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筋トレに年齢制限なし

加齢に伴い筋肉量は減少します。加齢が原因で筋肉量と筋力が低下することを指した、サルコペニアという言葉もあります。50歳以降で筋肉量は1~2%減少し、60~70歳では平均5~13%、80歳を超えると11~50%も筋肉量が減少してしまいます1)。筋肉量の減少は機能的能力の低下や、健康リスクに繋がります。身体活動が減ると筋肉の喪失がさらに加速され、生活の質が低下し日常生活が困難になる場合もあります。

高齢者は筋肉量が減少していくにもかかわらず、筋トレによって自身の体力レベルを改善することに消極的です。長い時間、トレーニングや身体活動をしていないと、”年を取りすぎて、もう重いものを持つことはできない” と誤った考えを持ってしまいやすい状態になります。しかし、年齢に関係なく誰もが体力レベルを向上させることができます。若い頃と変わらず活発で居続けるためには、体力と体型を改善するための目標を、体成分の視点で設定することが必要です。誤った考えから正しい考えへとシフトさせるには先ず、「フィジカルトレーニング(筋力・持久力・柔軟性などの基本的な運動トレーニング)」と「ファンクショナルトレーニング(機能的動作習得トレーニング)」の2つのトレーニングについて理解することから始まります。


フィジカルトレーニングとファンクショナルトレーニング


フィジカルトレーニングは、大きく次の3つに大別されています。
▶筋力を増幅するウエイトトレーニングや無酸素運動
▶心肺機能を高める有酸素運動
▶関節の柔軟性と可動性を高めるストレッチなど

小・中・高と学生時代に行っていた全国体力テストを覚えているでしょうか? 全国各地の学校で行われていた年1回のこのテストは、握力・上体起こし・50m走・持久走・長座体前屈などの体力を測るための様々な種目を実施することで、体力・運動能力の水準を向上させることを目的としています。学生であれば、自分のために使うことができる自由な時間が多いので、学業の時間と体力・運動能力を鍛える時間を設けることができます。しかし、大人になると仕事や家族に費やす時間が増え、自身を鍛える時間の優先度はだんだんと低くなっていき、体を鍛えるための十分な時間を確保しづらくなります。ではその様な方は、残り少ない自由な時間をファンクショナルトレーニングに当ててみてはいかがでしょうか?

 


ファンクショナルトレーニングという言葉を初めて耳にした方もいらっしゃると思います。若い方は尚更でしょう。元々ファンクショナルトレーニングとは、怪我や病気で基本的な動作ができなくなってしまった患者に対して、理学療法士や作業療法士がリハビリの一環として使用しているものでした。よって、トレーニングでは食事で箸を使う・お風呂で体を洗う・床や高い位置にあるものを掴む・楽器を弾くなどの、日常生活に必要な少し複雑な動きを安全に行えるようにすることを目的としていました。しかしファンクショナルトレーニングで大事なことは “筋肉をうまく使えるようになること=機能的に使えるようになること” なので怪我や病気のリハビリに限定せずに、老若男女問わず誰でも必要に応じて行うべきトレーニングです。

フィジカルトレーニングで筋力を鍛えたとしても、筋肉をうまく使える機能が弱ければ、フィジカルトレーニングの効果を「パフォーマンス」や「できるようになりたい動き」で発揮することができません。そのため、適切なファンクショナルトレーニングを行い、筋肉を使う機能を強化することが年をとっても生活の質を維持することに繋がると言えます。


高齢者にもお勧めのフィジカルトレーニングの例 -サーキットトレーニング-


高齢者には筋力・有酸素能力・柔軟性をまんべんなく短時間で鍛えることができるサーキットトレーニングがお勧めです。サーキットトレーニングでは全身の筋力と持久力を鍛えるために最低でも7種目の運動を休憩なし(若しくはごく短い休憩を挟みながら)で行う必要があります。複数の種目を連続して行うので、1つ1つの種目の負荷は軽めに設定します。そのため筋肥大を目的に全身くまなく高負荷を掛けて行う筋トレと比較すると、筋肥大の効果という点においては弱くなってしまいますが、高齢者にとっては筋肥大が目標ではないので軽い負荷でも十分効果が得られます。また、サーキットトレーニングではよくマシンも使用されており、高齢者でも怪我なく安全に実施できるという点でもメリットがあります。

