量を増やしていきましょう。


進捗状況を確認する


一人で運動のモチベーションを維持することは、家族や友人と一緒に行う時よりも難しくなります。そんな時は、体組成計で進捗を記録したり、体成分データを周りの人と共有したりすることで、モチベーションアップに繋げましょう。

骨格筋量や体脂肪率などの体成分は、体重よりも遥かに優れた指標です。体重が減ったとしても、それだけでは体にとって良い変化なのかわかりません。一日中座りっぱなしの生活で筋肉量が減り、体重が減ったことは良い変化ですか? 水分補給を忘れてしまい脱水状態に陥った結果、体重が減ったことは良い変化と言えますか? 体重が標準範囲内だからと言って健康体とは限りません。筋肉量と体脂肪量がそれぞれ適量でなければ、本当に健康かは分かりません。

InBody Dialは家庭用のInBodyで、業務用InBodyと同様に部位別測定・2周波の多周波数測定・統計補正の排除を可能にした家庭用で最も精度の高い体組成計です。体重だけでなく、骨格筋量・体脂肪率・BMI・内臓脂肪レベルなどの項目が、スマートフォンアプリの履歴で確認することもできます。
※InBody Dialの詳細は製品情報の家庭用製品「InBody Dial」からご覧ください。


終わりに

緊急事態宣言をきっかけに新しく在宅勤務を始めた方にとって、健康的なワークライフバランスを確立させるのに今以上の好機はありません。仕事とプライベートの健康的な両立には、メンタルヘルスマネジメント・バランスの取れた食事・定期的な運動の3つの視点が欠かせません。ストレスや不安を感じている時は、瞑想を試してみたり睡眠を優先するようにしてください。食事メニューを見直して、バランスの取れた食品・調理法を選択しましょう。そして、1日に少なくとも60分の身体活動を実施するように心掛けてください。

 

参考文献
1. The effects of meditation on the performance and well-being of a company: A pilot study. Pagliaro G et al., Explore (NY). 2020 Jan – Feb;16(1):56-60
2. Smartphone use while eating increases caloric ingestion. Gonçalves RFDM et al., Physiol Behav. 2019 May 15;204:93-99
3. Effects of Interrupting Prolonged Sitting with Physical Activity Breaks on Blood Glucose, Insulin and Triacylglycerol Measures: A Systematic Review and Meta-analysis. Loh R et al., Sports Med. 2020 Feb;50(2):295-330

体型改善 Part2: 基礎代謝量の活用法

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体型改善 Part1: 基礎代謝量とは

体成分を改善させたい場合は、筋肉量を増やして体脂肪量を減らす必要があります。しかし、思い通りに体成分を変化させることはとても難しく、やり方を間違えるとより悪化してしまうケースもあります。つまり、食生活の内容は、筋肉量の増加・体脂肪量の減少という目標を達成できるように構成する必要があります。筋肉量と体脂肪量の増減を意識せずに、ちぐはぐな食事プランと運動を設定してしまうと目標を達成することはできません。

よくある誤解として、「食事量を減らし運動量を増やせば、体脂肪率が改善して理想の体型になれる」 ということがあります。しかし、なりたい体型がどういうものかによって実践する内容は変わります。場合によっては食事量を増やすことが必要なときもあります。例えば、筋肉量を増やし強靭な体型になることを求めているなら、運動量を普段よりも増やして1日の総消費カロリー(TDEE)に見合った分の食事を心掛ける必要があります。
※体成分を改善したい方は、InBodyトピックの「体型改善 -ダイエットの始め方-」もご覧ください。

体型改善の目的において、食事プランに取り入れるべき要素は多く、全てを取り入れようとすると複雑になってしまいます。筋肉量を増やしてウエイトアップを目的とするのか、体脂肪量を減らして体重を落とすことを目的とするのかによっても、食事の内容や摂取カロリー量は変わってきます。今回のトピックでは、筋肉量増加と体脂肪量減少のそれぞれの視点から、基礎代謝量(BMR)を用いて適切な食事プランを立てる方法をご紹介します。


