BIA技術の限界と克服 Part2: 最新技術


これまでのBIA技術には前回のトピック「BIA技術の限界と克服 Part1: BIA技術の黎明」で紹介したような限界があり、部位別測定や多周波数測定など新しい技術開発の必要性が認識され、長年、技術者達がこの問題に取り組んできました。そして、1996年にDr. Chaが部位別測定や多周波数測定を適用し、インピーダンス・身長・体重のみで体成分を算出するDSM-BIA(Direct Segmental Multi-frequency Bioelectrical Impedance Analysis)機器を開発し、InBodyが誕生しました。ようやく、BIA機器が信頼を得て医療・研究など専門分野でも広く使用できる時代が幕を開けました。


最新技術を搭載したDSM-BIA機器

InBodyは人体を右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の5つの部位に分けて、1~1000kHz内の低周波数と高周波数の交流電流を組み合わせてそれぞれ測定します。部位毎に分析する点や精度はDEXAと同じですが、DEXAよりもはるかに迅速かつ簡便です。そして、多周波数によるインピーダンス測定は水分バランスも測定できるので、筋肉量だけでなくその質まで解釈することを可能にしました。筋肉量と筋肉の質※を一緒に分析できるのは、最新のDSM-BIA機器だけです。

※健康な体は筋肉量が多いだけでなく、筋肉を構成する水分バランス(細胞外水分比、ECW/TBW)も必ず標準的な割合が維持されます。例えば、体が浮腫むと筋肉が水増しされる形で筋肉の質が落ち、栄養状態が悪くなると筋肉の細胞が脱水状態になる形で筋肉の質が落ちてしまいます。ECW/TBWの標準範囲は0.360~0.400で、一般的にECW/TBWは0.400を超えると高いと評価します。

実際に測定した結果を見ても分かるように各部位でインピーダンスが異なりますが、体幹のインピーダンスは腕や脚のインピーダンスの10分の1以下にもなる場合があります。体幹の筋肉量は全体の50%近くを占めるにも関わらず、インピーダンスは四肢と比べるととても小さいです。つまり、インピーダンス1Ωの変動に対して、四肢の筋肉量への影響は僅かでも体幹の筋肉量への影響はとても大きいということを意味します。そのため、体幹を単独で測定することがとても重要で、体幹部の誤差をなくすことは、結果的に全体の測定精度を大きく高めることになります。InBodyは部位別測定や多周波数測定などの技術を開発したことによって、次のような詳細情報を提供します。

※こちらの項目はInBody770で提供している項目の一部です。

※こちらの項目はInBody S10で提供している項目の一部です。


過去のBIA機器と最新DSM-BIA機器の計測データ(インピーダンス)を比較する

➀両脚だけを測定する機器、➁両腕だけを測定する機器、➂最新DSM-BIA機器、それぞれで計測されるデータは次のようになります。

➀と➁の測定方法では、重要な体幹データが欠落しています。また、片半身(右)だけを単周波で測定するBIA機器は右腕・体幹・右脚の3つの部位に電流を流しますが、片半身を一つの円柱と捉えるために、得られるインピーダンスデータは一つのみです。このようなBIA機器では、せいぜい体成分の大まかな値しか算出できません。従って、➂の測定方法のみ人体の全体像を捉えることができ、DEXAと比較した際に高い相関が得られます。


簡単、迅速、正確な方法


これまでの古いBIA機器には、技術的に克服しなければならない設計上の問題がいくつもありました。そのため、信頼性や再現性では評価を得られませんでした。しかし、最新のDSM-BIA機器はこれらの課題を克服して、専門的な使用を目的とした現場のニーズにも対応できるようになっています。

今日、BIA技術は古く使い物にならない技術ではありません。改良された技術を搭載したDSM-BIA機器は、従来のものと同様に簡単・迅速な測定方法としての利便性と、ゴールドスタンダードによって認められた精度が融合されています。DSM-BIA機器を使用することで、医師・研究者・フィットネス専門のトレーナーらは測定者の体成分をより正確に可視化できるため、InBodyは臨床検査・臨床試験・栄養指導・運動指導の必需品として選ばれています。

