用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニック
-一人ひとりに寄り添う多面的診療とInBody-
✓InBodyを活用する目的
● 採血などの検査だけでは分からない病態を、体成分の視点から把握するため
● 筋肉量・体脂肪量・位相角を通して「量」と「質」の両面から筋肉を評価し、肝機能や脂質代謝との関連を明らかにするため
● 体成分の変化をモニタリングし、研究データとして活用するため
✓InBody580導入の決め手
● 肝機能や脂質代謝と関連のある筋肉量や位相角を含め、多角的な評価が可能である点
● LookinBody Webや血圧計・身長計・握力計などの周辺機器と連携でき、一元的にデータ管理ができる点
✓得られた効果
● 血液検査やフィブロスキャンだけでは説明できなかった病態を、InBodyのデータで補完できるようになった
● 筋肉量や体成分のグラフが可視化されることで、診療の指導が根拠に基づき、より具体的になった
● 季節や気候変動が体成分や肝機能に与える影響の研究に活用でき、今後の診療指導に新たな視点を提供している
機種モデル:InBody580
用賀きくち内科 肝臓・内視鏡クリニックは、肝臓内科や内視鏡検査を中心に消化器内科・一般内科、更には健康診断まで幅広く診療を行う総合内科クリニックとして2024年10月に開院しました。最新技術を取り入れた医療機器を駆使することで未来を見据えた診療体制を整備し、従来の枠に囚われない新たな医療分野への挑戦も積極的に行っています。院長の菊池 真大先生は、肝臓を専門領域としながらも内科全般に対して豊富な知識と経験を持ち、患者の目線に立って包括的な診察を行っています。
▲ 菊池 真大 先生
菊池先生:
「私は家族の中に医療従事者がいない環境で育ちましたが、小学5年生の時に大好きな祖父が他界し、それがきっかけとなって医師を志しました。それは当時の私にとって非常に衝撃的な出来事で、”大切な人たちに長生きしてほしい”という気持ちが強くなり、そのために医師になろうと決意しました。」
菊池先生は、慶應義塾大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院と関連病院で臨床経験を積まれました。その後、ペンシルバニア大学(アメリカペンシルベニア州)に2年間留学し、帰国後は慶應義塾大学、東海大学医学部付属東京病院、東京医療センター、駒沢・風の診療所、旗の台病院と、様々な医療機関で豊富な臨床経験を重ねられました。これらの幅広い経験を活かし、現在は用賀きくち内科を開院し、地域医療に貢献されています。
菊池先生:
「より多くの人の役に立ちたいという想いから、専門領域に留まらず、全身を診察できる医師でありたいと考え、内科医の道を選びました。内科の中にも様々な分野がありますが、私は消化器、特に肝臓を専門としています。消化器は体の中でも非常に大きな割合を占めており、あらゆる診療科を回っていた研修医時代にも消化器疾患の症例に数多く触れたことが印象に残っています。中でも肝臓は、その機能や役割が非常に大きく、他の消化器や全身状態とも密接に関わっている臓器です。また、外科的な一面も持ち合わせており、全身を診るという私自身の志向とも一致したことから、迷わず肝臓を専門領域に選びました。」
多角的な検査を活かして患者に寄り添う
用賀きくち内科には、慢性肝疾患を抱える方や肝機能低下が疑われる方、生活習慣病の改善に取り組む方など、様々な患者が訪れます。病態を細部まで丁寧に診る診療スタイルに加え、豊富な知識と気さくで話しやすい雰囲気を持つ菊池先生は、多くの患者から厚い信頼が寄せられています。菊池先生がこれまで勤務されてきた複数の医療機関で診療していた患者のうち、開院後も変わらず450名を超える方々が通院を続けていることからも、その信頼の深さがうかがえます。
菊池先生:
「私のモットーは 『特定のデータだけを見て判断する内科医にはならない』 ということです。多様な検査データはもちろんですが、患者様の様子を見て、丁寧にお話を伺うことを心掛けています。患者様によって生活習慣や病態も異なるので、それぞれに寄り添った診療が求められていると思っています。」
用賀きくち内科では、肝機能低下が疑われる患者・慢性肝疾患で通院している患者に対して、あらゆる角度からのデータを基に包括的な診察を行うため、血液検査・血圧・身長・InBody・握力・フィブロスキャンの6項目を必ずセットで測定しています。
