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部位別測定のガイド

体の構成を詳しく分析する体成分分析は、シーズンに向けてトレーニング中のプロスポーツ選手であろうと、健康志向の一般人であろうと、進捗確認や目標維持に役立ちます。それぞれの目標を達成するために、フィットネス専門のトレーナーと契約して協力を得ることも一つの方法ですが、体成分分析を行い、体を構成している各成分について理解することも次のような利点があります。

第一に、体成分分析は太り気味・痩せ気味のようなアバウトな評価ではなく、現状どの位置にいるのかを正確に示すので、体成分を維持・改善するための客観的な評価を提供します。変化の内容もはっきり分かるため、体重の変動に対して敏感になる必要もありません。第二に、より正確で詳細な体内変化をモニタリングできます。各成分の増減をモニタリングすることで筋肉量を増やすことに焦点を当てるのか、体脂肪量を減らすことに集中するのか、またはその両方をアプローチしていくのかなど、状況に合わせて運動内容を随時調整することができます。正確なモニタリングによって目標に向かって具体的な行動を選択し、達成度を把握することができます。今回は、InBodyの技術の一つである「部位別測定」に着目して、詳しくお話しします。


部位別測定とは?

体成分分析とは、体を構成する体水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪などの各成分が、どれくらいあるのかを分析する方法です。従来のBIA装置では、人体を一つの円柱として分析していました。そのため、測定者の体成分データを決定する抵抗値(インピーダンス)も一つしかありませんでした。
※体成分分析についての詳細は、InBodyトピックの「体成分とは何でしょうか? 」 を参考にしてください。


しかしながら、人体の各部位は長さや円周が異なるため、人体を1つの円柱として分析する方法は、精度に限界がありました。この問題を解決するために、統計的な情報で補正する公式が使われるようになりましたが、更に精度を高めるためにも技術的な限界を乗り越えて、各部位を単独で測定し、体成分データを部位毎で提供できる技術が必要でした。

InBodyは人体を右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の5つの部位に分けて測定する技術の開発に成功しました。未だに1つの円柱モデルを採用している装置が多く使われていますが、人体を5つの円柱として分析する部位別測定のメリットは、次の通りです。
1. 体成分データの精度を高めることができる
2. 部位毎の体成分を識別して比較できる
3. 車いすやリンパ浮腫等の疾患によって均衡が崩れている人の正確な評価ができる

InBody結果用紙の部位別筋肉量では、各部位で棒グラフが2本ずつ表示されています。上の棒グラフは標準体重で持つべき筋肉量と比べて筋肉量が多いか少ないかを評価します。数値は実際の筋肉量をkgで表示しています。下の棒グラフは現在の体重で持つべき筋肉量と比べて筋肉量を評価します。数値は現在体重からみた筋肉量の発達度合いを%で表示しています。

下半身の左右差・アンバランスは転倒のリスクを高める上に腰痛や関節痛などの原因となります。また、オーバートレーニングや負傷の兆候として左右差が出てくることもあります。トレーナーやコーチが部位別筋肉量の項目を使って、選手のコンディションを把握したり、運動強度を調節したりすることができます。


部位別測定の仕組み: 技術の理解

部位別測定の理解を深めるために、体成分分析の基礎からご説明します。体成分をモニタリングする方法はいくつかあります。測定は簡便ですが、結果のばらつきがあるキャリパー法。除脂肪量と体脂肪量を正確に算出できますが、特別な設備と専門家が必要な水中体重法。体成分のゴールドスタンダードとして使用できますが、コストや医師の指導など多くの労力が必要なDEXA法。そして、InBodyでも採用している生体電気インピーダンス分析(BIA)法です。現在はこれらの方法が頻繁に使用されています。

部位別で分析が可能なものはDEXA法とBIA法です。BIA装置の技術や精度は製品によって様々で、すべてのBIA装置が全身のインピーダンスを部位毎で測定しているとは限りません。例えば、多くの家庭用体脂肪計では、脚のインピーダンスのみを直接測定し、上半身は推定値を使用して結果を算出しています。逆に腕のインピーダンスを直接測定し、下半身は推定値を使用しているものもあります。部位別測定を行う最新の医療用BIA装置は、人体を5つの円柱、それぞれの部位として分析しています。各部位を正確に単独測定することは、各部位のモニタリングのみならず、全身の指標として提供される体成分データの精度を高めるためにも必要不可欠です。

信頼性の高い結果を得るためには、各部位の正確なインピーダンス測定が重要ですが、最も重要な測定は体幹部の測定です。体幹には内臓器官が含まれており、水分量・筋肉量は全体の約50%を占めています。また、体幹の断面積が広く長さは短いことから、体幹インピーダンスは四肢インピーダンスよりも遥かに小さいです。体幹はインピーダンスあたりの体水分量が多いため、1Ωの差が体水分量に大きく影響してしまいます。これらの理由から、体幹のインピーダンスを正確に直接測定することがとても重要です。体幹を直接測定することで、誤差を最小限に抑えることができるのです。


どれくらい正確なのか?

BIA法の精度について、気になる方もいらっしゃると思います。今まで、多くの研究者がBIA法の原理や精度に関する研究を行い、信頼性について証明しています。 いくつもの研究の中で、部位別測定のBIA装置はDEXAの代替になると言われています。
※InBody活用情報の「原理に関する論文及び精度を検証した論文」も参考にしてください。


部位別測定の技術が登場したことにより、性別や年齢などの情報から結果を推測する(統計補正)必要がなくなりました。統計補正によって結果を算出しているBIA装置は、一般的な集団から得られた変数を公式に利用するため、個人の身体特性を正確に反映することができません。例えば、筋肉がとても発達した女性は「女性は男性よりも筋肉量が少ない」という一般的な集団情報が影響して、実際の筋肉量を過小評価してしまいます。疾患によって痩せている若い男性は「若い男性は筋肉量が多い」という集団情報から筋肉量を過大評価、健康志向で体が鍛えられている高齢男性は「加齢によって筋肉量は少なくなる」という集団情報から筋肉量を過小評価してしまいます。統計補正を使用せずに測定値のみで結果を提供する部位別測定のBIA装置は、体成分の変化を敏感に捉え、測定者のありのままの体を反映します。そのため健常者は勿論のこと、運動療法や栄養指導が必要な臨床現場でも用いられています。

 


部位別測定の恩恵を受ける人たち

部位別測定は、体成分変化をモニタリングする必要がある人たちに有用で、特に次の集団で重宝しています。

1. 競技特性によって、特定の部位が発達しているアスリート


競技やポジションなどの競技特性によって、特定の部位だけが発達しているアスリートもいます。テニスやバトミントンなどのラケットスポーツは利き腕がより発達していたり、サッカーや陸上選手は下半身の筋肉量が多くなる特徴があります。

 

2. 疾患によって身体均衡が崩れている患者


健康な人の筋肉は均衡が保たれた状態で発達していますが、疾患や怪我などによっては部位別の筋肉量・水分量・水分均衡は大きく変わってきます。

 

3. トレーニング効果や食事療法の効果を評価したい集団


例えば、シルク・ドゥ・ソレイユのチームはパフォーマーの部位別筋肉量を記録し、筋肉の均衡が保てるようなトレーニングプログラムを設計しています。また、負傷中のパフォーマーが回復したかを確認する方法としても部位別筋肉量を活用しています。
※シルク・ドゥ・ソレイユの活用方法が気になる方は、InBody活用情報の「シルク・ドゥ・ソレイユ 体成分に基づく訓練法の選択」を参考にしてください。

 

4. 生活習慣を見直し、改善したいと考えている人たち


上半身と下半身の不均衡は、デスクワークが中心の会社員で多く見られます。椅子に座る時間が長くなりがちな高齢者や運動不足が深刻な現代人も同様で、下半身の筋肉量が少なくなってしまうと、転倒のリスクが高まったり、将来歩行困難になって寝たきりになってしまう可能性が高まります。

 