このトピックの前編を見逃している方は、こちらもご覧ください☞「BIA技術の限界と克服 Part1: BIA技術の黎明

BIA技術の限界と克服 Part1: 技術の黎明

※このトピックをより深く理解していただくには、「InBodyの技術」ページも併せてご覧いただくことをお勧めします。


BIA(Bioelectrical Impedance Analysis:生体電気インピーダンス分析)技術が商業化された当初は、健常者に対して大体の体成分情報が提供できることから、”体脂肪計” として一般家庭やフィットネス現場に広く普及しました。しかし、部位毎に長さ・太さが異なり、水分均衡も変動する人体を、片半身の単周波数インピーダンスだけで解釈していた初期のBIA技術では、信頼性に関する疑念を払拭できず、医療・研究など専門分野での普及が遅延していました。限られたインピーダンス情報からできる限り正確な体成分を算出するための試みとして、年齢・性別を始め、体型・病歴・人種など様々な情報が組み込まれた補正式が開発されましたが、補正式は式を作った集団と類似な人体のみで精度が保たれ、且つ体成分の変化が正しく反映されない限界から、専門的な使用を目的とした医療・研究の現場では長年注目されることがありませんでした。

しかし、BIA技術は数十年に渡る長い道のりの中で飛躍的に向上しました。InBodyなどの最新技術を搭載した一部のBIA機器で測定した部位別筋肉量や体脂肪量は、ゴールドスタンダードと言われるDEXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)との比較測定によってその精度が証明されています。

もし、BIA技術は推定としての情報しか分からない、使えない技術であると考えているなら、想像してみてください。設置場所を取らずに、クリニック・パーソナルジム・待合スペースなど、どこでも設置可能で、簡単・迅速に測定でき、最高水準の精度と再現性を併せ持つデバイスを。体の変化を敏感に反映して治療やトレーニングの効果をモニタリングできる機器を。これらを実現可能にしてくれる機器が、InBody=体成分分析装置です。


過去の技術を使っているBIA機器


自宅などで使っている家庭用のBIA機器を確認してください。多くの機器が、統計補正に必要な情報として年齢・性別を入力する必要があり、両脚や両腕、片半身など体の一部だけに電気を流してインピーダンスを測定しています。体の一部しか測定していないにも関わらず、全身の値が算出されるということは、実際に測定した体の一部分に基づいて、全身の値を推定しているということを意味します。この方法は、全身の体成分が画一的であると想定しています。つまり、体の上下左右の筋肉の発達が不均衡の方は誤差が大きくなり、補正式を作った特定集団で表れる体成分の傾向と異なる方は更に誤差が大きくなります。

➤ケース① スポーツ選手

サッカー選手は一般人に比べると下半身がとても発達していますが、このような方が両脚だけを測定するBIA機器を使用すると、上半身も同様に発達していると見積もられた結果、全身の筋肉量が実際よりも過大評価される(=体脂肪率が極端に低く算出される)ケースがあります。

➤ケース② お腹周りの肥満

男性は特に内臓脂肪の増加も起因して、体幹部に脂肪が付きやすいです。腹部脂肪が溜まっている方が両腕だけを測定するBIA機器を使用すると、比較的体脂肪率が低い腕の情報に引っ張られ、体幹の過剰な体脂肪は無視された結果、全身の体脂肪率が実際よりも過小評価されるケースがあります。

➤ケース③ 特定部位の浮腫み・怪我

片半身だけを測定するBIA機器は、右半身または左半身のインピーダンスから残り片半身も同じとして全身を推定します。リンパ浮腫など特定部位のみが浮腫んでいたり、片足骨折など怪我が原因で一部が弱っていたり、左右の均衡が崩れている場合は全身筋肉量を実際より過大、若しくは過少評価してしまいます。また、長さ・太さがまったく異なる腕・体幹・脚を一つの円柱として解釈するには限界もあります。

また、これまでのBIA機器は単周波数(50kHz)の交流電流でインピーダンスを測定していました。しかし、50kHzの低周波数は電流が細胞膜を通過しづらいため、細胞内の水分量および全身の水分量を正確に測定することができません。その結果、水分バランスが崩れている高齢者や疾患者の体成分解釈を誤ってしまう場合があります。

➤ケース④ 高齢者・疾患者

単周波数(低周波数)だけを使用するBIA機器は、一部の体水分(細胞外水分量)しか測定できず、測定できた一部の体水分を基に残りを推定します。痩せている高齢者や、浮腫を伴う疾患を持っている患者など、水分バランスが大きく崩れている方は、全身の水分量や筋肉量が過大評価されるケースがあります。

ここまでは初期のBIA技術と、その問題点について説明してきました。次回のトピックでは、これらの限界を克服した最新技術DSM-BIA(Direct Segmental Multi-frequency Bioelectrical Impedance Analysis)についてご紹介します。

