五大栄養素 -脂質Ⅰ-

五大栄養素シリーズも折り返しです。三大栄養素の一つでもある脂質は私たちが生きていく上で欠かせない栄養素です。それにも関わらず、脂質=肥満という強烈なイメージによって、他の五大栄養素と比べると、悪者にされることもしばしば…。ダイエットされている方、健康診断でメタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満症候群)の危険ありと判定されてしまった方など、普段から脂質の摂取量を気にされている方は多いと思います。特に12月は忘年会やクリスマスパーティなど、脂質の多い食生活になりがちです。

厚生労働省は大人が一日に必要な脂質の目標量を、男女共に総エネルギー摂取量のうち20-30%未満と定めています¹⁾。2018年の国立健康・栄養研究所の栄養摂取状況調査によると、総エネルギー摂取量のうち脂質由来のエネルギーは、男性27.6%、女性28.9%となっています²⁾。脂質の摂取量は少なくすればするほど良いというイメージがありますが、脂質も一定量必要な栄養素であり、不足してしまうと体に悪影響が出ます。脂質と上手く付き合っていくために、是非今回のトピックで脂質への理解を深めてください。


脂質とは


脂質は三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)の中で、1gあたり9kcalと得られるエネルギー量が最も大きい栄養素です(タンパク質・炭水化物は4kcal/g)。厚生労働省は各栄養素から摂取するエネルギー量の比率の目標値を定めており、総エネルギー摂取量のうち、13-20%をタンパク質から、20-30%を脂質から、50-65%を糖質(炭水化物)から摂取することを推奨しています。よくダイエット本などで「PFCバランス」という言葉を目にすると思いますが、これはタンパク質(Protein)・脂質(Fat)・糖質(Carbohydrate)からそれぞれ摂取するエネルギー量の比率を表しています。ダイエットや筋トレを行うときは目標に合わせて、3つの栄養素の摂取量を調整しながら食事計画を立てるとより効果的とされています。

農林水産省による調査が開始されて以来、日本人の摂取エネルギー量の比率におけるタンパク質の割合は変わりませんが、脂質の割合は増え、糖質の割合は減る傾向にあります³⁾。この変化はファストフードや菓子類の普及、食事の欧米化などが理由に挙げられます。
▲「平成30年度食料需給表」より引用

人体における脂質の役割は様々です。例えば、脂質は細胞膜の主な構成成分です。細胞膜はイオンや有機化合物などの物質の出入りを制御していますが、細胞膜が健康でないと上手く制御されません。脂質はステロイドホルモン(性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)やビタミンDの前駆体(ある物質が生成される前段階の物質)でもあります。また、ビタミンの中には水ではなく脂質に溶けやすい脂溶性ビタミン(A・D・E・K)があり、脂質はこれらをはじめとする脂溶性物質の吸収を助ける働きがあります。他にも、脳・神経系の機能保持(大脳の主な構成要素)や肌・毛髪の健康維持、体温維持、臓器の保護なども脂質の役割です。これらの役割から、脂質が体に必要不可欠な栄養素であることが分かります。
※脂溶性ビタミンについてもう少し詳しく知りたい方はInBodyトピック「五大栄養素 -ビタミンI-」もご覧ください。


脂質の種類

脂質は主に飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸の3つに分類されます。下の図を見ると、大人が最も多く摂取している脂肪酸は一価不飽和脂肪酸で、次いで飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸となっています。
▲「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より引用

体脂肪に変わりやすいと言われているのが飽和脂肪酸で、これは高LDLコレステロール血症をはじめとする生活習慣病や、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患の主な危険因子の一つです。脂質全体の目標量の上限値は30%ですが、脂質に含まれる飽和脂肪酸の目標量は成人男女ともに総摂取エネルギー量の7%以下と定められています。尚、小児(~17歳)は発育に脂質が必要なため、目標量が10%以下と成人男女よりも多めに設定されています。
▲「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より引用

多価不飽和脂肪酸は必須栄養素のため、最低限必要な量を摂取する必要があります。脂質全体の目標量の下限値は成人男女ともに総摂取エネルギー量の20%と定めています。これは脂質に含まれる多価不飽和脂肪酸の必須量を基に設定されています。多価不飽和脂肪酸は更にn-3脂肪酸とn-6脂肪酸に分類されます。n-3脂肪酸は魚油に多く含まれるEPAとDHAなどが該当し、n-6脂肪酸は紅花油やグレープシードオイル、ひまわり油などの植物油に多く含まれています。


脂質を多く含む食品と脂質が少ない食品

次の表は脂質が多い代表的な食品と脂質が少ない代表的な食品の各100gあたりの含有量です⁴⁾。同じ牛肉や鶏肉でも部位によって含まれる脂質は大きく異なるので、脂質の少ない部位を選べばダイエット中でもお肉を食べることができます。

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より改変

脂質はファストフードや菓子類を控えたり、食事内容に気を遣ったりすることで意識的に摂取量を調整できます。次回のトピックでは適切ではない脂質摂取によって体に出る影響をご紹介します。

 

参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省
2.「栄養摂取状況調査」 国立健康・栄養研究所
3.「平成30年度食料需給表」 農林水産省
4.「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 文部科学省

 

Print Friendly, PDF & Email