5. 隠れ肥満に多い、腹部に脂肪が溜まっている人たち


部位別測定によって、部位別筋肉量だけでなく部位別体脂肪量も確認することができます。体幹の体脂肪量は高くないですか? 内臓周りの体脂肪は生活習慣病に関連することが知られています。

 

6. リスク管理が必要な高齢者


高齢者は身体活動の減少に伴って筋肉量が減少してしまいます。筋肉量が減少して栄養不良になると、健康面への様々なリスクが生じてきます。転倒や怪我のリスクが増加するだけでなく、日常生活を送る上で必要な身体機能の低下にも繋がります。

 

7. 慢性的な問題を抱えている患者


部位別測定のデータは、医療の専門家が慢性的な疾患を持つ患者を治療するために使用されることもあります。実際に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の筋肉喪失の早期発見に部位別測定の体成分分析が重要であることが報告されています¹⁾。また、透析治療を行っている慢性腎不全患者の部位別体液移動の評価においても部位別水分量や細胞外水分比、細胞外水分量など部位毎の情報が使われています²⁾³⁾⁴⁾⁵⁾。


終わりに

部位別測定は、体成分分析を行う上で最も重要な技術の1つです。両腕・両脚が対称的に発達しているのか、どこの部位に問題を抱えているのか、部位別測定によって確認することができます。BIA装置を利用する際は、部位別測定の技術を搭載している装置なのかを確認してください。InBodyは、健康な体を手に入れるためのサポートができる装置です。

 

参考文献
1. Daniela Gologanu et al., Body composition in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Maedica (Bucur). 2014 Mar;9(1):25-32.
2. Soo-Jeong Yu et al., Assessment of fluid shifts of body compartments using both bioimpedance analysis and blood volume monitoring. J Korean Med Sci. 2006 Feb;21(1):75-80.
3. John Booth et al., The effect of vascular access modality on changes in fluid content in the arms as determined by multifrequency bioimpedance. Nephrol Dial Transplant. 2011 Jan;26(1):227-31.
4. Sanjeev Kumar et al., Changes in upper limb extracellular water content 
during hemodialysis measured by multi-frequency bioimpedance. Int J Artif Organs. 2013 Mar;36(3):203-7.
5. Kwanpeemai Panorchan et al., Does the presence of an arteriovenous fistula alter changes in body water following hemodialysis as determined by multifrequency bioelectrical impedance assessment? Hemodial Int. 2015 Oct;19(4):484-9.

 

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疲労と回復のメカニズム

仕事が忙しいとき、朝起きるのが大変と感じたり、家に帰っても何もできないほど疲れたりしたことがありますか? 忙しかったから疲れるのは仕方ないと、この「疲れている状態」を当然のように受け入れている方が多いでしょう。しかし、「疲労」は健康管理に悪影響を及ぼす危険因子の一つであり、頑張って運動を続けても疲労への知識や理解がなければ、せっかくの努力を台無しにする恐れもあります。これから、「疲労」とはどういうものであり、どうすれば疲労とうまく付き合えるのかを、詳しくお話しします。


疲労がもたらす症状と原因

疲労とは日常生活や運動などの身体活動後に倦怠感やエネルギーが不足している状態を示します。疲労は大きく精神的疲労・神経的疲労・肉体的疲労の3つに分けることができます。

➤ 精神的疲労: 人間関係などによる精神的ストレスが原因の、心の疲れを示します。無気力・無関心・神経過敏・不安感などの症状が特徴です。
➤ 神経的疲労: デスクワークなどの長時間集中によって視神経や脳が緊張した状態が続くことで現れる疲労です。脳に疲労が蓄積されるため中枢性疲労とも呼ばれ、この状態が続くと認知機能や脳機能の低下を招くことになります。
➤ 肉体的疲労: 運動などの身体活動によるもので、激しい運動などの身体活動を続けたあとの筋肉痛・倦怠感・だるさなどの症状が代表的です。筋肉疲労以外に眼精疲労も含まれるため、末梢疲労とも呼ばれます。

このように疲労の種類は様々であり、その原因も多々あります。睡眠不足は代表的な原因ですが、他にも過度な飲酒・激しい身体活動の継続・運動不足・薬の副作用・悪い食生活・ストレスが多い環境なども疲労の原因となります。ただし、重要なことはこの疲労が一時的なものなのか、慢性的なものなのかです。一時的な疲労はある意味自然な現象ですが、これが解消できず蓄積し続けることが問題で、疲労感が6ヶ月以上続くと慢性疲労と言われる状態になります。慢性疲労は記憶力や反応速度の低下を引き起こすため、運動機能だけではなく日常生活にも悪影響を及ぼします。そして日常生活が忙しければ忙しいほど、これらの原因が蓄積されやすくなり、結果的には慢性疲労の悪循環を及ぼしてしまいます。特に運動をすると疲労感を感じるのは当たり前ですが、だからと言って疲労を管理せず放置すると運動をしても筋肉量や筋力が増えず、逆に悪くなる恐れがあります。これから、疲労がどのように運動効果に影響するのかを説明します。


疲労と休息と超回復

運動をすると体は糖質を分解し、エネルギーとして使用します。この過程で分解の副産物として生成されるのが乳酸です。運動時間が長くなったり、高負荷の運動を行ったりすると、筋肉は破壊され疲労状態になる上で乳酸の濃度も高くなり、パフォーマンスも低下します。しかし、運動後に十分な休息と回復の時間を持つことで破壊された筋肉は修復されます。そして、リバウンド現象が起こり、低下したパフォーマンスが回復するだけでなく更に筋肉量や筋力の増加に繋がります。この運動後の休息の間に起こる修復によるリバウンドを「超回復」と言います。次のグラフは運動をした時、超回復がどのように起こるのか(Figure 1)、そして適切な休息を取らず運動を続けるとどうなるのかを示したものです(Figure 2)。

 

超回復は運動後24時間から48時間ほど(運動の負荷が大きい場合は48時間~72時間)の休息を取る必要があり、逆に運動後に十分な休息を取らないと超回復は起こらず、疲労はそのまま残るため、運動の効率や運動機能を低下させる結果となります。次のグラフは超回復を待たず、運動を続けた時の筋肉量変化を示したものです。

運動によって破壊された筋肉が回復する時間を十分に取らず、次の運動を行ってしまうと、筋肉が更に破壊されてしまいます。これが続くことによって、筋肉量を増やすために行う運動が逆に筋肉量を減らす結果をもたらしてしまいます。頑張ってトレーニングを行っているのに、疲労ばかりが蓄積されてInBodyの測定結果は改善されていないなんてことはありませんか? 運動の効果をより高めるためには定期的な運動習慣も重要ですが、しっかり休んで疲労と筋肉を回復させることも重要です。また、運動によって消費したエネルギーの補充と、筋肉を作るために必要なタンパク質の摂取など、バランスのとれた栄養摂取も欠かせない要素です。では運動による疲労だけでなく、日常生活の疲労をうまく管理するためにはどのような方法があるのでしょうか?