血液検査では、血液中の酵素やコレステロールなどを測定して主に肝機能を評価します。ただし、血液検査だけでは肝臓の線維化や脂肪の蓄積まで把握することは難しいため、異なる角度から肝臓を評価する検査も必要です。フィブロスキャンは、わずか1分程度の検査で肝臓の硬さや脂肪量を測定する機器です。特殊な装置を右の脇腹に当て、そこから発せられる振動や超音波の伝わり方を分析することで肝臓の状態を可視化でき、客観的な指標として活用できます。
▲ フィブロスキャン測定風景
菊池先生:
「肝臓の状態をここまで分かりやすく数値で示せる機器は、これまでほとんどありませんでした。研修医時代に初めて使用して以来、私自身が肝臓を学ぶ上で欠かせない存在となっており、何よりも患者様にとって納得しやすい指標として重宝しています。診療においては、医師だけが理解できる数値ではなく、患者様ご自身が体の状態を把握しやすい指標を用いて、丁寧に説明することを大切にしています。その中で、フィブロスキャンと併せて欠かせないのがInBodyです。」
新たな視点を生み出すInBody
菊池先生は、InBody580(2024年3月発売)を東京都で初めて導入した先生です。肝臓内科や健康診断で受診する患者のほとんどがInBody測定を行っており、他の検査と組み合わせて診療に活かされています。
▲ InBody測定風景
菊池先生:
「InBodyは慶應義塾大学に在籍していた頃からよく知っており、測定も行っていました。たくさんの患者様を測定してそのデータを見ていくうちに、採血など他の検査だけでは分からない病態がInBodyによって明らかになる症例に多く出会いました。体成分という視点から患者様を把握できるツールとして、今でも私の診療に欠かせない機器となっています。また、InBodyで筋肉量を評価できるようになったことをきっかけに、運動療法についてより具体的に説明できるようになりたいという気持ちが強くなりました。InBodyの数値を基により根拠のある指導に繋げるため、現在は健康運動指導士の資格取得に向けて勉強中です。」
以前は、血液検査とフィブロスキャンのデータを確認してから、必要に応じてInBodyを測定するという診療フローでした。しかし、その二つの指標だけでは評価が難しいケースが増えてきたため、現在ではInBody測定を加えた三つの指標を必ずセットで測定しています。
菊池先生:
「血液検査では、肝機能を評価できるAST・ALT・γ-GTPという項目をよく観察しています。肝機能の低下は、それぞれの数値の上昇によって反映されます。ただ、特にコロナ禍以降で増えているのが、γ-GTPの数値が高いにも関わらずフィブロスキャンの数値は ”正常” というケースです。更に、γ-GTPが高い方には飲酒習慣があることが多いのですが、それにも該当しないケースが見られるようになりました。この二つの指標からだけでは情報が少なく、患者様にどのように説明すればよいのか困ってしまいます。この時、InBodyのデータがあることで患者様の病態がクリアになるのです。」
実際に、γ-GTPが高値でフィブロスキャンの数値が正常という症例でInBodyを測定すると、共通して筋肉量が低いことが分かりました。
菊池先生:
「これは、個人的にすごい発見だと思っています。血液検査とフィブロスキャンだけでは見抜けなかった患者様の病態が、InBodyを測定したことではっきりと見えてきたのです。コロナ禍をきっかけにリモートワークなどが広まり、全国的に筋肉量や基礎代謝量が落ちている方が増えています。その結果、これまで特に気にしていなかった肝機能を健康診断で初めて指摘される、というケースが明らかに増えてきました。更に最近では、 『痩せたい』 という意識の高まりから急激な食事制限を行う方も増えており、“ダイエット脂肪肝(低栄養性脂肪肝)” も目立つようになっています。」
InBodyでは、「筋肉-脂肪」という項目で体重・筋肉量・体脂肪量が3本の棒グラフで表示されます。グラフの長さから持つべき量に対する過不足を確認し、グラフの先端を結んだ形から測定者の体型を視覚化できます。下図のように、体重は標準範囲内に収まっていても、筋肉量のグラフが短く、体脂肪量のグラフが長い場合は体成分のバランスが悪く、「隠れ肥満」に該当します。
▲ InBodyの結果用紙内「筋肉-脂肪」の項目
筋肉量が少ない状態では、体がエネルギーを消費する力が弱まり基礎代謝量が低下します。基礎代謝量とは安静時でも生命を維持するために消費されるエネルギーの量を指し、その大部分が筋肉で消費されるエネルギーです。そのため、筋肉量が減ると必然的に基礎代謝量も落ち、体内での糖質や脂質の処理能力が低下することになります。