サーキットトレーニング プログラム
【時間】
柔軟体操   20秒×8種目 計3分
有酸素運動 10分×2種目 計20分
無酸素運動 20秒×6種目 計2分
1サイクルのエクササイズ時間約25分、サイクル間の休憩5分前後(2セット以上行う場合)
【強度】
有酸素運動 最大心拍数の60~80%
無酸素運動 最大筋力の60~80%(25RM~8RM)
【種目】
柔軟体操   腰ストレッチ/背中・肩ストレッチ/お尻ストレッチ/太ももストレッチ/腹筋ストレッチ/膝ストレッチ/腕・肘ストレッチ/股関節ストレッチ など
有酸素運動 トレッドミル/フィットネスバイク/ペダルマシン/踏み台昇降運動 など
無酸素運動 カール(上腕二頭筋)/チェストプレス(大胸筋・上腕三頭筋)/バタフライ(大胸筋)/ショルダープレス(肩・三角筋)/シーテッドバッグエクステンション(背筋)/レッグプレス(大臀筋・大腿四頭筋)/レッグエクステンション(大腿四頭筋・ハムストリング) など


高齢者にもお勧めのファンクショナルトレーニングの例


ファンクショナルトレーニングを行う際は、次の5原則を意識して取り入れていくことが重要です。
1. 重力を利用する
人間が生活するうえで基本となる姿勢は “立位” です。立位姿勢から、歩く・走る・物を運ぶ・階段を上り下りするなどの動作に発展していきます。つまり、日常動作の機能を向上させるには重力に耐える体を作るトレーニングが必要という訳です。
【トレーニング例】
重力に対して抵抗を与える体幹トレーニング、抗重力筋(姿勢維持筋)を鍛えるチューブトレーニング など

2. 共同と分離
人間の体にはたくさんの関節が存在しています。複雑な動作を行う際は、各関節を分離させてそれぞれの役割に応じて動作を行ったり、分離した関節が同時に活動して全ての関節動作を共同させたりする必要があります。片足を上げるという動作に着目してみると、体幹と股関節が分離することで体幹が固定され、体が安定したまま上手に片足を上げることができています。
【トレーニング例】
複数の筋肉・関節周り・バランスを鍛えるランジ、多関節を使うマシントレーニング など

3. キネティックチェーン(運動連鎖)
運動動作は、1つの筋肉だけで行われているという訳ではなく、多くの筋肉が連鎖(チェーン)して起きています。ウォーキングでも、力は地面・脚・お尻・体幹・上肢へと伝達することで前進しています。実は、歩くだけでも200個以上の筋肉が使われ、連鎖しています。連鎖が切れていると力が上手く伝わらず、効率の良い動作ができず、連鎖が途切れている部分を痛めてしまうことにも繋がります。トレーニングでは複数の筋肉の連鎖を使うことを意識しましょう。
【トレーニング例】
ボール投げなど体の末端部位を動かす運動、複数の筋肉を鍛えるマシントレーニング など

4. 3面運動(3 Dimension movement pattern)
多くの動作は3面(前後・左右・回旋)で行われているので、体の機能を向上させるには3面運動も必要です。ウォーキングの動作を3面で見てみましょう。正面から見ると、片足の時に重心が支持脚になるので左右に体重移動をしていることが分かります。横から見ると、手足が大きく前後に動いていることが分かります。真上から見ると、体の捻りが手足の動きと合わせて同時に行われていることが分かります。
【トレーニング例】
胸椎・股関節の回旋を組み合わせたウインドミル、ツイスト、ゴルフのスイング など

5. 力の吸収と力の発揮
日常動作やスポーツにおいて、効率的で大きな力を発揮するためには、必ずその方向とは反対に力を溜めて踏み込む動作が必要になります。ジャンプ動作では、より高くジャンプをしようとすると無意識に一度しゃがみ込みを行います。このしゃがみ込みがなければ力の吸収が行われず、高く飛ぶことができません。
【トレーニング例】
深くしゃがみ込む様なスクワット、垂直飛び など


筋トレを始めるのに遅すぎるということはありません


筋トレも学問と同じように、”始めるのに遅すぎる” “年齢制限がある” というものではありません。マシンやウエイトトレーニングの効果を得るには “若くなければいけない” ということはないのです。高齢者を対象に筋トレの効果を報告したものが幾つもあります2)3)。 ”運動するのは難しいが、筋肉なしで生活するのはより難しい” と覚えてください。何年も運動をしていないからと、運動を始めることを諦めないでください。