※このトピックをより深く理解していただくには、「InBodyの技術」ページも併せてご覧ください。

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InBody S10 -何ができて誰に必要なのか-

InBody S10は、InBody770と同じ高度なBIA技術を搭載し、携帯と移動に特化した体成分分析装置です。測定姿勢は、仰臥位・座位・立位の3つの姿勢から選択することができます。「手足が腫れている」、「拘縮がある」などの理由で通常の電極では測定ができない方でも、付着式電極を使用することで測定を行うことができます。コンパクトなサイズで院内を自由に移動することも可能で、外部や電源が取れない場所でも外付けバッテリーパックとサーマルプリンターで検査を行うことができます。様々な測定環境で、より幅広い患者層を測定できるので、医療施設や研究施設などの専門家にとって重要な検査機器の1つとなっています。

InBody S10の主な機能と特徴は、次の通りです。


部位別ECW/TBW分析


InBodyのいくつかの機種は、測定されたインピーダンス値から細胞外水分比(ECW/TBW; Extracellular Water/Total Body Water)を算出し、体水分量の内訳の細胞内水分量と細胞外水分量を提供しています。InBody S10はこの分析を更に進めて、細胞外水分比・細胞内水分量・細胞外水分量を部位毎で提供できます。

定期的に体内の水分状態を確認する必要がある方や透析患者など、体内の過剰水分を除去する必要がある患者は、体の水分情報を部位毎で細かくモニタリングできるS10を使用しています。医療処置前の患者では、どれくらいの細胞外水分量を減らす必要があるのか参考にすることができます。利尿剤の使用やうっ血除去などの医療処置を行った際は、体の各水分量が適量となっているかをみることで治療効果を確認できます。水分貯留が発生している部位や過剰水分量は患者ごとで異なり、同じ治療を行っても全ての患者で同じ効果が得られるという訳ではありません。S10は、患者個々で異なる水分情報を細かく反映し、治療の調整に役立ちます。

部位別ECW/TBWのグラフでは、水分均衡の増減を視覚的に観察することができます。両脚・体幹・両腕の5つの部位全体で浮腫みが発生することもありますが、リンパ浮腫のように特定の部位に水分貯留が発生することもあります。全身の浮腫みに対して治療を行っても、治療が効かない部位(部位別ECW/TBWの反応がない部位)が見つかれば、潜在的な問題が疑われます。特定の部位だけECW/TBWが高い場合、血管狭窄などの問題から過剰に水分が貯留している可能性もあります。この検査結果を基に、水分均衡が崩れている原因を更に調査することができます。
※ECW/TBWの標準範囲は0.360~0.400で、一般的にECW/TBWは0.400を超えると高いと評価します。

ここまで、ECW/TBWと水分貯留の関係についてお話しましたが、必ず「ECW/TBWが高い=水分貯留・浮腫みがある」ということではありません。ECW/TBWが高くなる原因は主に次の2パターンがあります。

パターン①:細胞外水分量(ECW)が増えてECW/TBWが高くなる
浮腫を伴う疾患(⼼不全・腎不全・肝不全・糖尿・リンパ浮腫など)の症例や術後の輸液などで体液が急激に増えた症例では、細胞外水分量(ECW)と細胞内⽔分量(ICW)の両⽅が異常に増加する中でECW の増加率がより高いことから、ECW/TBW が高値になります。

パターン②:細胞内水分量(ICW)が減ってECW/TBWが高くなる
人体は加齢・栄養悪化に伴って筋肉を構成する体細胞量が減少する形で細胞内水分量(ICW)が減っていきます。
TBW はICW+ECW であるので、ICW の減少はECW/TBW における分⺟を小さくして、ECW/TBWを高くします。例えば、70歳以上の高齢者は疾患がなくても、ECW/TBW が0.400を超えることが一般的ですが、これは体液過剰による現象ではありません。また、筋ジストロフィーの症例でもECW/TBWが⾼値となりますが、筋⾁量が極めて少なくICWが減少している結果です。栄養不良が原因でECW/TBWが高くなっている場合は、栄養改善を通して水分均衡を管理する必要があります。


2種類の電極:ホルダー式電極と付着式電極


➤ ホルダー式電極
ホルダー式電極は痛みのない安定した着用感で繰り返し使用できます。手電極は親指と中指に、足電極は足首に装着します。ホルダー式電極は、InBodyが開発した独自の技術でインピーダンス測定が毎回同じ場所から開始されるようになっており、高い再現性が保証されています。従来の付着式の電極は、装着場所が毎回同じ場所に位置するように注意して取り扱う必要があります。専門知識がある人でも、電極を塗布する人が変われば電極位置の違いから測定結果の変動が生じる可能性があります。S10は、ホルダー式電極を使うことで、測定開始地点の変動からくる測定結果のばらつきを大幅に抑えることができるようになりました。