筋肉量を増やす食事プラン

筋肉量を増やしたい場合は、TDEE以上のカロリーを摂取する必要がありますが、不要なカロリー摂取は避ける必要があります。筋トレのメニューも重要ですが、何をどう食べるかについては更なる工夫が必要です。

前回のトピックで登場した男性(体重:77.6kg、除脂肪量:60.6kg、BMR:1,679kcal、身体活動レベル:普通)を例に説明します。こちらの男性のTDEEは2,938kcalなので、ウエイトアップにはこれ以上のカロリーを摂取する必要があります。具体的にはどれくらい摂取カロリーを増やせばいいのでしょうか? 2002年に発表されたアメリカの研究によると、ウエイトアップにはTDEEより約15%多くカロリーを摂取する必要があると報告されています¹⁾。この研究に基づいて、こちらの男性の摂取カロリーは3,379kcalに設定することができます。体脂肪量の増加は最小限に抑えつつ筋肉量を増やすためには、どのように摂取カロリーを増やせばよいのでしょうか?

筋肉量を効率よく増加させるためには3大栄養素の中でも、特にタンパク質の摂取が大切と言われています²⁾。しかし、タンパク質の摂取量のみを増やしたからといって、それがそのまま筋肉量の増加につながるわけではありません。2006年の大学運動選手を対象とした研究によると、2.0g/体重(kg)/日以上ものタンパク質を摂取していたにも関わらず、筋肉量や筋力が向上されなかったと報告されています³⁾。筋力が必要とされる大学運動選手の適切な摂取カロリーは、44.0~59.0kcal/体重(kg)/日以上が推奨されていますが⁴⁾、この研究の参加者の摂取カロリーは33.0±5.5kcal/体重(kg)/日と、推奨量を下回っていました。このような研究から、タンパク質だけを十分に摂取したとしても、運動レベルに適した摂取カロリーが足りない場合、筋肉量を増やすことは難しいと分かります。つまり、もし筋肉量を増加させたい場合は、タンパク質の摂取量を増やすことも大切ですが、摂取カロリーはTDEE以上である必要があります。タンパク質はもちろん、炭水化物もバランスよく食事内容に構成して、適切なカロリーを摂取しましょう¹⁾。

また、適切な摂取カロリーの設定には、InBodyが研究項目で提供している推奨エネルギー摂取量※1も参考になります。推奨エネルギー摂取量は、健康な人が1日に必要とするエネルギー摂取量(EER)を算出後、InBodyで測定した体成分を考慮して調節される値です。EERの算出方法は次の通りです⁵⁾。

➤ 20歳以上の成人男性
EER=662-9.53×年齢+身体活動係数(PA
※2×[15.91×体重(kg)+539.6×身長(m)]
➤ 20歳以上の成人女性
EER=354-6.91×年齢+身体活動係数(PA)
※2×[9.36×体重(kg)+726.0×身長(m)]
➤ 20歳未満の男性(9歳以上)
EER=88.5-61.9×年齢+身体活動係数(PA)
※3×[26.7×体重(kg)+903×身長(m)]+25
➤ 20歳未満の女性(9歳以上)
EER=135.3-30.8×年齢+身体活動係数(PA)
※3×[10.0×体重(kg)+934×身長(m)]+25

基本的には、EERがそのまま推奨エネルギー摂取量として提供されますが、次の条件に該当する人は体成分を考慮してEERが調節されます。
① 18~64歳の男女で、体重・骨格筋量がどちらも標準範囲より少ない痩せ型の場合は、EERに250 kcalを足す。
② 18~64歳の男女で、体重・体脂肪率がどちらも標準範囲よりも多い肥満型の場合は、EERから500 kcalを引く。
③ 65歳以上の男女で、体重・骨格筋量共に標準範囲未満である場合、または体重・体脂肪率共に標準範囲以上である場合、EER公式の
”体重” 箇所に ”調節体重” を適用して算出する。
調節体重=現在体重+(標準体重-現在体重)÷4