 

参考文献
1. An overview of sarcopenia:facts and numbers on prevalence and clinical impact, Stephan von Haehling et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle(2010)1(2):129-133
2. Effects of Resistance Training on Older Adults, Gary R. Hunter, John P. McCarthy and Marcas M. Bamman, Sports Medicine, April 2004, Volume 34, Issue 5: 329–348
3. Effects of circuit exercise and Tai Chi on body composition in middle-aged and older women, Wei-Hsiu Hsu et al., Geriatr Gerontol Int 2014, doi: 10.1111/ggi.12270

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体脂肪減量に関する5つの迷信

体成分の改善は筋肉量の増加と体脂肪量の減少という、2つの違う成分に焦点を合わせて行われます。そして、この2つの中でも体脂肪量を減らすことは、特に大変で難しいというイメージを持っている方が多いでしょう。理論上、体脂肪量を減らすためにやるべきことは簡単です。摂取エネルギー量を消費エネルギー量より少なめにするか、消費エネルギー量を増やす、またはこの2つを並行するだけです。体にエネルギーが余ることなく、不足した状態にするだけで良いのです。エネルギーが足りなくなると、体は体脂肪として蓄えてきたエネルギーを使い始めるので、自然に体脂肪量は減少していきます。

こう聞くと簡単ですが、一度でもダイエットに挑戦した方なら、これがどれだけ大変なことか分かるでしょう。ダイエットを検討している方は少しでも楽に体脂肪量を減らせる方法を探しますが、これが間違った知識が広まってしまう最も大きい理由であり、この間違った知識を基にした様々な製品や記事が出ることで更に広まってしまう悪循環を招いています。

今から一度は聞いたことがある「体脂肪減量に関する迷信」を5つご紹介します。この知識がどう間違っているかの科学的根拠を理解することで、時間・費用・努力を無駄にせず、健康的に体脂肪量を減らせる道が見えてくるでしょう。


迷信その1. 体脂肪量を減らすためには運動だけを頑張れば良い


ダイエットをしようと思ったとき、その第一歩としてジムに登録する人が多いです。もちろん、食事だけ極端に減らして運動を全くしないダイエットは健康的な方法とは言えないので、運動をして体脂肪量を減らそうとすることは、健康的に痩せられる良い方法であることは間違いありません。しかし、運動「だけ」を頑張ればいい訳ではありません。運動と一緒に食事も管理しないと、せっかく運動をしても体脂肪量を効果的に減らすことができません。

より理解を深めるためには、体脂肪が使われるタイミングについて学ぶことが必要です。私たちは食事から様々な栄養素を体に取り入れますが、摂取した栄養素の中でエネルギー源として使われているのがグリコーゲン(ブドウ糖)です。グリコーゲンは肝臓や筋肉にも貯蓄されますが、グリコーゲンを貯蓄できる量は肝臓で6%ほど、筋肉(骨格筋)では0.4~0.6%にすぎません。体はエネルギーの摂取量が必要量を下回る時の備えとして、余った分のグリコーゲンを貯蓄しておこうとしますが、グリコーゲンのままで貯蓄可能な量は非常に少ないため、形を変えて蓄えておきます。この「形を変えた貯蓄分」が体脂肪で、いわばエネルギーの預金みたいなものです。そして、すぐ使えるお金(筋肉や肝臓に溜めておいたグリコーゲン)より必要なお金(エネルギー量)が多くなると、体は不足分を貯蓄分である体脂肪という名の預金から補い始めます。銀行口座からお金をおろすと残高が減少する様に、体脂肪として貯蓄していた分からエネルギーを引っ張ってきて使うと、体脂肪量が減ることになるのです。これがよく言う「体脂肪が燃焼する」ということであり、こうなるためにはエネルギーが不足した状態を作ること、「カロリー赤字」が必要となります。