筋肉は糖質をグリコーゲンとして蓄え、運動時にエネルギーとして消費することで血糖値の安定や糖の過剰な蓄積を防ぐ役割を果たしています。また、脂質代謝においても重要な役割を担っています。筋肉量が多いと血中の中性脂肪や遊離脂肪酸が効率良くエネルギーとして使われます。逆に筋肉量が減少し基礎代謝量が低下すると、余剰な脂質が肝臓に蓄積されやすくなり、その結果、γ-GTPなどの肝機能指標が上昇することがあります。この状態を放置すると脂肪肝や肝硬変へと進行するリスクが高まるため、筋肉量を増やし体脂肪量を減らして、体成分のバランスを整えることが重要です。
菊池先生:
「筋肉量が減少し基礎代謝量が低下している患者様では、コレステロール値も高くなっている場合が多いです。どのように改善しようかと考えたとき、ただ血液検査の結果だけを見ていたらコレステロール値を下げる薬の処方だけで終わってしまうと思います。その場合、確かに見かけのコレステロール値は改善されるかもしれませんが、コレステロール値が高くなった本当の理由は分かりませんし、そこに介入できない限りこの患者様はずっと薬を飲み続けることになります。しかしInBodyの測定結果から、肝機能の低下と高いコレステロール値の原因は筋肉量の減少による基礎代謝量の低下であることだと気づくことができ、ここにアプローチができるのです。実際に、筋肉量と体脂肪量のバランスが良くなり、3本の棒グラフがI型(体成分のバランスが良い状態)に近づくにつれて肝機能やコレステロール値なども改善していきます。対症療法に留まることなく 『根本原因を見極め、具体的に指導する』 という私の診療にはInBodyは欠かせないツールです。」
筋肉「量」だけではなく「質」に着目
InBodyの測定結果を評価するにあたり、菊池先生は筋肉の量だけではなく、質にも着目しています。CT検査においては、L3(第3腰椎)と呼ばれる位置の筋肉の質が、メタボリック症候群と相関するというデータが報告されています。L3の周辺には、腸腰筋や脊柱起立筋群など、姿勢を保つために重要な筋肉が多く分布しており、この筋断面積は体幹機能の評価にも適しています。また、L3の筋断面積は全身の骨格筋量と高い相関があるとされており、現在ではこの部位を使って骨格筋量や筋肉の質(筋密度)を推定する方法が広く活用されています。
菊池先生:
「CT検査で筋肉の質を評価しようと思っても、来院された患者様全員にCT検査を受けていただくわけにはいきません。そこで、簡単に短時間で測定ができて筋肉の量と質まで評価できるInBodyに注目しました。中でも着目している項目が ”位相角” です。位相角は筋肉の質を評価できるとも言われていますが、この筋肉の質が脂肪肝やメタボリック症候群の管理をする上で大きく関わる要素なのです。」
▲ InBody580結果用紙内に提示される位相角目
位相角とは、細胞膜を通過する際に発生する電気抵抗(リアクタンス)を角度で表した指標です。細胞膜は電気を通しにくい脂質の二重構造でできているため、細胞膜が丈夫であるほど電気抵抗が高まり、それに伴って位相角の値も大きくなります。健康状態が良好であれば5°前後を示し、位相角が高ければ細胞膜の状態が良好であると判断され、逆に低い場合は細胞膜の機能低下や細胞の劣化が示唆されます。標準値は明確に定まっていませんが、位相角の低下は疾患の重症度や予後の悪化とも関連することが報告されています。こうした背景から、位相角は細胞の健全性を反映する指標として、筋肉の「質」を評価する手がかりにもなり得ると考えられています。
菊池先生:
「まずは全身の筋肉量と体脂肪量のバランスを確認し、そのうえで部位別筋肉量から筋肉の付き方のバランスを評価します。その後、位相角について説明しますが、詳しく説明しすぎると難しくなってしまうため 『値が高いほど筋肉の質が良い』 とシンプルな表現でお伝えしています。筋肉量は患者様にとって馴染みがありますが、筋肉の質を評価された経験がある方は少なく、多くの方が興味を持って耳を傾けてくださいます。位相角は、筋肉量と体脂肪量のバランスが整ってくると改善していき、それに伴って脂肪肝の改善にも繋がることがあります。このように、運動療法の効果が数値として明確に見える点が非常に興味深く、医師としても大きな手応えを感じるツールだと実感しています。」
InBody連携機器による一元管理で包括的診療がスムーズに