➤ 付着式電極
付着式電極の利点は、麻痺・切断・手足の腫れなどの理由でホルダー式電極が使えない人でも測定が可能という点です。しかし、欠損症例の体成分結果解釈においては誤解がないよう注意が必要です。切断の部位は、少ないはずの筋肉量が多く測定されてしまいます。しかし、これはその部位に実際の筋肉量が多いわけではなく、電気抵抗を利用して体成分を算出するBIA 装置の原理によって多く算出されたものです。電流の流れる伝導体が短くなると、電流を邪魔する抵抗は小さくなります。また、水分量が多く電流が流れやすい状態でも抵抗値は小さくなります。そのため、InBody も伝導体が短くなって抵抗が下がったことを、水分が多くて抵抗が少ないと捉えてしまいます。該当部位で筋肉量が多く計測されたことで全身の筋肉量は過大評価され、体脂肪量は体重から除脂肪量を差し引いて求めるために過少評価される結果となります。このような理由から、欠損患者の測定結果は変化のモニタリングを目的として活用する必要があります。


InBody S10による栄養評価

InBody S10は体内の水分情報を詳しく測定することで、全身の栄養状態を評価することができます。人体の栄養状態に影響する要因はたくさんありますが、体成分測定を行うことは栄養状態の理解を助けてくれます。立位での測定が困難なため、通常の体成分測定が難しい方は、S10を使って栄養状態を評価するために必要な情報を入手することができます。寝たきりや車椅子を使用している患者こそ、栄養状態モニタリングの必要性が高いです。

➤ 位相角
S10が提供する項目で、栄養評価に使える有用な指標の1つは位相角です。位相角は細胞膜の健康度・細胞の構造的な安定さを反映する値で、S10は全身及び各部位の位相角を提供します。

過度な食事制限や栄養不良は、フリーラジカルを過剰に生成させ、細胞を損傷します。位相角の減少はこのダメージを反映しています。細胞膜が弱まる(=位相角が低い)と、老化が早まったり免疫機能が低下したりして長期的な健康に影響を及ぼします。位相角の値から栄養状態を把握して、ビタミンやミネラルなど適切な栄養分を摂取するなど、時間をかけて改善していくことが重要です。緑黄色野菜やポリフェノールが豊富に含まれている食品には、フリーラジカルによる酸化作用を打ち消す抗酸化物質が含まれています。位相角は栄養状態の改善で増加するので、食事療法の効果を評価する有用な指標となります。

今回のトピックでご紹介したInBody S10の主要な機能と特徴は、ほんの一部です。詳しい仕様や項目等については、S10の製品ページをご覧ください。

BIA機器を初めて購入する方へのガイド

多くの人たちは、体成分の観点から健康を評価することが迅速・簡単・正確な方法であり、BMIには落とし穴があるということを気づき始めています。New York Timesでも「Same B.M.I., Very Different Beach Body (同じBMIでも筋肉質の体型とはまったく異なる)」というBMIの間違った使用法に関する記事を公開しています。もしこれから、フィットネスを始めたり、体の健康度合いを確認したい場合は、体成分を調べる必要があります。

体成分を測定する方法はいくつかありますが、生体電気インピーダンス分析(BIA)機器を使用して筋肉量・体脂肪率などを測定する方法が一般的な方法の1つとなりつつあります。BIA機器は、測定時間の短さや測定から結果が出るまでの速さ・利便性・正確性のどこをとっても不足はありません。しかし、BIA機器の購入に要する費用は機器によってまちまちです。BIA機器は人体に微弱な電流を流し、その電流が体水分を流れる際に発生する抵抗(インピーダンス)を測定することから始まります。測定されたインピーダンスをもとに体水分量を算出し、筋肉量・体脂肪量等の体成分を求めていることは、全てのBIA機器で同じです。同じ方法を使用しているのに、BIA機器の値段に幅があるのはなぜでしょうか? BIA機器を購入する時は、機器の価格だけを気にすれば良いのでしょうか? 今回のトピックでは、BIA機器を購入する際に、確認すべき重要な事項を説明します。


周波数を確認する

BIA機器は体成分を測定するために最低1種類の、周波数を持つ電流(交流)を使用します。BIA機器を初めて商業化したものが、50kHzの単周波数電流を使用していたことから、現在もなおいくつかのBIA機器はこれに倣っています。しかし、50kHzの単周波だけでは体水分量を正確に計測することが難しく、技術的精度を補うために統計補正を使用するようになりました。それでもやはり、健常者・高齢者・小児・性別・病歴など対象者によって使用する統計値は異なるため全ての人には適応できないという問題、統計の母集団に属さない人が測定すると逆に精度を悪くしてしまうという問題がありました。 ”この問題を乗り越えるためには、複数の周波数を使用する必要がある。” という見解を多くの研究者が認識していくようになり、1996年InBodyが初めて多周波数で測定できる技術を搭載したBIA機器の開発に成功しました。