筋肉量を増やすために、ウエイトアップする必要がある痩せ型な男性(年齢:20歳、体重:50.9kg、身長:170cm、骨格筋量:標準範囲未満)の推奨エネルギー摂取量を計算してみましょう。こちらの男性のEERを計算すると、2,389kcalとなります。しかし、体重・骨格筋量が標準範囲未満であるということは、身体活動に必要なエネルギーが十分に供給されていない状態を意味するので、この場合はEERに250kcalをプラスします。結果、この男性の推奨エネルギー摂取量は2,639kcalになります。推奨エネルギー摂取量を参考にすることで、自分の体成分に応じてエネルギー摂取量を調節し、筋肉量を増やすためのウエイトアップをすることができます。

※1 現行販売している非医療機器(InBody270, 470, 570)のみ、提供している項目になります。
※2 身体活動の程度によって4段階(非活動・低活動・活動・高活動)に分けられますが、InBodyでは平均的な活動係数男性1.11、女性1.12を使用します。
※3 身体活動の程度によって4段階(非活動・低活動・活動・高活動)に分けられますが、InBodyでは平均的な活動係数男性1.13、女性1.16を使用します。


体脂肪量を減らす食事プラン

体脂肪量を減らしたい場合は、カロリーが不足した状態=「カロリー赤字」をつくる必要があります。つまり、TDEEより低いカロリーを持続的に摂取します。TDEEは現在体重を維持するために必要な摂取カロリーなので、これを基準に「カロリー赤字」を考えてみましょう。
※カロリー赤字に関してもう少し詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「体脂肪量減量に関する5つの迷信」もご覧ください。

2週間で1kgの体脂肪量を減らすには、毎日の食事から550kcalほど減らす必要があると言われています。これは1kgの体脂肪量をカロリーに換算すると約7,700kcalであることから、「2週間でマイナス7,700kcalを達成するためには1日当たり摂取カロリーを550kcal減らす必要がある」という計算に基づいています。確かに理論上、この方法は理に適っていますが、誰にでも推奨できる方法ではありません。TDEEが3,000kcalや4,000kcalとある程度高い方が、摂取カロリーを1日に550kcalほど減らしたとしてもそれほど問題ではありませんが、TDEEが1,500kcalもない方が1日の摂取カロリーを1,000kcal以下にして日常生活と運動をこなすのは難しいです。
※体脂肪量1g当たり=7.7kcalに該当します。

従って、TDEEから摂取カロリーを減らす最も安全な方法は、まずは1日当たりの摂取カロリーを200~300kcalほどの僅かな量だけ減らし、1~2週間維持することです。1週間の継続後に筋肉量が減っていないかを確認するため、InBody測定を行います。もし筋肉量が維持されたまま体脂肪量が少しでも減少していれば、カロリー赤字は成功です。今後は運動による消費カロリーなども調節し、その日に応じた必要な分のカロリーを摂取します。

では、摂取カロリーを食事から安全に減らすにはどうすれば良いでしょうか? 最も簡単な方法は、ファストフード・お菓子・チョコレート・ジュース・お酒などの摂取量を減らすことです。今までどれだけ摂っていたかによっても異なりますが、これだけで減量できるかもしれません。普段からこういったものをあまり摂取していない場合は、摂取量を多少減らしても問題ない栄養源を減らすようにします。食事プランの炭水化物や脂質の中でカットできる部分がないか見直してみましょう。一方、摂取量を減らし過ぎないよう注意すべき栄養素はタンパク質です。タンパク質は筋肉を構成する成分であり、摂取量を減らし過ぎてしまうと、筋肉量が減少して体重が落ちてしまいます²⁾。厚生労働省は、日本人が必要なタンパク質の量を男性60g/日、女性50g/日と定めているので、こちらの値を参考に調節してください⁶⁾。


摂取カロリーを食事から安全に減らす別の方法は、低カロリー高タンパク質の食材を選ぶことです。お勧めの食材は次のようなものが挙げられます。適切なカロリー制限と栄養摂取に運動を並行することで、筋肉量を維持しつつ体脂肪量を減らすことができます。