用賀きくち内科では、InBodyだけではなくInBodyと連携できる周辺機器も取り揃えています。血圧計、身長計(BSM370)、握力計(InGrip)は全てInBodyと連携可能で、測定結果が自動でInBodyの結果用紙上に記録される仕様になっています。また、管理者ツールLookinBody Webを活用し、InBodyをはじめ周辺機器での測定結果を一元管理しています。
▲ InBodyと各機種、LookinBody webの連携
菊池先生:
「握力は全身の筋力の指標として必ず見るべき項目ですし、位相角と併せて筋肉の質の指標としても活用しています。また、血圧や身長も患者様の状態を把握するための必要な材料です。1回の診察でいくつも検査や測定を行いますが、その結果全てがバラバラのところに保管されていては、確認するのに手間がかかります。InBodyは、血圧計・BSM370・InGripと簡単に連携ができ、それぞれの結果がLookinBody Webに集約されるので非常に助かっています。」
研究の幅を広げるInBody
菊池先生は、InBodyを活用して積極的に研究も行っています。以前は、フィブロスキャンで測定した肝臓の硬さ・脂肪量と体成分の関係などをテーマにしていましたが、最近はまた新たなテーマで研究に取り組んでいます。
菊池先生:
「日本特有の四季によって、体(特に肝臓)も影響を受けているのではないかと考えています。実際に250名の患者様の測定データを、1年間にわたり3ヶ月毎に収集し、分析しているところです。分析した結果、中性脂肪やコレステロール、肝機能の数値は秋に悪くなっているという結果が出ました。InBodyの結果も見てみると、男性は基礎代謝量と体幹の位相角が低下し、女性は体幹の体脂肪量が増加していました。ここから、何かしらの原因によって秋に脂質代謝が影響を受けていると考えました。秋は果糖の多い果物が旬になるなどの特徴もありますが、私は昨今の異常気象に着目して考察を進めています。」
近年の気候変動には、ラニーニャ現象(海面水温が低下)やエルニーニョ現象(海面水温が上昇)が関係しています。本来は交互に発生するこれらの現象ですが、近年はその周期が乱れ、気温の高い状態が長く続く傾向が見られます。特に2024年は気温が急上昇したことにより季節の移り変わりも変化し、秋が短くなり、夏から一気に冬へ移るような気候になっています。
菊池先生:
「秋に肝機能や体成分が悪化する背景には、近年の異常気象、特に気温上昇の影響があるのではないかと考えています。実際に、秋が短くなり夏から冬への移り変わりが様変わりしている中で、体が上手く環境変化に順応できず、体調や代謝に変化が起きやすくなっているのではないでしょうか。日本は四季の変化がはっきりしている国でありながら、診療や研究の現場では、しばしば四季の影響を含まない海外のデータや基準が使われています。しかし本来であれば、日本特有の季節性を踏まえた評価や指導が必要だと感じています。季節の変わり目が体に与える影響を読み取りながら、悪化しやすい時期を予測し、生活習慣の改善提案や指導内容に季節感を反映させていくことが、これからの医療においてより重要になってくる取り組みだと思います。」
今後の展望
異常気象による気温の変動は今後もしばらく続くと予測されており、それに伴って外出の機会が減り、活動量の低下が懸念されます。そうなると、筋肉量が少なく体脂肪量が多い「隠れ肥満」の人が更に増えていく可能性があります。こうした現代的な課題に対しても、菊池先生は内科医として徹底的に向き合っていきたいと考えています。
菊池先生:
「肝機能と基礎代謝量、筋肉量の関係については、まだ十分に解明されていない点が多く、今後しっかりと突き詰めて明確な結論を導きたいと考えています。そのためにも、様々な検査データと併せてInBodyの情報を丁寧に評価していくつもりです。また、医師としては根拠に基づいた、より具体的な診療を行っていきたいという思いがあります。ただ単に 『運動をしましょう』 と言うだけでは、患者様にとって何をどう始めれば良いのか分からず、特にこれまで運動習慣のなかった方には非常にハードルが高く感じられてしまいます。だからこそ私は、日常生活の中で取り入れやすい “身近な工夫” を通じて、生活習慣病の予防・改善に繋がるような情報を患者様にお届けできるよう、診療の幅を更に広げていきたいと考えています。
特に、患者様にとって無理のない範囲で取り組める運動療法を提案し、それを生活習慣病や脂肪肝の管理へと繋げていくことが重要だと感じています。そのためにも、日々の変化を可視化できるInBodyのデータを活用し、モニタリングの一環として大切に使っていきたいと考えています。」