例えば、Aさんの1日消費エネルギー量が2,100kcalとしましょう。Aさんが1日2,100kcalを摂取したとすると、「消費エネルギー量=摂取エネルギー量」の状態なので、体脂肪は燃焼も貯蓄もされず、体重は変わりません。そして、Aさんが運動して300kcalを消費し、摂取エネルギー量は変わらず2,100kcalだったとすると、消費エネルギー量は本来の2,100kcalに運動で消費した300kcalを上乗せした2,400kcalとなるため「消費エネルギー量>摂取エネルギー量」になって、300kcal分は体脂肪を分解して使うことになります。しかし、Aさんが運動を始めたことと一緒に食事量も増やすと、エネルギーが不足した状態にはならないため、体脂肪の分解も起こらなくなります。従って、体脂肪量を減らすためには運動量だけ増やすのではなく、摂取エネルギー量を増やさないように調整することも必要です。先ずは、今の自分に必要なエネルギー量がどのくらいなのかを正確に把握する必要があるでしょう。InBodyは基礎代謝量を基にした一日摂取エネルギー量の目安を提供します。また、ウォーキングやジョギングなどの運動による消費エネルギー量も表示することができるので、一日の総消費エネルギー量を計算することにも役立ちます。因みに、体脂肪量1kgを減らすために必要なエネルギー量については様々な意見がありますが、最大でも7,700kcalが必要とされます。一気にこれだけのエネルギーを消費するのは至難の業だと感じるかもしれませんが、1日に約260kcalのカロリー赤字を作ると、1ヶ月で1kgの体脂肪量を減らすことができます。せっかく運動を始めたのであれば、運動の効果が無駄にならないように、食事の管理も行いましょう。


迷信その2. 夜に食べるとそのまま体脂肪になる


一見、「夜に食べるとそのまま体脂肪になる」という説は間違っていないように思われるかもしれません。夜に食べ物を食べてすぐ寝ると、動いてエネルギーを消費するということがないので、そのまま体脂肪として蓄積されそうな気もします。この説については様々な見解や意見がありますが、どれも共通として指摘しているのは、寝る直前の食事は食道や胃腸などに負担をかけ、逆流性食道炎や睡眠障害などのリスクを高めるという点です。そして、睡眠中に体を休めていたとしても全くエネルギーを消費しないという意味ではないことも覚えておいてください。

基礎代謝量(REE)という言葉を耳にしたことはありませんか? 基礎代謝量は安静時代謝量と同じ概念で、安静時代謝量という言葉からも連想されるように、何もせずに休んでいる状態でも呼吸や心臓の鼓動など生命維持に必要な最小限のエネルギーを指します。このエネルギーを消費する代謝活動は寝ているからといって止まる訳ではありません。つまり、寝る前にものを食べても、その摂取エネルギー量を含む1日の総摂取エネルギー量が基礎代謝量内に収まるのであれば、体脂肪として変わることはありません。重要なのは摂取のタイミングではなく、摂取したエネルギー量ということです。基礎代謝量を調べる方法として、体重や性別・年齢などの個人の身体条件を用いて計算式で算出する方法がありますが、InBodyでは除脂肪量(筋肉量と骨ミネラル量の合計)を基に基礎代謝量を算出しています。基礎代謝量のうち内臓筋・心臓筋・骨格筋が約60%を占めており1)、除脂肪量はこれらの筋肉すべてが含まれているため、より正確な指標としてご活用いただけます。ただ、夜に食べ物を食べるときは次のようなことに十分気を付けましょう。

▶テレビを見ながらお菓子を食べるなど、「ながら食べ」は控える
食べることに集中せず、他のことをやりながら食べると、摂取量をうまく調整できず、摂取エネルギーが急激に増える原因になります。

▶胃腸に負担がかかるものは控える
寝る前に胃腸に負担がかかるものを食べると、睡眠中にも体がちゃんと休めず、ホルモンの分泌が乱れたり、睡眠の質を落としたりする原因となります。睡眠によって分泌量が変わるホルモンの中には食欲や満腹感に関わるホルモンもあり、睡眠をしっかり取らなければ満腹感を感じにくくなり、エネルギー摂取量を増やす原因にもなります。


迷信その3. 「デトックス」や「ジュースクレンズ」で体脂肪量を早く減らせる


「デトックスダイエット」や「ジュースクレンズ」という言葉を聞いたことがありませんか? 特に若い女性の間で流行っているこの方法は、2日や3日の短期間、固形物を摂取せずジュースだけを飲むことで体にたまっている毒素を排出するという方法です。毒素は疲労や無気力、体脂肪量の増加にも影響するため、これを取り除くことで代謝量を上げ、短時間で体脂肪を減らせると言われています。しかし、このデトックスやジュースクレンズに関して科学的にその効果を明らかにしたものや、研究者によって正式に審査を受けた文献は全く存在せず、逆に医療・科学的観点からみると健康を害する恐れがあるという報告の方が、実は多いのです。ただ、いろんな体験談を見てみると、この方法は短期間で体重が大きく減り、効果があるように見えますが何故でしょうか。デトックスやジュースクレンズを行っている間、体内ではどのような変化が起きているのでしょうか。

