東海記念病院
-院内のリハビリ活用と企業連携の試み in 無印良品イーアス春日井-

機種モデル:InBody S10

医療法人社団喜峰会 東海記念病院は20の診療科、病床数199床を持つ愛知県春日井市の総合病院です。救急医療からリハビリテーション、予防医学、訪問診療・看護、介護サービスまでトータルに対応できる体制を有し、地域に開かれた病院として医療を軸にした街づくりにも貢献しています。東海記念病院のリハビリテーション部では、ADL(日常生活動作)の向上だけではなく、筋肉量などの体成分を評価し体の中から健康を支援することを目的に、InBody S10が2014年に導入されました。現在は院内だけに留まらず、病院が開催する運動教室や介護予防活動、春日井市や企業と連携した健康づくりイベント等でも使用されています。


元気と笑顔にあふれるリハビリテーションを

▲ 則竹 賢人さん

リハビリテーション部理学療法士の則竹 賢人さんは愛知県の星城大学を卒業後、北九州市の病院でリハビリ職を数年経験したのち、東海記念病院に勤めて8年目となります。

則竹さん:
「中学生の時に膝の怪我をして、理学療法士の方に治療していただきました。そこからスポーツ系のリハビリに興味を持ち大学へ入学しました。大学入学後に臨床実習で高齢者医療を経験してからは、病院で勤務したいという想いが強まり、現在に至ります。春日井市は名古屋市のベッドタウンで、中でも病院のある高蔵寺という地区は特に高齢者が多いエリアになります。リハビリテーション部の理念である 『元気と笑顔にあふれるリハビリテーションを』 を合言葉に、患者様がリハビリを通して身体機能だけでなく、気持ちも元気にできるリハビリテーションを提供する東海記念病院に勤務できることを嬉しく思います。」

▲ リハビリの設備が充実している院内のリハビリアリーナ

地域密着・貢献を掲げリハビリテーションに力を入れていることから、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士あわせて80名のスタッフが在籍しています。専用のリハビリアリーナは体育館のように高い天井と大きな窓に囲まれた広い空間が確保されており、InBodyをはじめとして患者のリハビリを実施する上で有益な機器を多く導入しています。InBodyの測定は主にリハビリ職の理学療法士・作業療法士が行い、NST(栄養サポートチーム)の医師や管理栄養士とともに測定結果は専用結果用紙で共有されています。病院は一般病棟・地域包括ケア病棟・回復期リハビリテーション病棟に分かれており、回復期リハビリテーション病棟に入院する患者には月1回のInBody測定が必須評価としてフローに組み込まれています。その他の病棟でも、栄養障害やサルコペニアを認める患者が多く、InBodyを活用しています。


リハビリテーション分野における体成分分析の重要性

InBody S10は寝た状態でも体成分を分析することができ、立位を保つことが難しい方や様々な病態の患者でも測定を行えます。入院患者に対しては、InBody測定の他に下腿周径や筋力、歩行動作能力やバランス能力等の検査も実施して包括的に評価を行なっています。InBodyの結果と理学療法士が普段利用する検査の関係性などを調査した研究が多くはなく、則竹さんは筋肉量の改善が動作能力改善に与える影響を研究テーマの一つとして取り組んでいます。

医療の現場では入院を契機に体重減少を認めてしまう患者を臨床の中で多く経験します。東海記念病院の回復期リハビリテーション病棟は急性期からバトンを引き継ぎ多職種と連携を取りながら、InBodyの結果をもとに患者の個別性に合わせて様々な目標を立案していきます。InBodyで測定した筋肉量をグラフで示しながら体の中の変化を可視化することで、より一層意欲的にリハビリに取り組めます。

▲ InBody S10の専用結果用紙サンプル

則竹さん:
「InBodyの測定結果も効果判定の指標の一つとして活用しています。中には、InBodyの結果用紙を大切に保管され、次回の測定を楽しみにされる患者様もいらっしゃいます。評価結果を患者様に説明するのは勿論ですが、ご家族の方にも結果用紙を見てもらうこともあります。大切な人が病気で痩せていく姿にご家族の方が落ち込んでしまうことがありますが、数値の改善・変化を共有することはご家族の方の安心にも繋がります。 InBodyは筋肉量を測るだけではなく、多職種や患者様のご家族も含めてコミュニケーションのきっかけにもなるところも強みと感じています。」

