体型改善 Part2: 基礎代謝量の活用法

体成分を改善させたい場合は、筋肉量を増やして体脂肪量を減らす必要があります。しかし、思い通りに体成分を変化させることはとても難しく、やり方を間違えるとより悪化してしまうケースもあります。つまり、食生活の内容は、筋肉量の増加・体脂肪量の減少という目標を達成できるように構成する必要があります。筋肉量と体脂肪量の増減を意識せずに、ちぐはぐな食事プランと運動を設定してしまうと目標を達成することはできません。

よくある誤解として、「食事量を減らし運動量を増やせば、体脂肪率が改善して理想の体型になれる」 ということがあります。しかし、なりたい体型がどういうものかによって実践する内容は変わります。場合によっては食事量を増やすことが必要なときもあります。例えば、筋肉量を増やし強靭な体型になることを求めているなら、運動量を普段よりも増やして1日の総消費カロリー(TDEE)に見合った分の食事を心掛ける必要があります。
※体成分を改善したい方は、InBodyトピックの「体型改善 -ダイエットの始め方-」もご覧ください。

体型改善の目的において、食事プランに取り入れるべき要素は多く、全てを取り入れようとすると複雑になってしまいます。筋肉量を増やしてウエイトアップを目的とするのか、体脂肪量を減らして体重を落とすことを目的とするのかによっても、食事の内容や摂取カロリー量は変わってきます。今回のトピックでは、筋肉量増加と体脂肪量減少のそれぞれの視点から、基礎代謝量(BMR)を用いて適切な食事プランを立てる方法をご紹介します。


筋肉量を増やす食事プラン

筋肉量を増やしたい場合は、TDEE以上のカロリーを摂取する必要がありますが、不要なカロリー摂取は避ける必要があります。筋トレのメニューも重要ですが、何をどう食べるかについては更なる工夫が必要です。

前回のトピックで登場した男性(体重:77.6kg、除脂肪量:60.6kg、BMR:1,679kcal、身体活動レベル:普通)を例に説明します。こちらの男性のTDEEは2,938kcalなので、ウエイトアップにはこれ以上のカロリーを摂取する必要があります。具体的にはどれくらい摂取カロリーを増やせばいいのでしょうか? 2002年に発表されたアメリカの研究によると、ウエイトアップにはTDEEより約15%多くカロリーを摂取する必要があると報告されています¹⁾。この研究に基づいて、こちらの男性の摂取カロリーは3,379kcalに設定することができます。体脂肪量の増加は最小限に抑えつつ筋肉量を増やすためには、どのように摂取カロリーを増やせばよいのでしょうか?

筋肉量を効率よく増加させるためには3大栄養素の中でも、特にタンパク質の摂取が大切と言われています²⁾。しかし、タンパク質の摂取量のみを増やしたからといって、それがそのまま筋肉量の増加につながるわけではありません。2006年の大学運動選手を対象とした研究によると、2.0g/体重(kg)/日以上ものタンパク質を摂取していたにも関わらず、筋肉量や筋力が向上されなかったと報告されています³⁾。筋力が必要とされる大学運動選手の適切な摂取カロリーは、44.0~59.0kcal/体重(kg)/日以上が推奨されていますが⁴⁾、この研究の参加者の摂取カロリーは33.0±5.5kcal/体重(kg)/日と、推奨量を下回っていました。このような研究から、タンパク質だけを十分に摂取したとしても、運動レベルに適した摂取カロリーが足りない場合、筋肉量を増やすことは難しいと分かります。つまり、もし筋肉量を増加させたい場合は、タンパク質の摂取量を増やすことも大切ですが、摂取カロリーはTDEE以上である必要があります。タンパク質はもちろん、炭水化物もバランスよく食事内容に構成して、適切なカロリーを摂取しましょう¹⁾。

また、適切な摂取カロリーの設定には、InBodyが研究項目で提供している推奨エネルギー摂取量※1も参考になります。推奨エネルギー摂取量は、健康な人が1日に必要とするエネルギー摂取量(EER)を算出後、InBodyで測定した体成分を考慮して調節される値です。EERの算出方法は次の通りです⁵⁾。