デトックス中、体には必要な栄養分がほとんど供給されなくなります。特に、エネルギー源であるグリコーゲンを作る炭水化物は全く入らないため、体は一時的にグリコーゲン枯渇状態に陥ります。また、グリコーゲンはエネルギー源であると同時に水分を貯める機能もあり、1g当たり約3.5gの水分を貯めこみます。つまり、デトックスやジュースクレンズによって毒素が排出されるのではなく、グリコーゲンが枯渇して、グリコーゲンが貯めていた水分が減少しているに過ぎません。更に、体はエネルギー源があまりにも足りない状態(飢餓状態)になると、すぐに活用できるタンパク質(筋肉)を分解し、エネルギー源として使います。そのため、筋肉量も減少することになります。つまり、体重の減少は体脂肪によるものではなく、グリコーゲンが貯めていた水分が抜けていることに過ぎず、グリコーゲンが入るとまた元に戻ってしまいます。更に、筋肉量が減少してしまうので、基礎代謝量が減少することで消費エネルギー量も減少し、逆に今までより体脂肪量が増えやすくなってしまいます。


迷信その4. 低脂質食事をすることで体脂肪量を減らせる


脂質を摂取すると太るという話を聞いたことがある方は多いでしょう。ダイエットをしている方であれば、牛乳を買いに行っても普通の牛乳ではなく低脂肪牛乳や無脂肪牛乳を手に取ったり、油を極力取らないためにサラダをそのまま食べたり、オイルをなるべく使わないようにするなど、脂質の摂取を減らすことで体脂肪量を減らそうとするかもしれません。しかし、脂質(脂肪)摂取量を少なくすることが体脂肪量を減らして肥満のリスクを下げることにも繋がるのでしょうか。実は、エネルギー量不足の状態を引き起こせるのであれば、脂質ではなく他の食品群を減らしても体脂肪量は減ります。脂質は炭水化物やタンパク質より体脂肪量が増えやすい栄養素という訳ではありません。

では、なぜ低脂肪食品が体脂肪量の減少や健康にいいという認識が広まったのでしょうか? その理由は三大栄養素とされる炭水化物やタンパク質と比べて、脂質の方が1g当たりのエネルギー量が高いからです。炭水化物やタンパク質は1g当たり4kcalですが、脂質は1g当たり9kcalとエネルギー密度が高い栄養素です。そのため、取りすぎると摂取エネルギー量が高くなりやすいですが、摂取量を極端に減らしたからといって、体脂肪量が減少するという訳でもありません。また、脂質はエネルギー源としても使用されますが、ホルモンや細胞膜・核膜を構成するなどの役割も持っています。更に、ビタミンの一部は脂溶性であるため、脂質と一緒に取らないとうまく吸収されず、ビタミン欠乏のリスクが高まります(ビタミンA・D・E・Kなどが該当します)。このように、脂質はエネルギー源として使われるだけでなく様々な役割も担っているため、摂取量を極端に減らしてしまうと健康を損ねることや、摂取すべき栄養素を摂取できなくなる恐れがあります。だからといってフライドポテトのような揚げ物をたくさん食べても健康に問題がないというものではありません。

重要なのはむやみに脂質摂取量を減らすより、「良い脂質」を適量取ることです。トランス脂肪酸や飽和脂肪酸といわれる脂質は「悪い脂質」で、体脂肪量を増やす原因となりますが、不飽和脂肪酸はコレステロールのコントロールに役立つHDLコレステロールの量を増やす働きをし、健康を維持・改善させます。厚生労働省は1日のエネルギー摂取量のうち、20~30%に該当する量の脂質を摂取するよう目標量を定めています2)。良い脂質を含んだ食品としてはアボカド、クルミやピスタチオなどのナッツ類、サーモン、豆腐、卵、牛肉や豚肉の赤身部分などがあります。そして、意外だと思うかもしれませんが、ダークチョコレートには食物繊維はもちろん、ビタミンA・B・E・カルシウム・カリウム・マグネシウムも含まれているので、適量のダークチョコレートは良い脂質を摂取しつつ、甘いものを取らないことで溜まってしまうストレスやイライラの解消にも役立ちます。