また、外来リハビリを利用されている進行性疾患患者にもInBodyが活用されています。長い経過の中で生じる筋肉量の減少は、課題の一つとなります。リハビリでは身体機能や動作能力だけでなく、体重測定だけでは分からない筋肉量・体脂肪量の把握は重要であり、適宜測定を行っています。

則竹さん:
「最近では位相角に着目した研究も行っています。BIA法を用いた位相角の測定は、測定技術に依存せず、客観的で簡便かつ短時間に栄養状態を評価できます。高齢の入院患者様を対象に栄養評価指標としての位相角の有用性を明らかにしようとデータ分析を行っています。位相角が栄養状態を評価するための指標として活用できる可能性について考えています。栄養評価指標として位相角が活用できれば、私たちリハビリ職種でも栄養状態を非侵襲的かつ客観的に評価することが可能となります。栄養状態を適宜測定することは、適切な運動量の提供に繋げる事ができると思い、研究を進めています。」


院外の健康づくりイベントにおけるInBody活用

▲ 後藤 文彦さん

リハビリテーション部理学療法士の後藤 文彦さんは、愛知県の星城大学を卒業後、東海記念病院に勤めて13年目となる健康づくりイベントの担当者です。後藤さんは主に院外の活動でInBodyを活用されており、様々な院外活動の一つに無印良品イーアス春日井とコラボレーションした健康相談会イベントがあります。無印良品イーアス春日井の店舗内で行われる健康相談会イベントは、毎月第3土曜日の11:00から16:00に開催されています。

後藤さん:
「無印良品さんから新しくオープンするイーアス春日井の店舗のテーマの一つが ”健康づくり” であり、ぜひ一緒に取り組んでほしいとお話をいただいたとき、私たちが志す地域貢献にもマッチしていたので喜んでお受けすることとなりました。」

東海記念病院では10年前から介護予防に携わる活動として 『さぼてんクラブ』 を立ち上げています。さぼてんクラブでは介護が必要になる前の予防を目的に、病院のみならず様々な地域の施設に出向いて健康に関する測定会や運動教室を行っています。さぼてんクラブは単なる介護予防の運動教室としての役割ではなく、地域で教室を行いその場所が時間をかけて高齢者の集いの場としても利用でき、運動のきっかけから継続までを支援できるよう活動しています。この活動の一部が無印良品の担当者の目に留まったことがきっかけで、病院が企業と連携して新たなイベントを作り上げていくことになりました。

後藤さん:
「InBodyは非侵襲的で定量的な結果が示せるという理由で院外のイベントでもよく使用しています。無印良品イーアス春日井のお客様には30代から50代の若い方が多く、普段は病院や医療、健康づくりにはあまり縁がない方々ではあります。病院や健診に行く時間がなくて生活習慣病リスクを持っている事に気付けていない方も多いので、体の状態を知るきっかけになってほしいと考え、InBodyを使用機器に選定しました。また、女性であれば妊娠・出産などで生活スタイルが変わり、筋肉量が減って体型が変わる人もいます。多くの人に ”気づき” を与えられる場になればと思いながらイベントに取り組んでいます。」

▲ 無印良品イーアス春日井で開催されている健康相談会イベント

イベントではInBodyを測定した後、理学療法士や作業療法士からフィードバックを受けることができます。その中で筋肉-脂肪のグラフと肥満指標のBMI・体脂肪率は必ず説明で使う項目です。棒グラフのビジュアルから体型タイプが分かるので、測定された方の体型タイプを伝えてから部位別情報の項目など必要な情報を更に細かく話します。
▲ 筋肉・脂肪グラフの早見表
(3本の棒グラフは上から体重・筋肉量・体脂肪量を表しており、これらのバランスから体型タイプを分類できる。)

後藤さん:
「院内外問わず、私たちが一番大切にしていることは、フィードバックの場です。結果用紙を渡すとき、相手に何を伝えられるかが大事だと思っています。私たちが測定結果を基に行動変容に働きかけるような助言をしたり、運動習慣や食事状況などを含めてどんなライフスタイルを送っているのかを聞き出しながら、結果に対して誠実にフィードバックができると良いなと思いながら活動をしています。フィードバックの後は 『思ったよりも色んな事が知れて良かった。』 『こんなことまで教えてくれるんですね!』 というようなお言葉をいただきます。」


