NTTドコモ レッドハリケーンズ
-ラグビー選手のコンディショニング-

機種モデル:InBody470

NTTドコモラグビー部レッドハリケーンズは大阪・南港にホームグラウンドを持ち、ジャパンラグビートップリーグで活躍するラグビーチームです。1994年に創設され、ラグビー日本代表経験のある選手も在籍しています。2018-2019シーズンでは2部相当のトップチャレンジリーグを1位で終え、2019年からは1部相当のジャパンラグビートップリーグに戦いの場を移しています。間もなく開催される、 ”ラグビーワールドカップ2019日本大会” に出場するラグビー日本代表メンバーも1名所属しており、1部での上位進出を目標に日々練習を重ねています。ラグビーはプロ選手とアマチュア選手が混在していることが多く、レッドハリケーンズの選手も日々、NTTドコモの社員として通常業務を行いながら、練習に打ち込んでいます。


レッドハリケーンズとの出会い


▲ 大川 健太郎コーチ
NTTドコモレッドハリケーンズのS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチを務める大川 健太郎コーチは、選手のパフォーマンス向上のためのトレーニング立案と、コンディショニングを担当しています。大川コーチは、小~高校時代で野球に打ち込み、ピッチャーとして肩の怪我を何度も経験していました。自身の怪我と向き合う中で、身体を鍛えることやコンディショニングに興味を持つようになり、トレーナーの道に進むことになりました。専門学校でコーチングやコンディショニングについて学んだ後は、フィットネスクラブのスタッフとして2年、京都の龍谷大学にて大学体育会のアシスタントS&Cコーチを1年、更に森永製菓のウイダートレーニングラボにてジュニア選手からプロアスリート選手のS&Cコーチを2年務め、現職のNTTドコモレッドハリケーンズS&Cコーチに至り、今年で9年目となります。


体格の大きなラグビー選手のコンディショニング

チームドクターの薦めからコンディショニングの一環としてInBodyが2013年に導入されました。それまでは体重とキャリパー法による皮下脂肪厚を測定し、選手のコンディションを確認していました。国内外に関わらず、ラグビー界では選手の体脂肪率をキャリパー法で算出することがとても多く、測定結果の比較対象が増えることから、チームでもキャリパー法をメインに扱っていました。選手の公式データとして測定する分にはキャリパー法も便利でしたが、キャリパー法は測定に時間と手間がかかることがデメリットで、普段のコンディショニング現場で使うには限界がありました。一方、InBodyは一人当たりの測定時間が短く、直ぐに全ての結果が出力されます。InBody導入後もキャリパー法での測定を並行して行っていますが、キャリパー法は他チーム選手との比較を目的に年5回程、InBodyは選手自身の変化をモニタリングする目的で週2回程と、それぞれ測定の目的が住み分けされています。
※皮下脂肪の厚さを測定し、体脂肪率を算出する測定方法。詳細はInBodyトピックの「体成分とは何でしょうか?」をご覧ください。

「InBodyの良いところは何よりも計測数値が出るのが早いことが一つ、そしてその数値がとても細かく出るところもいいと思います。それに加えて、結果用紙の下に測定結果のログ(履歴)が見れるのもいいですね。選手が見て分かりやすいということを優先しているので、一目で身体の変化が分かる点が嬉しいです。」

週2回測定の1回目は休み明けの月曜日に測定し、選手のコンディションを確認します。2回目は金曜日に測定し、月曜日~金曜日までの練習やトレーニングの成果を確認します。50名余りの選手を一斉に測定することから、今年の3月には新たにInBody470を2台導入しています。また、持ち運びにも適していることから遠征先や合宿先にもInBody470を持参し、選手の測定を行っています。InBodyの測定結果では導入当初から体重・体脂肪率・骨格筋量の3つの項目をメインに扱っており、チームのクラウドサービスに選手がこの数値を入力することで、コーチらとデータ共有されます。3つの項目に絞ることで、選手も自身のコンディションの変化に気づきやすくなります。コーチは入力された数値やパフォーマンスの数値を基に、トレーニングメニューの立案やコンディションの管理を行います。個人差やポジションの違いによって選手ごとの目標体重やアプローチが異なるため、チーム全体としてのメニューだけでなく、選手とコミュニケーションを取りながら個別指導も行います。

「ラグビーはサッカーとほぼ同じで前後半40分のプレー時間で構成されていますが、タックルやスクラムのように身体を大きく当てるプレーがあるため、サッカーよりも当然体重や筋肉量が必要になります。筋肉量を上げることで体重を増やすということが他のスポーツ以上に重要ですが、InBodyを導入してからはより具体的なトレーニングメニューを作ることができるようになり、どれくらい変化したのかも日々追えるようになりました。結果、選手のパフォーマンススコアも少しずつ良くなってきて、選手自身もそれを自覚できるようになったことはとても大きいです。1年で体重が3~4kg骨格筋量が2~4kg増えることを目標としているので、数値が足りない選手はメニューの修正や食事内容の変更ができるようにもなりました。これまでのキャリパー法では骨格筋量を測定することができなかったので、骨格筋量を実際に数値として追いながらトレーニングメニューを立案できるようになったことは非常に助かっています。」


ポジションによるコンディショニングの違い

ラグビーのポジションはフォワードとバックスの2つに大きく分かれます。ポジション毎の役割がはっきりしており、それによって体格や必要な筋肉量が異なることがラグビーの大きな特徴です。