迷信その5. 特定部位を鍛えることで、その部位だけ体脂肪量を減らせる


ダイエットのために運動方法を探した方であれば、お腹の脂肪を落としたい場合にする運動や腕の脂肪を燃やす運動など、その部位の体脂肪だけを減らせるという運動方法を見たことがあるでしょう。これに対して、殆どの文献は「運動で特定部位の体脂肪量を減らすことは不可能」と結論付けています。筋トレはその部位の筋肉量を増やすことはできますが、体脂肪量を減らすことはできません。腹筋のトレーニングを頑張ると、腹筋を鍛えることはできますが、体脂肪率がそのままでは腹筋が割れることはないでしょう。しかし、これは筋トレが体脂肪量を減らすことと全く関係がないということではありません。ただ、「ある部位だけ」の体脂肪量を減らすことはできないということです。筋肉量が増えると基礎代謝量が増加し、消費エネルギーにも影響を及ぼします。つまり、筋肉量が増えると消費エネルギー量が増加するため、エネルギー不足になりやすくなり、体脂肪を減らしやすくします。

このように、筋肉量の増加により消費エネルギー量が増加し、且つ摂取エネルギー量に変化がなければ、徐々に体脂肪量は減少することになります。しかし、これは長期にわたって間接的に起こる現象であり、特定部位だけで起こることではありません。ある部位が先に痩せるということはあるかもしれませんが、これは遺伝などの個人差によるもので、全身の体脂肪量が減少する過程の一部に過ぎません。

体脂肪減量に王道はありません。


時間を無駄にしないために

過度な体脂肪量は見た目だけではなく、健康にも良い影響は及ぼしません。多くの人は体脂肪量を減らしたいと計画しますが、焦りのあまり楽に早く痩せられるという間違った知識を信じ込んでしまいやすいです。しかし、どれだけ努力しても、その方法が正しくなければ時間と努力が水の泡になるだけでしょう。

体脂肪量を減らす方法は、摂取エネルギー量の管理と適切な運動という基本に忠実な方法で、数多くのトレーナーや栄養士、研究者によって勧められている方法です。もちろん、楽な方法ではありませんが、これ以上に効果的な方法もありません。体成分の変化はあなたの正しい努力をそのまま数値として見せるはずです。基本に忠実に沿った日々を積み重ねることで、きっと体は変わります。

参考文献
1. 生活習慣病予防のための健康情報サイト 加齢とエネルギー代謝|e-ヘルスネット 厚生労働省
2. 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 厚生労働省

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疲労と回復のメカニズム

仕事が忙しいとき、朝起きるのが大変と感じたり、家に帰っても何もできないほど疲れたりしたことがありますか? 忙しかったから疲れるのは仕方ないと、この「疲れている状態」を当然のように受け入れている方が多いでしょう。しかし、「疲労」は健康管理に悪影響を及ぼす危険因子の一つであり、頑張って運動を続けても疲労への知識や理解がなければ、せっかくの努力を台無しにする恐れもあります。これから、「疲労」とはどういうものであり、どうすれば疲労とうまく付き合えるのかを、詳しくお話しします。


疲労がもたらす症状と原因

疲労とは日常生活や運動などの身体活動後に倦怠感やエネルギーが不足している状態を示します。疲労は大きく精神的疲労・神経的疲労・肉体的疲労の3つに分けることができます。

▶精神的疲労: 人間関係などによる精神的ストレスが原因の、心の疲れを示します。無気力・無関心・神経過敏・不安感などの症状が特徴です。
▶神経的疲労: デスクワークなどの長時間集中によって視神経や脳が緊張した状態が続くことで現れる疲労です。脳に疲労が蓄積されるため中枢性疲労とも呼ばれ、この状態が続くと認知機能や脳機能の低下を招くことになります。
▶肉体的疲労: 運動などの身体活動によるもので、激しい運動などの身体活動を続けたあとの筋肉痛・倦怠感・だるさなどの症状が代表的です。筋肉疲労以外に眼精疲労も含まれるため、末梢疲労とも呼ばれます。