無印良品イーアス春日井が健康を知る場所となる

▲ 林 良浩さん

無印良品イーアス春日井店長代行の林 良浩さんは、2009年に会社に入社し主に東海地方にて店舗運営に携わってきました。東海記念病院と連携した健康相談会イベントの企画から運営まで担当されています。全国の無印良品の中でも最大規模を誇るイーアス春日井では、人々が集い繋がる場として 『中央広場』 というスペースが設けられています。このスペースでは ”地域の方に役立つ情報を発信したい” という想いで、『健康』 『子育て・教育』 『防災』 などにテーマアップした様々なイベントが開催されています。その中のテーマの一つとして 『健康』 を掲げた際、 “健康を深く考えてみたり、今までやらなかったことをやってみるきっかけになってほしい” という構想から、同様のテーマを掲げて地域の健康増進活動を行っている東海記念病院と連携して健康相談会イベントを開催する流れとなりました。林さんはイベントの企画から運営まで担当されています。

林さん:
「無印良品イーアス春日井が病院と連携し 『健康』 をテーマに情報発信することで、地域の皆様にはどのようなメリットがあるのかを考えました。まず、日頃病院にご縁がない方は病院に行かなければ知り得なかった情報を、日常生活の身近な場所で知ることができます。今まで気づかなかった自分の体のことであったり、病院に行かなければ知り得なかった情報を得られることで、病院と離れた場所にいる方々が自分の体を知る機会、何かを始めるきっかけの場を作りたいと思いました。」

病院の専門性と無印良品イーアス春日井の身近さを活かしたコラボレーションイベントは毎月1回開催されており、毎回100人程の参加者で賑わいを見せます。無印良品イーアス春日井では、日々の生活を充実したものにする日用品等の販売はもちろん、物販以外でも地域に貢献できる店舗を目指し、今後も様々な視点でイベントを企画していく予定です。

林さん:
「店舗が単にモノを買う場所だけでなく、健康を知る場所、お客様に役立つ場所として、身近な存在になりたいと考えています。病院とも連携しながらイベントを通して、普通の小売店以上になくてはならない身近な場になりたいと思っています。」


終わりに

則竹さん:
「InBody導入当時は、リハビリテーションにおける栄養の重要性に関する報告はまだまだ少ない状態でした。栄養状態や筋肉量を評価しようとなると、血液データを見たり、四肢の周径から算出したりすることしかできませんでした。今では、栄養状態や筋肉量が気になる患者様に対して 『InBodyを測定しましょうか。』 とどのスタッフも提案をして、筋肉量からも栄養評価ができています。何よりInBodyで患者様の細やかな点まで評価する文化が根付いたことは、病院にとっても私にとっても嬉しいことです。患者様が退院後に健康的に生活ができるように日常生活動作能力だけでなく、筋肉量・体脂肪量などの体成分を評価していく流れが、この数年で根付いてきたとより感じるようになってきました。リハビリ職種が非侵襲的且つ定量的に評価できるInBodyを活用することは有用だと考えています。

医療職の中で、リハビリ職種は唯一運動を通してエネルギーを消費させる立場です。筋肉量を増加させるためには、エネルギーの出納バランスをコントロールした介入が必要です。筋肉量を増加させ体の中から元気になるよう、効果判定としてもInBodyを活用しています。

今後は地域で生活されている高齢者を対象にInBodyを活用して、定量的に栄養状態の測定やサルコペニアのスクリーニングをしっかり行える体制を作っていきたいと考えています。」

後藤さん:
「イベント時はショップ店員さんのように 『InBodyを測定してみませんか?』 とお声掛けをさせてもらっています。中には、体重を知られてしまうという部分で抵抗を持たれる方もいらっしゃいます。それでもInBodyを測定してみると、普段なかなか体の中身を詳しく調べる機会もないですし、体を数値化して評価できたことを最終的には皆さん喜ばれます。

これからも様々なイベントを通して色んな人との接点を増やしていきたい、皆さんの健康づくりにダイレクトに役立ちたいという想いがあります。無印良品さんとのイベントだけでなく、年間通して色んなイベントに携わってInBodyを活用しながら、皆さんと繋がることができればと考えています。」