BIA機器を検討する際は、使われている周波数の数を確認してください。単周波のBIA機器よりも多周波のBIA機器の方が正確であることは間違いありません。

多周波数測定が正確な理由

電流が人体に流れることで、BIA機器は抵抗値(インピーダンス)を測定できます。つまり、BIA機器は測定されたインピーダンスから体水分量を算出しています。低周波数の電流は、細胞膜を通過するのに十分なエネルギーがないので、細胞の周りを沿って流れるという性質があります。一方、高周波数の電流は細胞膜をよく通過して体水分全体を流れるという性質があります。このように周波数毎に細胞膜を通過する程度の差があることを利用し、広帯域の周波数電流を人体に流すことで、細胞外水分量・細胞内水分量・水分均衡を表す細胞外水分比(ECW/TBW)・体水分量をより正確に算出することができるようになります。このような水分情報を正確に測定してからはじめて、筋肉量・体脂肪量などの体成分が正確に算出できるようになります。


測定結果の項目を確認する


BIA機器が提供している測定結果の項目は機器によって様々です。体脂肪率のみを提供しているものもあれば、40以上の包括的な結果項目を提供しているものもあります。体脂肪率は、健康状態や体型評価の指標として確かに扱いやすい指標の1つです。一般家庭に出回っているBIA機器は体脂肪率を表示できるものが多いですが、実は体脂肪率は変動しやすい項目なので、体脂肪率だけに頼ることは危険です。BIA機器が測定できるのは体水分なので、電流が流れない部分(衣類・直前に摂取した食べ物など)は体脂肪として換算されるためです。

体脂肪率の他に活用できる項目として、代表的なものを3つご紹介します。検討しているBIA機器でこれらの項目が提供されているか、確認してください。

➤ 骨格筋量
筋肉量の中でも随意的な運動が可能で筋繊維による横紋を持っている筋肉のみを意味します。四肢の筋肉は骨格筋のみで構成されている反面、体幹の筋肉には内臓筋・心臓筋も混在します。そのため、当項目は全身筋肉量から推定される内臓筋・心臓筋を除いた値でもあります。近年ではサルコペニアの評価で骨格筋指数(Skeletal Muscle Index: SMI)がよく使われているので、自身の筋肉量が十分に足りているのか、サルコペニアやサルコペニア肥満ではないかなども簡単に確認できます。
※SMIは四肢の骨格筋量を身長(m)の二乗で割った値です。アジアのワーキンググループ(AWGS)では、男性7.0kg/㎡未満、女性5.7kg/㎡未満をカットオフ値と定めています。

➤ 体水分均衡
より高精度なBIA機器では多周波数測定により水分情報の詳細が提供されているので、体水分量の総量だけでなく、細胞内・外のバランスも確認することができます。InBodyでは細胞外水分比(ECW/TBW)で水分均衡が適切かどうかを調べることができます。健康な体における体水分量(TBW)に対する細胞外水分量(ECW)の割合は常に0.380前後の一定な数値を維持します。しかし、浮腫を伴う疾患(腎不全・心不全・肝硬変・糖尿病など)がある場合、主に細胞外水分量が増える形でこの数値が高くなり、加齢・サルコペニアなど栄養状態が悪化した場合は、細胞内水分量(ICW)が減少する形でこの数値が高くなります。ECW/TBWは浮腫の指標でありながら、栄養状態や疾患の重症度を示す指標として広く使用されており、一般的に0.400を超えると高いと評価します。

➤ 位相角
位相角は電流が体水分に沿って流れる際に発生する抵抗(レジスタンス)と、細胞膜を通過する際に発生する抵抗(リアクタンス)の位相差です。つまり、位相角は細胞膜の健康度・細胞の構造的な安定さを反映します。位相角に標準値は定められていませんが、位相角0°は細胞の破壊を意味するので、位相角が低いほど細胞の健康状態・機能が低下していることを意味します。位相角は体格と比例するので、性別・⼈種別でも値は異なり、加齢によって低下していくので、年代によっても異なってきます。透析患者を対象に位相角で栄養評価を行った研究では、4°以下で栄養不良、5°以上で栄養良好を示したと報告しています¹⁾。


測定時に必要な情報が何なのかを確認する

全てのBIA機器で、測定時に必要な最低限の情報は “体重” です。BIA機器に体重測定機能が付いていないとしても、測定者は自身の体重を手動で入力する必要があります。BIA機器とは別のスケールで体重だけを測定する場合は、入力ミスがないように心がけてください。実際の体重と値が離れていくほど、体成分の各値も実際の値とは離れていきますが、体重-除脂肪量で算出されている体脂肪量は特に影響を受けることになります。従って、手動で体重を入力する際は、数日前に量った値や予想体重などを使用せずに直前に量ったものを使用してください。