このように疲労の種類は様々であり、その原因も多々あります。睡眠不足は代表的な原因ですが、他にも過度な飲酒・激しい身体活動の継続・運動不足・薬の副作用・悪い食生活・ストレスが多い環境なども疲労の原因となります。ただし、重要なことはこの疲労が一時的なものなのか、慢性的なものなのかです。一時的な疲労はある意味自然な現象ですが、これが解消できず蓄積し続けることが問題で、疲労感が6ヶ月以上続くと慢性疲労と言われる状態になります。慢性疲労は記憶力や反応速度の低下を引き起こすため、運動機能だけではなく日常生活にも悪影響を及ぼします。そして日常生活が忙しければ忙しいほど、これらの原因が蓄積されやすくなり、結果的には慢性疲労の悪循環を及ぼしてしまいます。特に運動をすると疲労感を感じるのは当たり前ですが、だからと言って疲労を管理せず放置すると運動をしても筋肉量や筋力が増えず、逆に悪くなる恐れがあります。これから、疲労がどのように運動効果に影響するのかを説明します。


疲労と休息と超回復

運動をすると体は糖質を分解し、エネルギーとして使用します。この過程で分解の副産物として生成されるのが乳酸です。運動時間が長くなったり、高負荷の運動を行ったりすると、筋肉は破壊され疲労状態になる上で乳酸の濃度も高くなり、パフォーマンスも低下します。しかし、運動後に十分な休息と回復の時間を持つことで破壊された筋肉は修復されます。そして、リバウンド現象が起こり、低下したパフォーマンスが回復するだけでなく更に筋肉量や筋力の増加に繋がります。この運動後の休息の間に起こる修復によるリバウンドを「超回復」と言います。次のグラフは運動をした時、超回復がどのように起こるのか(Figure 1)、そして適切な休息を取らず運動を続けるとどうなるのかを示したものです(Figure 2)。

 

超回復は運動後24時間から48時間ほど(運動の負荷が大きい場合は48時間~72時間)の休息を取る必要があり、逆に運動後に十分な休息を取らないと超回復は起こらず、疲労はそのまま残るため、運動の効率や運動機能を低下させる結果となります。次のグラフは超回復を待たず、運動を続けた時の筋肉量変化を示したものです。

運動によって破壊された筋肉が回復する時間を十分に取らず、次の運動を行ってしまうと、筋肉が更に破壊されてしまいます。これが続くことによって、筋肉量を増やすために行う運動が逆に筋肉量を減らす結果をもたらしてしまいます。頑張ってトレーニングを行っているのに、疲労ばかりが蓄積されてInBodyの測定結果は改善されていないなんてことはありませんか? 運動の効果をより高めるためには定期的な運動習慣も重要ですが、しっかり休んで疲労と筋肉を回復させることも重要です。また、運動によって消費したエネルギーの補充と、筋肉を作るために必要なタンパク質の摂取など、バランスのとれた栄養摂取も欠かせない要素です。では運動による疲労だけでなく、日常生活の疲労をうまく管理するためにはどのような方法があるのでしょうか?


疲労を減らす方法

運動だけではなく、日常生活でも疲労の原因は多くあり、疲労を全く感じないようにすることはできません。しかし、疲労をうまく減らす方法はあります。その代表的な方法をいくつかご紹介します。

1. 適度な運動


定期的で適度な運動は健康増進だけではなく、疲労の改善にも役立ちます。軽めの有酸素運動やストレッチは血行を良くし、細胞に必要な酸素や栄養供給を促進することで疲労回復を促す効果があります。運動による筋肉痛が残っている状態でも軽めのストレッチやマッサージを行ったり、お風呂上りで体が暖かくなっているうちにゆっくり筋肉を伸ばしたりすることも回復に効果的です。また、無理のない強度の有酸素運動を続けることで脳内の血流が増加し、酸素が多く脳に運ばれることで脳機能が向上して、安定感を感じさせるホルモンであるセロトニンが増えるため、ストレスも軽減します。脳機能及び脳健康に関する研究結果では、規則的な運動習慣は疲労による記憶力・思考力の低下を防止すると報告されています。

