大阪河﨑リハビリテーション大学×不二製油株式会社
-産学連携で進む従業員の健康増進-

✓InBodyを活用する目的
● 従業員に現在の身体の状態を知ってもらうため
● 従業員の健康への意識を高めるため

✓得られた効果
● 産業医の先生が明確に数値をもとに現状をお伝えしやすくなったと共に、これからどうやって改善していくべきか、具体的な数字を使って計画できるようになった
● 日々運動している人だけではなく、運動をしない人が測定会をきっかけに健康づくりに関心を持ってもらえた

機種モデル:InBody270

大阪河﨑リハビリテーション大学の今岡 真和先生は不二製油株式会社・貝塚市と共に産官学連携を促進し、これまで地域高齢者のフレイル予防に取り組んできました。そこから発展し、不二製油株式会社の健康管理課に所属する吉野 由里子さんと産業医である関口 卓也先生と協力して、今年から産学連携にも取り組み、地域高齢者だけではなく現役世代の健康増進・生活習慣病予防に注力しています。

※大阪河﨑リハビリテーション大学及び今岡先生をご紹介している以前の記事はこちらよりご覧ください。
※産官学連携・産学連携…民間企業(産)・政府や地方公共団体(官)・大学などの教育・研究機関(学)が連携して、新技術の研究開発・新事業の創出・新製品の開発などを行うこと

▲ 左から、不二製油株式会社 産業医の関口 卓也先生、不二製油株式会社の吉野 由里子さん、大阪河﨑リハビリテーション大学の今岡 真和先生

今岡先生:
「本学は2022年から大学院を設置して、運動機能・科学領域で地域の皆様の健康やリハビリテーションの質向上の一助となるような研究活動を推進しています。新しい研究棟の1階には、フロンティアリハビリテーションセンターという、地域の皆様に対して開かれた研究活動が促進できるような場所を作り、センター設置時にInBodyを新たにもう1台導入しました。近隣の方に来ていただくときは、ここで測定しています。InBodyは簡単に持ち運びができますので、不二製油様をはじめ、毎年数百人単位を対象とした地域での測定活動など、外部の測定でも重宝しています。」

▲ 大学内に新しくできたフロンティアリハビリテーションセンター

今岡先生:
「コロナ禍を機に、ICT活用についての研究調査も行っています。現在、高齢者の方のスマートフォン普及率を見ますと60代で9割と、とても高いです。その一方で、スマートフォンで体操動画を見て運動する習慣がある方は我々の調査では15%ぐらいしかおらず、今後はスマートフォンを健康のために活用することを推し進めていきたいと考えています。パーソナルヘルスレコード(PHR)もスマートフォンのアプリなどを上手く使うことで簡単に導入でき、活動量や睡眠状況などが手軽に把握できるので、これらを普及させて地域高齢者のフレイルを防げるような取り組みを考えています。運動に加えて栄養面からのフレイル予防にも取り組んでいて、コロナ禍で運動・栄養介入試験も兼ねた高齢者向け運動教室を休止していたのですが、今年の12月からようやく再開する運びとなりました。この教室の栄養介入の部分では、不二製油様にご協力いただいています。」

今岡先生の活動は、学部生や大学院生の貴重な実習の場でもあり、地域活動に関心を持つ卒業生が手伝いに来てくれることもあります。


不二製油株式会社のご紹介

吉野さん:
「不二製油株式会社は1950年に創業し、不二製油株式会社だけですと従業員数が1,244名(23年3月時点)、グループ全体となると世界中に関連会社があり、総従業員数は約5,700名となります。植物性油脂/業務用チョコレート/乳化・発酵素材/大豆加工素材の四つの事業部に分かれていて、植物性の原料で人と地球の健康に貢献することをモットーに様々な取り組みをしています。今岡先生・貝塚市を含めた産官学連携では、大豆加工素材を活用していただいています。」

▲ 不二製油株式会社 阪南事業所内にある資料展示コーナー

吉野さんは入社してから10年以上に渡り、コンビニスイーツやパンで使われるクリーム、チーズ、チョコレートフィリングの食品開発に携わっていました。その後、品質保証の部署に移り、商品規格書の作成に携わっていましたが、ある出来事がきっかけで健康管理課に異動することとなります。