疲労を減らす方法

運動だけではなく、日常生活でも疲労の原因は多くあり、疲労を全く感じないようにすることはできません。しかし、疲労をうまく減らす方法はあります。その代表的な方法をいくつかご紹介します。

1. 適度な運動


定期的で適度な運動は健康増進だけではなく、疲労の改善にも役立ちます。軽めの有酸素運動やストレッチは血行を良くし、細胞に必要な酸素や栄養供給を促進することで疲労回復を促す効果があります。運動による筋肉痛が残っている状態でも軽めのストレッチやマッサージを行ったり、お風呂上りで体が暖かくなっているうちにゆっくり筋肉を伸ばしたりすることも回復に効果的です。また、無理のない強度の有酸素運動を続けることで脳内の血流が増加し、酸素が多く脳に運ばれることで脳機能が向上して、安定感を感じさせるホルモンであるセロトニンが増えるため、ストレスも軽減します。脳機能及び脳健康に関する研究結果では、規則的な運動習慣は疲労による記憶力・思考力の低下を防止すると報告されています。

2. 十分な睡眠


十分な睡眠をとることは疲労回復に最も効果的な方法です。寝ている間、体は休息をとり、日中で溜まった疲労を回復し、損傷部分を修復します。そのため、睡眠不足になると脳細胞が回復できなくなり、認知機能や判断力・記憶力の低下の原因になります。また、睡眠を促進するホルモンであるメラトニンは気持ちを落ち着かせるセロトニンとも密接な関係があるため、十分な睡眠をとることは心理的安定をもたらし、ストレス解消にもつながります。睡眠中には成長ホルモンも分泌されますが、成長ホルモンは成長期に子どもの発育に働くだけではなく、大人に対しては細胞の再生を促進し、自己治癒力を促します。その他にも睡眠中に様々なホルモンの働きにより日中、体に溜まった老廃物が排除されるなど、十分睡眠をとることは疲労回復だけではなく心身の健康に非常に重要なものです。

必要な睡眠時間に関しては7時間~8時間と言われますが、これには個人差もあります。また、時間も重要ですが睡眠の質も重要で、睡眠時間が足りていても深く眠ることができないとホルモンが良く分泌されず、回復効果も薄くなってしまいます。就寝3時間前までは食事を済ませることで胃腸への負担を減らしましょう。また、運動は就寝2時間前までに終わらせ、ぬるめのお湯(38度~40度)で入浴することも睡眠に効果的です。就寝2~3時間前にはスマホやタブレットを控えたり、ブルーライトを軽減させる処置を行ったりすることで、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌活動を良くすることもできます。他にも自分に合う枕を使ったり、就寝前はアルコールの摂取を控えたりするなど、睡眠の質を良くする様々な方法があります。

睡眠は大きくレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、レム睡眠は「浅い睡眠」とも言われます。ノンレム睡眠は「深い睡眠」と言われ、脳はノンレム睡眠の時に休息をとります。この2つは一定周期で繰り返しますが、ノンレム睡眠の時間が短かったり、レム睡眠状態でないときに目が覚めたりすると脳が十分休めなかったり、目が覚めてもすっきりせず満足感が得づらくなりやすいです。InBody BANDの睡眠測定機能は寝ている間の身動きをとらえて分析することで、深い睡眠と浅い睡眠時間を確認することができるため、今の睡眠状態が質の良い睡眠状態なのかを確認するための指標にもなります。

3. バランスのとれた食事


ファーストフード・アルコール・栄養が偏った食事などの不適切な食習慣は疲労回復を妨げる要因となります。特に、体に必要な栄養素をしっかり取ることで運動効果の増進はもちろん糖尿病や心血管疾患などの生活習慣病予防にも繋がります。運動3~4時間前にエネルギーを摂取すると、筋肉内のエネルギー貯蔵量を維持できるため、筋肉の分解を抑え運動の効率が上がります。また、運動が終わって30~45分後の間で食事をすると運動中に消耗された栄養分を補充でき、筋肉の修復に役立ちます。運動後にはタンパク質・炭水化物(糖質)・アミノ酸・ミネラルをなるべく早く摂取できることが望ましいです。タンパク質は筋肉の修復や合成に必要な栄養素です。糖質は運動中に消耗したグリコーゲンを補充し、タンパク質との同時摂取で筋肉合成を促進します。アミノ酸は筋肉のエネルギー代謝を促し、疲労を回復する役割と筋肉合成を促進し、筋肉分解を抑えます。運動中に汗を流すことでナトリウムやカリウム等の電解質も失われるため、ミネラルを補充することも重要です。

また、日常生活では朝食・昼食をしっかり食べること、不足しがちの野菜や果物を摂取すること、ビタミンなどの栄養素をサプリメントで補充すること、間食のお菓子の代わりにアーモンドやくるみなどのナッツ類を摂取することなど心がけましょう。栄養分が偏らないように食材を選ぶことで疲労防止・回復促進はもちろん、抗加齢の効果も期待できます。


疲労とうまく付き合うために

ここまで疲労の原因と疲労が運動に及ぼす影響、そして疲労をうまく減らす方法についてお話ししました。忙しい現代を生きる人々において、疲労の原因となるものは身の回りのいたるところに存在します。疲労はマイナス面ばかりではなく、適度な疲労が体をより強くしたり、睡眠を促したりなどの役割もあります。適度な運動、十分な睡眠と適切な休息、栄養バランスの整った食事から疲労回復を促し、疲労とうまく付き合っていくことでより健康的ないきいきとした生活を送ってください。疲れを感じている方は、簡単な解消方法から始めてみてはいかがでしょうか?

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カーボローディングとは

カーボローディングという言葉を聞いたことがありませんか? カーボローディングとは、スポーツ選手が大きな大会の直前に、白米・パン・パスタなど高糖質食を詰め込む食事法です。特にボディービルダーや持久系スポーツ選手が、大会の準備で数日間に渡って、炭水化物による負荷(カーボローディング)を利用しています。

ボディービルダーや持久系スポーツ選手にとって、カーボローディングの概念は同じです。大会1週間前から、本番1時間前まで、食事全体の糖質量をコントロールします。しかし、両者がカーボローディングを行う理由はまったく異なります。ボディービルダーは大会前のルーティンの一環として、カーボローディングを行います。カーボローディングによって、自身の体をより大きく、より強く、より堅く引き締まって魅せることができると信じられています。一方、マラソンやサイクリングなどの持久系スポーツ選手は、筋肉が利用できるエネルギーを増やすためにカーボローディングを行います。余分に貯蔵されたエネルギーが、長時間走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりする時に必要な持久力を向上させることに役立ちます。

しかし、カーボローディングについて科学的根拠はあるのでしょうか? 効果は本当にあるのでしょうか? 安全面は問題ないのでしょうか? 今回のトピックでは、これらの疑問について詳しく説明していきます。


カーボローディングを行う理由


炭水化物は、体内で非常に重要な機能を果たす主要栄要素で、体の主なエネルギー源です。糖質と食物繊維で構成される炭水化物は、摂取すると血糖に分解され、グリコーゲンとなり筋肉や肝臓にエネルギー源として貯蔵されます。通常、筋肉が蓄えるグリコーゲンは少量しかありません。その中で運動を行うと、貯蔵したエネルギーは使い果たされてしまいます。

男性はカーボローディングによって、グリコーゲンの貯蔵レベルを通常の25~100%高めることができます。女性が男性と同じ効果を得るには、男性よりも多くのカロリーを摂取する必要があります。

理論上、カーボローディングを行う理由は次の通りです。
1) 筋肉をグリコーゲンで満たすことで、筋肉内に水を引っ張り、質量を増やして強健にする
2) グリコーゲン貯蔵量を増やして、通常より余分に蓄えられたエネルギーを利用し、持久力を高める


カーボローディングの対象は?

カーボローディングは、主に次の2つの運動選手群で行われます。
➤ ボディービルダー
大会前に体を大きく、重くするためにカーボローディングを利用します。しかし、中には注意を喚起している研究者もおり、国際スポーツ栄養学会誌に掲載された論文では「カーボローディングを行う場合、選手は大会前に一度は脂肪が無い仕上がった筋肉に達すること、もしくは近づけることを検証し、個々の戦略を企てなければならない。」と報告されています¹⁾。炭水化物を摂取するタイミングや効果は人によって異なります。必ず大会前に、ご自身で実験をしてください。

➤ 持久系スポーツ選手
長時間走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりする時に使える、エネルギー貯蔵量を増やす目的でカーボローディングを利用します。持久系スポーツ選手が効果的なタイミングで炭水化物を摂取すると、筋肉のグリコーゲン貯蓄量を増加させ、パフォーマンスを向上させることができます。


