各医療機器とInBodyの併用について
InBodyは手や足の電極から体内に微弱な電流を流し、体成分を測定します。使用する電流の強さは機種によって異なりますが、おおよそ100~500μA(マイクロアンペア)程度です。参考までに、人がピリッと電流を感じ始めるのは1,000μA程度とされており、InBodyで使用される電流はそれを大きく下回るごく微弱なものです。そのため、測定中に電流を感じることはほとんどなく、人体への影響はほとんどありません。実際にInBodyは110ヶ国以上で使用されていますが、これまでにInBodyによる医療事故が報告されたことは一度もありません。このように、InBodyは侵襲性の低い安全な機器として世界中で活用されています。
InBodyは基本的にどのような人でも安全に測定できますが、測定を控えるべきケースや、測定は可能でも正確な数値が得られにくいケースがございます。特に注意が必要なのは、体内に医療機器を埋め込んでいる方や、医療機器を装着したまま測定を行う場合です。このトピックでは、InBodyと各医療機器との併用可否について詳しくご紹介します。
目次
▶ 併用NG
▶ 併用NG
× 心臓ペースメーカー
心臓ペースメーカーのような植え込み型医療機器を装着されている方は測定をお控えください。各種ペースメーカーの添付文書で電気利用の治療を禁忌としているため、微弱とはいえ電流を使用して測定を行うInBodyも禁忌対象となります。なお、万が一ペースメーカーを装着されている方がInBodyで測定を行ったとしても、InBodyが使用する電流は人体に影響のない微弱な電流であるため、安全性に大きな問題はありません。そのため、慌てる必要はなく、次回以降の測定を控えていただければ問題ありません。
× 植込み型除細動器(ICD)
植込み型除細動器(ICD)のような植え込み型医療機器を装着されている方は測定をお控えください。各種ICDの添付文書で電気利用の治療を禁忌としているため、微弱とはいえ電流を使用して測定を行うInBodyも禁忌対象となります。なお、万が一ICDを装着されている方がInBodyで測定を行ったとしても、InBodyが使用する電流は人体に影響のない微弱な電流であるため、安全性に大きな問題はありません。そのため、慌てる必要はなく、次回以降の測定を控えていただければ問題ありません。
▶ 併用注意
▲ 植込み型心電用データレコーダ(ICM)
原則として禁忌対象となります。安全性そのものに大きな問題はございませんが、InBody測定時に体内に微弱な電流が流れるため、植込み型心臓モニタ(ICM)に干渉する可能性があります。そのため、ICMをご使用中の方への測定は、慎重な判断のもとで実施してください。
▲ 植込み型輸液ポンプ(バクロフェン髄注)
原則として禁忌対象となります。InBody測定が必要な患者様のみに慎重に適用してください。また、ポンプは金属製であることから埋め込まれている体幹を中心に測定値に影響が及ぶ可能性がございます。測定後は、必ずポンプが正常に動作していることをご確認ください。
▲ 電気刺激装置(VNSシステム・SCS・DBS等)
測定禁忌ではありませんが、体内に電子部品が埋め込まれているため安全面を考慮し、本体のスイッチもしくは電気刺激をOFFにした状態で、慎重に測定を実施してください。なお、電源をOFFにした状態であれば、InBodyの測定結果に大きな影響を及ぼすことはなく、測定値はそのままご活用いただけます。
▶ 併用OK
〇 水頭症治療用シャント
InBodyの測定原理上、バルブの埋め込み箇所である頭部に電気が流れることは一切ありません。また、治療に使用されるバルブは電子部品には該当しないため、InBody測定に影響を及ぼすこともありません。これらの理由から、安心してご活用いただけます。
〇 人工内耳
InBodyの測定原理上、人工内耳の装着箇所である頭部に電気が流れることは一切なく、InBody測定に影響を及ぼすことはありません。これらの理由から、安心してご活用いただけます。
〇 バルーンカテーテル、ストーマ(人工肛門)
安全性に問題なくInBody測定ができます。ただし、測定結果の解釈には注意が必要です。InBodyは体に微弱な電流を流し、その電気抵抗値(インピーダンス)を測定することで、体成分を求めます。筋肉などの筋組織は電気が流れやすく、一方で脂肪組織は電気が流れにくいという性質を利用しており、体脂肪量は体重から除脂肪量(体水分量+タンパク質量+ミネラル量)を差し引いて算出しています。ハルンバッグ内やパウチ内に貯留している排尿物の重さは体重に加算される一方で、電気が流れない領域に位置しているため除脂肪量には含まれません。その結果、ほとんどが「体脂肪量」に影響を及ぼす可能性があります。そのため、測定時にはハルンバッグ内やパウチ内に排尿物がない状態で測定していただくことを推奨しています。
〇 子宮内避妊器具(IUD)
安全性に問題なくInBody測定ができます。IUDは電子部品ではないため、InBody測定で使用される微弱な電流によって誤作動を起こす心配はありません。IUDの部品には、電気が流れやすい銅(金属類)を含みますが、器具そのものが非常に小さいためInBodyの測定結果に大きな影響を及ぼすことはなく、測定値はそのままご活用いただけます。
〇 人工心肺装置
体内に電子部品の埋め込みがないため、安全確認を行ったうえでInBodyを測定できます。ただし、装置には金属製の部品が多く使用されており、これらがInBodyの電極に直接触れると測定誤差が生じる可能性があります。そのため、装置と測定電極が接触しないよう、適切な姿勢や測定環境を整えて測定を行うことが重要です。