2. 十分な睡眠


十分な睡眠をとることは疲労回復に最も効果的な方法です。寝ている間、体は休息をとり、日中で溜まった疲労を回復し、損傷部分を修復します。そのため、睡眠不足になると脳細胞が回復できなくなり、認知機能や判断力・記憶力の低下の原因になります。また、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンは気持ちを落ち着かせるセロトニンとも密接な関係があるため、十分な睡眠をとることは心理的安定をもたらし、ストレス解消にもつながります。睡眠中には成長ホルモンも分泌されますが、成長ホルモンは成長期に子どもの発育に働くだけではなく、大人に対しては細胞の再生を促進し、自己治癒力を促します。その他にも睡眠中に様々なホルモンの働きにより日中、体に溜まった老廃物が排除されるなど、十分睡眠をとることは疲労回復だけではなく心身の健康に非常に重要なものです。

必要な睡眠時間に関しては7時間~8時間と言われますが、これには個人差もあります。また、時間も重要ですが睡眠の質も重要で、睡眠時間が足りていても深く眠ることができないとホルモンが良く分泌されず、回復効果も薄くなってしまいます。就寝3時間前までは食事を済ませることで胃腸への負担を減らしましょう。また、運動は就寝2時間前までに終わらせ、ぬるめのお湯(38度~40度)で入浴することも睡眠に効果的です。就寝2~3時間前にはスマホやタブレットを控えたり、ブルーライトを軽減させる処置を行ったりすることで、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌活動を良くすることもできます。他にも自分に合う枕を使ったり、就寝前はアルコールの摂取を控えたりするなど、睡眠の質を良くする様々な方法があります。

睡眠は大きくレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、レム睡眠は「浅い睡眠」とも言われます。ノンレム睡眠は「深い睡眠」と言われ、脳はノンレム睡眠の時に休息をとります。この2つは一定周期で繰り返しますが、ノンレム睡眠の時間が短かったり、レム睡眠状態でないときに目が覚めたりすると脳が十分休めなかったり、目が覚めてもすっきりせず満足感が得づらくなりやすいです。InBody BANDの睡眠測定機能は寝ている間の身動きをとらえて分析することで、深い睡眠と浅い睡眠時間を確認することができるため、今の睡眠状態が質の良い睡眠状態なのかを確認するための指標にもなります。

3. バランスのとれた食事


ファーストフード・アルコール・栄養が偏った食事などの不適切な食習慣は疲労回復を妨げる要因となります。特に、体に必要な栄養素をしっかり取ることで運動効果の増進はもちろん糖尿病や心血管疾患などの生活習慣病予防にも繋がります。運動3~4時間前にエネルギーを摂取すると、筋肉内のエネルギー貯蔵量を維持できるため、筋肉の分解を抑え運動の効率が上がります。また、運動が終わって30~45分後の間で食事をすると運動中に消耗された栄養分を補充でき、筋肉の修復に役立ちます。運動後にはタンパク質・炭水化物(糖質)・アミノ酸・ミネラルをなるべく早く摂取できることが望ましいです。タンパク質は筋肉の修復や合成に必要な栄養素です。糖質は運動中に消耗したグリコーゲンを補充し、タンパク質との同時摂取で筋肉合成を促進します。アミノ酸は筋肉のエネルギー代謝を促し、疲労を回復する役割と筋肉合成を促進し、筋肉分解を抑えます。運動中に汗を流すことでナトリウムやカリウム等の電解質も失われるため、ミネラルを補充することも重要です。

また、日常生活では朝食・昼食をしっかり食べること、不足しがちの野菜や果物を摂取すること、ビタミンなどの栄養素をサプリメントで補充すること、間食のお菓子の代わりにアーモンドやくるみなどのナッツ類を摂取することなど心がけましょう。栄養分が偏らないように食材を選ぶことで疲労防止・回復促進はもちろん、抗加齢の効果も期待できます。


疲労とうまく付き合うために

ここまで疲労の原因と疲労が運動に及ぼす影響、そして疲労をうまく減らす方法についてお話ししました。忙しい現代を生きる人々において、疲労の原因となるものは身の回りのいたるところに存在します。疲労はマイナス面ばかりではなく、適度な疲労が体をより強くしたり、睡眠を促したりなどの役割もあります。適度な運動、十分な睡眠と適切な休息、栄養バランスの整った食事から疲労回復を促し、疲労とうまく付き合っていくことでより健康的ないきいきとした生活を送ってください。疲れを感じている方は、簡単な解消方法から始めてみてはいかがでしょうか?