カーボローディングの手順

カーボローディングのやり方は達成目標や目的によって異なります。
➤ ボディービルダー

大会や撮影会を控えているボディービルダーの場合は、本番2~3日前にカーボローディングを試みてください。現在の体成分と代謝に合った正しいタイミングを見つけるためには、試行錯誤が必要かもしれませんが、InBodyの体成分や水分均衡(細胞外水分比;ECW/TBW)を判断材料として使用してみてください。ジム・ストッパーニ博士によると、体重1kg当たり約8gの炭水化物を補給する必要があります。水分を溜め込んでしまうパスタやオートミールよりも、低脂質で高カロリーなじゃがいもやさつまいもなどを取り入れることが効果的です。また、筋肉を魅せることを目的にしているので、カーボローディングと並行して水抜きが必要となります。グリコーゲンは糖質なので、体内の貯蔵量が増えると浸透圧の関係で水分も溜め込む結果となります。水が溜まってしまうと、浮腫んだり、筋肉のメリハリが消えてしまったりするため、大会で結果を出すことが難しくなります。グリコーゲンを筋肉内に貯めた状態で水を抜くことで、筋肉が膨らんだまま、凹凸を際立たせることができます。水分が溜まっていない状態でカーボローディングがちゃんと行われているかを確認する項目として、InBodyのECW/TBWが活用できます。ECW/TBWの数値は水分貯留の影響を受けて高くなる項目であるため、これらの状態を確認することができます。

 

➤ 持久系スポーツ選手

持久力が必要な大会に出場する選手は、少なくとも大会の二日前には体重1kg当たり約9~15gまで炭水化物摂取量を増やしてください。持久系スポーツ選手はボディービルダーとは異なり、パスタや小麦等の穀物でカーボローディングを行うことができます。持久性スポーツ選手に推奨される、低脂質で糖質を多く含んだ食品は、果物・スポーツドリンク・白米・オーツ麦・とうもろこし・じゃがいもなどが挙げられます。運動の3時間前に高糖質食を摂取することで、筋肉のグリコーゲンレベルを15%増加させたとの研究報告もあります²⁾。レース中に血糖値を維持するために、エネルギーを補充することは重要なポイントです。簡単に摂取できるスポーツドリンク・ゼリー飲料・果物・キャンディー・低脂質で糖質が多く含まれているパワーバーなどは、定期的にエネルギーを補充するには最適です。目安は1時間に30~60g程度で、これ以上多く摂取する必要はありません。

また、レース後に炭水化物が豊富な食事を摂ることも忘れないでください。レースで使い果たしたグリコーゲンを即座に補充して、回復を促すことが重要です。レース後なるべく早く栄養補給できることが望ましいですが、レース直後に固形物は受け付けないという選手も少なくありません。そのような場合は、手軽に摂取できるゼリー飲料やスポーツドリンクがお勧めです。グリコーゲンの回復に関しては、炭水化物だけではなくビタミン・ミネラル・タンパク質も一緒に摂取することを心がけましょう。長時間の運動では、グリコーゲンだけではなく他の栄養素も消費されているので、速やかな補充が必要です。また、炭水化物とタンパク質の同時摂取は、炭水化物のみを摂取した時よりも効果が高いことが報告されています。勿論、しっかりと回復や休養を取ることもとても重要です。


炭水化物(糖質)が多い食品

食品 分量 炭水化物含有量(g)
白米 茶碗一杯(150g) 55.8
うどん めん1玉(240g) 51.9
食パン 1枚(60g、1斤6枚切り) 28.0
ショートケーキ 1個(100g) 47.2
オートミール 100g 69.0
じゃがいも 中1個(110g) 19.4
さつまいも 120g 37.8
とうもろこし 中1本(180g) 30.2
牛乳 200ml 9.7
ヨーグルト(脱脂加糖) 120g 14.3
りんご 約1/2個(150g) 21.9
バナナ 約1本(200g) 45.0
約1個(260g) 41.4
約1個(280g) 28.6
グレープフルーツ 約1/2個(200g) 19.2
ぶどう 約1房(150g) 23.6
キウイ 約1個(90g) 12.2
みかん 約1個(100g) 12.0
パイナップル 5切れ(50g) 6.7
いちご 5粒(85g) 7.3
すいか 1切れ(200g、実の部分) 19.0

糖尿病食事療法のための食品交換表第7版、日本糖尿病学会を基準に算出³⁾


カーボローディングの副作用とリスク

確かに、カーボローディングはグリコーゲンレベルを高めることで筋肉のボリュームと持久力を増加させ、パフォーマンスの向上に役立ちます。しかし、誰もがカーボローディングの恩恵を受けられる訳ではありません。カーボローディングの効果やパフォーマンスには持久系スポーツ選手かボディービルダーであるかに関わらず、現在の体力レベル・水分摂取量・運動の実施時間などの様々な要因が影響を及ぼします。カーボローディングは筋肉疲労に対抗できる特効薬ではありません。2時間以上も走ったり、自転車を漕いだり、泳いだりすれば、疲れてしまうのは当然のことです。

炭水化物を含む食品を大量に摂取することで、発症する可能性があるリスクもあります。胃腸の不快感、痙攣、腸内でのガス発生等副作用を経験した方もいらっしゃるでしょう。一時的な体重増加も副作用の一つで、体重が重くなったことによって走りに影響が出る可能性についても注意する必要があります。カーボローディングは血糖値にも影響を与えるため、糖尿病や高脂血症などの疾患を持つ人の場合は、健康上の理由から実施しない方が良いとされています。急激に筋肉のグリコーゲンを増加させると、グリコーゲンが消化しきれずに内臓に負担がかかることも考えられます。カーボローディングを徐々に適応させずに、試合の時だけ急に行うことは絶対にしないでください。

誰でも、カーボローディングの効果を等しく得られる訳ではありません。

 

参考文献
1. Eric R Helms et al., Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation. J Int Soc Sports Nutr. 2014 May 12;11:20.
2. Wee SL et al., Ingestion of a high-glycemic index meal increases muscle glycogen storage at rest but augments its utilization during subsequent exercise. J Appl Physiol (1985). 2005 Aug;99(2):707-14.
3. 日本糖尿病学会 編・著, 糖尿病食事療法のための食品交換表第7版. 2013

 

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サルコペニアの理解に必要なこと

現代人はこれまで以上に長生きできるようになりました。日本は世界的にも長寿国として知られていますが、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間の ”健康寿命” はどうでしょうか? 日本の平均寿命は2016年には男性80.98歳、女性87.14歳で、1947年の男性50.06歳、女性53.96歳から増加し続けていますが、健康寿命の男性72.14歳、女性74.79歳と大きな差があります¹⁾。50歳以降で筋肉量は1~2%減少します。60~70歳では平均5~13%、80歳を超えると11~50%も筋肉量が減少してしまいます²⁾。筋肉量の減少は機能的能力の低下や、健康リスクに繋がります。日常生活が困難になれば、生活の質が低下し健康寿命にも影響します。

加齢に伴って、体成分は変化していきます。加齢が原因で筋肉量と筋力が低下することをサルコペニアといいます。身体活動量の低下や食事の変化が筋肉量減少をもたらし、筋肉量減少が手術への耐性低下や腰痛・関節痛、寝たきりなどの原因にもなっています。心血管疾患や生活習慣病などの慢性疾患を予防する方法として、栄養管理や運動療法が注目されますが、体成分に着目したアプローチは実施されていないということがよくあります。サルコペニアに関しても同様で、体成分の観点から健康管理できるということを忘れないでください。

次にサルコペニアのリスクと対策について、詳しく説明していきます。


サルコペニアとは?


サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx」と喪失を意味する「penia」を組み合わせた言葉です。サルコペニアは加齢に起因する筋肉量の低下と筋力・有酸素能力の低下を指すので、病気の結果としてではなく、自然な老化過程であるといえます。悪液質はがんなどの疾患が原因で栄養失調になるので、筋肉量や体脂肪量の喪失を制御することはできませんが、サルコペニアは栄養療法と運動療法から改善が可能です。

加齢に伴って筋肉量が減少するだけでなく、体脂肪量が燃焼されずに体内に残ってしまうケースが増えています。このような状態をサルコペニア肥満といいます。InBodyのデーターベースによれば70代高齢者の筋肉量は20代と比べると、男性は平均11.2kg、女性は4.6kg少なくなっています。又、70代高齢者の体脂肪量を男性と女性で比べると、女性が平均4.5kg重いことが示されています。女性の方が筋肉量が少なく体脂肪量が多いため、サルコペニア肥満へのリスクが高くなります。サルコペニア肥満については、後ほど詳しく説明していきます。


サルコペニアの原因は?