▲ 不二製油の製品である業務用チョコレートや乳化・発酵素材

吉野さん:
「チョコレートが大好きな娘から 『チョコってどうやって作るの?』 と質問されたとき、子どもは普段食べている食べ物の製造過程や、その背景を知らないんだということに気付かされました。開発にいたこともあり、チョコレートの作り方や背景などの知識は誰もが知っていることだと当たり前に考えていました。この経験から、食べ物の背景を伝えたい想いが強くなり、食育をやっていきたいと社内で手を挙げて、現在の健康管理課に移りました。

“人と地球を健康にする” をキーワードに実際に食育をするときは、甘いチョコレートの裏側に児童労働があったり、普段何気なく使っている油の裏側には森林破壊の問題があったりと、その原料を取り巻く環境のことも一緒に伝えます。不二製油で扱っている植物性原料は、動物性原料よりも比較的持続可能なものではあります。しかし、植物性原料も社会課題を抱えている事実もあるので、知らないで食べるよりはちゃんとその背景を知った上で食べてほしくて、敢えて伝えるようにしています。今の子ども達が大人になる頃にも食を楽しめる環境が続いてほしいので、少し早いうちから考えてほしいなという想いで食育に取り組んでいます。」

コロナ前は食育イベントで小学生と一緒に、豆乳クリームを使って豆乳プリンを作る活動などをしていました。そして食育だけでなく、2022年からは従業員の健康管理にも携わるようになりました。

吉野さん:
「従業員の健康管理をするようになって、私自身は健康体だったのであまり意識していなかったのですが、従業員全体の健診データ解析結果を見ると、良いとは言えない数値がたくさん並んでいることに驚きました。従業員の年齢層も上がってきていますし、今は当たり前に働けていてもいつかは衰えてきます。特に、工場勤務は身体をよく使う仕事なので、まだ大丈夫と思っていても実はそうじゃないんだよというギャップの部分を感じてもらえる場があれば良いなと思い、今岡先生に不二製油の社員を対象にした健康啓発の取り組み(ヘルスチェック大会)についてご相談をさせていただきました。」


産官学連携で再認識したInBodyの有用性

不二製油株式会社では、2023年から自社でもInBodyを2台導入しています。ヒトを対象とした介入試験の重要性が増している中で、不二製油内でも介入試験に積極的に取り組むこととなり、2022年、不二製油グループ本社内に倫理委員会が設置されました。社内で検証したデータを学術的に外部に出していけるようになりましたが、参加者の健康度合いを測定する手段がないことが課題でした。

吉野さん:
「以前、ある大学と共同研究を行った際、ご一緒した先生から 『不二製油さんはInBody持っていないんですか?』 と言われて、初めてInBodyのことを知りました。産官学連携で今岡先生もInBodyを使用していることに気づき、InBodyについて改めて調べました。介入試験でBMIだけを評価指標とするには限界があると悩んでいましたが、フレイルに関する重要なファクターである筋肉量が確認できるだけでなく、他にも様々な数値が測定できることが分かり、茨城県つくば市にある不二製油の研究センターと大阪府泉佐野市にある阪南事業所の健康管理室にInBodyを導入しました。阪南事業所では研究のためのデータ収集だけでなく、従業員の皆さんに現在の身体の状態を知ってもらうためにも使用しています。産業医の関口先生からも衛生講話でInBodyのことを話していただいて以来、測定に来られる方が少しずつ増えています。」

▲ 健康管理室での関口先生と従業員の様子

関口先生:
「不二製油には工場勤務の方もいれば事務の方、研究職の方など様々な職種の方がいらっしゃいます。従業員の高齢化も進んでいく中で、どうしても身体をよく使う工場勤務の方の体調が心配です。50代になってくると筋肉量が低下してきて、定年も見据えてどこまで働くかとなったときに体力づくりが大切になります。InBodyが導入されるまでは体重しか測定していませんでしたが、InBodyで確認できる項目が増えたことで従業員の皆さんに説明しやすくなりました。明確に数値をもとに 『肥満ですよね』 と現状をお伝えしやすくなったと共に、これからどうやって改善していくべきか、具体的な数字を使って計画できるようになりました。筋肉量や体脂肪量をInBodyで客観的に見ることで皆さんが健康を意識する動機付けになればいいなと考えています。」

