女子栄養大学

管理栄養士育成へのInBody導入

女子栄養大学は埼玉県にキャンパスを置いている栄養・保健関連のスペシャリストを育成している栄養学部の単科学大学です。実践栄養学科は国が指定する管理栄養士養成課程であり、ここを修了することで管理栄養士の国家試験受験資格を取得できます。

1961年の設立以来、食と健康をテーマに栄養学・保健学の教育・研究に力を注いでいます。管理栄養士国家試験の合格率は高く、合格者数は毎年全国1位です。保健栄養学科も2019年臨床検査技師国家試験において、90.3%と高い合格率でした。国家資格の取得だけでなく、大学で学んだことや取得した資格を活かし就職する学生が多いことも特徴であり、管理栄養士・臨床検査技師だけではなく、多くの栄養士・養護教諭・家庭科教諭・栄養教諭などの人材を育成し、日本人の健康維持・増進に貢献しています。


管理栄養士の役割

給食・栄養管理研究室の石田裕美教授は、栄養状態の評価・改善という管理栄養士の実践的な業務と密接に関係する研究を専門としている実践栄養学科の教授です。大学受験では理系且つ資格取得が可能な大学であるという理由から栄養学部と薬学部を受験し、女子栄養大学に進学しました。大学時代は実践栄養学専攻で学び、卒業研究を進めていく中で栄養学を深めていきたいと考えるようになり、女子栄養大学大学院に進学しました。その進学を機に管理栄養士としてではなく、教育・研究の道へと進み、現在では女子栄養大学の管理栄養士を志望している学生の教育に携わっています。

「人は食べないと生きていけません。日々の食が健康維持に繋がることもあれば、病気に繋がることもあります。管理栄養士という職業は、子どものときから正しい食習慣を身につけてもらうことに貢献できる仕事です。本来は家庭で食材から家族のため、自分のために調理し料理を作りますが、現在は自分で調理をしなくても食事をすることができるような時代になっています。食物の選択肢が多様で豊かになってきている時代だからこそ、人々が自分の健康のために何を選択して食べるかについての知識を得て、実践に移すように促す、管理栄養士の役割が非常に大きいと思っています。」


栄養管理における見解の転機

アメリカの臨床栄養のなかではヒューマンニュートリション(人間栄養学)を基に、人間・食事・地域・環境などを対象とした総合的な栄養管理が行われていました。日本では戦後の食糧不足の時代、すなわち欠乏時代の経験から、栄養士・管理栄養士の業務はヒューマンニュートリション以上に食事の管理が中心でした。必要な栄養量の基準として所要量を目標に食事を調整する栄養管理が行われていました。しかし、1990年に入り、人の栄養状態を評価・判定し、栄養状態を改善するために必要な食事改善を支援するという方向に転換する動きが始まりました。現在の日本は栄養の不足と過剰が同時に存在しています。必要な食事量だけでなく過剰摂取の回避や生活習慣病の予防を視野に入れた食事摂取基準が策定され、ヒューマンニュートリションを基にした栄養管理が行われています。栄養管理のとらえ方の転換を機に、体重だけの管理ではなく体成分管理の必要性が認識され、栄養学の教育でも体成分分析装置による測定が取り入れられるようになりました。


実習へのInBody導入

管理栄養士は栄養状態を様々な測定データからアセスメントし、それに基づき栄養管理を実施します。身長・体成分・骨量、採尿・採血による臨床検査など様々な測定を行うため、測定機器に触れる機会を実習として講義に組み込んでいます。測定機器の特徴を理解し、異なる機器による測定データの関係性を分析し、データの傾向や精度を学ぶことができます。

身体計測の実習に取り組み始めた当初は、体組成を測定する方法としてキャリパーを用いていました。キャリパーは測定時の計測点や力加減によって測定値にばらつきが出るため、測定の精度を確かめるために、体成分分析装置の導入が必須でした。実習中に100人以上の学生を測定することを考慮した場合、時間と費用の面からDEXA法ではなく、両腕間ないしは両脚間のインピーダンスのみを測定する一般家庭用の体組成計が導入されました。しかし、それらの体組成計は測定部位の違い、日内変動が大きいなど限界も大きく、実習当初はゴールドスタンダードのような基準が存在しない中で機器同士のデータ傾向のみを分析していました。

様々な機器を試したところ、研究に活用できる機器はInBodyであると考え、2000年にInBody3.0を2台導入しました。成長期である中高生の栄養状態と身体状況の関連について、大規模な調査がスタートしたことをきっかけに、体脂肪率の測定も調査において重要な項目として位置づけることができました。この調査が継続的な調査となり、導入台数を徐々に増やしました。現在、女子栄養大学では、8台のInBodyを所有し、実習の中にInBody測定を取り入れています。

「InBodyは両腕・体幹・両脚の5つの部位ごとの数値を得ることができ、左右・上下のバランスを知ることができます。また、再現性を高める8点接触型電極という技術がInBodyに組み込まれているため、同じ時間帯・条件下で測定した場合、測定姿勢が結果に与える影響が小さく変化を敏感に追うことができます。」

実践栄養学科2年生前期の実習では、身体計測として身長、InBody測定、骨量測定、採尿・採血による臨床検査、食物摂取頻度調査を行い、各種測定データの見方について学び栄養状態の評価・判定を行っています。また、InBodyで測定した体脂肪率、除脂肪量の数値をゴールドスタンダードと見立て、他の機器で測定したデータとの関係性を分析しています。講義を通して、測定機器の特徴を理解し、データの読解力や分析スキルを修得することができます。また、学生のキャリパー測定の技術を高めるトレーニングでもInBodyを活用しています。3人で同じ学生をキャリパー測定した際、算出した平均値から各々の測定値が平均値±10%以内に収まる様に訓練し、算出した平均値とInBodyで測定した体脂肪率との誤差を確認しています。

「キャリパー測定の精度を高めると、キャリパー1つで病院などのベットサイドで、あるいはフィールドワークでの測定が可能となります。キャリパー測定の技術をしっかり持つことで、栄養状態のモニタリングも正しく行えます。」


今後の目標

女子栄養大学において、InBodyは管理栄養士の教育だけでなく、中高生の成長期における身体発育に関する研究や、高校生・大学生の運動選手の栄養管理としても活用されています。

「現在、成長期における体脂肪の役割や適切な体脂肪量の増え方を把握するために、中高一貫校生徒の体脂肪率の分布の推移を検討しています。見た目は痩せている方が良い、体脂肪量を増やしたくないと考えている成長期の生徒は多く、成長期に体脂肪量を適切に蓄えることは生物学的に正常であるということを理解してもらえるようなデータを示していきたいと考えています。

また、女性のスポーツ選手における3主徴(利用可能エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症)は成長期の頃から始まっており、適切な体で競技を長く続けられるように、成績を出していけるように成長期からの体脂肪率を研究することで、正しい成長を促すための食事サポートに繋げていきたいです。

結局、測定結果というのは食生活・運動習慣の結果を表しており、結果に至るまでの食生活の過程を追いかけていく必要があります。モニタリングの項目は身長・体重だけでなく、もっと体成分に注目することが栄養学において重要になってきています。InBody測定をはじめとする、実習内での様々な体験は、栄養管理の現場で活かすことができるでしょう。実践的な経験は自信になり、実際の現場でも栄養指導として取り入れることができるため、 “より実践できるような栄養学を人々に普及させる” という本学の使命を果たしていく人材へと成長しています。」

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