サルコペニアの原因は、加齢・タンパク質摂取不足・ホルモンの機能低下・身体活動の低下などが挙げられます。また無理なダイエットや食事制限が筋肉喪失を招いたり、サルコぺニアの進行を速めたりする可能性もあります。

加齢
京都大学の研究で、サルコペニア有病率が男性65~69歳の2.6%から85~89歳の75.0%まで増加すること、女性65~69歳の11.5%から85~89歳の54.3%まで増加することが報告されました³⁾。加齢による筋肉量減少は活動の変化に関連しています。多くの研究者達が、老化による筋肉喪失を食い止める方法を模索しています。

ホルモンの機能低下
テストステロンはサルコペニアと深い関連があります。テストステロンは性ホルモンの一種で、筋肉量を増加させるのに役立ちます。テストステロンが加齢と共に低下し始めると、筋タンパク質の合成を減少させるだけでなく、筋肉修復に不可欠な細胞再生を減少させてしまいます。筋タンパク質の分解が合成を上回ることで、サルコペニアのリスクが高まります。

タンパク質摂取量の減少
老化がサルコペニアに関連する大きな要因は、高齢者が通常の食生活を維持することが難しく、エネルギーやタンパク質の摂取不足、吸収不良などで栄養状態が悪くなるためです。運動と適切なタンパク質摂取を組み合わせることが、サルコペニア予防に効果的です。特に必須アミノ酸は体内で合成できないので、食品から摂取する必要があります。“必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品=良質なタンパク質を含む食品” です。

身体活動の低下
高齢者は若者よりも座りがちな傾向があります。高齢になると運動の機会が減ることや閉じこもりによって身体活動量が低下します。定期的なレジスタンス運動は、筋肉量維持と筋肉強度の向上に役立ちます。

炎症性サイトカインの増加
偏った食事と運動不足によって内臓脂肪が貯蔵されますが、この脂肪組織がTNF-α・IL-6などの炎症性サイトカインを生成し、筋委縮やサルコペニアを促進させると言われています⁴⁾。内臓脂肪量の増加(腹部肥満)は筋肉量の減少で悪化するため、サルコペニアを進行させる要因となります。

疾患に関連した栄養失調
疾患に罹患している人、長期間病院で治療を受けている人は、栄養失調のリスクが高まります。うっ血性心不全(CHF)、末梢動脈疾患(PAD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの心血管疾患および呼吸器系疾患は、中年期に発症する傾向があります。高齢な有病者は若年者よりも筋肉成分の消耗が著しく、機能低下を起こすスピードが速くなります。又、インスリン分泌の低下・インスリン抵抗性の発症も筋肉喪失を加速させるので、糖尿病もサルコペニアに関連しています。

体成分の悪化を加齢だけのせいにしてはいけません。適度な身体活動とバランスの取れた食事を心掛け、日々健康的に過ごしていますか? 体調管理を怠れば、筋肉量の減少を食い止めることはできません。健康的な食事で、余分な脂肪蓄積を防ぐことができます。


サルコペニア肥満


“サルコペニア肥満” という言葉を聞いたことがない方は、”隠れ肥満” ならどうでしょうか? 隠れ肥満は運動不足の現代人に多く見られる体型で、体は細くて見た目は普通ですが、体脂肪が多く筋肉が少ない状態です。体重が適正でも体成分は肥満の人と似たような構成なので、過体重の肥満体型と同様に心血管疾患や糖尿病などの疾患を発症するリスクがあります。サルコペニアは不健康な食生活と運動不足に関連するため、特に栄養管理と運動を怠るとサルコペニア肥満になる可能性が高くなります。これは高齢者に限ったことではありません。体重だけでなく、体成分に焦点を当てることが重要です。

サルコペニアやサルコペニア肥満であるかを、どのようにして調べることができるでしょうか? 体成分分析を使用して経時変化を観察してみましょう。体脂肪量が増加している中、筋肉量が減少しているとすれば、サルコペニア若しくはサルコペニア肥満の可能性があります。体成分を知ることで健康へのリスクを理解し、サルコペニアを予防してください。


サルコペニアの診断

日本・中国・韓国・マレーシア・タイなどの研究者により組織された、アジアのサルコペニアワーキンググループ(AWGS)では、アジア人におけるサルコペニアの評価基準を次のように定めています。

Chen LK, et al. J Am Med Dir Assoc, (AWGS 2019)を改変して引用

評価の中の骨格筋量BIA(男性<7.0kg/m² . 女性<5.7kg/m²)で使用できる検査機器の一つがInBodyです。InBody結果用紙の研究項目内にあるSMIという項目が、この骨格筋量を評価する際に必要になります。2014年にAWGSがサルコペニアの評価基準を発表してからは、国内におけるサルコペニアの評価にも上記の基準を用いることが多くなりましたが、AWGS の定めているSMI の定義や基準が絶対的なものではありません。例えば、研究者によってはサルコペニアの評価にInBody の全身骨格筋量とその標準範囲をそのまま使用することがあれば⁵⁾、浮腫の症例にて筋肉過水和(Over-hydration)の影響を少なく受ける腕の骨格筋量のみを使用するなど⁶⁾、独自の基準も多く発表されています。


サルコペニアの対策


現在、サルコペニアの明確な治療法はありませんが、筋肉喪失を和らげ、予防する方法はいくつかあります。日焼けをする前に日焼け止めクリームを塗ることと同じように、サルコペニアを発症する前に予防措置を講じることが重要です。

1) エクササイズ
レジスタンス運動は高齢の人でも効果が報告されています。レジスタンス運動は神経筋機能の向上と筋肥大を誘発します。これらの変化は加齢による日常生活動作(ADL)能力の低下を改善させる期待もあります。筋肉量を十分に保持し、早期筋肉分解を回避するためにも若いうちからレジスタンス運動を実施することが重要です。

2) タンパク質摂取量を増やす
タンパク質は筋肉組織の構成や修復に不可欠です。厚生労働省が報告した日本人の食事摂取基準の概要によると、18歳以上の男性は1日に60g、女性は50gのタンパク質摂取を推奨量と定めています⁷⁾。すでにサルコペニアの兆候がある人は、タンパク質摂取が更に必要です。加齢によって、タンパク質を体内に取り込む能力が低下するため、高齢者もより多くのタンパク質を摂取する必要があります。

3) アミノ酸摂取量を増やす
タンパク質を形成しているアミノ酸のうち、体内で合成することができないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。必須アミノ酸は食事やサプリメントから摂取する必要があり、中でもBCAA(分岐鎖アミノ酸)であるロイシンは筋肉の合成に非常に重要な役割を果たしています。運動やタンパク質摂取をして筋肉を合成しようとしても、筋肉の部品となる必須アミノ酸がなければ効率が悪くなります。

4) ホルモン補充療法
テストステロンや成長ホルモンの投与によって筋肉量が増加する⁸⁾と報告されていますが、現在のところホルモン補充療法はサルコペニアの治療として推奨されていません。将来的には治療法の1つとして選択肢になる可能性があります。

5) ビタミンDが足りていることを確認
ビタミンDの不足は体成分・食事・ホルモン状態に関わらず、筋肉減少と関連します。ビタミンDは骨の健康だけでなく、加齢による筋肉喪失を回避するためにも重要です。


終わりに

加齢には、嬉しい成長やそれほど好ましくない老化など、多くの変化があります。体成分を活用することで年齢と共に変動する筋肉量を管理することができます。定期的に体成分測定をすることで、実際に起こっている体内変化をより正確に把握できます。健康寿命を延ばして、楽しく年を重ねていきましょう。

 

参考文献
1. 平成28年「簡易生命表の概要」「国民生活基礎調査」 厚生労働省
2. Stephan von Haehling et al., An overview of sarcopenia: facts and numbers on prevalence and clinical impact. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2010 Dec;1(2):129-133.
3. M Yamada et al., Prevalence of sarcopenia in community-dwelling Japanese older adults. J Am Med Dir Assoc. 2013 Dec;14(12):911-5.
4. Ai-Lin Bian et al., A study on relationship between elderly sarcopenia and inflammatory factors IL-6 and TNF-α. Eur J Med Res. 2017 Jul 12;22(1):25.
5. T. Kaido et al., Impact of sarcopenia on survival in patients undergoing living donor liver transplantation. Am J Transplant. 2013 Jun;13(6):1549-56.
6. Motoh Iwasa et al., Evaluation and prognosis of sarcopenia using impedance analysis in patients with liver cirrhosis. Hepatol Res. 2014 Oct;44(10):E316-7.
7. 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 厚生労働省
8. Manthos G. Giannoulis et al., Hormone replacement therapy and physical function in healthy older men. Time to talk hormones? Endocr Rev. 2012 Jun;33(3):314-77.