フォワードは相手とのコンタクトやスクラムなど体をぶつけることプレーが多く、より大きな体重・体格が必要です。特にスクラムというプレーの最前線に立つフォワードの選手は、体重がどのポジションよりも大きくなります。体重を増やすために食事を多く取ることも大切ですが、体脂肪ばかりが増えないように、体脂肪率・骨格筋量を確認しながら、体重を落とさずに体脂肪を減らすことを目指していきます。バックスは力強い走りで得点を狙います。フォワードに比べると体格が小さくなりますが、特に小柄な選手は相手のフォワードと衝突する際、脳震とうを起こす危険性が高まります。力強い走りを維持しながら、怪我をしにくい身体づくりを目的に体重を増やしていきます。

レッドハリケーンズでは、選手の体脂肪率をフォワードは20%以下、バックスは15%以下、骨格筋量はフォワード・バックスともに50kg以上を目標にしています。

➤ ラグビー選手(上) vs 一般男性(下)の体成分モデル


ラグビー選手の天敵、長期離脱

ラグビー選手の怪我は重症度が高く、長期離脱するケースもあります。運動ができない状態なので長期離脱中の体重はどんどん減少してしまいます。体重の大きいフォワードの選手では、1回の怪我で体重が6kg程減ってしまうこともあります。体重は減らすことは簡単ですが、増やすことは難しく、怪我の治療は勿論ですが、体重を戻すことも考えなくてはなりません。怪我の治療中も、動かせる健康な部位を維持するためのトレーニングは行いますが、怪我の内容によっては健康な部位のトレーニングを行うことすら難しい場合もあります。また選手によって体重の戻りが遅い選手もいるため、選手に合わせたリハビリメニューが必要です。InBodyの測定結果を用いると、リハビリの時に体重をどこまで、どうやって戻すか明確な目標を立てやすくなります。


InBodyをきっかけに生まれる一人ひとりの “プロ意識”


大川コーチは選手と話すとき、数値の話を出すようにしています。調子の良い時・悪い時で実際に数値はどう変化しているのか? それを選手自身が自分で把握することで自己管理能力も高くなります。InBodyの結果から、”目標体重を維持できている選手/目標体重ではあるけれど、体脂肪率が高く筋肉量が足りていない選手/筋肉量も足りず目標体重も足りていない選手” と選手全員の状態を常にトレーニングルームに貼りだしています。食事面に関しては、練習後の夕食はチーム専属の栄養士のサポートがありますが、1日3食の全てをチームで用意することは難しいため、選手自身で食事メニューを考える必要があります。体脂肪量を減らすために食事量を減らしてしまい、結果的に体重が落ちてしまう選手もいます。体重を減らさずに体脂肪量だけを減らすためには何を食べれば良いのか、どんな運動をすれば良いのか、選手自身で考えることがとても大切です。

「アスリートである以上、常に試合でハイパフォーマンスをしてチームに貢献していかなければならないので、自分の身体は自分で把握しなければいけないと常に話しています。私たちが希望する体重であっても、選手本人が思う一番動ける体重とは異なる時もあります。その部分では日頃のパフォーマンスを見て、選手とコーチですり合わせていく必要があります。InBodyを導入してからは、コンディショニングのための数値が明確に出てくるおかげで、選手自身のコンディショニングへの意識が高まったと感じています。最近は選手からトレーニング内容についての希望を言ってくることも増えました。チームとしては週2回の測定を行っていますが、自発的に測定を行い、数値の変化を毎日確認している選手も出てくるようになりました。ラグビー選手は体重がとても大きいので、日々の体重変動が大きくなります。日によって1日で2~3kg変動する選手もいます。選手からもInBodyを導入して良かったという声をよく聞きます。また、昨年ヘッドコーチが変わり数値に厳しくなったことから、より一層身体づくりへの意識が高まったことも一因として挙げられます。」


終わりに

「選手が怪我なく1年過ごせることを毎年の目標としています。自分自身もそれをサポートできるS&Cコーチとして努力していかなければならないと思っています。それに伴って、チームが優勝、もしくは上位に食い込んで戦えるようなチームになってほしいです。トレーナーは、医者ではありませんが、人の身体を見るという点では同じで、手を抜くことができません。これからスポーツの現場でコーチやトレーナーを目指す人は、若い時から理論を勉強することは勿論ですが、何より現場で経験を積んでほしいと思います。学校で学ぶことだけでなく、トレーニングの実践や選手とのコミュニケーションなど、実体験しないと分からないことがたくさんあります。人と接する仕事なので特にコミュニケーションの取り方は大事です。そうしてチームが結果を出すことに繋がります。」

9/20(金)からラグビーワールドカップ2019がアジアで初めて日本で開催されます。前回のW杯で強豪南アフリカを破った “スポーツ史上最大の番狂わせ” から4年。日本代表が再び世界の強豪と激突します。前述の通り、レッドハリケーンズからは1名が日本代表として出場します。

「今の日本代表は上位と戦えるレベルだと思います(8/26現在、世界ランキング9位)。初の日本開催なので、2018年のサッカーワールドカップ以上の成績を見せて、ラグビーをもっと色んな人に知ってもらいたいです。そして、南半球の高い壁を打ち破ってほしい。レッドハリケーンズからも選手が参加しているので、彼の活躍も期待しています。また、ワールドカップ終了後、年明けからはレギュラーシーズンも始まります。昨年1部に昇格したので、今年は勝負の年になります。シーズンが始まるまでの数ヶ月、1日1日を自分のために大切にして、丈夫な身体を作って試合に臨んでほしいです。」


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