〇 生体情報モニタ(心電図・脳波・呼吸等)
安全性に問題なくInBody測定ができ、測定結果にも影響を与えることはありません。ただし、InBody測定時に体に流れる微弱な電流が、生体情報モニタ側で電気信号として認識されることがあります。その結果、モニタの波形や記録が一時的に乱れることがあるため注意が必要です。生体情報モニタを使用中にInBody測定を行う場合は、測定を実施した時間を記録しておき、データの乱れがInBody測定によるものであることが後から確認できるようにしておくことを推奨しています。
〇 グルコースモニタシステム
安全性に問題なくInBody測定ができ、測定結果にも影響を与えることはありません。ただし、グルコースモニタシステムを装着している場合、InBody測定のタイミングがスキャンと重なると血糖値データを正しく記録できない可能性がございます。そのため、可能であればグルコースモニタシステムを一時的に取り外した状態でInBody測定を行うことを推奨しています。
〇 輸液ポンプ・点滴・CVポート
安全性に問題なくInBody測定ができます。点滴は体成分測定に次のような影響を与えるためモニタリング時には注意が必要です。InBodyで測定するインピーダンスは、測定した時点の体水分から計測されるものであり、点滴によって水分が供給されているのであれば、そのまま体水分の増加として計測されます。ただし、人体において細胞内水分(ICW)と細胞外水分(ECW)は常に並行性を保とうという性質があるため、点滴から血管内(ECW)が補充されたとしても、浸透圧の原理からICWも一緒に増加することになります。部位別にはアクセス部位が最も影響を受けやすく、ECW/TBWの増加が観察されることもあります。また、InBodyの電流は電極間の最短距離を流れようとする性質があるため、針やゴムチューブ内を通じて機械部分まで電流が流れることはありませんので、安心してご活用いただけます。
よくあるご質問
Q1.
体内に金属類(人工関節・ボルト・ステント等)が埋め込まれている場合、測定結果に影響はありますか?
A1.
InBody測定では、体内に埋め込まれている金属によって測定結果に影響が出る可能性があります。影響の程度は、金属の種類・大きさ・位置によって異なります。
InBodyは、体に微弱な電流を流し、その電気抵抗値(インピーダンス)を測定することで、体成分を求めます。金属類は通電性が高いため電気が流れやすく、インピーダンスが低く計測されます。InBodyは「インピーダンスが低い=水分量が多い」と判断するため、金属が埋め込まれている部位を中心に水分量・筋肉量が実際よりも多く計測されることがあります。従って、金属製の医療機器や人工関節などが体内に埋め込まれている方を測定する際は、挿入部位の水分量・筋肉量が実際より多く計測されていることを考慮していただき、測定値はモニタリングを中心に使用していただく必要があります。
しかし、金属類がInBody測定時に電気が流れない頭部に位置していたり、血管内ステントやボルトのようにとても小さいものであれば、測定値への影響は誤差範囲内に収まるため測定結果をそのまま使用できます。
Q2.
頭部に医療機器や金属が埋め込まれている場合、測定してもいいですか?
A2.
安全性に問題なくInBody測定ができます。InBodyの測定原理上、電流は体幹および四肢を通るため、頭部に電気が流れることは一切ありません。このため、頭部に医療機器や金属が埋め込まれていても電気の流れない頭部であることから、InBody測定に影響を及ぼすことはありません。
Q3.
併用NG(ペースメーカーなど)を装着した方を誤って測定してしまいましたが、どうすればいいですか?
A3.
ペースメーカーなど、併用NGとされている医療機器を装着されている方に対してInBodyを測定してしまったとしても、安全性は問題ないので慌てる必要はありません。
InBodyが使用する電流は家庭用体組成計と同等なレベルで、人体に全く影響のない微弱な電気(電極電流:1kHzで最大100μA未満、5~3000kHzで最大500μA未満)を使用しています。治療目的の電気とは違い、測定中にInBodyが人体に流す電気を感じることもほとんどありません。60年に近いBIA法の歴史の中でBIA機器の医療事故は1件も報告されておりません。
ただし、ペースメーカー側の添付文書においてInBody測定は「併用NG」対象であることに変わりはありません。したがって、次回以降は事前確認を徹底し、同様の事態が発生しないようご留意ください。
Q4.
各医療機器とInBodyの併用についてまとめた資料はありますか?
A4.
各医療機器とInBodyの併用についてまとめた資料をご用意しております。ホームページ内のフォームにてお問い合わせいただけましたら、資料のデータをお送りさせていただきます。お気軽にお問い合わせくださいませ。
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本トピックを最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。今回ご紹介した内容は、よくいただくお問い合わせの中から抜粋したものになります。本トピックに記載のない医療機器の併用でご判断にお困りの際は、どうぞお気軽に下記のお問い合わせ窓口までご連絡ください。
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