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体型改善 -ダイエットの始め方-

 

アウトドア・ライフを楽しみたい! 新しいことに挑戦したい! 緩んだ体を引き締めたい! 心のどこかで人生をより豊かにしたいと悩んではいませんか? しかし、どうやって人生を改善することができるのでしょうか。健康で効果的な方法を探さなければなりません。“自分を変えよう” と決心したことは、スタートラインに立っているだけに過ぎません。

大半の人は、「体重を10kg減らしたい」という単純な減量目標から始めます。それは一つの目標ではありますが、残念ながら少し曖昧です。-10kgの部分は体重の何を指すのでしょうか。余分に溜まった体脂肪だとしましょう。では、どのようにしてその目標を達成したと言えるでしょうか? 体重が10kg減少しても10kgがすべて体脂肪であると、どのように確認できるでしょうか。体重計では証明することはできません。

体成分に着目してみましょう。体成分分析は筋肉量や体脂肪量など各成分の重さをそれぞれ明確に提示します。体型改善を計画する上で、”減量する” ”筋肉量を増やす” など目標を一つにするのではなく、筋肉量と体脂肪量の2つの視点から目標を立てましょう。筋肉量と体脂肪量の理想的な重さを意識することで、過度なダイエットによる痩せすぎや栄養失調を防ぎ、健康的に体重を管理できるようになります。体重を気にすることを止めて、筋肉と体脂肪のバランスを大事にしてください。

具体的な目標に向かって無理なく長期的に取り組むことで、確かな成功を収めることができるでしょう。では、以下の5つの手順に従って体成分を改善していきましょう。体成分を理解することが、体型により合う服装選びの手助けになるなんてことになるかもしれません。
※筋肉量や体脂肪量のような言葉が少しはっきりしない方は、InBodyトピックの「体成分とは何でしょうか? 」を参考にしてください。


1. 体脂肪率を測定してください


これが最も重要な最初のステップです。体重ではなく、体脂肪率から健康状態やトレーニングの進捗状況を判断するように心がけましょう。トレーニングによって体重が増加したとしても、筋肉量が増えて体脂肪量が減っていれば体型改善は成功と言えます。筋肉量の増加をダイエットの失敗と誤診しないためにも、体脂肪率や筋肉量のような体成分の視点から変化を判断することが重要です。InBodyのように生体電気インピーダンス分析法(BIA)を用いた体成分測定は、迅速・簡単に体脂肪率や体型改善に必要な情報を提供します。


2. 目標を立てましょう


先ほど筋肉量と体脂肪量の2つの視点から目標を立てることをアドバイスしましたが、同時に遂行するよう心掛けることが重要です。筋肉量を増やすことと体脂肪量を減らすことは密接に関連していますが、筋肉量が増える・体脂肪量が減るという体の反応はそれぞれ異なるので、筋肉量を増やすためのプログラムと体脂肪量を減らすためのプログラムをそれぞれ組み合わせることが必要です。次にそれぞれの目標の決め方を説明します。

➤ 筋肉量を増やす
体重が過体重でなくても、筋肉量が少なく、体脂肪量が多い場合は隠れ肥満に当てはまるかもしれません。この様な体型は標準体重・肥満型と分類され、体脂肪量を減らす前に筋肉量を増やすことから始めることをお勧めします。

筋肉量を増やすには、レジスタンス運動が効果的です。筋肉が付くことによって、体脂肪量への相乗効果も期待できます。筋肉量が増えることで、体を維持するために必要なカロリー(基礎代謝量)も増えていきます。余分な脂肪を燃やすことでエネルギーを補うことができるので、運動を行うことで消費するカロリーに加え、生命維持に必要なカロリーも増加していけば、体脂肪量がますます消費されることになります。筋肉量を十分に保つことは、免疫システムを強化できるという点からもとても重要です。

➤ 体脂肪量を減らす
体脂肪量の改善が必要な人は、筋肉量は増やして体脂肪量を減らさなければならない人と、筋肉量は維持したまま体脂肪量だけを減らす必要がある人の2パターンに分かれます。後者は過体重・虚弱型と分類され、先ず体脂肪量を減らすことから取り組む必要があります。

体脂肪量を減らすには、有酸素運動が効果的です。ウォーキング・ランニング・サイクリング・水泳等を20分以上継続して行います。運動を毎日していなかった人からすれば、軽度な運動といえども継続させることは簡単なことではありません。慣れるまでは1日15分からはじめて、徐々に時間を延ばしていくようにしましょう。


3. 健康的な計画を選択しましょう


➤ 筋肉量を増やす
筋肉量とは骨格筋・内臓・器官・血液等の筋肉成分の総量です。内臓筋や心臓筋等の不随意筋はトレーニングによって増やすことはできませんが、随意的な運動が可能な骨格筋は開発することができます。筋肉量を増やすには、レジスタンス運動をプログラムに積極的に取り入れることが必要です。

レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかけたトレーニングのことで、ダンベル・専用マシン・自重など多くの種類があります。有酸素運動に比べ、筋肉・関節・骨に大きな負荷がかかるため、運動前後には必ずウォーミングアップとストレッチを行いましょう。

➤ 体脂肪に焦点を当てる
体脂肪を減らすには、より多くのカロリーを燃焼させることです。つまり「カロリーの赤字」を維持すればいいわけです。そのためには食事制限と運動を組み合わせることが重要です。今日、ダイエットをサポートする低カロリーや無脂肪を謳った健康食品も多く販売されています。しかし脂肪も細胞の健康や代謝、エネルギーを保存する重要な体成分の1つなので、過度に減らすことも良くありません。健康的に目標を達成するには、食事制限だけに頼るのではなく、摂取と消費をコントロールして全体的にカロリーを減少させることが効果的です。

レジスタンス運動と有酸素運動を行ってカロリーを消費しましょう。体脂肪を減らす運動プログラムに、筋肉トレーニングやウエイトトレーニング等のレジスタンス運動は必要ないと考えている人もいるかもしれません。確かに、有酸素運動はエネルギー源として体脂肪を燃焼させるのでカロリー赤字に効果的であることは間違いありません。しかし、レジスタンス運動で体全体をバランスよく鍛えて筋肉量を増やすことで、より有酸素運動の効果が高まり痩せやすくなるのです。

1日の摂取カロリーは、運動の種類・時間・強度によって調整されるべきです。ダイエットを行う時は、食事制限と運動を切り離して考えるのではなく、組み合わせて実施しましょう。


4. 目標に近づいているか進捗状況を確認しましょう


2~4週間毎にInBody測定を行って変化を確認してください。ダイエットを始めて、最初の測定は少なくとも2週間は我慢してください。トレーニングの効果が体成分に反映されるまで時間がかかるので、トレーニング開始数日後に測定しても変化が見られない可能性があるためです。トレーニングによって筋力がついたからと言って、筋肉量が必ず増えるわけではなく、摂取量を増やし体重も増加させることが必要です。