今岡先生:
「産官学連携を行っていく中で当時の不二製油担当者さんから、従業員向けにも何かできないかと相談があって、私以外の大学教員が外反母趾など足のヘルスチェックや姿勢診断などを行うようになりました。その後、コロナ禍で在宅ワークが増加し、従業員の皆さんの高齢化も進んでいます。最近はプレゼンティーイズムという言葉も耳にするようになり、社員の健康度と労働生産性を確認しようということになり、健康管理課の皆さんや産業医の関口先生と1年程前からディスカッションし始め、InBody測定を含むヘルスチェック大会の企画に至りました。」

※WHOによって提唱された、健康問題に起因するパフォーマンスの損失を表す指標。健康問題が理由で生産性が低下している状態を示す。

▲ 社内のサイネージで測定会を周知

測定会ではInBody測定の他に、2ステップテスト・立位体前屈・握力など身体能力検査も行います。腰痛など身体の痛みや睡眠などに関する生活習慣アンケートも実施し、それらの結果を基に今岡先生だけでなく、同大学の肥田 光正先生、日本産業理学療法研究会 理事長の岡原 聡先生など、理学療法士の先生方から運動や生活習慣に関するフィードバックがあります。5月の測定会に参加された方については、11月の測定会で初回測定データが既に印刷された記録用紙に最新の記録を記入して、半年間の変化についてもフィードバックがあります。

▲ ヘルスチェック大会でのInBody測定風景

▲ フィードバック時に渡す結果報告書

今岡先生:
「InBody測定などを行って、ご自身の身体の現状を知っていただきます。5月の初回測定では3日間で134名の方にご参加いただき、そのデータを分析したところ、皆さんとにかく身体が硬いことが分かりました。これを踏まえて、5月と11月の測定会の間に理学療法士2名でストレッチの研修会を行って、講義だけでなく一緒にストレッチを実践しました。」

▲ ストレッチ研修会の様子

吉野さん:
「身体をよく使う工場勤務の方にたくさん来ていただきたかったのですが、交代勤務や昼休みの時間も駆け足で昼食を済ますだけの方が多く、結果的に事務職の方に多く参加いただけました。11月の測定会は少しでも来やすいように開催時間を変更しましたが、どうすれば工場勤務の方に多く参加していただけるのかが今後の課題だと思っています。」

今岡先生:
「こういった測定会に参加されるということは健康への意識が比較的高い方ではあると思います。一方で工場勤務の方では測定会への参加率も含め、健康に興味・関心がある方が少ない印象です。いかに健康に関心を持ってもらうか、自分の現状を知ることの大切さが分かっていただけるか、というところも課題として吉野さんと話しています。」


InBodyで健康への意識を高める

フィードバックする際は、InBodyの結果用紙を測定者と一緒に見ながら、はじめに体重・筋肉量・体脂肪量のバランスの説明をします。体重は標準範囲に入っていても、筋肉量が少ないもしくは体脂肪量が多い方が大半です。その後、部位別筋肉量・体脂肪量を見て、どの部位の筋肉量が少ないかなどを伝えます。筋肉均衡も確認しますが、上下不均衡な方は上半身の筋肉量が少ない方が多い傾向があります。そして、5月に測定された方は過去のデータを履歴で確認します。

▲ 測定結果説明時に触れている項目

今岡先生:
「InBody測定については良好な反応の方が多くて、『こういうのも知れるんだ』 『ご飯先に食べてくるんじゃなかった…』 など色々な感想が聞けました。特に体重調節の項目は、体脂肪量をどれだけ減らして筋肉量をこれだけ増やしましょうという数字が明確に分かるので、すごく参考になるという声が多かったと思います。」

吉野さん:
「5月の測定会後、今岡先生にお願いして測定結果のランキングを作成していただき、社内のサイネージに掲示しました。従業員の皆さんの注目度は高く、『○○さん身体柔らかいね』 『△△さん筋肉量多いなぁ』 など反応も良く、興味を惹くことができたと思います。社内での基準値にもなりますので、関心のある人に対してこの値を目指して頑張るといった目標を示すこともできたと思います。当初、名前を出す予定はなかったのですが、ランキング掲載者には私から名前を掲載して良いか確認してOKだった方は実名を、NGの方はイニシャルで掲示しています。男性は、筋肉量や握力が周りより高いと嬉しいみたいです。」