・さけの切り身(100g): 132kcal/タンパク質 22g
・ギリシャヨーグルト(170g): 100kcal/タンパク質 17g
・鶏の胸肉(骨・皮なし、100g): 108kcal/タンパク質 22g
・牛肉(もも、赤身肉、100g): 140kcal/タンパク質 23g
・豚肉(ヒレ、赤身肉、100g): 114kcal/タンパク質 23g
・絹ごし豆腐(1丁300g): 168kcal/タンパク質 15g


理想の体型になるために

理想の体型になるためには、食事プランと一緒に運動なども常に少しずつ変化させる必要があります。諦めずに継続すれば、必ず努力は結果として現れるでしょう。しかし、結果が目に見えるまで、どれほど時間を要するかは個人によって異なります。モチベーションを維持するためにも、定期的に体成分を確認するようにしましょう。測定頻度の目安としては、1~2週間毎の測定が推奨されますが、食事プランや運動内容が更新されたタイミングに合わせて測定するのも良いでしょう。より詳細な体成分の変化を確認したいのであれば、是非InBodyで測定してみてください。

最後に、BMRは筋肉量と密接に関連していることを忘れないでください。適切な栄養摂取と運動によって筋肉量が増えると、必要な摂取カロリーも増加します。摂取カロリーの調節ができなければ、せっかく増やした筋肉量を維持することはできません。更に筋肉量を増やしたい場合は、今の摂取カロリーも見直す必要があります。逆に、厳しいカロリー制限を行って筋肉量が減少した場合はBMRも減少しています。筋肉量の減少を考慮せずにむやみに運動量を増やしたり、余分に摂取カロリーを取ってしまったりすると、理想の体型から遠ざかってしまうかもしれません。

食事や運動の計画を立てる際、体に必要な摂取カロリーを把握することはとても有益です。これを把握するためには、BMRを知ることから始まります。BMRをうまく活用することで、健康を損なうことなく、より効果的に体成分を改善して、少しずつ理想の体型に近づけていきましょう。このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「体型改善 Part1: 基礎代謝量とは

 

参考文献
1. Macronutrient considerations for the sport of bodybuilding. Lambert CP et al. Sports Med. 2004;34(5):317-27.
2.「筋肉量を増やすために必要な栄養素「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」」 独立行政法人環境再生保全機構 すこやかライフ
3. Effect of Protein Intake on Strength, Body Composition and Endocrine Changes in Strength/Power Athletes. Jay R Hoffman et al. J Int Soc Sports Nutr, 2006; 3(2): 12–18.
4. American Dietetic Association. Dietitians of Canada and the American College of Sports Medicine Position stand: Nutrition and athletic performance. Med Sci Sports Exer. 2000; 32: 2130–2145.
5. Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids, institute of medicine of the national academies, 2002 and 2005, The National academies press 500 Fifth street, N.W. Washington, DC 20001
6.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省

体型改善 Part1: 基礎代謝量とは

理想の体型になりたいと思ったとき、第一にとる行動はジムに行くことです。初めのうちはとてもやる気がある状態で、毎日トレッドミルやウエイトトレーニングを頑張ろうと決意します。しかし、変化が何も見えない状態では、その熱意は徐々に失われてしまいます。気付けば、毎日が週3日になり、週3日が時間のあるときになり、運動の頻度が落ちてしまいます。このように、体型の変化を知る前に運動を諦めてしまった経験はありませんか? ジムに行くことを途中で止める理由はたくさんありますが、最も一般的な理由は結果がすぐには現れないことです。そして、理想の体型を目指してジムに通うことだけに夢中になっている人は、最も重要で基本的なことを忘れてしまっています。