➤ 20歳以上の成人男性
EER=662-9.53×年齢+身体活動係数(PA
※2×[15.91×体重(kg)+539.6×身長(m)]
➤ 20歳以上の成人女性
EER=354-6.91×年齢+身体活動係数(PA)
※2×[9.36×体重(kg)+726.0×身長(m)]
➤ 20歳未満の男性(9歳以上)
EER=88.5-61.9×年齢+身体活動係数(PA)
※3×[26.7×体重(kg)+903×身長(m)]+25
➤ 20歳未満の女性(9歳以上)
EER=135.3-30.8×年齢+身体活動係数(PA)
※3×[10.0×体重(kg)+934×身長(m)]+25

基本的には、EERがそのまま推奨エネルギー摂取量として提供されますが、次の条件に該当する人は体成分を考慮してEERが調節されます。
① 18~64歳の男女で、体重・骨格筋量がどちらも標準範囲より少ない痩せ型の場合は、EERに250 kcalを足す。
② 18~64歳の男女で、体重・体脂肪率がどちらも標準範囲よりも多い肥満型の場合は、EERから500 kcalを引く。
③ 65歳以上の男女で、体重・骨格筋量共に標準範囲未満である場合、または体重・体脂肪率共に標準範囲以上である場合、EER公式の
”体重” 箇所に ”調節体重” を適用して算出する。
調節体重=現在体重+(標準体重-現在体重)÷4

筋肉量を増やすために、ウエイトアップする必要がある痩せ型な男性(年齢:20歳、体重:50.9kg、身長:170cm、骨格筋量:標準範囲未満)の推奨エネルギー摂取量を計算してみましょう。こちらの男性のEERを計算すると、2,389kcalとなります。しかし、体重・骨格筋量が標準範囲未満であるということは、身体活動に必要なエネルギーが十分に供給されていない状態を意味するので、この場合はEERに250kcalをプラスします。結果、この男性の推奨エネルギー摂取量は2,639kcalになります。推奨エネルギー摂取量を参考にすることで、自分の体成分に応じてエネルギー摂取量を調節し、筋肉量を増やすためのウエイトアップをすることができます。

※1 現行販売している非医療機器(InBody270, 470, 570)のみ、提供している項目になります。
※2 身体活動の程度によって4段階(非活動・低活動・活動・高活動)に分けられますが、InBodyでは平均的な活動係数男性1.11、女性1.12を使用します。
※3 身体活動の程度によって4段階(非活動・低活動・活動・高活動)に分けられますが、InBodyでは平均的な活動係数男性1.13、女性1.16を使用します。


体脂肪量を減らす食事プラン

体脂肪量を減らしたい場合は、カロリーが不足した状態=「カロリー赤字」をつくる必要があります。つまり、TDEEより低いカロリーを持続的に摂取します。TDEEは現在体重を維持するために必要な摂取カロリーなので、これを基準に「カロリー赤字」を考えてみましょう。
※カロリー赤字に関してもう少し詳しく知りたい方は、InBodyトピックの「体脂肪量減量に関する5つの迷信」もご覧ください。

2週間で1kgの体脂肪量を減らすには、毎日の食事から550kcalほど減らす必要があると言われています。これは1kgの体脂肪量をカロリーに換算すると約7,700kcalであることから、「2週間でマイナス7,700kcalを達成するためには1日当たり摂取カロリーを550kcal減らす必要がある」という計算に基づいています。確かに理論上、この方法は理に適っていますが、誰にでも推奨できる方法ではありません。TDEEが3,000kcalや4,000kcalとある程度高い方が、摂取カロリーを1日に550kcalほど減らしたとしてもそれほど問題ではありませんが、TDEEが1,500kcalもない方が1日の摂取カロリーを1,000kcal以下にして日常生活と運動をこなすのは難しいです。
※体脂肪量1g当たり=7.7kcalに該当します。

従って、TDEEから摂取カロリーを減らす最も安全な方法は、まずは1日当たりの摂取カロリーを200~300kcalほどの僅かな量だけ減らし、1~2週間維持することです。1週間の継続後に筋肉量が減っていないかを確認するため、InBody測定を行います。もし筋肉量が維持されたまま体脂肪量が少しでも減少していれば、カロリー赤字は成功です。今後は運動による消費カロリーなども調節し、その日に応じた必要な分のカロリーを摂取します。