BMIが増えることは、単純に悪いことではありません。BMIは身長に対する体重の比率に過ぎず、重要なのは筋肉量の増加と体脂肪量の減少です。

1ヶ月後に測定して体成分の改善が見られない場合は、ダイエット計画を見直して調整する必要があります。体脂肪量の減量が足りない人はカロリー摂取量を減らしたり、筋肉量が足りない人はタンパク質摂取量を増やしてレジスタント運動の負荷を変更したりする必要があります。ダイエット計画を再設定した後、更に2~4週間後にInBody測定をします。


5. 目標達成する


目標達成まで努力し続けることは容易ではなかったでしょう。
筋肉量を増やそうとトレーニングを行えば、結果に伴って体重が増加します。これは筋肉が脂肪よりも密度が高く重いためです。トレーニング効果を体成分から評価しているので、体重を気にする必要はありません。体重増加が筋肉量増加に起因するのであれば、見た目は引き締まってスリムに見えています。

体成分の変化を追う過程で、目標が変わることもあります。体脂肪の減量に成功して、筋肉量を更に付けたいと感じたり、逆に筋肉の増量には満足して体脂肪を減らすことに集中したりするようになるかもしれません。InBody測定をして自分自身を客観的に評価することで、目標を更新し変化を楽しむことができます。体成分の改善は健康へと繋がっています。より健康的な体を手に入れて、より充実した日々を過ごしてください。

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体成分測定が必要な3つの理由

日本では男性の約3割、女性の約2割が肥満と言われています。(平成27年「国民健康・栄養調査報告」 厚生労働省調べ) しかし、自身の肥満について認識している人はどれだけいるのでしょうか? 肥満は脳卒中・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群・がんなどの病気を発症するリスクがあります。では、どのようにして自分が肥満であるかどうかを調べることができるでしょうか? 体成分に着目してみましょう。今回は体成分を測定すべき3つの理由をお話しします。


1. 隠れ肥満ではないか確認してください

「痩せている=健康」と考えている人は多いですが、必ずしもそうとは限りません。隠れ肥満は運動不足の現代人に多く見られる体型で、体は細くて見た目は普通ですが、体脂肪が多く筋肉が少ない状態です。サルコペニア肥満・痩せ肥満体型・スキニーファットも似たような言葉で、これらに該当する方は筋肉量と体脂肪量の改善が必要です。隠れ肥満は、過体重の肥満体型と同様に、心血管疾患や糖尿病などの病気になるリスクが高まります。しかし、体成分を知って自分の健康状態が理解できれば、病気を予防するための行動を取ることができます。

ここでもし、ご自身の筋肉量が足りているのか? 体脂肪率が高くないか? 気になる方は、InBodyで確かめてみてください。百聞は一見に如かずです。InBodyの結果用紙では、体重における筋肉・体脂肪の均衡度に加え、BMI(体格指数)と体脂肪率を組み合わせた実際に近い体型評価も表示します。


2. モチベーションを維持し、目標を達成するために体成分を使ってください

体成分を測定し、次の2点を確認してください。
・筋肉量が維持、または増加していること
・体脂肪率が減少していること

体成分を分析することによって、体重を調節するための具体的な目標を成分毎に設定することができます。また、体成分で体型を定量化することで、普段は感じることができない僅かな変化も捉えることができます。変化を追っていくことで、運動や治療の進捗を確認したり、効果を測定したりすることができます。自分の体が健康的に変化していると実感できれば、モチベーションアップにもなります。体成分の変化を追うには2~4週間毎に測定を行うことを推奨します。


3. BMIだけで体型を正しく評価することはできません

自分のBMIを知っている人はたくさんいます。しかし、BMIの本当の意味は何でしょうか? BMIは身長と体重の比率に過ぎず、その比率で低体重・普通体重・肥満であるかを決定します。即ち、筋肉と体脂肪を考慮しないため、体の健康状態や体型を正確に評価すことができません。例えば、ボディービルダーは身長に対して体重が重いので、BMIに基づくと肥満に分類されてしまいます。一方、体成分の測定結果では過体重・強靭型と分類され、体重が重いのは筋肉量がとても多いためであり、肥満が原因でないことが分かります。つまり、今の体重が適正体重で、過体重を意識して減量する必要はありません。

近くのスポーツ施設やインボディが参加している展示会などのイベントに参加し、体成分を測定してみましょう。InBody470の場合、約15秒で筋肉量と体脂肪量を部位別に測定し、標準的な数値に対する過不足を提示します。測定結果の体重だけを見て、標準体重だからと安心していませんか? 体型は隠れ肥満ではありませんか? 見た目だけが痩せていても健康とは限りません。筋肉はバランス良く発達していますか? 体幹の体脂肪量は高くないですか? 下半身の筋肉量が弱まって左右差が大きいと、体の重心が傾いて転倒しやすくなる上に、腰痛や関節痛などにも繋がります。内臓周りの体脂肪は生活習慣病に関連することが知られています。

是非InBody測定で体内の均衡と潜在する健康へのリスクを確認しましょう。それから、健康への意識と生活の質を高め、充実した日々を送ってください。

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体成分とは何でしょうか?

フィットネスクラブやリハビリ室などのトレーニング現場で、体成分という言葉を聞くことがあります。また、健康関連雑誌やフィットネスブログを読んで、同じ言葉を目にすることもあれば、医療施設で担当の先生から体成分を測定しましょうと言われることもあるでしょう。このように体成分とは健康に関わる分野では頻繁に使われる言葉であり、その仕組みを理解することでより適切な方向に健康を改善し、生活の質を高めることができます。しかし、今まで心の中で“体成分とは何だろう?”と気になったことはありませんか?

体成分を説明する前に、車の定期点検のことを想像してみましょう。整備士はボンネットを開け、エンジンを点検し、部品の異常がないかを検査します。また、オイルやブレーキパッドを交換する必要があるかなど、車の状態を調べます。これと同様に体成分分析は体の状態を点検します。筋肉量は十分なのか? どこの部位が弱いのか? 体脂肪率は高くないか? 水分バランスが崩れてはいないか? など体を構成する様々な成分の過不足を詳しく分析します。


体成分を分析することによって、単に体重が重い軽いではなく、なぜ体重が今の数値であり、なぜ前回と体重が違うのかを明らかにすることができます。自身の体成分を知ることによって体重を調節するための目標を各部位や成分の数値から具体的に設定できるようになる上に、その成果も定期的に追うことができます。


体成分モデルには、観点によって複数の定義があります。

先ず、基礎から始めましょう。最も基本的な体成分の分け方は、2成分モデル(Two compartment model;2C)と呼ばれるものであり、体を除脂肪量と体脂肪量の2つの成分に分けます。

除脂肪 (Fat Free Mass)
除脂肪量には体水分・内臓・骨格筋・骨などの様々な成分が含まれています。体脂肪を除いた全ての成分は除脂肪組織に分類されます。

体脂肪 (Fat Mass)
体脂肪は必要のない成分と考え、必要以上に減らそうとしていませんか? しかし、一定量以上の体脂肪は体が機能するために必ず必要です。体脂肪はエネルギーを蓄え、内部器官を保護し、断熱材として働いて体温を調節します。スポーツ選手でも体脂肪量をゼロにすることはできず、体脂肪率を極端に低くして維持することは健康面からお勧めできません。

我々が検診施設や自宅の体脂肪計でよく測定している体脂肪率が、この2Cモデルから算出されるもの(体脂肪率=体脂肪量÷体重×100)であり、2Cモデルより細かく体を分析するには4成分モデル(Four compartment model;4C)の分け方を採用します。

体水分 (Total Body Water)
健康な人は約50~70%が水分です。体水分は摂取した栄養素を体の細胞に届け、老廃物を体外に排出する運搬の役割をしています。

タンパク質 (Protein)
体水分と共に筋肉の主な構成成分です。タンパク質の不足は、細胞の栄養状態が良くないことを意味します。

ミネラル (Minerals)
ミネラルの約80%は骨にあり、体を支える役目をします。不足すると骨粗鬆症や骨折の危険性が高まります。ミネラル量は除脂肪量と密接な相関関係にあります。

体脂肪 (Fat Mass)
食事で摂った栄養分は消化吸収され活動のエネルギーとして使われます。使いきれなかったエネルギーは脂肪細胞に蓄積され、肥満の原因となります。