▲ 社内のサイネージで掲示したランキング

今岡先生:
「11月の測定会では、5月に測定したときの握力や筋肉量の測定結果をフィードバック時に見せて、自分が今どれくらいに位置するのかを見てもらっています。18~65歳の方に参加いただいていますが、図を見ると若い方の筋肉量が少なく、年配の方の筋肉量はしっかりあることが分かります。握力も同じ傾向が示されています。本来であれば若い方のデータがもっと上に来てほしいところです。」

▲ 5月測定結果を散布図にして、11月測定会のフィードバック時に活用

吉野さん:
「社内でヘルスチェック大会の話題がよく出てくるようになり、『11月の測定会にも行こうね!』 と社員が誘い合っている姿も見られました。元々健康に関心がある方は自分で意識できると思いますが、普段運動しない人からすると、忘れた頃にまた測定会があるということ自体が健康を意識するためにすごく良い機会になっているのだと思います。今後は2回の測定会の結果を基に、今岡先生に開いていただいたストレッチ研修会のような、従業員の課題にフォーカスできる取り組みを進めてさらに意識付けしていきたいです。皆さんの関心があることに添った取り組みを展開していくことで、少しずつ参加者が増え、浸透してほしいなと思います。」

今岡先生:
「『夏が過ぎて痩せたよね』 『お腹が大きくなってきましたね』 といった感想を交えつつではありますが、2回目の測定会にもわざわざ来られる方は検査結果に自信がある方と、やっぱり怠けちゃったけど来ましたという方に分かれます。自信がある方は柔軟性が改善していたり、体重がコントロールされて良い測定結果が出ていたりと、今回の測定会をきっかけに健康づくりに関心を持ってもらえたと感じました。」

5月・11月の測定会に参加された健康管理課の藤田 昇さんにお話を伺いました。

▲ 健康管理課の藤田 昇さん

藤田さん:
「不二製油には40年近く勤務しています。コロナ禍の在宅勤務に伴って、歳も歳なので筋力がどんどん下がってくる感覚があり、ついに腰を痛めてしまいました。そんな折、5月に測定会をようやく開くことができ、早速測定してもらいました。その時は初めての測定だったので “こんな感じなのか” といった感想でした。この測定結果を受けて、腰が痛い状態でもできることは何かと考え、毎日の通勤で遠回りするなどしてたくさん歩くことを意識しました。現在も1日12,000-13,000歩ほど歩いています。その結果、半年後の11月に測定したとき、体重・体脂肪量も増えてはいましたが、脚の筋肉量が左右合わせて約0.8kg増加しているのが分かりました。それまでは歩くことによる効果が実感できていなかったので、2回の測定会によって実際に数字で効果を実感することができたのはとても良かったです。継続することの重要性がよく分かりました。測定会をきっかけに、今後も3ヶ月に1回は社内のInBodyで測定したいと思います。」

▲ 藤田さんの5月と11月の結果用紙


終わりに

今岡先生:
「今後は、不二製油の皆様を含めた現役世代の方々の健康を守り、健康増進に繋げることを今まで以上に積極的に取り組んでいきたいと考えています。この取り組みが本当に健康を守ることができているかどうかは、今回の測定会で出てきた課題や修正点を共有しながら、2回の調査をしっかりと分析することで分かってくると思いますし、大学=アカデミアとしてエビデンスを残すことが一番大事だと考えていますので、他の方々が使える知見として発表・論文化することを目指したいと思います。」

関口先生:
「今後は他の事業所でも測定会を開催していきたいと考えています。若い世代は ”現時点で特に困り事がない” “測定値が悪くても若くて元気” などあまり実感がなく、健康意識がなかなか育ちにくいところが課題です。そういった人達に対して、体力や筋肉量を増やしましょうと声掛けする方が動機付けになりやすいかなと思います。筋肉量を増やすために取り組む内容は年齢で変わることはないのですが、実際にInBodyの測定結果を基に声掛けを行ったことで、意識して筋トレを始めた方もいらっしゃったのでそういった啓発活動ができればと思います。」

吉野さん:
「健康であることはすごい財産だと思います。今、健康に関心のない人にも本当に関心を持ってもらいたいですし、従業員の年齢が上がっていく中で健康に意識を向けて運動に取り組んだ結果、定年退職してからも元気で過ごしていただければすごく嬉しいです。ヘルスチェック大会など私達が企画する取り組みが、健康で過ごすための一助になってくれればと願っています。」