では、摂取カロリーを食事から安全に減らすにはどうすれば良いでしょうか? 最も簡単な方法は、ファストフード・お菓子・チョコレート・ジュース・お酒などの摂取量を減らすことです。今までどれだけ摂っていたかによっても異なりますが、これだけで減量できるかもしれません。普段からこういったものをあまり摂取していない場合は、摂取量を多少減らしても問題ない栄養源を減らすようにします。食事プランの炭水化物や脂質の中でカットできる部分がないか見直してみましょう。一方、摂取量を減らし過ぎないよう注意すべき栄養素はタンパク質です。タンパク質は筋肉を構成する成分であり、摂取量を減らし過ぎてしまうと、筋肉量が減少して体重が落ちてしまいます²⁾。厚生労働省は、日本人が必要なタンパク質の量を男性60g/日、女性50g/日と定めているので、こちらの値を参考に調節してください⁶⁾。


摂取カロリーを食事から安全に減らす別の方法は、低カロリー高タンパク質の食材を選ぶことです。お勧めの食材は次のようなものが挙げられます。適切なカロリー制限と栄養摂取に運動を並行することで、筋肉量を維持しつつ体脂肪量を減らすことができます。

・さけの切り身(100g): 132kcal/タンパク質 22g
・ギリシャヨーグルト(170g): 100kcal/タンパク質 17g
・鶏の胸肉(骨・皮なし、100g): 108kcal/タンパク質 22g
・牛肉(もも、赤身肉、100g): 140kcal/タンパク質 23g
・豚肉(ヒレ、赤身肉、100g): 114kcal/タンパク質 23g
・絹ごし豆腐(1丁300g): 168kcal/タンパク質 15g


理想の体型になるために

理想の体型になるためには、食事プランと一緒に運動なども常に少しずつ変化させる必要があります。諦めずに継続すれば、必ず努力は結果として現れるでしょう。しかし、結果が目に見えるまで、どれほど時間を要するかは個人によって異なります。モチベーションを維持するためにも、定期的に体成分を確認するようにしましょう。測定頻度の目安としては、1~2週間毎の測定が推奨されますが、食事プランや運動内容が更新されたタイミングに合わせて測定するのも良いでしょう。より詳細な体成分の変化を確認したいのであれば、是非InBodyで測定してみてください。

最後に、BMRは筋肉量と密接に関連していることを忘れないでください。適切な栄養摂取と運動によって筋肉量が増えると、必要な摂取カロリーも増加します。摂取カロリーの調節ができなければ、せっかく増やした筋肉量を維持することはできません。更に筋肉量を増やしたい場合は、今の摂取カロリーも見直す必要があります。逆に、厳しいカロリー制限を行って筋肉量が減少した場合はBMRも減少しています。筋肉量の減少を考慮せずにむやみに運動量を増やしたり、余分に摂取カロリーを取ってしまったりすると、理想の体型から遠ざかってしまうかもしれません。

食事や運動の計画を立てる際、体に必要な摂取カロリーを把握することはとても有益です。これを把握するためには、BMRを知ることから始まります。BMRをうまく活用することで、健康を損なうことなく、より効果的に体成分を改善して、少しずつ理想の体型に近づけていきましょう。このトピックの前編を見逃している方は、そちらもご覧ください☞「体型改善 Part1: 基礎代謝量とは」

 

参考文献
1. Macronutrient considerations for the sport of bodybuilding. Lambert CP et al. Sports Med. 2004;34(5):317-27.
2.「筋肉量を増やすために必要な栄養素「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」」 独立行政法人環境再生保全機構 すこやかライフ
3. Effect of Protein Intake on Strength, Body Composition and Endocrine Changes in Strength/Power Athletes. Jay R Hoffman et al. J Int Soc Sports Nutr, 2006; 3(2): 12–18.
4. American Dietetic Association. Dietitians of Canada and the American College of Sports Medicine Position stand: Nutrition and athletic performance. Med Sci Sports Exer. 2000; 32: 2130–2145.
5. Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids, institute of medicine of the national academies, 2002 and 2005, The National academies press 500 Fifth street, N.W. Washington, DC 20001
6.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 厚生労働省

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