身長も全てのBIA機器に共通した必要情報です。各部位で計測されたインピーダンスから体水分量を算出するには、各部位の長さが必要になります。この長さは身長に対する比例式で推定され使用されているため、身長入力を間違ってしまうと全ての測定値に影響が出てしまいます。体重と身長は統計補正によって結果を調整するための予測変数ではなく、インピーダンスと同様に体成分を理解するための重要な枠組みです。

“年齢” と ”性別” も入力を求められるBIA機器が多いです。30代と80代では、30代の方が筋肉量は多い、男性と女性では男性の方が体脂肪率は低いなどの統計データに基づいて、実際の測定値を調整するためです。統計補正を使用したBIA機器の問題点は、先ほど “周波数を確認する” の項でも説明しましたが、全ての人には適応できないという点です。このようなBIA機器を使用している場合、体を鍛えている高齢者・フィットネスに通っている女性は、統計補正の影響で筋肉量が過小評価されているかもしれません。統計補正を使用している機器であるかを調べるには、敢えて自分の性別ではない方の性別を入力して測定してみてください。本当の性別で測定した結果と比べて、筋肉量や体脂肪率が大きく変わっている場合は、統計補正を使用している機器となります。


何が測定され、何が測定されないのかを確認する


BIA機器は、電流が流れる部分のみのインピーダンスを測定できます。つまり、電流が流れない体の残り部分は推定で算出されているということです。多くの一般家庭用BIA機器は、両脚間に流れるインピーダンスを使用しているもの(上半身は推定)か、両腕間に流れるインピーダンスを使用しているもの(体幹と下半身は推定)です。このようなBIA機器は上半身と下半身の均衡が崩れていないということが前提になります。下半身がとても発達したサッカー選手が両腕間測定のBIA機器を使用してしまうと、筋肉量は過小評価されてしまいます。

また、右手の甲と右足の甲に電極を付けて片半身に沿って電流を流すBIA機器もあります。こちらは電極を付けていない方の半身が推定値となり、左右の均衡が崩れていないということが前提となります。テニス選手の利き腕発達度合いや、透析患者のシャント肢・非シャント肢の左右差などを調べることは難しくなります。

全身測定のBIA機器だからと安心してはいけません。全身を1つの円柱として測定するBIA機器と、右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の5つの部位に分けて測定する機器があるためです。同じ全身測定でも、部位毎でそれぞれ測定を行っているか否かで、測定結果の精度は変わってきます。
※部位別測定のメリットなど詳細は、InBodyトピックの 「部位別測定のガイド」 を参考にしてください。


終わりに

InBodyは部位別直接多周波数測定法(DSM-BIA)を使用した機器なので、上記確認事項全てをクリアにすることができます。結果は統計値を使用した統計補正を行わずに、両腕・体幹・両脚の5つの部位をそれぞれ測定して分析するようにプログラムされています。多周波数を部位毎でそれぞれ流しているので、測定時間が約15秒から約100秒と要しますが、測定結果は最も正確と言われるゴールドスタンダートのDEXAとほとんど一致しています。これからBIA機器を購入する人は、これらの確認事項を覚えておいてください。BIA機器を値段の側面だけで判断したがために、買った後に後悔したなんてことがないように。

 

参考文献
1. 慢性維持透析患者の栄養評価に対するPhase Angleの一考察, 増田ら, 公益社団法人 日本臨床工学技士会会誌 (2019)65

部位別測定のガイド

体の構成を詳しく分析する体成分分析は、シーズンに向けてトレーニング中のプロスポーツ選手であろうと、健康志向の一般人であろうと、進捗確認や目標維持に役立ちます。それぞれの目標を達成するために、フィットネス専門のトレーナーと契約して協力を得ることも一つの方法ですが、体成分分析を行い、体を構成している各成分について理解することも次のような利点があります。

第一に、体成分分析は太り気味・痩せ気味のようなアバウトな評価ではなく、現状どの位置にいるのかを正確に示すので、体成分を維持・改善するための客観的な評価を提供します。変化の内容もはっきり分かるため、体重の変動に対して敏感になる必要もありません。第二に、より正確で詳細な体内変化をモニタリングできます。各成分の増減をモニタリングすることで筋肉量を増やすことに焦点を当てるのか、体脂肪量を減らすことに集中するのか、またはその両方をアプローチしていくのかなど、状況に合わせて運動内容を随時調整することができます。正確なモニタリングによって目標に向かって具体的な行動を選択し、達成度を把握することができます。今回は、InBodyの技術の一つである「部位別測定」に着目して、詳しくお話しします。


部位別測定とは?