「腹筋はキッチンで作られる」という話がありますが、これは事実です。ジムでは運動を行い筋肉に刺激を与えることができますが、悪い食生活の下では十分な運動効果を得ることはできません。適切な食事無しでの運動は、逆に筋肉の破壊につながりかねません。では、適切な食事はどのように取れば良いのでしょうか? 摂取する栄養素の種類・食事の頻度・摂取するタイミング・断食の選択など、食事に関して考えるべき要素はたくさんありますが、食事メニューを考える上でも1日の総消費カロリー(TDEE)を知ることは最重要事項です。
※Total Daily Energy Expenditure (TDEE)とは、身体活動量分のカロリーも含んだ1日の総消費カロリーです。


基礎代謝量(BMR)の求め方


体が1日に消費する総消費カロリーはどれくらいでしょうか? TDEEは基礎代謝(70%)・生活活動代謝(20%)・食事誘発性熱代謝(10%)に分けることができます。基礎代謝は、毎日の生命維持のために体を動かさなくても使われるカロリーを指します。生命維持とは、呼吸・血液の循環・体温維持・脳の活動・内臓の活動などによる代謝活動です。生活活動代謝は、歩いたり走ったりするときに使われるカロリーを指し、食事誘発性熱代謝は、摂取した食物が消化・吸収される際に発生する熱によって消費されるカロリーを指します。

TDEEを求めるためには、まずBMRを求める必要があります。BMRと一言でいっても、ハリスベネディクト式やミフリンセントジョール式などBMR算出に用いられている公式は様々です。これらの式は体重を用いてBMRを計算しますが、身長・年齢・性別による補正が掛かっています。つまり、同じ身長・年齢・性別の平均から外れている人がこれらの式を使用すると(例えば、アスリートや疾患者の場合)、算出されたBMRは正確ではない可能性があります。平均から離れている人には、除脂肪量を用いて算出する、カニンガム式のBMRを使用することをお勧めします。BMRを除脂肪量だけ用いて算出することには、次のようなメリットがあります。

カニンガムの式 BMR=除脂肪量×21.6+370¹⁾
➀年齢・性別の統計から得られた情報による補正の影響を受けません。
➁カニンガムの式は運動によって鍛えられる筋肉量の変化を反映するので、筋肉量が増えるとBMRも増えます。
(除脂肪量には筋肉量が含まれており、筋肉量の増加は除脂肪量の増加につながります。)
※除脂肪量(kg)=体重(kg)-体脂肪量(kg)

現行販売している全てのInBody機種で、カニンガム式により算出されたBMRを提供しています。自分のBMRが把握できたら、次のステップに進みましょう。


BMRから1日の総消費カロリー(TDEE)を計算する方法

BMRは安静時に消費されるカロリーであり、歩行・会話・家事・仕事・運動など、生活活動に関わる消費カロリーは含まれていません。そのため、食事プランを立てるために必要なTDEEは、BMRに身体活動レベルを表す係数を掛けて求める必要があります。TDEEの算出方法は次の表をご参照ください²⁾。

身体活動レベル 説明 TDEE
低い(Ⅰ) 静的な活動(生活の大部分が座位) TDEE=1.5×BMR
普通(Ⅱ) 中強度な活動(通勤・買い物・家事・軽いスポーツなど) TDEE=1.75×BMR
高い(Ⅲ) 高強度な活動(スポーツなどの活発な運動習慣・肉体労働など) TDEE=2.0×BMR

身体活動レベルが普通(Ⅱ)である男性のTDEEを計算してみましょう。この方の体重は77.6kgで、除脂肪量は60.6kgです。カニンガムの式を用いると、この男性のBMRは1,679kcalとなります。これに適切な係数(1.75)を掛けると、体重を維持するためにこちらの男性が必要なTDEEは、2,938kcalになります。

ここまでは、主に基礎代謝量の種類と計算方法について説明しました。次のトピックではこれらをどのように活用できるのか、実践方法をご紹介します。☞「体型改善 Part2: 基礎代謝量の活用法」

 

参考文献
1. A reanalysis of the factors influencing basal metabolic rate in normal adults. J.J. Cunningham. The American Journal of Clinical Nutrition, Volume 33, Issue 11, November 1980, Pages 2372–2374.
2. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省