以上の4つの成分を合計すると体重になりますが、この基本成分を更に分けたり、組み合わせることによって次のような概念が生まれます。

筋肉量 (Soft Lean Mass; SLM)
体重から骨と体脂肪を除いた除脂肪軟組織(Lean Soft Tissue)を意味しており、体水分量とタンパク質の集合体として、骨格筋・心臓筋・内臓筋などを全て含む概念です。InBodyの筋肉量はDEXAが提示する除脂肪軟組織量(Lean Soft Tissue Mass)と定義が一致します。
※DEXAは筋肉量測定のゴールドスタンダードと言われる測定方法で、詳細は後のページで紹介しています。

骨格筋量 (Skeletal Muscle Mass;SMM)
筋肉量の中でも随意的な運動が可能で筋繊維による横紋を持っている筋肉のみを意味します。四肢の筋肉は骨格筋のみで構成されている反面、体幹の筋肉には内臓筋・心臓筋も混在します。そのため、当項目は全身筋肉量から推定される内臓筋・心臓筋を除いた値でもあります。

体細胞量 (Body Cell Mass;BCM)
骨格筋・内臓・血液・脳のような組織の無脂肪細胞部分の総量を意味し、タンパク質量と細胞内水分量の合計で算出されます。栄養状態・身体活動程度・疾患有無を反映するバイオマーカーの役割をします。

骨格筋指数 (Skeletal Muscle Index;SMI)
四肢の筋肉量を身長(m)の二乗で割った値です。

体成分で大事なことは何でしょうか?

生活習慣を改善して体重を調整したい場合、先ずは体を構成する各成分の量とバランスを知る必要があります。もしそういう情報が正確に分からない状態で生活習慣の改善に取り組んでしまうと、行動のモチベーションが下がることは勿論、無関心にもつながってしまいます。

体型や肥満度を評価する代表的な方法として、体格指数(Body Mass Index;BMI)があります。BMIは体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値であり、国際的に使用される指数であるものの、身長と体重のみで肥満可否を判定するため、見かけの肥満度を意味します。一方、体成分は体型や肥満度を筋肉と脂肪のバランスから評価するため、見かけではない実際の体型が分かります。つまり、体型や肥満度を評価するにはBMIよりも体成分の方が有効であると言えます。

体脂肪量1kgと筋肉量1kg、重たいのはどちらでしょうか?

落とし穴の質問でしたが、同じ1kgであるので重さは一緒です。しかし、果たして体脂肪量1kgと筋肉量1kgの大きさも一緒でしょうか? 実は筋肉は体脂肪に比べて密度が高く、同じ重さの筋肉量と体脂肪量なら筋肉の方の体積がはるかに小さいです。

同じ重さでも体積が異なるということは、何を意味するでしょうか? 一般的な体型の人であれば、BMIは身長に対する体重として良い指標になりますが、スポーツ選手やまったく運動習慣がない人ならどうでしょうか。生活習慣や身体特性を考慮せずに、BMIだけで体型評価を行うと誤解を招くおそれがあります。

 

先ずバスケットボール選手の例をあげてみます。フォワードはシューティングを容易にするための身長と、ディフェンスで当たり負けしないための体重のどちらも必要です。身長が203.2cmで体重が113.5kgである選手のBMIは27.5kg/m2です。世界保健機関(WHO)によると、BMIが25を超える人は「肥満」に分類されます。しかし、一般的にスポーツ選手の体脂肪率はとても低く、BMI25以上だからと言って、この選手は肥満とは言いません。

次にデスクワーク中心の仕事をする会社員の例を考えてみましょう。この方は健康的な食事をしながら体重の増加を避けようと心掛けていますが、定期的に運動する時間がありません。身長は162.6cm、体重は54.5kg、BMIは20.6kg/m2です。世界保健機関(WHO)によると「普通体重」に分類されます。しかし、運動習慣のないデスクワーカーは特に脚の筋肉が落ちやすく、筋肉の均衡も崩れやすいので、その結果体脂肪率も高くなってしまいます。つまり、体重とBMIが標準範囲であったとしても、健康体とは限りません。

隠れ肥満という言葉を聞いたことがありますか? 隠れ肥満とは見た目は細くても筋肉が少なく、体脂肪率が高い体型を意味し、サルコペニア肥満と同じ状態を示します。隠れ肥満も肥満の人と同様に、心血管疾患や糖尿病などの合併症リスクがあります。しかし、BMIからは運動不足や隠れ肥満は発見できません。BMIが標準範囲だとしても安心してはいけません。

体成分をどのように調べることができますか?

体成分を測定する方法はたくさんあります。短時間で簡単に、限られた項目だけを提供する方法があれば、時間と費用をかけて専門家のサポートが必要なものもあります。ここでは体成分の測定方法をいくつか紹介します。

キャリパー法

キャリパー法は、持ち運びができて使いやすく、適切な訓練を受けた人なら誰でも測定することができます。測定部位の皮下脂肪厚をキャリパーと呼ばれる器具で挟むようにして測定します。それから測定結果を公式に当てはめて全身の体脂肪率を算出します。キャリパー法は、2Cモデルの一例です。キャリパー法を使用するときの注意点は、測定結果が測定者によって異なる点です。測定結果のばらつきを減らし、精度を向上できる工夫がされた医療機器に比べ、再現性が高いものではありません。

水中体重法

水中体重法は、空気を全て吐き出して完全にプールに浸かり、体重を計ります。水中の体重と陸上の体重を比較して、プールの水の密度と共に、一連の公式に当てはめて体脂肪率を算出します。水中体重法は除脂肪量と体脂肪量を求めるゴールドスタンダードとして知られていますが、キャリパー法と同様に2Cモデルの一例で、測定できるのは除脂肪量と体脂肪量のみです。水中体重法を実施するには、特別なプールを持つ大学や研究施設などで予定を立てて、訓練された専門スタッフの指導の下で行う必要があります。

二重エネルギー放射線吸収法(DEXA)

DEXAは、2種類のX線を体に照射し透過前後のエネルギー量減衰率から、体重を筋肉量・体脂肪量・骨ミネラル量に区分して測定する装置です。DEXAは元々骨密度を測定するように設計されていましたが、現在は体成分を測定するためにも使用されており、筋肉量や体脂肪率のような項目も見ることができます。DEXAは、体成分を測定するゴールドスタンダードと言われており、キャリパー法や水中体重法とは異なり、筋肉量・体脂肪量等を部位毎に測定します。ただし、DEXAを実施するには、DEXA装置を備えた病院またはクリニックで医師の指示のもと測定をすることができます。すべての医療施設にDEXAが設置されているわけではありません。

生体電気インピーダンス分析法(BIA法)

BIA法は、人体に微弱な電流を流し、その電流が体水分を流れる際に発生する抵抗(インピーダンス)を測定することから始まります。測定されたインピーダンスをもとに体水分量を算出し、筋肉量・体脂肪量等の体成分を求めることができます。他の方法とは異なり、測定中に必ずしも専門スタッフが必要というわけではなく、機器画面の指示に従うだけで誰でも使用することができます。

ただBIA装置の品質と精度は製品によって大きく異なります。全てのBIA装置が全身を部位別に測定しているわけではありません。例えば、多くの家庭用体脂肪計では、脚のインピーダンスのみを直接測定し、上半身は推定したり、逆に腕のインピーダンスを直接測定し、下半身は推定値を使用しているものもあります。一方、最先端の医療用BIA装置は、DEXAと同様に体を部位別に測定するだけでなく、使用する電流の周波数も多く使用することでより多くの情報を正確に求められる上に、手間や費用はほとんどかかりません。

自身の体成分を把握することは、生活習慣を改善すうための第一歩です。是非、近くのフィットネスや医療施設等でInBody測定をお試しください。そして、測定結果から現状を把握し、客観的な運動計画や健康的な食事の献立作成に役立ててください。より健康的な体を手に入れて、充実した生活を送ってください。

体成分を簡単に説明した下記ビデオもご覧ください。