体成分分析とは、体を構成する体水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪などの各成分が、どれくらいあるのかを分析する方法です。従来のBIA装置では、人体を一つの円柱として分析していました。そのため、測定者の体成分データを決定する抵抗値(インピーダンス)も一つしかありませんでした。
※体成分分析についての詳細は、InBodyトピックの「体成分とは何でしょうか? 」 を参考にしてください。


しかしながら、人体の各部位は長さや円周が異なるため、人体を1つの円柱として分析する方法は、精度に限界がありました。この問題を解決するために、統計的な情報で補正する公式が使われるようになりましたが、更に精度を高めるためにも技術的な限界を乗り越えて、各部位を単独で測定し、体成分データを部位毎で提供できる技術が必要でした。

InBodyは人体を右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の5つの部位に分けて測定する技術の開発に成功しました。未だに1つの円柱モデルを採用している装置が多く使われていますが、人体を5つの円柱として分析する部位別測定のメリットは、次の通りです。
1. 体成分データの精度を高めることができる
2. 部位毎の体成分を識別して比較できる
3. 車いすやリンパ浮腫等の疾患によって均衡が崩れている人の正確な評価ができる

InBody結果用紙の部位別筋肉量では、各部位で棒グラフが2本ずつ表示されています。上の棒グラフは標準体重で持つべき筋肉量と比べて筋肉量が多いか少ないかを評価します。数値は実際の筋肉量をkgで表示しています。下の棒グラフは現在の体重で持つべき筋肉量と比べて筋肉量を評価します。数値は現在体重からみた筋肉量の発達度合いを%で表示しています。

下半身の左右差・アンバランスは転倒のリスクを高める上に腰痛や関節痛などの原因となります。また、オーバートレーニングや負傷の兆候として左右差が出てくることもあります。トレーナーやコーチが部位別筋肉量の項目を使って、選手のコンディションを把握したり、運動強度を調節したりすることができます。


部位別測定の仕組み: 技術の理解

部位別測定の理解を深めるために、体成分分析の基礎からご説明します。体成分をモニタリングする方法はいくつかあります。測定は簡便ですが、結果のばらつきがあるキャリパー法。除脂肪量と体脂肪量を正確に算出できますが、特別な設備と専門家が必要な水中体重法。体成分のゴールドスタンダードとして使用できますが、コストや医師の指導など多くの労力が必要なDEXA法。そして、InBodyでも採用している生体電気インピーダンス分析(BIA)法です。現在はこれらの方法が頻繁に使用されています。

部位別で分析が可能なものはDEXA法とBIA法です。BIA装置の技術や精度は製品によって様々で、すべてのBIA装置が全身のインピーダンスを部位毎で測定しているとは限りません。例えば、多くの家庭用体脂肪計では、脚のインピーダンスのみを直接測定し、上半身は推定値を使用して結果を算出しています。逆に腕のインピーダンスを直接測定し、下半身は推定値を使用しているものもあります。部位別測定を行う最新の医療用BIA装置は、人体を5つの円柱、それぞれの部位として分析しています。各部位を正確に単独測定することは、各部位のモニタリングのみならず、全身の指標として提供される体成分データの精度を高めるためにも必要不可欠です。

信頼性の高い結果を得るためには、各部位の正確なインピーダンス測定が重要ですが、最も重要な測定は体幹部の測定です。体幹には内臓器官が含まれており、水分量・筋肉量は全体の約50%を占めています。また、体幹の断面積が広く長さは短いことから、体幹インピーダンスは四肢インピーダンスよりも遥かに小さいです。体幹はインピーダンスあたりの体水分量が多いため、1Ωの差が体水分量に大きく影響してしまいます。これらの理由から、体幹のインピーダンスを正確に直接測定することがとても重要です。体幹を直接測定することで、誤差を最小限に抑えることができるのです。


どれくらい正確なのか?

BIA法の精度について、気になる方もいらっしゃると思います。今まで、多くの研究者がBIA法の原理や精度に関する研究を行い、信頼性について証明しています。 いくつもの研究の中で、部位別測定のBIA装置はDEXAの代替になると言われています。
※InBody活用情報の「原理に関する論文及び精度を検証した論文」も参考にしてください。


部位別測定の技術が登場したことにより、性別や年齢などの情報から結果を推測する(統計補正)必要がなくなりました。統計補正によって結果を算出しているBIA装置は、一般的な集団から得られた変数を公式に利用するため、個人の身体特性を正確に反映することができません。例えば、筋肉がとても発達した女性は「女性は男性よりも筋肉量が少ない」という一般的な集団情報が影響して、実際の筋肉量を過小評価してしまいます。疾患によって痩せている若い男性は「若い男性は筋肉量が多い」という集団情報から筋肉量を過大評価、健康志向で体が鍛えられている高齢男性は「加齢によって筋肉量は少なくなる」という集団情報から筋肉量を過小評価してしまいます。統計補正を使用せずに測定値のみで結果を提供する部位別測定のBIA装置は、体成分の変化を敏感に捉え、測定者のありのままの体を反映します。そのため健常者は勿論のこと、運動療法や栄養指導が必要な臨床現場でも用いられています。

 


部位別測定の恩恵を受ける人たち

部位別測定は、体成分変化をモニタリングする必要がある人たちに有用で、特に次の集団で重宝しています。

1. 競技特性によって、特定の部位が発達しているアスリート


競技やポジションなどの競技特性によって、特定の部位だけが発達しているアスリートもいます。テニスやバトミントンなどのラケットスポーツは利き腕がより発達していたり、サッカーや陸上選手は下半身の筋肉量が多くなる特徴があります。

 

2. 疾患によって身体均衡が崩れている患者


健康な人の筋肉は均衡が保たれた状態で発達していますが、疾患や怪我などによっては部位別の筋肉量・水分量・水分均衡は大きく変わってきます。

 

3. トレーニング効果や食事療法の効果を評価したい集団


例えば、シルク・ドゥ・ソレイユのチームはパフォーマーの部位別筋肉量を記録し、筋肉の均衡が保てるようなトレーニングプログラムを設計しています。また、負傷中のパフォーマーが回復したかを確認する方法としても部位別筋肉量を活用しています。
※シルク・ドゥ・ソレイユの活用方法が気になる方は、InBody活用情報の「シルク・ドゥ・ソレイユ 体成分に基づく訓練法の選択」を参考にしてください。

 

4. 生活習慣を見直し、改善したいと考えている人たち


上半身と下半身の不均衡は、デスクワークが中心の会社員で多く見られます。椅子に座る時間が長くなりがちな高齢者や運動不足が深刻な現代人も同様で、下半身の筋肉量が少なくなってしまうと、転倒のリスクが高まったり、将来歩行困難になって寝たきりになってしまう可能性が高まります。

 

5. 隠れ肥満に多い、腹部に脂肪が溜まっている人たち


部位別測定によって、部位別筋肉量だけでなく部位別体脂肪量も確認することができます。体幹の体脂肪量は高くないですか? 内臓周りの体脂肪は生活習慣病に関連することが知られています。

 

6. リスク管理が必要な高齢者


高齢者は身体活動の減少に伴って筋肉量が減少してしまいます。筋肉量が減少して栄養不良になると、健康面への様々なリスクが生じてきます。転倒や怪我のリスクが増加するだけでなく、日常生活を送る上で必要な身体機能の低下にも繋がります。

 

7. 慢性的な問題を抱えている患者


部位別測定のデータは、医療の専門家が慢性的な疾患を持つ患者を治療するために使用されることもあります。実際に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の筋肉喪失の早期発見に部位別測定の体成分分析が重要であることが報告されています¹⁾。また、透析治療を行っている慢性腎不全患者の部位別体液移動の評価においても部位別水分量や細胞外水分比、細胞外水分量など部位毎の情報が使われています²⁾³⁾⁴⁾⁵⁾。


終わりに

部位別測定は、体成分分析を行う上で最も重要な技術の1つです。両腕・両脚が対称的に発達しているのか、どこの部位に問題を抱えているのか、部位別測定によって確認することができます。BIA装置を利用する際は、部位別測定の技術を搭載している装置なのかを確認してください。InBodyは、健康な体を手に入れるためのサポートができる装置です。

 

参考文献
1. Body Composition in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease, Daniela Gologanu et al., Maedica (Buchar), 2014 Mar; 9(1): 25–32.
2. Assessment of Fluid Shifts of Body Compartments using Both Bioimpedance Analysis and Blood Volune Monitoring, Soo-Jeong Yu et al., J Korean Med Sci 2006; 21: 75-80.
3. The effect of vascular access modality on changes in fluid content in the arms as determined by multifrequency bioimpedance, John Booth et al., Nephrol Dial Tansplant 2011; 26: 227-231.
4. Changes in upper limb extracellular water content during hemodialysis measured by multi-frequency bioimpedance, Sanjeev Kumar et al., Int J Artif Organs 2013; 36(3): 203-207.
5. Does the presence of an arteriovenous fistula alter changes in body water following hemodialysis as determined by multifrequency bioelectrical impedance assessment? Kwanpeemai Panorchan et al., Hemodialysis International 2015; 19: 484-489.